猫かぶりオメガとマッチングアプリ

夏芽玉

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12話 頑張るから

 ふかふかのベッドで目覚めたオレは、ぼんやりと天井を眺めた。
 滅茶苦茶腰がダルいし、まだ眠い。
 いつまでもこのまま布団に包まれていたいけれど……
 再び閉じてしまいそうになる瞼を抉じ開けて、オレは昨日あったことを思い出す。

 昨日、バーで鳴瀬課長と出会って、鳴瀬課長のフェロモンで発情したオレは一緒にホテルに来た。しかも、場末のラブホなんかじゃない。タクシーで移動するときに、鳴瀬課長が運転手さんに告げたホテル名は、都心の一流ホテルだった。さらに部屋は最上階。多分、一泊何十万かするスイートルームだ。

 そこで、一晩中オレたちはセックスをし続けた。それは、明け方にオレが体力の限界を迎えて意識を飛ばすまで続いて、その間中オレはイき狂わされることになった。
 そしてセックスをしているときは、何度も項を噛まれた。首輪ネックガードがあったおかげで、オレは鳴瀬課長とは番にはならなかったけれど。

 昨夜の強制発情期ヒートは本来の発情期ヒートというわけじゃなかったからか、一晩でおさまったみたいだ。身体の奥の疼きは完全に消えている。普段の発情期ヒートだったら、オレはしっかりと一週間は発情し続けることになる。あの状態が一晩で済んだことにオレは心の中で安堵の息を漏らした。





「身体は大丈夫?」

 ベッドから起き上がると、オレが目覚めたことに気付いた鳴瀬課長が、そう声を掛けてきた。
 いつも顔を覆っているマスクとメガネはないけれど、ぼさぼさの髪型とダサいスーツはいつも通りだ。

「服はクリーニングを頼んでおいたのが仕上がって、さっき届いたよ。着替え、手伝おうか? それから、朝食はルームサービスを頼もうと思っているんだけど、それでいいかな?」
「ねぇ、一回寝たくらいで彼氏面かれしづらしないでくれる?」

 あ、しまった。今のは失言だった。寝起きでぼんやりしていたので、思わず素で返事をしていた。
 普段は猫を被って生活しているけれど、自分自身、オレの本性は滅茶苦茶性格が悪いという自覚はある。

「ええっと、……それじゃあ、倉持くんとは何回寝たら彼氏になれるのだろうか?」

 だけど、鳴瀬課長はどこまでも鳴瀬課長だった。なんか、この人の前で取り繕うのが馬鹿馬鹿しくなってしまった。今はプライベートな時間なので、仕事中以外は素で接しようと決めた。それに、オレの性格の悪さにドン引きされても、鳴瀬課長になら構わない気がする。むしろ、それでオレのことを諦めてくれればいいとさえ思った。

「あんた、馬っ鹿じゃないの? 昨日のは、ただの発情期ヒート事故じゃん。そのときの出来事なんて、真に受けないでよ。オレはあんたと付き合う気はないよ」
「昨夜は、十分に満足させてあげられたんじゃないかって思ってるんだけど……」
「……」

 確かに、こんな豪華な部屋で、あんなに気持ち良くされてしまうとは思っていなかった。セックスはちょっとしつこかったけれど、思い返してみれば、腹立たしいくらい最高だったと思う。そして、今、ちょっと思い出しただけで少しムラっとしてしまった。
 そのくらい、鳴瀬課長のフェロモンも、素顔も、身体も、セックスも、オレの好みだった。

「お、オレの何がダメだった? 倉持くんの好みになれるよう頑張るから……」

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