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第十九部「夜叉の囁き」第2話
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毘沙門天神社。
現代のこの国でその存在を知っているのは清国会に関係する人間だけ。
代々受け継がれてきた〝夜叉〟────〝鬼神〟を受け継いできた。
ここには、厳格なしきたりが存在する。
総ては、〝鬼〟を育てる為。
神社を護ってきた鬼郷家では、必ず一男一女。
歳の差は必ず五才。
一五才で成人とみなされた。同時に幼名から新しい名前へ。
長男の名を決め、五年後に長女の名。
その名前を決めるのが、当主の最後の仕事。
長男が二〇才、長女が一五才。
同時にそれは、二人の子供が────両親を殺める時。
佐平治と結妃の両親、利平治と禹妃も、仕来たりに従うことに疑問は持たなかった。
二人も、神社を引き継ぐと同時に自らの両親を殺めた。
そして今は、自分たちが子供たちに殺される時。
世代が変わる。
そして、新しい〝鬼〟が生まれる。
夜。
祭壇に向かい、利平治と禹妃が並んで座る。
利平治の後ろには佐平治。
禹妃の後ろには結妃。
二人はそれぞれ、鬼郷家に古くから伝わる日本刀を手にしていた。
深夜はすでに過ぎていた。
静かな夜。
風も無い。
その中で、不自然なほどに祭壇前の松明が火の粉を巻き上げる。
天井までも明るく照らされた。
板戸を開け放たれた本殿には、虫の音すら入らない。
佐平治が振り上げた日本刀が、空気を揺らす。
そんな音すら大きく聞こえた。
死装束姿の利平治の肩に、佐平治が逆手に持った剣先が触れる。
そして、佐平治は、首筋の骨の間を探した。
隣で結妃が刀を振り上げる音が聞こえ、佐平治は両手に力を込める。
朝までに、裏山の先祖代々の墓に両親を埋めた。
そして、朝日が本殿に差し込む中、大量の血を吸った祭壇前の板間を綺麗に拭き上げる。
そのまま、佐平治と結妃は夫婦となった。
☆
静かな日だった。
風もない。
カーナビも使えないままに四人はその神社に辿り着いた。
地図にも存在しない場所。
まだ昼時を過ぎたばかり。
幹線道路からの入り口はすぐに見付かった。しかしそれは能力者でなければ見付けることは難しかっただろう。決して物理的な何かで隠されているわけではない。しかしそこには分かりやすいほどの〝結界〟が存在していた。
しかし運転席の杏奈にその結界は見えない。
助手席の西沙の指示で森に向けてアクセルを踏んだ。
大きな二本の木の間。
「普通の人がここを通っても森が続くだけ」
西沙がそう言った時、目の前に道が現れる。
車一台が通れる幅の砂利道。
左右は深い森のまま。
唖然とする杏奈の横で、西沙が再び口を開く。
「入ったね」
距離的にはそれほどではなかった。
急に開けた空間に出たかと思うと、目の前には大きな鳥居。そこからまっすぐ続く階段が見えた。
杏奈が車を停めると、すぐに全員が降りる。
「どこまでが見せられてる部分だと思う?」
最初にそう口を開いたのは咲恵だった。
反射的に萌江が返す。
「綺麗過ぎるね…………〝幻〟の作り方としては完璧だ…………」
西沙もそれは感じていた。
人の訪れることのない森の中の神社。綺麗な石の鳥居。綺麗な石の階段。それは不自然な均整に見えた。ここまで管理するとなれば、相当の人手と手間が掛かるだろう。
鳥の鳴き声さえも聞こえない静寂。
木々の葉が僅かに揺れるだけ。
そして緩やかな風を感じ始めた。
山の中の風にしては、ぬるい。
「私たちに反応してるのかな? 風が出てきた────行くよ」
そう言った萌江が先頭になって階段を登り始めた。咲恵、西沙、杏奈の順に続く。
かなりの段数があった。真っ直ぐな階段。辛うじて一番上の鳥居が見えるが、そこはかなり上。
空気の動きを感じない。
それでも周囲には、木々の葉が擦れる僅かな音。
普通の空間ではなかった。
急な階段。
しだいに足から全身に疲労が伝わる。
やがて、半分も登った頃だろうか。
空気が緩やかに動き始めた。
萌江は無意識に見ていた足元から顔を上げる。
〝力〟を感じた。
横からの風が、萌江の顔を掠る。
上の鳥居。
そこにある人影に、萌江は足を止めた。
咲恵と西沙も何かを感じていたのか、同時に足を止める。
一瞬だけ遅れて最後尾の杏奈が止まった。
人影の長いストレートの髪が、ゆっくりと風に靡く。
僅かな逆光に、その女性の緩いシルエットが浮かんでいた。
