46 / 220
第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
秘密の特訓と決闘直前(5)
しおりを挟む
燐が帰ってきたことで特訓を一時中断し、生徒会長との決闘の話を聞く夏目。
明後日の月曜日、神山学園で一騎打ち。それまで残り一日ということ。
「…………」
両手に薬を塗ってもらう夏目は内心、どこまで通用するのか不安があった。そんな心情を察したフェンリルが頭に乗る。
「そこまで不安がる必要はない。主には我輩がいる。全てを出し切り、主の望みを叶えよう」
「フェンリル……! ありがとう」
それに燐も夏目へ伝える。
「夏目ならやれる。相棒のフェンリルと今までしてきた特訓の成果を、会長に見せつけてやればいい」
「燐……。ああ!」
フェンリルと燐の力強い言葉に笑って頷き答える夏目。
大丈夫、俺は一人じゃない。と相棒と友人の言葉に改めて実感し、不安だった気持ちが晴れていく。
「決闘の前に、先輩へ会える時間をわたしが作る。今のわたしにできる償いはこれくらいだろうからな」
「燐。いいや、俺が神通力を扱えるだけの拳を手にできたのは燐のお陰だ。だから、そのなんだ……。償いとか、これくらいだとか、言わないでくれ。俺は、燐に感謝してるんだからさ」
「夏目……」
照れくさそうに言う夏目。その言葉に、笑みがこぼれた燐。
「そうか。わたしの方こそ、わたしを信じてくれてありがとう」
お互い顔を見合わせ笑い合う。
治療を受け終わった夏目は、フェンリルへ念話である相談を持ちかけた。
(フェンリル。ちょっと、いいか?)
(む? どうした、主)
(フェンリルが吐く、あの青い炎って俺でも使えるか?)
(なに? あの炎をか?)
(ああ)
(主よ、あの炎は人間には危険過ぎる代物。いくら、主であってもその身に何が起きるのか分からぬのだぞ)
(それでも、だ)
警告するが、夏目は引き下がらない。これには何か、考えがあって言っているのだろうと。
(危険は承知の上で、俺に貸して欲しい。できることは全てしていたい、少しでも可能性があるのなら俺はそれに賭ける)
フェンリルの警告を蹴ってもまで成したいことがあるのだと。夏目の申し出に、しばし思案し折れた。
(よかろう。主がそう強く望むのなら、それを叶えるのも我輩の務めだ。して、何を考えているのかくらい教えてくれるのだろう? 主よ)
(フェンリル……! ああ、もちろん。実はだな――)
その質問に、夏目は念話のままで語った。
その話を聞いたフェンリルは言葉が出てこない。一歩、間違えれば夏目の肉体も魂さえも死を意味しているからだ。
(あ、主よ。どうやってそんなことを思いついたのだ?)
そう訊けば、夏目はここ数日の神通力を纏う特訓とフェンリルが毎日、馴染むようにと体に流し続けていたことで思いついたのだと。
(あと、美哉の戦っている姿を思い出したからかな)
(それだけで、その考えに行き着くのか)
(それに、フェンリルとならできそうな気がしたんだ。だって、俺は相棒のことを信じてこの身を預けられる)
夏目の疑いのない表情、信じ切った言葉で言われてしまいフェンリルはおかしくなってつい「ククッ」と笑い声がもれるほど。
ここまで信じ身を任せようとしてくれる夏目に応えたいと思ったフェンリルも自信満々に言い切ってみせる。
(主と我輩ならば可能であろう。ただし、試す時間がないゆえぶっつけ本番になるぞ。それでも構わぬな?)
(ああ! 問題ないさ!)
(うむ!)
夏目の中では、必ず成功させて見せるのではなく、させると意気込む。
念話で会話をしているため、燐には夏目とフェンリルの会話が分からず首を傾げる。だが、相棒同士の間に何やらやり取りを行っているのは感じ取れた。
「作戦か何かなのだろうな。さて、これ以上は禁物だ。今日はこれで切り上げよう。明日は特訓の疲れを取るため休みだ」
「分かった。じゃあ、俺はこれで……」
「いや、今日はこのまま泊まっていけ。明日、車で送る」
「そうか? じゃあ、お言葉に甘えて」
「ああ」
というやり取りがあり泊まっていくことに。
夕食を頂き、疲れが溜まっていたのだろう客室に案内され布団に潜り寝転ぶとすぐに睡魔が襲い眠ってしまう。
翌朝、車で家へ送ってもらい燐とはそこで分かれた。
家に帰ってくるなり、夏目はフェンリルと共に相談した例の件について話す。
「試せないが、イメージを描くことは可能であろう」
「俺がどうしたいのか、どう使いたいのかを頭の中で描けばいいってことだな」
「うむ。あとは我輩が、時間が許す限り神通力を流す」
「やるか!」
リビングのソファーに座り、頭の中に思い描く。その間にフェンリルは夏目の膝の上に座り、前足の肉球を胸に当て流す。
ぶっつけ本番、かつ失敗は許されない。もし、失敗してしまえば夏目の命はない。フェンリルとの契約も切れ、彼もこの世から消えることだろう。
何より、夏目の意思と手で美哉へ一生、消えない傷と絶望を与えることに。
それだけは絶対にあってはならい、と夏目もフェンリルもこの日の許す限りの時間を費やす。
夏目とフェンリル、美哉が望む未来を手に入れるため。
明後日の月曜日、神山学園で一騎打ち。それまで残り一日ということ。
「…………」
両手に薬を塗ってもらう夏目は内心、どこまで通用するのか不安があった。そんな心情を察したフェンリルが頭に乗る。
「そこまで不安がる必要はない。主には我輩がいる。全てを出し切り、主の望みを叶えよう」
「フェンリル……! ありがとう」
それに燐も夏目へ伝える。
「夏目ならやれる。相棒のフェンリルと今までしてきた特訓の成果を、会長に見せつけてやればいい」
「燐……。ああ!」
フェンリルと燐の力強い言葉に笑って頷き答える夏目。
大丈夫、俺は一人じゃない。と相棒と友人の言葉に改めて実感し、不安だった気持ちが晴れていく。
「決闘の前に、先輩へ会える時間をわたしが作る。今のわたしにできる償いはこれくらいだろうからな」
「燐。いいや、俺が神通力を扱えるだけの拳を手にできたのは燐のお陰だ。だから、そのなんだ……。償いとか、これくらいだとか、言わないでくれ。俺は、燐に感謝してるんだからさ」
「夏目……」
照れくさそうに言う夏目。その言葉に、笑みがこぼれた燐。
「そうか。わたしの方こそ、わたしを信じてくれてありがとう」
お互い顔を見合わせ笑い合う。
治療を受け終わった夏目は、フェンリルへ念話である相談を持ちかけた。
(フェンリル。ちょっと、いいか?)
