洗浄魔法って便利だね~風呂キャンしたい俺が異世界転移してみたら~

夏芽玉

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2話 いいじゃん、洗浄魔法!

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 翌日の朝。
 俺は少しばかりのお金をもらって、城から追い出されてしまった。

 あれ? もしかして、俺ってもうお役御免だったりする!?
 なにか用事があるから、わざわざ異世界に召喚されたんだと思っていた。
 しかし、別れというものはあっけないものだった。
 昨日俺に群がるように話しかけてきた僧侶たちはもはや誰一人としておらず、見るからに下っ端の兵士のような恰好をした若者が、城門の前で「このお金であとは好きにしてください、とのことです」と小さな革袋を渡してきただけだった。

 え? みんなが俺のことを「賢者様」って呼ぶから、与えられた特別な能力を使って、俺にしかできない何か偉業を達成しろ、みたいなことを言われるんじゃないかなって、ワクワク……いや、身構えていたんだけど。
 そんなこと、もしかして、俺には求められていなかったりする?
 マジで? 本当に??

 じゃあ、なんで俺はこの世界に召喚されたの?

 首を傾げても、その問いに答えてくれる者はいない。
 仕方ないので、昨日と今日の待遇の差について、原因を自分で考えてみる。

 えーっと……もしかして、あれか!?
 昨日の歓迎会とやらで、洗浄魔法について色々聞かれたときに、流石に『一人エッチの後、風呂キャンしたくてこれを選びました』なんてことは言うに言えず、『洗浄魔法とは、洗濯ができる程度の魔法です』と説明したのがまずかったのか?

 それで、俺は無能扱いされて、王城から追い出された……なんて。まさか、な。
 はは、ははは……

 しかし、その予想を否定する要素は何もない。

 いやいやいやいや。
 呼び出された後、無責任に放り出されるのは困ります!!
 とりあえず、まずは住むところが欲しいです!
 って城門の前でゴネまくっていたら、俺の対応をしていた兵士の上司みたいな人がやってきて、使っていい家を案内してくれると言ってくれた。

 それで、その人に連れられて、俺は新居に向かったわけなんだけど……







 王城から三十分ほど歩いたところにある小洒落た一軒家はとても住み心地がよさそうに見えた。
 近くには商店街もあるらしく、便利そうでもある。
 治安もいい場所だと聞いて、俺はすっかり安心したのだが……

 鍵を受け取った俺は、早速、玄関のドアを開けて驚いた。

「え、汚っ!!」

 外観に全く違和感はなかったけれど、中は荒れに荒れまくった、とんでもない汚さの家だった。
 ガラクタなのかゴミなのかわからない代物が、床から天井までびっしりと詰まっている。
 以前の住人はいったいどうやって暮らしていたのだろうか。
 というか、これは……
 もしかして、ゴミ屋敷っていうやつでは……?

 ……異世界にもゴミ屋敷ってあるんだな……

 妙なことで感心してしまったけれど、とてもじゃないが、こんなところには住めそうにない。

「チェンジで!」

 鼻を突く悪臭に顔を顰めながら叫んだけれど、案内してくれた人は、俺に鍵を渡すとすぐに帰ってしまったようだ。
 マジかよ……

 通りで、すんなりと住むところを融通してもらえたわけだ。

 扱いに困ったこのゴミ屋敷を、どうしても誰かに押し付けたかったのだろう。
 できれば、もうちょっと別のところに住みたいけれど……

「せ……洗浄魔法!」

 物は試しと、おっかなびっくりしながらも洗浄魔法を使ってみると、まずは玄関がきれいになった。
 ゴミだかガラクタだか、なんだかよくわからないようなものも、不思議な光が消してくれたようだ。

「お、おう……」

 洗浄魔法では、悪臭と埃くらいしか消せないかと思っていたけれど、ゴミやガラクタまで片付けることができるのは嬉しい誤算だ。

 とりあえず……これは、洗浄魔法があればなんとかなりそうかな……?

 気を取り直して、俺は魔法を使いながら、家の奥へと進んでいった。




 俺にあてがわれたのは、4LD相当の二階建て、庭付きの一軒家だった。
 最低限の家具と調度品はすでに揃っている。
 しかも、洗浄魔法のおかげで、それらは全て新品のようにきれいだ。

 食料品などを商店街まで買いに行ってみたら、街の人達はとても親切だった。
 しかも、お城の人が俺にくれたお金は十分だったらしく、当面の生活には困りそうもない。
 これならなんとか暮らしていけそうだ。

 しかし、貰ったお金は使っていけばそのうちなくなってしまう。
 だから、手持ちのお金が尽きる前に、どうにかして稼ぐ手段を考えなくてはならないのだけど……


 洗浄魔法はお城の人達には不評だったようだが、俺はすっかり気に入っていた。

 いいじゃん、洗浄魔法!
 めっちゃ便利じゃん、洗浄魔法!!

「洗濯しかできないだなんて、馬鹿にするんじゃねーぞ!!」

 俺は、これからの人生、洗浄魔法と生きていくんだ……!!


 そう意気込んだ俺は、クリーニング屋みたいなことを始めることにした。

 裏庭に、適当な箱を置いて、お客さんに洗濯したいものを入れてもらう。
 代金をもらったら、俺が洗浄魔法をかけて、仕上がった衣類を渡す。

 いや、これだとクリーニング屋じゃなくて、コインランドリーかな?

 最初の頃は、革だのウールだのといった素材を傷めてしまったり、汚れだと思っていたものが実は装飾で凝った柄のドレスをうっかり無地にしてしまったりといった失敗を繰り返したりもしたけれど……

 三カ月も経つ頃には、俺の洗浄魔法も上達し、洗濯に失敗することはなくなった。
 その頃には、クリーニング屋もといコインランドリー屋も口コミで評判が広まり、そこそこ軌道に乗ってきていた。

 というのに……




 ある日突然、城から使者がやって来たのだ。

「王様がお呼びです」

 正直「今更、何?」と思わなくもなかった。
 俺を歓迎する宴とやらには、たしか王様は来ていなかったはずだ。

 いきなり召喚しておきながら、勝手に追い出し、また呼び出すとかいったいどーゆーこと!?
 と、文句の一つでも言ってやりたいところだったけれど、いかつい兵士……いや、以前、俺を城から追い出した兵士が着ていたのよりは高そうな身なりをしているから、騎士なのかな? ……まあ、そういった感じの人達がゾロゾロとやってきて、仰々しい様子で「ついてくるように」なんて言うので、小市民でしかない俺は、ほいほいと彼らの後について王城へと向かうしかなかった。
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