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5話 そんなの聞いてないよ!
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ここ数年、王城内部がおかしなことになっている。
先代の王が病に倒れた後、健康だったはずの王子たちも次々と病気になり、王妃や側室たちも病気がちになってしまった。
実家に帰った妃はその後すぐに良くなったそうだが、王城に戻ってくると体調を崩す。
有効な手立てを見つけられないまま時が過ぎ、ついに、実家に帰らずに王城に残った妃たちと、五人いた王子たちは全員亡くなってしまった。
そこで、唯一生き残っていた先代の王の妾の子であった今の王様が即位することになった。
幼少期を城下町で過ごし、今まで風邪一つひいたことのない健康優良児だったことが高く評価されたらしい。
俺がこの世界に呼ばれた頃は、五番目の王子が国政を取り仕切っていたらしい。そして、神殿に昔の文献を調べさせ、異世界から賢者を召喚するようにと命じたらしいのだが……その後急激に体調が悪化し、俺の歓迎会をしている間に息を引き取ってしまったそうだ。
え。あの日、実は俺ってそんな渦中にいたの!?
しかし、今の王様も王城で暮らすようになってから、体調を崩すようになった。
今まで病気らしい病気なんてしたことがないのに、どれだけ寝ても微熱が続き、身体の重だるさが取れない。
しかも、毎日寝つきが悪く、食べるものにも違和感が出てきた。
もしかしたら、王城の空気が合わないのかもしれないと考えていた王様は、クリーニング屋の話を偶然耳にした。
その者なら城内の掃除を上手くしてくれるのではないだろうか……
というのも、その者に関しては、ちょっとした噂があったからだ。
彼には『呪いを浄化する力』があるらしい。と。
というのも、そのクリーニングやは、貴族の侍女が持ち込んだ呪われたドレスを一瞬で浄化してしまったことがあるそうだ。
それ以降、貴族たちは俺のところに持ち込む洗濯物の中に、呪われたアイテムをこっそりと忍ばせるようになった。
そして、そのどれもが、浄化されて貴族たちの手元に返ってきたそうだ。
「って、ええええ……!?」
王様の話を聞いて、あの日のことを思い出した。
呪われたドレスというのは、俺が最初に洗濯に失敗したと思った、あのドレスのことじゃないだろうか。
あり得ない大失敗に、俺は洗濯物を持ってきた人に代金を返そうとした。
しかし、押し問答していると、彼女の主だという品のいい女性がやってきた。そして、模様が消えてしまった話を聞くと、洗濯代金の何倍ものお金を支払ってくれたのだ。
そのお金で、新しいドレスを買ったほうがいいと俺が何度言っても、「このドレスがまた着れるようになって嬉しい」とお金を渡されてしまって、首を傾げていたのだけど……
この国では、誰かを呪うときは、呪いの模様が組み込まれた服飾品や装飾品を使うのだと、王様が教えてくれた。
しかも一度こびりついた呪いを消すことは、なかなか難しい。
だけどそのクリーニング屋では、瞬く間に呪いの効果を消してしまうらしい。
それで噂を知った貴族たちが、こっそり俺のところに呪いのアイテムを持ち込んでいたようだ。
そんなの聞いてないよ!!
ドレスの一件以降、注意深く洗濯をしていたつもりだけど、正直、箱の中に入れられたもの全てを細かくチェックしていたわけではない。
だから、ポケットの中に何か入っていても、そのまま洗濯しちゃってたんだよなぁ……
それに関して、今までクレームもなかったし……
その噂を聞いた王様も、こっそりと呪いのアイテムを俺のところに持ち込もうとしたらしい。
だけど、しかし、王城には凝った装飾品が沢山ある。
そのうちのどれに呪いが組み込まれているのか見分けることが困難だったため、俺を王城に呼び寄せることにしたそうだ。
最初は、寝室内に隠された呪いのアイテムを見つけることができれば良いと思っていたようなのだけど、俺が洗浄魔法を使ったところ、部屋中の装飾が消えてしまった。
つまり、部屋全体に施されていた装飾全てが、王家を呪うアイテムだったというわけだ。
王様に大賢者として正式に任命を受けた俺は、その後、城内の様々な場所を洗浄魔法で清掃……いや、洗浄して回った。
その時に、不自然に塗りつぶされた怪しい書類を見つけたので、ふと思い立って洗浄魔法をかけてみたところ、なんとそれは大臣たちの不正書類であることがわかった。
大臣たちの不正というのは、予算の使い込みであったり、脱税であったりと、王城のいたるところに呪詛が仕込まれていたこととは全くの無関係だったのだけど、それをきっかけに俺たちは城内にある様々な書類を調べつくし、ついに黒幕が先々代の王弟とその孫であることを突き止めた。
どうやら先々代の王弟は、優秀であるはずの自分が王位を継げなかったことを深く根に持っていたらしい。そして、王家を恨み続けたまま、呪いがかかった調度品を多数残してこの世を去った。それらを王城に持ち込んだのが、彼の孫だったというわけだ。
先々代の王弟の孫は野心家で、今の王家の者が全員この世を去れば、自分が王位に就けるに違いないと考えていたそうだ。
実際のところは、彼は王位からはあまりにも遠い存在すぎて、疑われすらもしていなかったようだけど……
現在、彼は捕らえられ、地下牢に入れられている。
今後なんらかの裁きが下されることになるらしいけれど、俺にはそのあたりのことはよくわからない。
かくして、王城での騒動は一件落着となった。
といっても、まだ先々代の王弟やその孫の支援者の追及をしていたり、ついでに見つけてしまった大臣たちの不正についての審議が行われている真っ最中だったりするのだが。
だけど黒幕も捕まったことだし、俺もそろそろお役御免だろうと思ったら、なんだかお尻がウズウズしてきた。
それで、ここしばらく自分がお尻を弄っていないことに気付いた。
これは由々しき事態だ。
先代の王が病に倒れた後、健康だったはずの王子たちも次々と病気になり、王妃や側室たちも病気がちになってしまった。
実家に帰った妃はその後すぐに良くなったそうだが、王城に戻ってくると体調を崩す。
有効な手立てを見つけられないまま時が過ぎ、ついに、実家に帰らずに王城に残った妃たちと、五人いた王子たちは全員亡くなってしまった。
そこで、唯一生き残っていた先代の王の妾の子であった今の王様が即位することになった。
幼少期を城下町で過ごし、今まで風邪一つひいたことのない健康優良児だったことが高く評価されたらしい。
俺がこの世界に呼ばれた頃は、五番目の王子が国政を取り仕切っていたらしい。そして、神殿に昔の文献を調べさせ、異世界から賢者を召喚するようにと命じたらしいのだが……その後急激に体調が悪化し、俺の歓迎会をしている間に息を引き取ってしまったそうだ。
え。あの日、実は俺ってそんな渦中にいたの!?
