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第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
決闘と誓い(5)
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血の海に沈み動けない夏目に今すぐにでも、駆け寄りたいフェンリルだが行く手を阻むフェニックスに苦戦を強いられる。
焦り冷静さを失ったフェンリルの動きは単調、かつ向かう先が分かればフェニックスもやりやすいのだろう、簡単に背中を取られ業火の塊を受け鋭い爪が背に食い込む。
――ドク、ドク、ドク。
と、夏目の体から流れ止まらない鮮血。
「はっ、はっ、はっ……」
浅い呼吸を繰り返す中、ぼやけ霞む視界から眺める。動けず、遠くから微かに聞こえる美哉の悲痛な声。
「はっ、はっ、はっ……」
力が入らず、薄れていく意識の中に眼前に立ち見下ろす春人の姿。
「つっ……」
視線をどうにか上げ、春人を見ればどこか落胆した様子。
(ど、どうして……そ、そんな態度を取るんだ……?)
何故、落胆した態度を取るのか夏目には理解できない。今まさに勝敗がつきそうだというのにだ。どうして、見下ろし勝者が敗者に失望の眼差しを向けるのだと疑問符が浮かぶ。
「……っ!」
立ち上がろと全身に力を込めようとするが、全く言うことを利かない体。
「がはっ……」
口からまた血反吐を吐く。口の中は鉄、血の味しかしない。
「グゥォオオオオオオオオオオオオッ――!」
フェンリルの咆哮が近くで聞こえたと同時に、春人へ詰め寄り前足で横殴りを見舞うがフェニックスが主を護るべく、体を盾にし防ぎ春人を連れ離れる。
そばに駆け寄り、血を舐めありったけの神通力を夏目に流す。
「主、死ぬでない! 約束を交わしたであろう! 生きろっ!」
フェンリルの口から絶望に近い悲痛な声がする。
(フェ、フェンリル……)
相棒の声に反応を返したいのに口が利けず、体は動かせない視界は霞み薄れていく意識を必死に繋ぐ。
離れた位置から見守ることしかできない美哉たち。
美哉は手を握りしめ、泣きそうなのを耐え何度も名を呼ぶ。
「夏目……! お願いです、死なないでくださいっ……。夏目!」
燐は爪が食い込み血が滲むことも気にせず、拳を握りしめ険しい表情で飛び出し助けたい、手を貸したい気持ちを抑え込む。
「くっ……! わたしも手が貸せたのなら……!」
胸に手を当て、傷つき今にも死にそうな夏目を心配しながらも悪態をついてしまう桜も、同級生が死んでいくのをただ見ているだけのこの状況に唇を噛み締める。
「諦めなさいよ、逢真! あんたじゃ、お兄様には勝てないんだから! このままじゃ……」
フェニックスを従えた春人が夏目とフェンリルを見て言う。
「君でもダメか……」
明らかに肩を落とし、ため息交じりの声で失望した様子。
「もう抗えない運命だと、お互いに受け入れるしかないね。ここまでして、この結果なら仕方がないよ。逢真くん、もう諦めた方がいい。今の君では弱く僕に勝てない。神殺しとして、覚醒して間もないとしてもその程度の実力では彼女……美哉を護ることなど不可能だ」
冷静にかつ諭すように、ボロボロで傷だらけの夏目を見下ろし告げる。
(う、うるさいっ……! そ、そんなことは誰よりも、俺がよく分かってる!)