ショート丈の黒いジャケットにスリムなパンツ。何かを隠すような細い眼鏡が両眼を影で覆う。
その姿がゆっくりと階段を降りてくる。
萌江は〝艶〟のようなものを感じていた。乾いた空気の中で、まるでそこだけに霧がかかっているかのようだった。
──…………もう一人、いる……………………
しだいに近付くその人影に、西沙が動いた。素早く萌江の前へ。
その西沙も何かを感じていた。それが何かは分からなくとも、初めての感覚であることは直感で感じる。
西沙は黒いゴスロリの服を揺らしながら、萌江を守るように数段上へ。
近付き、その表情が見えてくる。
眼鏡のレンズを通した細い目が、萌江に向けられた。
そしてゆっくりと階段を降り続ける。
擦れ違いざま、萌江からはその女性が僅かに微笑んでいるように見えた。
やがてその姿が階段の下へ。
小さくなった頃、小さな咲恵の声。
「…………総合統括事務次官────大見坂雫…………」
相手を読み取るのは咲恵の能力。今更そのこと自体は誰もが驚きはしない。それでも内閣府の人間に会ったのは初めてだった。
「さすが咲恵…………」
西沙が小さく呟くと、すぐに咲恵が返す。
「……違う…………向こうから教えてきた…………」
「何よそれ…………」
反射的に西沙が呟く。
「…………能力者ね」
咲恵がそう応えた直後、すぐに西沙の目が鋭くなった。
僅かに背中を丸めて身構える。
すると、同じ何かを感じた咲恵が声を上げた。
「杏奈ちゃん────私の前に」
杏奈はすぐに咲恵の前────萌江の後ろに移動すると忙しなく首を左右に振る。
そこに萌江の声。
「なめられたもんだね」
左右の森がザワつく。
葉と葉が大きく擦れ始めた。
続く枯葉を踏みしめるような音。
無数。
それはしだいに早く、そして増えた。
空気までもが小刻みに震える。
心無しか、空からの陽の光までもが暗くなった。
森の暗さが増す。
その暗さが、少しずつ黒いモヤのようになっていった。
やがて、それは太い帯のように、輪になって四人を取り囲む。
そこに西沙の落ち着いた声。
「私だけで充分」
西沙は片膝を着くと、右の掌を石の階段に押し付けた。
途端に周囲に明るさが戻り始める。
黒いモヤが薄れていく。
そして元の空気が戻った。
「これが武闘派? 幻を見せてるだけ…………子供騙し」
西沙がそう言って立ち上がる。
杏奈の大きな溜息が聞こえ、続いたのは咲恵の声。
「…………私たちにはね」
そして、全員が顔を上げた。
一番上の鳥居に向けて階段を登り始める。
──……もう一人は……誰だ……………………
萌江はそんなことを考えていた。
雫に重なるように〝誰か〟が見えていた。
しかも、それは雫よりも、強い。
鳥居からは、空間が開ける。
真っ直ぐ続く参道は長い。その先に本殿が見えた。広い空間が開放感を感じさせるが、人気は無い。
静かだった。
聞こえるのは僅かな風に揺れる木々の葉の音だけ。その風に地面の小さな塵が転がる。
四人は石畳の参道を歩き始めた。萌江と咲恵のハイカットブーツの靴底が音を立てる。西沙のローファーと杏奈のアウトドアブーツの音は低い。
特別何かを感じるわけではない。
全員が〝武闘派〟という言葉に引っ張られていた。
広く平らな土地。
ここが山の上であることを忘れた。
しかし広い空は低い。いつの間にか厚い雲が埋め尽くしていた。
少しずつ大きくなってくる本殿は板戸が開け放たれたまま。正面だけでなく左右も大きく開けられている。
影に包まれた本殿の奥には祭壇らしき物。
そこには動かない人影が一つ、こちらを向いて立っている。
顔は影で見えない。
その人影だろうか、本殿から声が届く。
「…………お待ちしておりました…………」
女性の声。
小さな声にも関わらず、なぜかその声は外まで響いた。
そして四人は本殿の少し前で足を止める。
祭壇の前には巫女姿で立っている女性が一人と、その横で背を向けて座る人影。髪が長いが性別までは分からない。
そこに再びの女性の声。
「…………どうぞ……こちらへ…………」
女性はそう言うと、そのまま腰を降ろした。
──……なるほど……武闘派だ…………
萌江はそう思いながら本殿に上がる。全員がそれに従うが、その全員が萌江が正座をしたことに驚いた。こういう時、萌江は大概は胡座で座る。しかし今回は違った。萌江のその姿勢が結果的に全員の緊張感を高めていく。
咲恵と西沙が萌江を挟むように腰を降ろすと、杏奈は西沙の後ろへ。
すると、背中を向けていた人物が体の正面を向けた。まだ若い男性だった。
しかも、その線は細い。
こけた頬の上の細い目が萌江に向いた。
──…………嫌な目……………………
萌江がそう思った時、その目の前の小さな口が開いた。
「わざわざお越し頂けるとは…………」
意外にも、決して弱々しい声ではない。
その声が続く。
「我は毘沙門天の鬼郷佐平治。隣は妻の結妃と申します。そして、皆様のご紹介は御不要ですな…………清国会から総て伺っておりますよ」
すると、それに対して声を上げたのは咲恵だった。
「────では、我々が本日ここへ来た理由をご存知でしょうか?」
「清国会のことなれば、ここへ来ても無駄なこと…………ここは清国会すら近付けぬ場所ゆえ…………」
そう応える佐平治の口角が上がる。
それに全員が不気味さを感じていた。その中で咲恵がさらに返していく。
「それならば、こちらの清国会のお立場とは────」
「はて…………雄滝の恵麻殿にでもお聞きになられると良い…………我らの神は…………天照などではありませんからな…………」
「清国会はその〝神〟を欲しがったのでは…………?」
「無駄なこと…………我らの神は我らのもの…………誰にも操られはせぬ…………」
そう応えた佐平治の目が鋭くなった。
その目は萌江に向けられたまま。
しばらくの静寂の後、口を開いたのは萌江。
「出てきなよ」
直後、佐平治の背後が黒く蠢く。
影とも靄とも見てとれるその塊は、あっという間に高い天井から、巨大な塊となって四人を見降ろす。
それは〝威圧感〟そのもの。
強力な存在感を伴っていた。
「…………やっぱりね……」
萌江はそう呟きながらも、姿勢を崩さない。その後ろで杏奈だけが体を仰け反らせていた。
まるで〝異形の塊〟。
この世のものではない。
まるでその影に覆われるかのように、周囲までもが暗くなった。
〝 ────誰だ…………見えぬ──── 〟
低い声。
それが四人の頭の中に響く。
そして、萌江が口を開いた。
「私は…………金櫻萌江────」
続けて咲恵。
「金櫻京子────」
さらに西沙が続く。
「滝川御世────」
ゆっくりと萌江が立ち上がる。
咲恵と西沙も続き、後ろの杏奈は慌てて立ち上がった。
そして萌江の低い声。
「…………お前は…………誰だ──────」
その時、結妃が動く。
両手を胸の高さへ。
手を叩いた。
乾いた音────。
四人の目の前の光景が変わる。
それはあまりに突然だった。
いつの間にか、四人がいるのは参道の上。
正面に本殿が見えた。
胸の位置で両手を合わせたままの結妃の口元に、笑みが浮かんだ。
小さく呟く杏奈の声。
「……どうして────」
まるで魔法でも見せられたかのよう。
突然、自分たちの居場所が移動した。
「────……引くよ────」
萌江の低い声が三人の耳に届いた。
間合いを取りながら、少しずつ後ろへ。
西沙が萌江と咲恵を守るように前に出た。その西沙は鋭い目を本殿に向け続ける。
西沙の手首を萌江が握った。
反射的に西沙が口を開く。
「────いやだ……!」
が、萌江の返しもすぐ。
「…………今引かないと…………次が勝てない……………………」
その声に焦りは無い。萌江の声は落ち着いていた。
背後から咲恵の小さな声。
「杏奈ちゃん、先に行ってエンジンお願い」
続く杏奈の足音。
西沙の踏みしめる足に力が籠った。膝を僅かに落として身構える。
そして、萌江の柔らかい声。
「…………大丈夫…………見えてるよ……………………」
西沙の体の力が緩む。
少しずつ後ろに足を動かすと、途端に風が動いた。
萌江が左手を上げる。
その掌には〝火の玉〟。
佐平治と結妃の前で、三人の姿が霧の用に消えていく。
佐平治が立ち上がった。
そして呟く。
「……〝幻惑〟…………あの石はまさか……………………」
☆
毘沙門天神社には警視庁から派遣された職員が数名だけ警備に付いていた。もちろん中には入らない。周囲の森の外で隠れているだけだが、外から人が入り込んだ場合や特殊な事例があった場合には動き、その職員から報告が来ることになっていた。
とは言え、清国会や内閣府の人間以外が入ることは今まで無かった。
今回、萌江たち四人が入った報告は形だけ。事前に雫が接触していたからだ。すでに雫からの報告がある。しかし一応マニュアルに沿う形で段階が踏まれる。
総合統括事務次官の中で情報が共有されたが、今後の対策は雫に任された。そのくらいに毘沙門天神社は扱いの難しい場所だった。警備は内閣府によってされていたが、対応のほとんどは清国会の役割。むしろ清国会でなければ対応が出来なかった。
雫も数えるほどしか入ったことはない。今日行ったのもおよそ一年ぶりのこと。
その時、本殿で出迎えたのは結妃だった。
「御上のお使いの方がどのような御用件でしょう…………」
結妃には他意は無かったが、御上という言い方がいつも雫には皮肉めいて聞こえた。
──……まるで子供扱いね…………
その雫が小さく溜息を吐いて応える。
「金櫻の血筋の者たちが動いております…………こちらを調べているとのことで…………」
「……その程度のこと…………わざわざ御苦労様にございますね」
──……電話線くらい引きなさいよ…………
警備の職員に伝言を頼むわけにはいかない。警備の理由を知らないだけでなく、二ヶ月もすれば交代となる程度の警備職員。何も聞かされずに形だけ置かれている職員に過ぎない。むしろ内閣府としては知られたくなかったのだろう。そうしてでも清国会は毘沙門天神社を隠したかった。直接会いに来るしかない。
しかし、帰り際、雫は事が動き始めたことに気が付いた。
──……まさかこんなに早く来るなんて…………
能力者でもある雫の神経が、萌江たちの存在を感じていた。
もちろんそれまで会ったことはない。報告書で写真を見ていただけだ。
正直、雫の気持ちは高鳴った。
天照大神の末裔と言われる人物が何者なのかなど知らない。金櫻家への信仰など内閣府に入ってからの〝知識〟でしかない。それでも内閣府を動かしてまでの存在であることは確か。
この国を動かせるほどの人物に興味があった。
──……気付かれてる…………
雫は鳥居から階段を見下ろした。
全身に鳥肌が立つ。
──……これは…………なに……………………?
恐怖ではない。
圧力のようなものでもない。
むしろ、何の〝力〟も感じない。
しかし、階段で顔を上げる萌江の目に釘付けになった。
初めての感覚でしかない。
総てを見られているような感覚。
──…………何者…………?
雫は懸命に冷静を装った。
これから何が起こるのか、予想すら出来ない。
──……周りの使者は…………三人だけじゃない…………
雫はすぐに内閣府に帰って情報を伝える。程なく警備の職員から報告が入った。
一通り事務処理を終わらせてマンションに帰ったのは夜の八時を過ぎた頃。
「ごめんなさい楓!」
雫は玄関を開けるなり声を上げた。リビングに通じるドアのガラスからは明かりが漏れ、それがむしろ寂しさを増長させる。
ドアを開けると、ソファーから立ち上がったばかりの一〇才になる娘────楓。
「ごめん…………今日も遅くなって……」
そう言って大きく息を吐く雫に楓は笑顔で応える。
「大丈夫だよ。でもごめんなさい……お腹空いたから昨日の残り少しだけ食べちゃった」
「いいよいいよ。ごめんね────」
雫は膝を着き、無意識に楓を抱きしめていた。
「明日はお休みだから……ずっと一緒にいようね」
なぜか寂しさが雫の心を満たしていた。いつも娘に寂しい思いをさせている負い目も確かにあった。でもこの日はそれだけではない。無性に娘に会いたかった。会いたくて仕方がなかった。それだけに不安も大きいままで仕事をこなした。
楓はもっと幼い頃から賢い子だった。
急に道路に飛び出すこともない。言いつけは必ず守った。もちろん雫も理不尽な子育てをしたつもりはないが、それでも楓はしっかりとした娘だった。ある意味、実年齢にそぐわない大人びたところが多い。
その楓が優しい言葉を雫に返した。
「うん……お母さんはいつも大変なお仕事してるから、明日はゆっくり休もうね」
雫はその声で涙が出そうになる自分に驚く。
──…………私…………怖かったのかな………………
気持ちが張り詰めていたのだろう。
毘沙門天神社で初めて四人に会った。初めての感覚を味わった。
──……怖かったのかもしれない…………
──…………なんて存在なの……………………
「よし。夕ご飯作るね」
雫は気持ちを切り替えるように、立ち上がってキッチンに向かった。
──……大丈夫…………私には楓がいる……………………
「うん。簡単でいいからね」
楓はそう言いながらソファーに戻り、テレビに顔を戻す。
「すぐ作るからね」
雫も少し気持ちが楽になったのか、急に空腹を感じ始めた。
そして雫はいつも水道の蛇口横に置いてあるヘアゴムを手に取って長い髪を後ろでまとめる。
冷蔵庫の材料を眺めながらメニューを考えていると、再び楓の声がする。
「……中にいると見えないこともあるよね…………」
──………………?
「外から見てみて」
「え? どうしたの?」
「……お母さんが信じてるのは、だれ?」
楓のその言葉に雫が顔を向けると、楓も顔を向ける。
娘の純粋なその目に、雫は釘付けになった。
「かなざくらの古屋敷」
~ 第十九部「夜叉の囁き」第3話へつづく ~
現代のこの国でその存在を知っているのは清国会に関係する人間だけ。
代々受け継がれてきた〝夜叉〟────〝鬼神〟を受け継いできた。
ここには、厳格なしきたりが存在する。
総ては、〝鬼〟を育てる為。
神社を護ってきた鬼郷家では、必ず一男一女。
歳の差は必ず五才。
一五才で成人とみなされた。同時に幼名から新しい名前へ。
長男の名を決め、五年後に長女の名。
その名前を決めるのが、当主の最後の仕事。
長男が二〇才、長女が一五才。
同時にそれは、二人の子供が────両親を殺める時。
佐平治と結妃の両親、利平治と禹妃も、仕来たりに従うことに疑問は持たなかった。
二人も、神社を引き継ぐと同時に自らの両親を殺めた。
そして今は、自分たちが子供たちに殺される時。
世代が変わる。
そして、新しい〝鬼〟が生まれる。
夜。
祭壇に向かい、利平治と禹妃が並んで座る。
利平治の後ろには佐平治。
禹妃の後ろには結妃。
二人はそれぞれ、鬼郷家に古くから伝わる日本刀を手にしていた。
深夜はすでに過ぎていた。
静かな夜。
風も無い。
その中で、不自然なほどに祭壇前の松明が火の粉を巻き上げる。
天井までも明るく照らされた。
板戸を開け放たれた本殿には、虫の音すら入らない。
佐平治が振り上げた日本刀が、空気を揺らす。
そんな音すら大きく聞こえた。
死装束姿の利平治の肩に、佐平治が逆手に持った剣先が触れる。
そして、佐平治は、首筋の骨の間を探した。
隣で結妃が刀を振り上げる音が聞こえ、佐平治は両手に力を込める。
朝までに、裏山の先祖代々の墓に両親を埋めた。
そして、朝日が本殿に差し込む中、大量の血を吸った祭壇前の板間を綺麗に拭き上げる。
そのまま、佐平治と結妃は夫婦となった。
☆
静かな日だった。
風もない。
カーナビも使えないままに四人はその神社に辿り着いた。
地図にも存在しない場所。
まだ昼時を過ぎたばかり。
幹線道路からの入り口はすぐに見付かった。しかしそれは能力者でなければ見付けることは難しかっただろう。決して物理的な何かで隠されているわけではない。しかしそこには分かりやすいほどの〝結界〟が存在していた。
しかし運転席の杏奈にその結界は見えない。
助手席の西沙の指示で森に向けてアクセルを踏んだ。
大きな二本の木の間。
「普通の人がここを通っても森が続くだけ」
西沙がそう言った時、目の前に道が現れる。
車一台が通れる幅の砂利道。
左右は深い森のまま。
唖然とする杏奈の横で、西沙が再び口を開く。
「入ったね」
距離的にはそれほどではなかった。
急に開けた空間に出たかと思うと、目の前には大きな鳥居。そこからまっすぐ続く階段が見えた。
杏奈が車を停めると、すぐに全員が降りる。
「どこまでが見せられてる部分だと思う?」
最初にそう口を開いたのは咲恵だった。
反射的に萌江が返す。
「綺麗過ぎるね…………〝幻〟の作り方としては完璧だ…………」
西沙もそれは感じていた。
人の訪れることのない森の中の神社。綺麗な石の鳥居。綺麗な石の階段。それは不自然な均整に見えた。ここまで管理するとなれば、相当の人手と手間が掛かるだろう。
鳥の鳴き声さえも聞こえない静寂。
木々の葉が僅かに揺れるだけ。
そして緩やかな風を感じ始めた。
山の中の風にしては、ぬるい。
「私たちに反応してるのかな? 風が出てきた────行くよ」
そう言った萌江が先頭になって階段を登り始めた。咲恵、西沙、杏奈の順に続く。
かなりの段数があった。真っ直ぐな階段。辛うじて一番上の鳥居が見えるが、そこはかなり上。
空気の動きを感じない。
それでも周囲には、木々の葉が擦れる僅かな音。
普通の空間ではなかった。
急な階段。
しだいに足から全身に疲労が伝わる。
やがて、半分も登った頃だろうか。
空気が緩やかに動き始めた。
萌江は無意識に見ていた足元から顔を上げる。
〝力〟を感じた。
横からの風が、萌江の顔を掠る。
上の鳥居。
そこにある人影に、萌江は足を止めた。
咲恵と西沙も何かを感じていたのか、同時に足を止める。
一瞬だけ遅れて最後尾の杏奈が止まった。
人影の長いストレートの髪が、ゆっくりと風に靡く。
僅かな逆光に、その女性の緩いシルエットが浮かんでいた。
ショート丈の黒いジャケットにスリムなパンツ。何かを隠すような細い眼鏡が両眼を影で覆う。
その姿がゆっくりと階段を降りてくる。
萌江は〝艶〟のようなものを感じていた。乾いた空気の中で、まるでそこだけに霧がかかっているかのようだった。
──…………もう一人、いる……………………
しだいに近付くその人影に、西沙が動いた。素早く萌江の前へ。
その西沙も何かを感じていた。それが何かは分からなくとも、初めての感覚であることは直感で感じる。
西沙は黒いゴスロリの服を揺らしながら、萌江を守るように数段上へ。
近付き、その表情が見えてくる。
眼鏡のレンズを通した細い目が、萌江に向けられた。
そしてゆっくりと階段を降り続ける。
擦れ違いざま、萌江からはその女性が僅かに微笑んでいるように見えた。
やがてその姿が階段の下へ。
小さくなった頃、小さな咲恵の声。
「…………総合統括事務次官────大見坂雫…………」
相手を読み取るのは咲恵の能力。今更そのこと自体は誰もが驚きはしない。それでも内閣府の人間に会ったのは初めてだった。
「さすが咲恵…………」
西沙が小さく呟くと、すぐに咲恵が返す。
「……違う…………向こうから教えてきた…………」
「何よそれ…………」
反射的に西沙が呟く。
「…………能力者ね」
咲恵がそう応えた直後、すぐに西沙の目が鋭くなった。
僅かに背中を丸めて身構える。
すると、同じ何かを感じた咲恵が声を上げた。
「杏奈ちゃん────私の前に」
杏奈はすぐに咲恵の前────萌江の後ろに移動すると忙しなく首を左右に振る。
そこに萌江の声。
「なめられたもんだね」
左右の森がザワつく。
葉と葉が大きく擦れ始めた。
続く枯葉を踏みしめるような音。
無数。
それはしだいに早く、そして増えた。
空気までもが小刻みに震える。
心無しか、空からの陽の光までもが暗くなった。
森の暗さが増す。
その暗さが、少しずつ黒いモヤのようになっていった。
やがて、それは太い帯のように、輪になって四人を取り囲む。
そこに西沙の落ち着いた声。
「私だけで充分」
西沙は片膝を着くと、右の掌を石の階段に押し付けた。
途端に周囲に明るさが戻り始める。
黒いモヤが薄れていく。
そして元の空気が戻った。
「これが武闘派? 幻を見せてるだけ…………子供騙し」
西沙がそう言って立ち上がる。
杏奈の大きな溜息が聞こえ、続いたのは咲恵の声。
「…………私たちにはね」
そして、全員が顔を上げた。
一番上の鳥居に向けて階段を登り始める。
──……もう一人は……誰だ……………………
萌江はそんなことを考えていた。
雫に重なるように〝誰か〟が見えていた。
しかも、それは雫よりも、強い。
鳥居からは、空間が開ける。
真っ直ぐ続く参道は長い。その先に本殿が見えた。広い空間が開放感を感じさせるが、人気は無い。
静かだった。
聞こえるのは僅かな風に揺れる木々の葉の音だけ。その風に地面の小さな塵が転がる。
四人は石畳の参道を歩き始めた。萌江と咲恵のハイカットブーツの靴底が音を立てる。西沙のローファーと杏奈のアウトドアブーツの音は低い。
特別何かを感じるわけではない。
全員が〝武闘派〟という言葉に引っ張られていた。
広く平らな土地。
ここが山の上であることを忘れた。
しかし広い空は低い。いつの間にか厚い雲が埋め尽くしていた。
少しずつ大きくなってくる本殿は板戸が開け放たれたまま。正面だけでなく左右も大きく開けられている。
影に包まれた本殿の奥には祭壇らしき物。
そこには動かない人影が一つ、こちらを向いて立っている。
顔は影で見えない。
その人影だろうか、本殿から声が届く。
「…………お待ちしておりました…………」
女性の声。
小さな声にも関わらず、なぜかその声は外まで響いた。
そして四人は本殿の少し前で足を止める。
祭壇の前には巫女姿で立っている女性が一人と、その横で背を向けて座る人影。髪が長いが性別までは分からない。
そこに再びの女性の声。
「…………どうぞ……こちらへ…………」
女性はそう言うと、そのまま腰を降ろした。
──……なるほど……武闘派だ…………
萌江はそう思いながら本殿に上がる。全員がそれに従うが、その全員が萌江が正座をしたことに驚いた。こういう時、萌江は大概は胡座で座る。しかし今回は違った。萌江のその姿勢が結果的に全員の緊張感を高めていく。
咲恵と西沙が萌江を挟むように腰を降ろすと、杏奈は西沙の後ろへ。
すると、背中を向けていた人物が体の正面を向けた。まだ若い男性だった。
しかも、その線は細い。
こけた頬の上の細い目が萌江に向いた。
──…………嫌な目……………………
萌江がそう思った時、その目の前の小さな口が開いた。
「わざわざお越し頂けるとは…………」
意外にも、決して弱々しい声ではない。
その声が続く。
「我は毘沙門天の鬼郷佐平治。隣は妻の結妃と申します。そして、皆様のご紹介は御不要ですな…………清国会から総て伺っておりますよ」
すると、それに対して声を上げたのは咲恵だった。
「────では、我々が本日ここへ来た理由をご存知でしょうか?」
「清国会のことなれば、ここへ来ても無駄なこと…………ここは清国会すら近付けぬ場所ゆえ…………」
そう応える佐平治の口角が上がる。
それに全員が不気味さを感じていた。その中で咲恵がさらに返していく。
「それならば、こちらの清国会のお立場とは────」
「はて…………雄滝の恵麻殿にでもお聞きになられると良い…………我らの神は…………天照などではありませんからな…………」
「清国会はその〝神〟を欲しがったのでは…………?」
「無駄なこと…………我らの神は我らのもの…………誰にも操られはせぬ…………」
そう応えた佐平治の目が鋭くなった。
その目は萌江に向けられたまま。
しばらくの静寂の後、口を開いたのは萌江。
「出てきなよ」
直後、佐平治の背後が黒く蠢く。
影とも靄とも見てとれるその塊は、あっという間に高い天井から、巨大な塊となって四人を見降ろす。
それは〝威圧感〟そのもの。
強力な存在感を伴っていた。
「…………やっぱりね……」
萌江はそう呟きながらも、姿勢を崩さない。その後ろで杏奈だけが体を仰け反らせていた。
まるで〝異形の塊〟。
この世のものではない。
まるでその影に覆われるかのように、周囲までもが暗くなった。
〝 ────誰だ…………見えぬ──── 〟
低い声。
それが四人の頭の中に響く。
そして、萌江が口を開いた。
「私は…………金櫻萌江────」
続けて咲恵。
「金櫻京子────」
さらに西沙が続く。
「滝川御世────」
ゆっくりと萌江が立ち上がる。
咲恵と西沙も続き、後ろの杏奈は慌てて立ち上がった。
そして萌江の低い声。
「…………お前は…………誰だ──────」
その時、結妃が動く。
両手を胸の高さへ。
手を叩いた。
乾いた音────。
四人の目の前の光景が変わる。
それはあまりに突然だった。
いつの間にか、四人がいるのは参道の上。
正面に本殿が見えた。
胸の位置で両手を合わせたままの結妃の口元に、笑みが浮かんだ。
小さく呟く杏奈の声。
「……どうして────」
まるで魔法でも見せられたかのよう。
突然、自分たちの居場所が移動した。
「────……引くよ────」
萌江の低い声が三人の耳に届いた。
間合いを取りながら、少しずつ後ろへ。
西沙が萌江と咲恵を守るように前に出た。その西沙は鋭い目を本殿に向け続ける。
西沙の手首を萌江が握った。
反射的に西沙が口を開く。
「────いやだ……!」
が、萌江の返しもすぐ。
「…………今引かないと…………次が勝てない……………………」
その声に焦りは無い。萌江の声は落ち着いていた。
背後から咲恵の小さな声。
「杏奈ちゃん、先に行ってエンジンお願い」
続く杏奈の足音。
西沙の踏みしめる足に力が籠った。膝を僅かに落として身構える。
そして、萌江の柔らかい声。
「…………大丈夫…………見えてるよ……………………」
西沙の体の力が緩む。
少しずつ後ろに足を動かすと、途端に風が動いた。
萌江が左手を上げる。
その掌には〝火の玉〟。
佐平治と結妃の前で、三人の姿が霧の用に消えていく。
佐平治が立ち上がった。
そして呟く。
「……〝幻惑〟…………あの石はまさか……………………」
☆
毘沙門天神社には警視庁から派遣された職員が数名だけ警備に付いていた。もちろん中には入らない。周囲の森の外で隠れているだけだが、外から人が入り込んだ場合や特殊な事例があった場合には動き、その職員から報告が来ることになっていた。
とは言え、清国会や内閣府の人間以外が入ることは今まで無かった。
今回、萌江たち四人が入った報告は形だけ。事前に雫が接触していたからだ。すでに雫からの報告がある。しかし一応マニュアルに沿う形で段階が踏まれる。
総合統括事務次官の中で情報が共有されたが、今後の対策は雫に任された。そのくらいに毘沙門天神社は扱いの難しい場所だった。警備は内閣府によってされていたが、対応のほとんどは清国会の役割。むしろ清国会でなければ対応が出来なかった。
雫も数えるほどしか入ったことはない。今日行ったのもおよそ一年ぶりのこと。
その時、本殿で出迎えたのは結妃だった。
「御上のお使いの方がどのような御用件でしょう…………」
結妃には他意は無かったが、御上という言い方がいつも雫には皮肉めいて聞こえた。