しかし、今の王様も王城で暮らすようになってから、体調を崩すようになった。
今まで病気らしい病気なんてしたことがないのに、どれだけ寝ても微熱が続き、身体の重だるさが取れない。
しかも、毎日寝つきが悪く、食べるものにも違和感が出てきた。
もしかしたら、王城の空気が合わないのかもしれないと考えていた王様は、クリーニング屋の話を偶然耳にした。
その者なら城内の掃除を上手くしてくれるのではないだろうか……
というのも、その者に関しては、ちょっとした噂があったからだ。
彼には『呪いを浄化する力』があるらしい。と。
というのも、そのクリーニングやは、貴族の侍女が持ち込んだ呪われたドレスを一瞬で浄化してしまったことがあるそうだ。
それ以降、貴族たちは俺のところに持ち込む洗濯物の中に、呪われたアイテムをこっそりと忍ばせるようになった。
そして、そのどれもが、浄化されて貴族たちの手元に返ってきたそうだ。
「って、ええええ……!?」
王様の話を聞いて、あの日のことを思い出した。
呪われたドレスというのは、俺が最初に洗濯に失敗したと思った、あのドレスのことじゃないだろうか。
あり得ない大失敗に、俺は洗濯物を持ってきた人に代金を返そうとした。
しかし、押し問答していると、彼女の主だという品のいい女性がやってきた。そして、模様が消えてしまった話を聞くと、洗濯代金の何倍ものお金を支払ってくれたのだ。
そのお金で、新しいドレスを買ったほうがいいと俺が何度言っても、「このドレスがまた着れるようになって嬉しい」とお金を渡されてしまって、首を傾げていたのだけど……
この国では、誰かを呪うときは、呪いの模様が組み込まれた服飾品や装飾品を使うのだと、王様が教えてくれた。
しかも一度こびりついた呪いを消すことは、なかなか難しい。
だけどそのクリーニング屋では、瞬く間に呪いの効果を消してしまうらしい。
それで噂を知った貴族たちが、こっそり俺のところに呪いのアイテムを持ち込んでいたようだ。
そんなの聞いてないよ!!
ドレスの一件以降、注意深く洗濯をしていたつもりだけど、正直、箱の中に入れられたもの全てを細かくチェックしていたわけではない。
だから、ポケットの中に何か入っていても、そのまま洗濯しちゃってたんだよなぁ……
それに関して、今までクレームもなかったし……
その噂を聞いた王様も、こっそりと呪いのアイテムを俺のところに持ち込もうとしたらしい。
だけど、しかし、王城には凝った装飾品が沢山ある。
そのうちのどれに呪いが組み込まれているのか見分けることが困難だったため、俺を王城に呼び寄せることにしたそうだ。
最初は、寝室内に隠された呪いのアイテムを見つけることができれば良いと思っていたようなのだけど、俺が洗浄魔法を使ったところ、部屋中の装飾が消えてしまった。
つまり、部屋全体に施されていた装飾全てが、王家を呪うアイテムだったというわけだ。
王様に大賢者として正式に任命を受けた俺は、その後、城内の様々な場所を洗浄魔法で清掃……いや、洗浄して回った。
その時に、不自然に塗りつぶされた怪しい書類を見つけたので、ふと思い立って洗浄魔法をかけてみたところ、なんとそれは大臣たちの不正書類であることがわかった。
大臣たちの不正というのは、予算の使い込みであったり、脱税であったりと、王城のいたるところに呪詛が仕込まれていたこととは全くの無関係だったのだけど、それをきっかけに俺たちは城内にある様々な書類を調べつくし、ついに黒幕が先々代の王弟とその孫であることを突き止めた。
どうやら先々代の王弟は、優秀であるはずの自分が王位を継げなかったことを深く根に持っていたらしい。そして、王家を恨み続けたまま、呪いがかかった調度品を多数残してこの世を去った。それらを王城に持ち込んだのが、彼の孫だったというわけだ。
先々代の王弟の孫は野心家で、今の王家の者が全員この世を去れば、自分が王位に就けるに違いないと考えていたそうだ。
実際のところは、彼は王位からはあまりにも遠い存在すぎて、疑われすらもしていなかったようだけど……
現在、彼は捕らえられ、地下牢に入れられている。
今後なんらかの裁きが下されることになるらしいけれど、俺にはそのあたりのことはよくわからない。
かくして、王城での騒動は一件落着となった。
といっても、まだ先々代の王弟やその孫の支援者の追及をしていたり、ついでに見つけてしまった大臣たちの不正についての審議が行われている真っ最中だったりするのだが。
だけど黒幕も捕まったことだし、俺もそろそろお役御免だろうと思ったら、なんだかお尻がウズウズしてきた。
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