(む? どうした、主)
(フェンリルが吐く、あの青い炎って俺でも使えるか?)
(なに? あの炎をか?)
(ああ)
(主よ、あの炎は人間には危険過ぎる代物。いくら、主であってもその身に何が起きるのか分からぬのだぞ)
(それでも、だ)
警告するが、夏目は引き下がらない。これには何か、考えがあって言っているのだろうと。
(危険は承知の上で、俺に貸して欲しい。できることは全てしていたい、少しでも可能性があるのなら俺はそれに賭ける)
フェンリルの警告を蹴ってもまで成したいことがあるのだと。夏目の申し出に、しばし思案し折れた。
(よかろう。主がそう強く望むのなら、それを叶えるのも我輩の務めだ。して、何を考えているのかくらい教えてくれるのだろう? 主よ)
(フェンリル……! ああ、もちろん。実はだな――)
その質問に、夏目は念話のままで語った。
その話を聞いたフェンリルは言葉が出てこない。一歩、間違えれば夏目の肉体も魂さえも死を意味しているからだ。
(あ、主よ。どうやってそんなことを思いついたのだ?)
そう訊けば、夏目はここ数日の神通力を纏う特訓とフェンリルが毎日、馴染むようにと体に流し続けていたことで思いついたのだと。
(あと、美哉の戦っている姿を思い出したからかな)
(それだけで、その考えに行き着くのか)
(それに、フェンリルとならできそうな気がしたんだ。だって、俺は相棒のことを信じてこの身を預けられる)
夏目の疑いのない表情、信じ切った言葉で言われてしまいフェンリルはおかしくなってつい「ククッ」と笑い声がもれるほど。
ここまで信じ身を任せようとしてくれる夏目に応えたいと思ったフェンリルも自信満々に言い切ってみせる。
(主と我輩ならば可能であろう。ただし、試す時間がないゆえぶっつけ本番になるぞ。それでも構わぬな?)
(ああ! 問題ないさ!)
(うむ!)
夏目の中では、必ず成功させて見せるのではなく、させると意気込む。
念話で会話をしているため、燐には夏目とフェンリルの会話が分からず首を傾げる。だが、相棒同士の間に何やらやり取りを行っているのは感じ取れた。
「作戦か何かなのだろうな。さて、これ以上は禁物だ。今日はこれで切り上げよう。明日は特訓の疲れを取るため休みだ」
「分かった。じゃあ、俺はこれで……」
「いや、今日はこのまま泊まっていけ。明日、車で送る」
「そうか? じゃあ、お言葉に甘えて」
「ああ」
というやり取りがあり泊まっていくことに。
夕食を頂き、疲れが溜まっていたのだろう客室に案内され布団に潜り寝転ぶとすぐに睡魔が襲い眠ってしまう。
翌朝、車で家へ送ってもらい燐とはそこで分かれた。
家に帰ってくるなり、夏目はフェンリルと共に相談した例の件について話す。
「試せないが、イメージを描くことは可能であろう」
「俺がどうしたいのか、どう使いたいのかを頭の中で描けばいいってことだな」
「うむ。あとは我輩が、時間が許す限り神通力を流す」
「やるか!」
リビングのソファーに座り、頭の中に思い描く。その間にフェンリルは夏目の膝の上に座り、前足の肉球を胸に当て流す。
ぶっつけ本番、かつ失敗は許されない。もし、失敗してしまえば夏目の命はない。フェンリルとの契約も切れ、彼もこの世から消えることだろう。
何より、夏目の意思と手で美哉へ一生、消えない傷と絶望を与えることに。
それだけは絶対にあってはならい、と夏目もフェンリルもこの日の許す限りの時間を費やす。
夏目とフェンリル、美哉が望む未来を手に入れるため。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~
ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。
そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。
30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。
カクヨムで先行投稿中
タイトル名が少し違います。
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~
https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる