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第一章 神殺しと巫女
使徒との再戦(4)
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一方、夏目とフェンリルは人気のない山中に七海を誘い込んでいた。
フェンリルの背に乗り駆ける彼らを追いかける七海。背後から無数の光の矢が飛来し、木々の隙間を潜り躱すフェンリル。立ち止まった場所は、雪平家が所有する山であり特訓場所として使っていた奥地だ。
フェンリルの能力によって焦土と化し開けたこの場で七海と対峙する。
「なに? もう鬼ごっこは終わり?」
笑顔で訊く七海。フェンリルの背から降りる夏目。
「ああ」
「そう。じゃあ!」
七海は、無数の矢を背後から音もなく出現させ夏目とフェンリルに向け一斉に放つ。
「その程度。グゥォオオオオオオオオッ――!」
フェンリルの咆哮による衝撃波で押し負け吹き飛ばされ消滅していく。さすがに神獣相手、この程度の力では意味がないと悟る七海。ならと、標的を夏目一人に絞り執拗に狙う方向へ。
無数の光る矢は、七海の手の動きに合わせて飛来。
(そう簡単に殺られてたまるかっ!)
特訓の成果を見せる時だ、と放たれ動きが速い矢を躱す夏目。視野を広く、足は止めず動き回る。美哉に教わったことを全部、思い出しながら飛来し襲う矢を躱し時に狙いを定め拳をぶつけへし折り叩き落とす。
「嘘っ⁉ あの時と動きが違うんだけど⁉」
夏目なら簡単に殺せると思い込んでいた七海だが、まさか躱し続けヘし折り叩き落とすとは考えもしなかった様子。そこへ、夏目はフェンリルに命じる。
「フェンリル、噛み殺せ!」
「任せよ!」
七海へ飛び掛かるフェンリル。鋭く太い牙と爪が襲い、その場から後方へ飛び退き間一髪で避ける。大穴を開け、砂が舞い土煙を巻き上げる。
「危ないわね!」
ここへ誘い込む道中、フェンリルから問われた夏目。
「敵である使徒に情をかければ逆にこちらが殺されるぞ。主」
「……それは」
「甘さは捨てよ。でなければ、大切な者を失う。神殺しと悪神との戦は、殺すか殺されるかの二択だ。殺す覚悟がなければ、死ぬだけ」
と、警告されていた。
それは、夏目も頭では分かっているつもりだった。だが、実際に戦う場面に出くわし命の危険を身に浴びて思い知る。
己が殺らなければ、事故の時と同じことが起きてしまう。それが嫌で、強くなりたいと望んだ。
「主が直接、手を下さなくとも我輩が下す」
「フェンリル……。それは違う。俺の想いに応えてくれて相棒になってくれたんだ。下すのなら、俺も一緒に殺る」
フェンリルにそう言われたが、押しつけるようで夏目の中では納得できないからこそ共にと答えを出す。
拳を握りしめ、顔を上げ七海を睨む夏目は地を蹴り走る。
「はあ⁉ 同時って⁉」
前方からフェンリル、後方からは夏目が襲い掛かる。
七海は、前方から襲うフェンリルに目をやるが神獣と違い、以前より動きが良くなり少しは戦えるようになったからといって所詮は一から二になった程度の強さの夏目を、先に殺せば神獣も消えると思考する。
フェンリルは足止めとして矢を生み出し足元から反撃。
「ほう、これは……」
羽虫が飛来してきた程度の感覚で前足で振り払い、叩き落とすフェンリルだったが予想以上に数が多く、光の矢は粒子となり消滅させてもまた新たに出現し切りがない。
夏目の元へ戻るには少々、時間が掛かるかもしれないと。
「ならば。グォオオオオオオンッ――!」
と咆哮にて弾き飛ばすがあまり効果は見られない。
(チッ。主よ、面倒な羽虫のせいでそちらに向かえぬ。その女は任せた)
(お、おうっ! 分かった!)
フェンリルの予想外な足止めをくらい、七海と一騎打ちの形となった夏目。
懐から取り出した剣を片手に七海と、素手では分が悪いのは百も承知だが引くわけにはいなかい。
「これで、邪魔な犬はいないわ。確実に殺してあげる」
「やってみろよ」
足を止め、睨みつけそう吐く。
「生意気ね!」
夏目に向かって地を蹴り距離を一気に詰める。横一閃に振るわれる剣筋を、神殺しの身体能力で数メートル後方へ飛び退く。が、七海は戦い慣れしているようで一度、躱されたくらいで剣戟は止まらない。
すぐに離れた距離を縮め、上段から振り下ろされる一撃を体を捻り横へ避けても、下から振り上げる動作へ流れるように振るう。
「――っ!」
斜め斬りからの上下左右と一切の無駄のない動きに翻弄される夏目。一つ一つの動きに隙きがなく、間合いにすら入ることを許さない七海の攻撃。
「ほら! ほらほらっ! もっといくわよ!」
「……っ! うおっ⁉」
ヒュンッ! シュッ! ビュンッ! と風を斬る刀身。
笑顔で楽しげな顔で斬り込む七海。躱すのに精一杯の夏目は次第に追い詰められていく。
頬、肩、腕、太ももと斬られる。
傷が増え血が滲み、紙一重で避けられてはいるが限界が近い。七海へ反撃を入れる隙きを見つけられず、息が上がり呼吸が苦しくなっていく。
「くっ……、このままじゃ……しまっ――⁉」
動きが鈍くなり足が縺れる。体勢を崩してしまい、その隙きを見逃す相手ではない七海の剣が夏目の横腹を斬り込む。
「もらったわ!」
ズブリッ、と肉に突き刺さる感覚と激痛が全身に走る。
「あぐぅっ!」
横腹を貫通する剣が与える激痛に涙目になり声が出る。意識をあまりの痛みに手放しそうになるが、そこは歯を食いしばり耐えてみせ七海の右手首を左手で掴む。
「ちょっ⁉ な、なに⁉」
「は、放さないっ……!」
「ちょ、ちょっと放しなさいよ!」
七海も手首を掴み上げられ、剣を引き抜けず柄を握る手も放せないことに少し焦る。
(い、一発くらい入れないと、美哉に特訓をつけてもらった、意味がないっ……!)
夏目の頭の中ではそう考える。利き手の右手を握りしめ力を込める。
横腹の痛みに歯を食いしばり腕を引き、右拳を七海の顔面に減り込ませる。
「ふんぬっ……!」
「なっ⁉ ぶぅっ……⁉」
剣と夏目が掴む手にばかり気が向き、顔を庇うことも反らすこともできず鼻に放たれた拳が綺麗に入り、思い切り殴られた衝撃で仰け反る七海。
鼻血が飛び散り、指に血が付着しようがまだいけると思った夏目はもう一発、顔に目掛け見舞う。
バシッ、とさすがに二発目は片手で顔を庇い防ぐ七海。
「や、やっでぐれだわね!」
鼻が折れたのだろう、真っ赤にし血を流し涙を溜め濁点をつけて叫ぶ七海。
「……っ、まだだ!」
右腕は動く、拳を握れるのならいけるだろうと殴り続ける夏目と、それを左手で顔を護る七海の図。
バシッ、パンッ! と拳を手の平がぶつかり合う音が響く。
夏目の拳は最初の一発しか入らず、しかしその一発が鼻を折り血を流させたこと未だに殴り続けられることに激高した七海は、片足を振り上げ夏目を蹴り飛ばす。
「うぐっ……」
その衝撃で掴んでいた手が放れた。剣が横腹に突き刺さったまま、地面に転がる夏目へ七海の容赦のない足蹴りが襲う。
「よくもっ! よくもっ!」
「ううっ! ぐっ!」
「私の顔を! 神獣に頼ることしかできない無能のくせにっ! 力もない、殴ることしかできないクズが! 死ね! 死ね!」
「がはっ、おぐっ!」
暴言罵倒を浴びさせながら、夏目の全身を何度も蹴り踏みつける。
口から血反吐を吐き絶え間なく痛みつけられるのを耐える。その中で視界に映るのは、足を振り上げられる瞬間。
「…………っ!」
振り下ろされる足を動く右手が受け止める。
「なっ……⁉」
その足を持ち上げ、七海の姿勢を後ろへ崩す。
「~~~~っ!」
夏目は未だに突き刺さる剣を引き抜く。血が抜けていくのが分かるが、目の前で尻もちをつき「痛い!」と叫ぶ七海に切っ先を向ける。
「ちょっ⁉」
「はあ、はあ……」
両手で柄をしっかりと握り振り上げ斜めから斬りつける。が、七海は咄嗟に横へ転がり回避するがその先にはフェンリルが待ち構えていた。
「はあ⁉ な、なんで⁉」
「ガルルルッ」
牙の隙間から青い炎が漏れ出し威嚇。
そして、口を開け炎を吐く。
「ぎゃぁぁあああああああああっ――!」
七海の全身を青い炎が包み込む。悲痛な叫び声を上げ、炎を消そうとのたうち回るが一向に消える気配ない。
開けた場所とはいえ、急な斜面があるそばまで近寄っていく七海だがそれに気づかない。炎に焼かれる痛みと周りに気を配る余裕がない彼女は、斜面に足を取られ滑り落ちていく。
フェンリルの背に乗り駆ける彼らを追いかける七海。背後から無数の光の矢が飛来し、木々の隙間を潜り躱すフェンリル。立ち止まった場所は、雪平家が所有する山であり特訓場所として使っていた奥地だ。
フェンリルの能力によって焦土と化し開けたこの場で七海と対峙する。
「なに? もう鬼ごっこは終わり?」
笑顔で訊く七海。フェンリルの背から降りる夏目。
「ああ」
「そう。じゃあ!」
七海は、無数の矢を背後から音もなく出現させ夏目とフェンリルに向け一斉に放つ。
「その程度。グゥォオオオオオオオオッ――!」
フェンリルの咆哮による衝撃波で押し負け吹き飛ばされ消滅していく。さすがに神獣相手、この程度の力では意味がないと悟る七海。ならと、標的を夏目一人に絞り執拗に狙う方向へ。
無数の光る矢は、七海の手の動きに合わせて飛来。
(そう簡単に殺られてたまるかっ!)
特訓の成果を見せる時だ、と放たれ動きが速い矢を躱す夏目。視野を広く、足は止めず動き回る。美哉に教わったことを全部、思い出しながら飛来し襲う矢を躱し時に狙いを定め拳をぶつけへし折り叩き落とす。
「嘘っ⁉ あの時と動きが違うんだけど⁉」
夏目なら簡単に殺せると思い込んでいた七海だが、まさか躱し続けヘし折り叩き落とすとは考えもしなかった様子。そこへ、夏目はフェンリルに命じる。
「フェンリル、噛み殺せ!」
「任せよ!」
七海へ飛び掛かるフェンリル。鋭く太い牙と爪が襲い、その場から後方へ飛び退き間一髪で避ける。大穴を開け、砂が舞い土煙を巻き上げる。
「危ないわね!」
ここへ誘い込む道中、フェンリルから問われた夏目。
「敵である使徒に情をかければ逆にこちらが殺されるぞ。主」
「……それは」
「甘さは捨てよ。でなければ、大切な者を失う。神殺しと悪神との戦は、殺すか殺されるかの二択だ。殺す覚悟がなければ、死ぬだけ」
と、警告されていた。
それは、夏目も頭では分かっているつもりだった。だが、実際に戦う場面に出くわし命の危険を身に浴びて思い知る。
己が殺らなければ、事故の時と同じことが起きてしまう。それが嫌で、強くなりたいと望んだ。
「主が直接、手を下さなくとも我輩が下す」
「フェンリル……。それは違う。俺の想いに応えてくれて相棒になってくれたんだ。下すのなら、俺も一緒に殺る」
フェンリルにそう言われたが、押しつけるようで夏目の中では納得できないからこそ共にと答えを出す。
拳を握りしめ、顔を上げ七海を睨む夏目は地を蹴り走る。
「はあ⁉ 同時って⁉」
前方からフェンリル、後方からは夏目が襲い掛かる。
七海は、前方から襲うフェンリルに目をやるが神獣と違い、以前より動きが良くなり少しは戦えるようになったからといって所詮は一から二になった程度の強さの夏目を、先に殺せば神獣も消えると思考する。
フェンリルは足止めとして矢を生み出し足元から反撃。
「ほう、これは……」
羽虫が飛来してきた程度の感覚で前足で振り払い、叩き落とすフェンリルだったが予想以上に数が多く、光の矢は粒子となり消滅させてもまた新たに出現し切りがない。
夏目の元へ戻るには少々、時間が掛かるかもしれないと。
「ならば。グォオオオオオオンッ――!」
と咆哮にて弾き飛ばすがあまり効果は見られない。
(チッ。主よ、面倒な羽虫のせいでそちらに向かえぬ。その女は任せた)
(お、おうっ! 分かった!)
フェンリルの予想外な足止めをくらい、七海と一騎打ちの形となった夏目。
懐から取り出した剣を片手に七海と、素手では分が悪いのは百も承知だが引くわけにはいなかい。
「これで、邪魔な犬はいないわ。確実に殺してあげる」
「やってみろよ」
足を止め、睨みつけそう吐く。
「生意気ね!」
夏目に向かって地を蹴り距離を一気に詰める。横一閃に振るわれる剣筋を、神殺しの身体能力で数メートル後方へ飛び退く。が、七海は戦い慣れしているようで一度、躱されたくらいで剣戟は止まらない。
すぐに離れた距離を縮め、上段から振り下ろされる一撃を体を捻り横へ避けても、下から振り上げる動作へ流れるように振るう。
「――っ!」
斜め斬りからの上下左右と一切の無駄のない動きに翻弄される夏目。一つ一つの動きに隙きがなく、間合いにすら入ることを許さない七海の攻撃。
「ほら! ほらほらっ! もっといくわよ!」
「……っ! うおっ⁉」
ヒュンッ! シュッ! ビュンッ! と風を斬る刀身。
笑顔で楽しげな顔で斬り込む七海。躱すのに精一杯の夏目は次第に追い詰められていく。
頬、肩、腕、太ももと斬られる。
傷が増え血が滲み、紙一重で避けられてはいるが限界が近い。七海へ反撃を入れる隙きを見つけられず、息が上がり呼吸が苦しくなっていく。
「くっ……、このままじゃ……しまっ――⁉」
動きが鈍くなり足が縺れる。体勢を崩してしまい、その隙きを見逃す相手ではない七海の剣が夏目の横腹を斬り込む。
「もらったわ!」
ズブリッ、と肉に突き刺さる感覚と激痛が全身に走る。
「あぐぅっ!」
横腹を貫通する剣が与える激痛に涙目になり声が出る。意識をあまりの痛みに手放しそうになるが、そこは歯を食いしばり耐えてみせ七海の右手首を左手で掴む。
「ちょっ⁉ な、なに⁉」
「は、放さないっ……!」
「ちょ、ちょっと放しなさいよ!」
七海も手首を掴み上げられ、剣を引き抜けず柄を握る手も放せないことに少し焦る。
(い、一発くらい入れないと、美哉に特訓をつけてもらった、意味がないっ……!)
夏目の頭の中ではそう考える。利き手の右手を握りしめ力を込める。
横腹の痛みに歯を食いしばり腕を引き、右拳を七海の顔面に減り込ませる。
「ふんぬっ……!」
「なっ⁉ ぶぅっ……⁉」
剣と夏目が掴む手にばかり気が向き、顔を庇うことも反らすこともできず鼻に放たれた拳が綺麗に入り、思い切り殴られた衝撃で仰け反る七海。
鼻血が飛び散り、指に血が付着しようがまだいけると思った夏目はもう一発、顔に目掛け見舞う。
バシッ、とさすがに二発目は片手で顔を庇い防ぐ七海。
「や、やっでぐれだわね!」
鼻が折れたのだろう、真っ赤にし血を流し涙を溜め濁点をつけて叫ぶ七海。
「……っ、まだだ!」
右腕は動く、拳を握れるのならいけるだろうと殴り続ける夏目と、それを左手で顔を護る七海の図。
バシッ、パンッ! と拳を手の平がぶつかり合う音が響く。
夏目の拳は最初の一発しか入らず、しかしその一発が鼻を折り血を流させたこと未だに殴り続けられることに激高した七海は、片足を振り上げ夏目を蹴り飛ばす。
「うぐっ……」
その衝撃で掴んでいた手が放れた。剣が横腹に突き刺さったまま、地面に転がる夏目へ七海の容赦のない足蹴りが襲う。
「よくもっ! よくもっ!」
「ううっ! ぐっ!」
「私の顔を! 神獣に頼ることしかできない無能のくせにっ! 力もない、殴ることしかできないクズが! 死ね! 死ね!」
「がはっ、おぐっ!」
暴言罵倒を浴びさせながら、夏目の全身を何度も蹴り踏みつける。
口から血反吐を吐き絶え間なく痛みつけられるのを耐える。その中で視界に映るのは、足を振り上げられる瞬間。
「…………っ!」
振り下ろされる足を動く右手が受け止める。
「なっ……⁉」
その足を持ち上げ、七海の姿勢を後ろへ崩す。
「~~~~っ!」
夏目は未だに突き刺さる剣を引き抜く。血が抜けていくのが分かるが、目の前で尻もちをつき「痛い!」と叫ぶ七海に切っ先を向ける。
「ちょっ⁉」
「はあ、はあ……」
両手で柄をしっかりと握り振り上げ斜めから斬りつける。が、七海は咄嗟に横へ転がり回避するがその先にはフェンリルが待ち構えていた。
「はあ⁉ な、なんで⁉」
「ガルルルッ」
牙の隙間から青い炎が漏れ出し威嚇。
そして、口を開け炎を吐く。
「ぎゃぁぁあああああああああっ――!」
七海の全身を青い炎が包み込む。悲痛な叫び声を上げ、炎を消そうとのたうち回るが一向に消える気配ない。
開けた場所とはいえ、急な斜面があるそばまで近寄っていく七海だがそれに気づかない。炎に焼かれる痛みと周りに気を配る余裕がない彼女は、斜面に足を取られ滑り落ちていく。
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