──……まるで子供扱いね…………
その雫が小さく溜息を吐いて応える。
「金櫻の血筋の者たちが動いております…………こちらを調べているとのことで…………」
「……その程度のこと…………わざわざ御苦労様にございますね」
──……電話線くらい引きなさいよ…………
警備の職員に伝言を頼むわけにはいかない。警備の理由を知らないだけでなく、二ヶ月もすれば交代となる程度の警備職員。何も聞かされずに形だけ置かれている職員に過ぎない。むしろ内閣府としては知られたくなかったのだろう。そうしてでも清国会は毘沙門天神社を隠したかった。直接会いに来るしかない。
しかし、帰り際、雫は事が動き始めたことに気が付いた。
──……まさかこんなに早く来るなんて…………
能力者でもある雫の神経が、萌江たちの存在を感じていた。
もちろんそれまで会ったことはない。報告書で写真を見ていただけだ。
正直、雫の気持ちは高鳴った。
天照大神の末裔と言われる人物が何者なのかなど知らない。金櫻家への信仰など内閣府に入ってからの〝知識〟でしかない。それでも内閣府を動かしてまでの存在であることは確か。
この国を動かせるほどの人物に興味があった。
──……気付かれてる…………
雫は鳥居から階段を見下ろした。
全身に鳥肌が立つ。
──……これは…………なに……………………?
恐怖ではない。
圧力のようなものでもない。
むしろ、何の〝力〟も感じない。
しかし、階段で顔を上げる萌江の目に釘付けになった。
初めての感覚でしかない。
総てを見られているような感覚。
──…………何者…………?
雫は懸命に冷静を装った。
これから何が起こるのか、予想すら出来ない。
──……周りの使者は…………三人だけじゃない…………
雫はすぐに内閣府に帰って情報を伝える。程なく警備の職員から報告が入った。
一通り事務処理を終わらせてマンションに帰ったのは夜の八時を過ぎた頃。
「ごめんなさい楓!」
雫は玄関を開けるなり声を上げた。リビングに通じるドアのガラスからは明かりが漏れ、それがむしろ寂しさを増長させる。
ドアを開けると、ソファーから立ち上がったばかりの一〇才になる娘────楓。
「ごめん…………今日も遅くなって……」
そう言って大きく息を吐く雫に楓は笑顔で応える。
「大丈夫だよ。でもごめんなさい……お腹空いたから昨日の残り少しだけ食べちゃった」
「いいよいいよ。ごめんね────」
雫は膝を着き、無意識に楓を抱きしめていた。
「明日はお休みだから……ずっと一緒にいようね」
なぜか寂しさが雫の心を満たしていた。いつも娘に寂しい思いをさせている負い目も確かにあった。でもこの日はそれだけではない。無性に娘に会いたかった。会いたくて仕方がなかった。それだけに不安も大きいままで仕事をこなした。
楓はもっと幼い頃から賢い子だった。
急に道路に飛び出すこともない。言いつけは必ず守った。もちろん雫も理不尽な子育てをしたつもりはないが、それでも楓はしっかりとした娘だった。ある意味、実年齢にそぐわない大人びたところが多い。
その楓が優しい言葉を雫に返した。
「うん……お母さんはいつも大変なお仕事してるから、明日はゆっくり休もうね」
雫はその声で涙が出そうになる自分に驚く。
──…………私…………怖かったのかな………………
気持ちが張り詰めていたのだろう。
毘沙門天神社で初めて四人に会った。初めての感覚を味わった。
──……怖かったのかもしれない…………
──…………なんて存在なの……………………
「よし。夕ご飯作るね」
雫は気持ちを切り替えるように、立ち上がってキッチンに向かった。
──……大丈夫…………私には楓がいる……………………
「うん。簡単でいいからね」
楓はそう言いながらソファーに戻り、テレビに顔を戻す。
「すぐ作るからね」
雫も少し気持ちが楽になったのか、急に空腹を感じ始めた。
そして雫はいつも水道の蛇口横に置いてあるヘアゴムを手に取って長い髪を後ろでまとめる。
冷蔵庫の材料を眺めながらメニューを考えていると、再び楓の声がする。
「……中にいると見えないこともあるよね…………」
──………………?
「外から見てみて」
「え? どうしたの?」
「……お母さんが信じてるのは、だれ?」
楓のその言葉に雫が顔を向けると、楓も顔を向ける。
娘の純粋なその目に、雫は釘付けになった。
「かなざくらの古屋敷」
~ 第十九部「夜叉の囁き」第3話へつづく ~
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