ようやく手が動いた。血の海の中で、指に力が入り握る。
(あ、諦めろだと? ふ、ふざけるなっ! 俺は……)
息も上がり、震える脚、体のあちこちが痛み呼吸すら苦しく意識を繋げるのが精一杯。それでも、目の前に立ち塞がる春人に何を言われようが心は折れていない。だから、諦め切れず立ち上がって見せた。
「……っ⁉ まだ、立ち上がるのかい?」
ふらつき、立ち上がるのも一苦労な夏目に驚きつつも言葉を掛ける。
そばにいるフェンリルがありったけの神通力を流し続けてくれたお陰で、体は動き死ぬことも意識を失うこともなく起き上がれた。
「主!」
「はあっ、はあっ、はあっ……。まだだ……!」
歯を食いしばり、右手の拳を春人に向け突き出し叫ぶ。
「俺は、絶対に諦めないっ! 今はまだ弱い。弱くて、頼りなくて、みっともない姿ばかりを晒してる。だけど、俺は美哉を護ると決めた! もう、あの時と同じことは起こさせないと! 何があっても、俺が護り抜くって決めたんだよっ!!」
力強く、婚約者の春人に向かって今の気持ちを吐露する。
右手を突き出したまま、まだ戦えるとフェンリルに態度で示す。
「フェンリル」
「よく言った、主よ! それでこそ、我輩の相棒だ! 共にゆくぞ!」
「おうよっ!」
夏目の言葉を聞き、目を見て心は折れていないこと、炎を灯し戦意を感じ取り吠えるフェンリル。
結界が張られ御三家が、美哉たちが見守る中に、相棒と共に意地と諦めの悪さを見せつける夏目の姿があった。
「フェンリル、あれをやるぞ」
「よかろう」
夏目の提案に頷き、春人とフェニックスへ吠える。
「貴様らは確かに強い。フェニックスの業火を手袋越しとはいえ完全に扱える上に、信頼関係もそこそこあるようだ。何より、再生は厄介極まりない。我輩の牙を受けても尚、何度でも復活する。だが、神の血を引く我輩の神通力と能力には及ばぬ!」
自信満々に言い放つ。
「我輩と主の信頼、絆を舐めるでないぞ!」
声を張り上げ、夏目に視線を配らせ口を開ける。
夏目も、一切の躊躇いなくフェンリルの口の中に右手を突っ込む。
誰もが何をしているのか、正気の沙汰ではないと目を開き固まる。
フェンリルは、夏目の右手首から先を噛みそこから血が滴る。それを確認してから夏目は叫ぶ。
「我が身に宿れ、蒼炎!」
と流れる血が発火剤の役割を果たし、咥えた隙間から青よりももっと澄んだ蒼い炎が燃え盛る。
焦げた臭いが鼻孔を刺激し、鼻を手で覆いしかめっ面になる春人。
フェンリルの口から右手を引き抜く。その手首から先には、フェニックスの業火よりも熱い灼熱の炎が燃え上がり、勢いが強く離れている春人や美哉たちにも熱を伝え、肌を焼き目が乾き痛みで直視できないほどに。
「君は正気か⁉ 気でも狂ったのかい⁉」
その光景に、春人もさすがに驚愕しながら言葉を続ける。
「その身を焦がし、激痛などと言葉に表せないほどの痛みを負いショック死を与えかねないというのに! 神獣の本来の能力を、人間の身で直接に纏うなど⁉ 自殺行為、以外何ものでもない! その炎は、君の肉体いや魂さえも焼き尽くす! 君は、本当に理解してやっているのかい⁉」
その言葉に、夏目もフェンリルも狂気に満ちた目で笑って言う。
「確かに、生徒会長の言う通りだ。この蒼炎は、フェンリルの本来の力。肉体も魂も焼き尽くし灰さえも残さない。だが、俺は死なない! フェンリルは俺を絶対に殺さないからな!」
「当然だ。主以外の人間を、主などと認めるものか。我輩の主は、逢真夏目。ただ一人!」
「俺の力は、フェンリルから貰ったもの。相棒が信じてくれるから、俺も信じてこの身の全てを委ねられる! これが、俺と相棒との絆の証だ!」
今も神通力を流してくれるお陰で、傷のほとんどが癒え視界はクリアに、意識をはっきりと思考も体も動く。
「これから先、何があろうともこの力で俺の大切な人のため、最強で最高の相棒との約束のために使う! あんたにとってはただの縁談を決める程度の決闘だとしても、俺はフェンリルの信頼に応え美哉を助けるための戦いなんだよ!」
負けたくない。敗北は許されない。だからこそ、どんな手を使ってでも勝つ。
そう決意を口にし構える夏目に満足気なフェンリル。
「そうとも。我輩との約束を違えられては困る。守ってもらわねばならぬぞ?」
「ああ、もちろん。忘れてなんかいないさ」
フェンリルの問いに笑って答える夏目。
目の前に、あれだけの傷を負い満身創痍だった下級生の神殺しが立ち上がり啖呵を切り、神獣の力さえも纏い、狂気に満ちた目で笑う姿に畏怖を覚える春人。
夏目の右手には蒼炎が燃え盛り、神殺しの決闘はまだ続く。
焦り冷静さを失ったフェンリルの動きは単調、かつ向かう先が分かればフェニックスもやりやすいのだろう、簡単に背中を取られ業火の塊を受け鋭い爪が背に食い込む。
――ドク、ドク、ドク。
と、夏目の体から流れ止まらない鮮血。
「はっ、はっ、はっ……」
浅い呼吸を繰り返す中、ぼやけ霞む視界から眺める。動けず、遠くから微かに聞こえる美哉の悲痛な声。
「はっ、はっ、はっ……」
力が入らず、薄れていく意識の中に眼前に立ち見下ろす春人の姿。
「つっ……」
視線をどうにか上げ、春人を見ればどこか落胆した様子。
(ど、どうして……そ、そんな態度を取るんだ……?)
何故、落胆した態度を取るのか夏目には理解できない。今まさに勝敗がつきそうだというのにだ。どうして、見下ろし勝者が敗者に失望の眼差しを向けるのだと疑問符が浮かぶ。
「……っ!」
立ち上がろと全身に力を込めようとするが、全く言うことを利かない体。
「がはっ……」
口からまた血反吐を吐く。口の中は鉄、血の味しかしない。
「グゥォオオオオオオオオオオオオッ――!」
フェンリルの咆哮が近くで聞こえたと同時に、春人へ詰め寄り前足で横殴りを見舞うがフェニックスが主を護るべく、体を盾にし防ぎ春人を連れ離れる。
そばに駆け寄り、血を舐めありったけの神通力を夏目に流す。
「主、死ぬでない! 約束を交わしたであろう! 生きろっ!」
フェンリルの口から絶望に近い悲痛な声がする。
(フェ、フェンリル……)
相棒の声に反応を返したいのに口が利けず、体は動かせない視界は霞み薄れていく意識を必死に繋ぐ。
離れた位置から見守ることしかできない美哉たち。
美哉は手を握りしめ、泣きそうなのを耐え何度も名を呼ぶ。
「夏目……! お願いです、死なないでくださいっ……。夏目!」
燐は爪が食い込み血が滲むことも気にせず、拳を握りしめ険しい表情で飛び出し助けたい、手を貸したい気持ちを抑え込む。
「くっ……! わたしも手が貸せたのなら……!」
胸に手を当て、傷つき今にも死にそうな夏目を心配しながらも悪態をついてしまう桜も、同級生が死んでいくのをただ見ているだけのこの状況に唇を噛み締める。
「諦めなさいよ、逢真! あんたじゃ、お兄様には勝てないんだから! このままじゃ……」
フェニックスを従えた春人が夏目とフェンリルを見て言う。
「君でもダメか……」
明らかに肩を落とし、ため息交じりの声で失望した様子。
「もう抗えない運命だと、お互いに受け入れるしかないね。ここまでして、この結果なら仕方がないよ。逢真くん、もう諦めた方がいい。今の君では弱く僕に勝てない。神殺しとして、覚醒して間もないとしてもその程度の実力では彼女……美哉を護ることなど不可能だ」
冷静にかつ諭すように、ボロボロで傷だらけの夏目を見下ろし告げる。
(う、うるさいっ……! そ、そんなことは誰よりも、俺がよく分かってる!)
