あくまで復讐の代行者

ゆー

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第一章

一人目 ようやく始められる復讐 その三

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 薄暗く、何もない部屋で鈴宮奈緒美を天井から繋いだ鎖と枷に腕と足首を通す。そして、冷水をかけ起こす。

「……うぶっ⁉ なっ、ゲホッ、ゴホッ……。な、なに……?」
「目が覚めたか?」
「……あ、あんた」
「グレモリー、ご苦労。下がっていろ」
「はい」

 この部屋に連れてきて、グレモリーは僕が何かを言う前に枷をつけ天井から吊るし、叩き起こしてからその場を離れる。
 鈴宮は、首を回し辺りを確認し腕と足首につけられた枷に気づき喚く。

「ちょっ⁉ 何よこれ! あんた、わたしに何する気なの! これ、外しなさいよ! ねえ! 聞こえてるでしょ! ねえってば!」

 鈴宮の暴れる反動で鎖が音を立てる。しかし、鎖も枷も外れる様子はない。暴れ疲れたのか、息を切らし、荷台である準備をする僕に文句が飛ぶ。

「聞けって言ってんでしょ! これ早く外してよ! それに、ここはどこよ⁉ これって誘拐よね? こんなことして捕まらないとか思ったわけ? どうせ、家の倉庫とかそういう場所でしょ? わたしにこんなことして警察に通報してやるから!」

 などと喚き散らす。残念なことに、ここは僕の家の倉庫でもないし、警察に通報もできやしない。なにせ、ここから貴様が生きて出られることはないからだ。
 と、心内で言ってやる。さて、準備ができた。

 始めようか、最初の復讐を。

「な、なんでスマホなんか持ってるのよ……。それで何を撮るつもり?」

 僕が準備していたのは、動画を録るため。薄暗い部屋でも、綺麗に映し出せるよう設定をしていた。これで、虐めの証拠を残す。

「今からする質問に素直に答えろ」
「は? 何を言って……」
「姉さんにした虐めの内容は?」

 言葉を遮り問いかける。その言葉に言葉を詰まらせ、僕を見つめ動きを止める鈴宮。

「あ、あんた。今、姉さんって……」
「言ったはずだ。質問に答えろと。で、虐めた内容は?」
「だ、だから、虐めてなんかいないって言ってるじゃない……! ていうか、弟ってことは大磨さんの復讐でもしたいわけ?」
「…………」
「へえー。図星なんだ。呆れた。虐めの事実もないのに、虐めたっていう大磨さんの妄言でわたしに復讐とか。バカじゃない? 勝手に被害者面して自殺した姉なら、その妄言に惑わされて誘拐と監禁の罪を犯す愚かな弟」

 よく喋る女だな。この状況で、こんなに口が回るとは思わなかった。まあ、復讐は正解だが。

「それで、虐めた内容は?」

 何を言われようがスマホを向けたまま同じ質問を続ける。

「だから、虐めてなんかいないって言ってるでしょ! 何度、同じことを言わせれば気が済むわけ⁉ バカみたいに同じ質問してんじゃないわよ!」

 はあー……。これじゃ、埒が明かない。僕のそばで待機しているグレモリーに新たな命令を下す。

「グレモリー。やれ」
「御意。ふふっ。どんな顔で泣き叫ぶのでしょうね。貴方は」
「え? な、なに……? 何をする気⁉」

 グレモリーが笑みをこぼし、来るな来るなと叫ぶ鈴宮に近づき衣服と下着を破り捨て裸体を晒す。そして、グレモリーの魔力で部屋が一瞬で変わる。

「きゃああああああああああああっ!」

 裸体を晒され悲鳴を上げる鈴宮。腕で隠すこともできず、天井もないのに吊らされたままの格好で、耳まで赤くし涙目で睨む。

 用意した場所は学校のグラウンドの中央。そこには、すでに集まっていた大勢の生徒が四方を囲みスマホを片手に裸体姿の鈴宮を見ていた。

「なっ⁉ なに⁉ 何が起きて……⁉ いや、いやっ! 見ないで! 見ないでよ!」

 何が起きたのか理解できず、再び暴れる鈴宮。僕に説明を求める目で見るので説明してやる。

「簡単なことだ。姉さんにしたことを、ここで貴様も味わえばいい」
「だ、だから、わたしはしてないって……!」
「それはもう聞き飽きた。忘れたと言うなら思い出させてやる、話す気がないのなら話す気になるまで繰り返してやる」
「ま、待って……。わ、わたしは――」

 鈴宮の言葉を待つより先にスマホをグレモリーに渡し手を叩く。
 すると、人形のように固まり動かなかった生徒たちが動き始める。手に持ったスマホからフラッシュの光とシャッターの音が木霊する。

「やだっ! 撮らないで! やめてっ! やめてってば! 撮るな! 見るなっ!」

 彼女の声は、一斉に撮り始めた生徒たちのフラッシュの光とシャッター音で掻き消され誰の耳にも届かない。それどころか、中にはこんなことを言い出す生徒たちが現れ始める。

「痴女じゃん」「きもっ」「頭おかしいだろあの女」「見られて興奮するタイプとか」「撮られたいって言ってるようなもんだし、撮ってSNSに上げようぜ」

 撮られる恐怖、上げられ晒される恐怖を思い知れ。貴様が、姉さんにしたことを何十倍にして返してやる。

「お願いだからもうやめて! ごめんなさいっ! わたしが悪かったから! 話すから、助けてっ!」

 ついに恥辱に耐え切れず助けを乞う鈴宮。彼女の言葉に、グレモリーに目配らせ生徒もグラウンドも消し薄暗い部屋へと戻ってくる。
 涙、鼻水、涎を垂らし泣き顔を晒す鈴宮。

「虐めた内容は?」

 グレモリーからスマホを受け取り、動画を録り始める。

「お、大磨さんの下着姿を撮って恐喝しました……」
「他には?」
「ひっく……。んぐっ……。真理子と一緒に彼女の物を壊したことも、トイレで制服の上から水をかけたことも、体育の授業でわざと怪我を負わせたこともありました……」

 嗚咽混じりで、顔をアップし虐めた内容を告白する鈴宮の動画をスマホに収める。
 日記に書かれていた内容と変わらない。これで証拠が録れた。
 スマホを荷台に置くと鈴宮は僕に向かってまだ助けを乞う。

「ちゃんと言ったんだから家に返して!」
「……帰れるとでも思ってたのか?」
「え?」
「そんなわけないだろ。姉さんを苦しめて、痛めつけて、絶望、自殺まで追い込んでおいて。このまま無事に帰れるわけないだろ。貴様にはまだまだ恐怖と苦痛と絶望を与えるんだよ」

 蔑み、冷たく言い放つ。

「い、いや! いやいやっ! もう許して! ごめんなさい! ごめんなさい! 真理子に言われて、わたしはそれに従っただけなの! お願い、許して!」

 告白すれば終わり家に帰れると思っていたのか。鈴宮は何度も謝るが、その程度で僕が許すわけもなく次の苦痛と絶望を与えにかかる。

「解放される、なんて思うなよ。貴様に待ってるのは死のみだ」

 それだけを言って僕は離れていく。
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