偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

文字の大きさ
51 / 220
第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス

決闘と誓い(4)

しおりを挟む
 見守る美哉と桜は驚きの反応だった。燐だけがガッツポーズで笑う。



「特訓の成果が出ている!」



 特訓中の夏目を知っている燐は、これなら会長を倒せる、と思い上がるのとは別に妹の桜はあの一撃で兄を本気にさせたと険しい表情。



 美哉は、この短期間で強くなっている夏目に驚き以上に嬉しかった。戦っている姿は傷だらけ、それでも勇ましく逞しく映り胸を焦がす。

 勝利して欲しいと祈る美哉。



 春人は、吹き飛ばされ息を整え立ち上がる。不敵な笑みを浮かべながら。



「やってくれるね。逢真くん」



 まさかたったの一撃で、肋骨の数本にヒビが入り内臓に損傷を与えてくるとは予想していなかった。

 だからこそ、もう油断も遊びもしないと本気で潰しにいく。



 目つきが変わる春人に気づき夏目も笑う。



(ここからが本番だ!)



 全身に神通力を纏う感覚を忘れないよう纏い続ける。神通力のお陰で傷は癒えていくが、蓄積されていく疲労までは回復できない。



「フェニックス、おいで」



 一度、フェニックスを呼び戻す。懐から白い手袋を取り出し手につけ、そしてフェニックスの口から小さな火種が吐かれ燃え上がる。

 少量とはいえ、ひと一人くらいは簡単に焼き尽くせる火力。



「これは……」



 その光景に以前、燐から聞いた話を思い出す夏目。

 フェニックスから、業火の火種を手袋へ移し発火させ両手に纏ったのだ。



「さあ、第二ラウンドといこうか」



 燃え上がる手をかざし夏目へ告げる春人。



「主よ。まともに食らえば、いくら神通力を纏っていてもタダでは済まないぞ。骨折、内臓の損傷、重度の火傷を負うであろう」



 フェンリルも夏目のそばに駆け寄り警告。



「向こうも、俺を確実に仕留める気ってことだな」



 春人を見つめ、どう動くべきか思案する。

 フェンリルとフェニックスは、主である二人から離れまたぶつかり合う。



 夏目と春人も対峙し、先に動きを見せたのは春人。

 手に燃え盛る業火を使って殴り襲うかと思いきや放つ。



「いっ⁉」



 勢いよく放たれた業火を、間一髪で横へ飛び退き躱すが軌道を変え背後から襲い掛かる。



「そうくるなら! ――いぎっ……⁉」



 それを左手の裏拳で弾こうとしたが、火力が強すぎて手の甲を焼き痛みが全身へと伝わっていく。



「く、くそがぁああああああっ!」



 口調が荒くなる夏目。痛みに耐え、こちらも負けじと神通力を纏うことから、左手に集中させ解き放つイメージを頭の中に描き業火を弾き消す。



 放たれ、夏目の左手とぶつかる業火は霧散し消えたが春人が纏う業火は健在。燃える火の形は手刀へ、距離を詰め頭上から左手を振り下ろす。



「ふんっ!」

「なっ⁉」



 咄嗟の判断で、体を逸らし左手の手刀から逃れる。が、避けられることを想定していた春人は振り下ろした状態から、斜めに振り上げ夏目の右肩の脇を下から斬りつける。



「あっ、ぐぅうっ……⁉」



 衣服を燃やし、皮膚を斬られ血飛沫が飛び散る。



「まだだよ。さっきのお返しといこうか」



 流れる動作で、右肩を手刀が貫く。



「あっ、うっ、がぁぁああああああああああああああああああああああああああっ!」



 肩の傷口を焼き、貫かれるその同時に絶え間なく送り続けられる激痛に夏目の口から絶叫が盛大にもれた。



 焼きながらゆっくりと肩から手刀を引き抜き、留めと言わんばかりに三度目の攻撃が放たれる。血に濡れた左手ではなく、右手の業火をより一層に燃やし刀身の形へと形成し夏目の脇腹を一閃し深く斬り込み抉る。



 ――ブシュゥッ!



「ごぶっ、がはっ……!」



 これが深手となり、その場に膝から崩れ落ちる。左手に一点集中させたことが仇に、身を護る神通力を纏っていなかった肉体に直接ダメージが通る。視界を赤く染め上げる夏目を、見下ろす春人の手は止まらない。



「これで終わりだよ」



 その一言を発し、崩れ落ち満身創痍の夏目へ向けて春人は両手を振り上げ業火の手刀をクロスさせ肩から胸へ伸び腹部にまで届き斬りつけた。



「――――っ⁉」



 真っ赤に染まった視界。右肩は三度の攻撃を受け、感覚もなく動かすことは不可能。左肩も三度目の攻撃で腹部まで焼き斬りつけられ力と共に血が抜けていく。



「ぶっ、あっ……」



 夏目の口から血の塊を吐き出し、上半身の傷口から止めどなく流れ赤い血の海が生まれる。



「――っ⁉ 主っ!」



 血の海に倒れ込む夏目を見てフェンリルが叫び、駆け寄ろうとするのをフェニックスが阻もうとする。



「邪魔をするでないっ! そこを退けっ!」



 焦り、怒鳴るフェンリルにフェニックスは業火の塊を翼から無数に作り行く手を妨害し、これに対抗すべく距離を詰め寄り前足の爪を剥き出し突き立てる。



「い、いやっ……! 夏目! 夏目ぇええええええええええええええっ!」



 見守っていた美哉の口から、大切な幼なじみの名を呼ぶ悲痛な叫びがグラウンドに木霊する。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...