ようやく手が動いた。血の海の中で、指に力が入り握る。
(あ、諦めろだと? ふ、ふざけるなっ! 俺は……)
息も上がり、震える脚、体のあちこちが痛み呼吸すら苦しく意識を繋げるのが精一杯。それでも、目の前に立ち塞がる春人に何を言われようが心は折れていない。だから、諦め切れず立ち上がって見せた。
「……っ⁉ まだ、立ち上がるのかい?」
ふらつき、立ち上がるのも一苦労な夏目に驚きつつも言葉を掛ける。
そばにいるフェンリルがありったけの神通力を流し続けてくれたお陰で、体は動き死ぬことも意識を失うこともなく起き上がれた。
「主!」
「はあっ、はあっ、はあっ……。まだだ……!」
歯を食いしばり、右手の拳を春人に向け突き出し叫ぶ。
「俺は、絶対に諦めないっ! 今はまだ弱い。弱くて、頼りなくて、みっともない姿ばかりを晒してる。だけど、俺は美哉を護ると決めた! もう、あの時と同じことは起こさせないと! 何があっても、俺が護り抜くって決めたんだよっ!!」
力強く、婚約者の春人に向かって今の気持ちを吐露する。
右手を突き出したまま、まだ戦えるとフェンリルに態度で示す。
「フェンリル」
「よく言った、主よ! それでこそ、我輩の相棒だ! 共にゆくぞ!」
「おうよっ!」
夏目の言葉を聞き、目を見て心は折れていないこと、炎を灯し戦意を感じ取り吠えるフェンリル。
結界が張られ御三家が、美哉たちが見守る中に、相棒と共に意地と諦めの悪さを見せつける夏目の姿があった。
「フェンリル、あれをやるぞ」
「よかろう」
夏目の提案に頷き、春人とフェニックスへ吠える。
「貴様らは確かに強い。フェニックスの業火を手袋越しとはいえ完全に扱える上に、信頼関係もそこそこあるようだ。何より、再生は厄介極まりない。我輩の牙を受けても尚、何度でも復活する。だが、神の血を引く我輩の神通力と能力には及ばぬ!」
自信満々に言い放つ。
「我輩と主の信頼、絆を舐めるでないぞ!」
声を張り上げ、夏目に視線を配らせ口を開ける。
夏目も、一切の躊躇いなくフェンリルの口の中に右手を突っ込む。
誰もが何をしているのか、正気の沙汰ではないと目を開き固まる。
フェンリルは、夏目の右手首から先を噛みそこから血が滴る。それを確認してから夏目は叫ぶ。
「我が身に宿れ、蒼炎!」
と流れる血が発火剤の役割を果たし、咥えた隙間から青よりももっと澄んだ蒼い炎が燃え盛る。
焦げた臭いが鼻孔を刺激し、鼻を手で覆いしかめっ面になる春人。
フェンリルの口から右手を引き抜く。その手首から先には、フェニックスの業火よりも熱い灼熱の炎が燃え上がり、勢いが強く離れている春人や美哉たちにも熱を伝え、肌を焼き目が乾き痛みで直視できないほどに。
「君は正気か⁉ 気でも狂ったのかい⁉」
その光景に、春人もさすがに驚愕しながら言葉を続ける。
「その身を焦がし、激痛などと言葉に表せないほどの痛みを負いショック死を与えかねないというのに! 神獣の本来の能力を、人間の身で直接に纏うなど⁉ 自殺行為、以外何ものでもない! その炎は、君の肉体いや魂さえも焼き尽くす! 君は、本当に理解してやっているのかい⁉」
その言葉に、夏目もフェンリルも狂気に満ちた目で笑って言う。
「確かに、生徒会長の言う通りだ。この蒼炎は、フェンリルの本来の力。肉体も魂も焼き尽くし灰さえも残さない。だが、俺は死なない! フェンリルは俺を絶対に殺さないからな!」
「当然だ。主以外の人間を、主などと認めるものか。我輩の主は、逢真夏目。ただ一人!」
「俺の力は、フェンリルから貰ったもの。相棒が信じてくれるから、俺も信じてこの身の全てを委ねられる! これが、俺と相棒との絆の証だ!」
今も神通力を流してくれるお陰で、傷のほとんどが癒え視界はクリアに、意識をはっきりと思考も体も動く。
「これから先、何があろうともこの力で俺の大切な人のため、最強で最高の相棒との約束のために使う! あんたにとってはただの縁談を決める程度の決闘だとしても、俺はフェンリルの信頼に応え美哉を助けるための戦いなんだよ!」
負けたくない。敗北は許されない。だからこそ、どんな手を使ってでも勝つ。
そう決意を口にし構える夏目に満足気なフェンリル。
「そうとも。我輩との約束を違えられては困る。守ってもらわねばならぬぞ?」
「ああ、もちろん。忘れてなんかいないさ」
フェンリルの問いに笑って答える夏目。
目の前に、あれだけの傷を負い満身創痍だった下級生の神殺しが立ち上がり啖呵を切り、神獣の力さえも纏い、狂気に満ちた目で笑う姿に畏怖を覚える春人。
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