33 / 220
第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
縛られる巫女(2)
しおりを挟む
部室に戻ってくる美哉。夏目たちはもう帰ったのだろう、誰もいない部屋に一人。
春人の言葉が頭にこびりつき、苛立ちが隠せない。部室に誰もいなくてよかったと思う美哉。
ダンッ! と部長専用の机を叩く。こんなにも感情的になるのは珍しい。普段から感情を抑制し、常に冷静でいられるように心がけてきたが縁談の件だけは冷静ではいられない。
当主兼、祖父の玄也に言えば父親の目論見を潰せるだろうが結局、玄也に頼りっきりになってしまう。その程度では本当の意味で自由にはなれない。
「私は……」
夏目のそばに一生いられるには、どうすればいいのか分からなくなってしまう。
「…………」
ふと、このまま逆らうこともできず、言いなりになるのなら初めては……と考えが過ぎった。
「夏目との、最初で最後の――」
冷静に物事を捉えることも、まともな思考ができなくなった美哉は早足で帰宅する。夏目も既に帰っているだろうと踏み切り、ノックもせず部屋へ突撃する。予想通り、ベッドの上に座り義足の手入れをしていた。
「おわっ⁉ び、びっくりした。おかえり、美哉」
突撃に驚きつつも笑って出迎えてくれる夏目。
「…………っ」
「ん? 美哉?」
いつもなら、ただいま戻りました、など言う美哉が今日は黙り込む様子に首を傾げる。
「どうした?」
と、様子がおかしいことに気づき心配し訊く。手入れ中の義足を置いて、片足で兎のように跳ね美哉のそばに近づく。
美哉のそばに寄り顔を覗く夏目は、戸惑いながらも頭を撫でる。
「――っ⁉」
「大丈夫か?」
夏目から見て、美哉が泣いているように見えたのだ。実際には、涙が流れているわけではないがそれでも頭を撫でれば少しは泣き出しそうな心が楽になるかもと。
夏目の撫でる手が優しく、温かさが今は余計に心が痛む。頭の隅で、強引に迫ってお互いの初めてを散らすのは違う気がする。
そう考える思考は戻りつつあったが、巫女としての役目に自由がない未来に我慢できなかった。
もう子供ではない。子を宿す体はあり、神殺しの血ならなにも春人でなくてもいいはず。
(宿すなら、他の誰でもない夏目との子が欲しいっ……)
と強く望んでしまう美哉。
嫌な己が浮かび上がり語り掛ける。
『夏目の家へ強引に同棲を進めたのはこのためでしょう?』
『誘惑したのも、夏目の性欲を刺激し続けていたのも、我慢できなくするため』
『同棲している間に、夏目の子種を貰い無理矢理にでも子を宿すため。そう望んだのは私なのだから』
そう半身が答える。そして最後に、このまま押し倒して奪えばいいんです、と囁かれる。
悪魔の囁きに美哉は応えてしまう。夏目の肩に手を置く。
「美哉?」
疑問符を浮かべた夏目をベッドへ押し倒す。
「えっ、ちょっ、うおっ⁉」
美哉の行動に二度目の驚き、身動きが取れない夏目のお腹の上にのしかかり言葉を発する。
「夏目。今すぐ、私を抱いてください」
「へっ、は、はあっ⁉」
言い終わると制服に手をかけ脱いでいく美哉に夏目はパニックを起こす。
アホ毛はグルグルと回転し、混乱を示し教えるが今ばかりは無視を決め込む美哉だった。
「ちょっ、ま、待て!」
制服を脱ぐ美哉の手を掴み止めるが、その手を払い除け制止も聞く耳を持たず下着姿となりそれさえも手にかけ脱ごうとする。
「み、美哉⁉ ほ、本当に待て! やめろって!」
「…………」
「美哉!」
夏目の上に座り込んだ状態で器用に制服も、下着さえも脱ぎ捨て裸体を晒す。
「なっ、なななっ……!」
目の前、視界には何も隠すものがない美哉の体が映り耳まで真っ赤にして手で目を覆う夏目。
「な、何をやってるんだよ! か、風邪引いたらどうする気だ!」
と、怒るポイントが少しズレている夏目だが美哉の表情には陰りを滲ませ危なげだ。
「見てください、夏目……」
「はいっ⁉」
目を覆う右手を取り、自ら胸へ持っていき触らせる。手の平から伝わる柔らかさ、温もりに心臓の鼓動を感じさせる。
「~~~~っ!」
手の平から伝わる全てに、声にならない声がもれる夏目。
反応を見て美哉は言う。
「夏目、分かりますか? 私の鼓動が、温もりが……。私の全部は、あなたに捧げたいんです……」
「み、美哉……?」
何を求め、今この瞬間に何を成そうとしているのか夏目には分からない。だけど、どこか苦しげで辛そうな美哉を放ってはおけない。
(なんだ? 美哉は何に怯えているんだ? 何があったんだ?)
パニックを起こしながらも、わずかに残った理性が耐え思考回路を働かせようとするがそれを美哉は潰しにくる。
「私と子作りしましょうか。夏目」
「なっ……⁉」
美哉の口から、想像もしていなかった言葉が飛び出し開いた口が塞がらない。耐えている理性にヒビが入った。
固まる夏目に美哉は妖艶に微笑む。
春人の言葉が頭にこびりつき、苛立ちが隠せない。部室に誰もいなくてよかったと思う美哉。
ダンッ! と部長専用の机を叩く。こんなにも感情的になるのは珍しい。普段から感情を抑制し、常に冷静でいられるように心がけてきたが縁談の件だけは冷静ではいられない。
当主兼、祖父の玄也に言えば父親の目論見を潰せるだろうが結局、玄也に頼りっきりになってしまう。その程度では本当の意味で自由にはなれない。
「私は……」
夏目のそばに一生いられるには、どうすればいいのか分からなくなってしまう。
「…………」
ふと、このまま逆らうこともできず、言いなりになるのなら初めては……と考えが過ぎった。
「夏目との、最初で最後の――」
冷静に物事を捉えることも、まともな思考ができなくなった美哉は早足で帰宅する。夏目も既に帰っているだろうと踏み切り、ノックもせず部屋へ突撃する。予想通り、ベッドの上に座り義足の手入れをしていた。
「おわっ⁉ び、びっくりした。おかえり、美哉」
突撃に驚きつつも笑って出迎えてくれる夏目。
「…………っ」
「ん? 美哉?」
いつもなら、ただいま戻りました、など言う美哉が今日は黙り込む様子に首を傾げる。
「どうした?」
と、様子がおかしいことに気づき心配し訊く。手入れ中の義足を置いて、片足で兎のように跳ね美哉のそばに近づく。
美哉のそばに寄り顔を覗く夏目は、戸惑いながらも頭を撫でる。
「――っ⁉」
「大丈夫か?」
夏目から見て、美哉が泣いているように見えたのだ。実際には、涙が流れているわけではないがそれでも頭を撫でれば少しは泣き出しそうな心が楽になるかもと。
夏目の撫でる手が優しく、温かさが今は余計に心が痛む。頭の隅で、強引に迫ってお互いの初めてを散らすのは違う気がする。
そう考える思考は戻りつつあったが、巫女としての役目に自由がない未来に我慢できなかった。
もう子供ではない。子を宿す体はあり、神殺しの血ならなにも春人でなくてもいいはず。
(宿すなら、他の誰でもない夏目との子が欲しいっ……)
と強く望んでしまう美哉。
嫌な己が浮かび上がり語り掛ける。
『夏目の家へ強引に同棲を進めたのはこのためでしょう?』
『誘惑したのも、夏目の性欲を刺激し続けていたのも、我慢できなくするため』
『同棲している間に、夏目の子種を貰い無理矢理にでも子を宿すため。そう望んだのは私なのだから』
そう半身が答える。そして最後に、このまま押し倒して奪えばいいんです、と囁かれる。
悪魔の囁きに美哉は応えてしまう。夏目の肩に手を置く。
「美哉?」
疑問符を浮かべた夏目をベッドへ押し倒す。
「えっ、ちょっ、うおっ⁉」
美哉の行動に二度目の驚き、身動きが取れない夏目のお腹の上にのしかかり言葉を発する。
「夏目。今すぐ、私を抱いてください」
「へっ、は、はあっ⁉」
言い終わると制服に手をかけ脱いでいく美哉に夏目はパニックを起こす。
アホ毛はグルグルと回転し、混乱を示し教えるが今ばかりは無視を決め込む美哉だった。
「ちょっ、ま、待て!」
制服を脱ぐ美哉の手を掴み止めるが、その手を払い除け制止も聞く耳を持たず下着姿となりそれさえも手にかけ脱ごうとする。
「み、美哉⁉ ほ、本当に待て! やめろって!」
「…………」
「美哉!」
夏目の上に座り込んだ状態で器用に制服も、下着さえも脱ぎ捨て裸体を晒す。
「なっ、なななっ……!」
目の前、視界には何も隠すものがない美哉の体が映り耳まで真っ赤にして手で目を覆う夏目。
「な、何をやってるんだよ! か、風邪引いたらどうする気だ!」
と、怒るポイントが少しズレている夏目だが美哉の表情には陰りを滲ませ危なげだ。
「見てください、夏目……」
「はいっ⁉」
目を覆う右手を取り、自ら胸へ持っていき触らせる。手の平から伝わる柔らかさ、温もりに心臓の鼓動を感じさせる。
「~~~~っ!」
手の平から伝わる全てに、声にならない声がもれる夏目。
反応を見て美哉は言う。
「夏目、分かりますか? 私の鼓動が、温もりが……。私の全部は、あなたに捧げたいんです……」
「み、美哉……?」
何を求め、今この瞬間に何を成そうとしているのか夏目には分からない。だけど、どこか苦しげで辛そうな美哉を放ってはおけない。
(なんだ? 美哉は何に怯えているんだ? 何があったんだ?)
パニックを起こしながらも、わずかに残った理性が耐え思考回路を働かせようとするがそれを美哉は潰しにくる。
「私と子作りしましょうか。夏目」
「なっ……⁉」
美哉の口から、想像もしていなかった言葉が飛び出し開いた口が塞がらない。耐えている理性にヒビが入った。
固まる夏目に美哉は妖艶に微笑む。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~
ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。
そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。
30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。
カクヨムで先行投稿中
タイトル名が少し違います。
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~
https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる