2 / 11
2話 いいじゃん、洗浄魔法!
しおりを挟む
翌日の朝。
俺は少しばかりのお金をもらって、城から追い出されてしまった。
あれ? もしかして、俺ってもうお役御免だったりする!?
なにか用事があるから、わざわざ異世界に召喚されたんだと思っていた。
しかし、別れというものはあっけないものだった。
昨日俺に群がるように話しかけてきた僧侶たちはもはや誰一人としておらず、見るからに下っ端の兵士のような恰好をした若者が、城門の前で「このお金であとは好きにしてください、とのことです」と小さな革袋を渡してきただけだった。
え? みんなが俺のことを「賢者様」って呼ぶから、与えられた特別な能力を使って、俺にしかできない何か偉業を達成しろ、みたいなことを言われるんじゃないかなって、ワクワク……いや、身構えていたんだけど。
そんなこと、もしかして、俺には求められていなかったりする?
マジで? 本当に??
じゃあ、なんで俺はこの世界に召喚されたの?
首を傾げても、その問いに答えてくれる者はいない。
仕方ないので、昨日と今日の待遇の差について、原因を自分で考えてみる。
えーっと……もしかして、あれか!?
昨日の歓迎会とやらで、洗浄魔法について色々聞かれたときに、流石に『一人エッチの後、風呂キャンしたくてこれを選びました』なんてことは言うに言えず、『洗浄魔法とは、洗濯ができる程度の魔法です』と説明したのがまずかったのか?
それで、俺は無能扱いされて、王城から追い出された……なんて。まさか、な。
はは、ははは……
しかし、その予想を否定する要素は何もない。
いやいやいやいや。
呼び出された後、無責任に放り出されるのは困ります!!
とりあえず、まずは住むところが欲しいです!
って城門の前でゴネまくっていたら、俺の対応をしていた兵士の上司みたいな人がやってきて、使っていい家を案内してくれると言ってくれた。
それで、その人に連れられて、俺は新居に向かったわけなんだけど……
王城から三十分ほど歩いたところにある小洒落た一軒家はとても住み心地がよさそうに見えた。
近くには商店街もあるらしく、便利そうでもある。
治安もいい場所だと聞いて、俺はすっかり安心したのだが……
鍵を受け取った俺は、早速、玄関のドアを開けて驚いた。
「え、汚っ!!」
外観に全く違和感はなかったけれど、中は荒れに荒れまくった、とんでもない汚さの家だった。
ガラクタなのかゴミなのかわからない代物が、床から天井までびっしりと詰まっている。
以前の住人はいったいどうやって暮らしていたのだろうか。
というか、これは……
もしかして、ゴミ屋敷っていうやつでは……?
……異世界にもゴミ屋敷ってあるんだな……
妙なことで感心してしまったけれど、とてもじゃないが、こんなところには住めそうにない。
「チェンジで!」
鼻を突く悪臭に顔を顰めながら叫んだけれど、案内してくれた人は、俺に鍵を渡すとすぐに帰ってしまったようだ。
マジかよ……
通りで、すんなりと住むところを融通してもらえたわけだ。
扱いに困ったこのゴミ屋敷を、どうしても誰かに押し付けたかったのだろう。
できれば、もうちょっと別のところに住みたいけれど……
「せ……洗浄魔法!」
物は試しと、おっかなびっくりしながらも洗浄魔法を使ってみると、まずは玄関がきれいになった。
ゴミだかガラクタだか、なんだかよくわからないようなものも、不思議な光が消してくれたようだ。
「お、おう……」
洗浄魔法では、悪臭と埃くらいしか消せないかと思っていたけれど、ゴミやガラクタまで片付けることができるのは嬉しい誤算だ。
とりあえず……これは、洗浄魔法があればなんとかなりそうかな……?
気を取り直して、俺は魔法を使いながら、家の奥へと進んでいった。
俺にあてがわれたのは、4LD相当の二階建て、庭付きの一軒家だった。
最低限の家具と調度品はすでに揃っている。
しかも、洗浄魔法のおかげで、それらは全て新品のようにきれいだ。
食料品などを商店街まで買いに行ってみたら、街の人達はとても親切だった。
しかも、お城の人が俺にくれたお金は十分だったらしく、当面の生活には困りそうもない。
これならなんとか暮らしていけそうだ。
しかし、貰ったお金は使っていけばそのうちなくなってしまう。
だから、手持ちのお金が尽きる前に、どうにかして稼ぐ手段を考えなくてはならないのだけど……
洗浄魔法はお城の人達には不評だったようだが、俺はすっかり気に入っていた。
いいじゃん、洗浄魔法!
めっちゃ便利じゃん、洗浄魔法!!
「洗濯しかできないだなんて、馬鹿にするんじゃねーぞ!!」
俺は、これからの人生、洗浄魔法と生きていくんだ……!!
そう意気込んだ俺は、クリーニング屋みたいなことを始めることにした。
裏庭に、適当な箱を置いて、お客さんに洗濯したいものを入れてもらう。
代金をもらったら、俺が洗浄魔法をかけて、仕上がった衣類を渡す。
いや、これだとクリーニング屋じゃなくて、コインランドリーかな?
最初の頃は、革だのウールだのといった素材を傷めてしまったり、汚れだと思っていたものが実は装飾で凝った柄のドレスをうっかり無地にしてしまったりといった失敗を繰り返したりもしたけれど……
三カ月も経つ頃には、俺の洗浄魔法も上達し、洗濯に失敗することはなくなった。
その頃には、クリーニング屋もといコインランドリー屋も口コミで評判が広まり、そこそこ軌道に乗ってきていた。
というのに……
ある日突然、城から使者がやって来たのだ。
「王様がお呼びです」
正直「今更、何?」と思わなくもなかった。
俺を歓迎する宴とやらには、たしか王様は来ていなかったはずだ。
いきなり召喚しておきながら、勝手に追い出し、また呼び出すとかいったいどーゆーこと!?
と、文句の一つでも言ってやりたいところだったけれど、いかつい兵士……いや、以前、俺を城から追い出した兵士が着ていたのよりは高そうな身なりをしているから、騎士なのかな? ……まあ、そういった感じの人達がゾロゾロとやってきて、仰々しい様子で「ついてくるように」なんて言うので、小市民でしかない俺は、ほいほいと彼らの後について王城へと向かうしかなかった。
俺は少しばかりのお金をもらって、城から追い出されてしまった。
あれ? もしかして、俺ってもうお役御免だったりする!?
なにか用事があるから、わざわざ異世界に召喚されたんだと思っていた。
しかし、別れというものはあっけないものだった。
昨日俺に群がるように話しかけてきた僧侶たちはもはや誰一人としておらず、見るからに下っ端の兵士のような恰好をした若者が、城門の前で「このお金であとは好きにしてください、とのことです」と小さな革袋を渡してきただけだった。
え? みんなが俺のことを「賢者様」って呼ぶから、与えられた特別な能力を使って、俺にしかできない何か偉業を達成しろ、みたいなことを言われるんじゃないかなって、ワクワク……いや、身構えていたんだけど。
そんなこと、もしかして、俺には求められていなかったりする?
マジで? 本当に??
じゃあ、なんで俺はこの世界に召喚されたの?
首を傾げても、その問いに答えてくれる者はいない。
仕方ないので、昨日と今日の待遇の差について、原因を自分で考えてみる。
えーっと……もしかして、あれか!?
昨日の歓迎会とやらで、洗浄魔法について色々聞かれたときに、流石に『一人エッチの後、風呂キャンしたくてこれを選びました』なんてことは言うに言えず、『洗浄魔法とは、洗濯ができる程度の魔法です』と説明したのがまずかったのか?
それで、俺は無能扱いされて、王城から追い出された……なんて。まさか、な。
はは、ははは……
しかし、その予想を否定する要素は何もない。
いやいやいやいや。
呼び出された後、無責任に放り出されるのは困ります!!
とりあえず、まずは住むところが欲しいです!
って城門の前でゴネまくっていたら、俺の対応をしていた兵士の上司みたいな人がやってきて、使っていい家を案内してくれると言ってくれた。
それで、その人に連れられて、俺は新居に向かったわけなんだけど……
王城から三十分ほど歩いたところにある小洒落た一軒家はとても住み心地がよさそうに見えた。
近くには商店街もあるらしく、便利そうでもある。
治安もいい場所だと聞いて、俺はすっかり安心したのだが……
鍵を受け取った俺は、早速、玄関のドアを開けて驚いた。
「え、汚っ!!」
外観に全く違和感はなかったけれど、中は荒れに荒れまくった、とんでもない汚さの家だった。
ガラクタなのかゴミなのかわからない代物が、床から天井までびっしりと詰まっている。
以前の住人はいったいどうやって暮らしていたのだろうか。
というか、これは……
もしかして、ゴミ屋敷っていうやつでは……?
……異世界にもゴミ屋敷ってあるんだな……
妙なことで感心してしまったけれど、とてもじゃないが、こんなところには住めそうにない。
「チェンジで!」
鼻を突く悪臭に顔を顰めながら叫んだけれど、案内してくれた人は、俺に鍵を渡すとすぐに帰ってしまったようだ。
マジかよ……
通りで、すんなりと住むところを融通してもらえたわけだ。
扱いに困ったこのゴミ屋敷を、どうしても誰かに押し付けたかったのだろう。
できれば、もうちょっと別のところに住みたいけれど……
「せ……洗浄魔法!」
物は試しと、おっかなびっくりしながらも洗浄魔法を使ってみると、まずは玄関がきれいになった。
ゴミだかガラクタだか、なんだかよくわからないようなものも、不思議な光が消してくれたようだ。
「お、おう……」
洗浄魔法では、悪臭と埃くらいしか消せないかと思っていたけれど、ゴミやガラクタまで片付けることができるのは嬉しい誤算だ。
とりあえず……これは、洗浄魔法があればなんとかなりそうかな……?
気を取り直して、俺は魔法を使いながら、家の奥へと進んでいった。
俺にあてがわれたのは、4LD相当の二階建て、庭付きの一軒家だった。
最低限の家具と調度品はすでに揃っている。
しかも、洗浄魔法のおかげで、それらは全て新品のようにきれいだ。
食料品などを商店街まで買いに行ってみたら、街の人達はとても親切だった。
しかも、お城の人が俺にくれたお金は十分だったらしく、当面の生活には困りそうもない。
これならなんとか暮らしていけそうだ。
しかし、貰ったお金は使っていけばそのうちなくなってしまう。
だから、手持ちのお金が尽きる前に、どうにかして稼ぐ手段を考えなくてはならないのだけど……
洗浄魔法はお城の人達には不評だったようだが、俺はすっかり気に入っていた。
いいじゃん、洗浄魔法!
めっちゃ便利じゃん、洗浄魔法!!
「洗濯しかできないだなんて、馬鹿にするんじゃねーぞ!!」
俺は、これからの人生、洗浄魔法と生きていくんだ……!!
そう意気込んだ俺は、クリーニング屋みたいなことを始めることにした。
裏庭に、適当な箱を置いて、お客さんに洗濯したいものを入れてもらう。
代金をもらったら、俺が洗浄魔法をかけて、仕上がった衣類を渡す。
いや、これだとクリーニング屋じゃなくて、コインランドリーかな?
最初の頃は、革だのウールだのといった素材を傷めてしまったり、汚れだと思っていたものが実は装飾で凝った柄のドレスをうっかり無地にしてしまったりといった失敗を繰り返したりもしたけれど……
三カ月も経つ頃には、俺の洗浄魔法も上達し、洗濯に失敗することはなくなった。
その頃には、クリーニング屋もといコインランドリー屋も口コミで評判が広まり、そこそこ軌道に乗ってきていた。
というのに……
ある日突然、城から使者がやって来たのだ。
「王様がお呼びです」
正直「今更、何?」と思わなくもなかった。
俺を歓迎する宴とやらには、たしか王様は来ていなかったはずだ。
いきなり召喚しておきながら、勝手に追い出し、また呼び出すとかいったいどーゆーこと!?
と、文句の一つでも言ってやりたいところだったけれど、いかつい兵士……いや、以前、俺を城から追い出した兵士が着ていたのよりは高そうな身なりをしているから、騎士なのかな? ……まあ、そういった感じの人達がゾロゾロとやってきて、仰々しい様子で「ついてくるように」なんて言うので、小市民でしかない俺は、ほいほいと彼らの後について王城へと向かうしかなかった。
22
あなたにおすすめの小説
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
執着騎士団長と、筋肉中毒の治癒師
マンスーン
BL
現代日本から異世界へ転生した治癒師のレオには、誰にも言えない秘密がある。
それは「定期的に極上の筋肉に触れて生命力を摂取しないと、魔力欠乏で死んでしまう」という特異体質であること!
命をつなぐため、そして何より己のフェティシズムを満たすため、レオがターゲットに選んだのは「氷の騎士団長」と恐れられる英雄ガドリエル。
「あぁっ、すごい……硬いですガドリエル様ッ!(大胸筋が)」
「……っ、治療中にそんな熱っぽい声を出すなッ」
生きるために必死で揉みしだくレオを、ガドリエルは「これほど俺の身を案じてくれるとは」と都合よく勘違い
触られたいムッツリ攻め×触りたい変態受け
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる