偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第三章 林間合宿と主なき神獣

林間合宿の準備(4)

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 翌日、六時限目は林間合宿の時間に割り当てられ各々、班に分かれ行動を決めていく。班ごとに集まり話し合う時間なのだが、夏目はポツンと取り残されていた。



(…………)



 集まった班の元へ向かったのはいいが、会話の中に入れず決まっていく行動範囲を聞くだけ。最初の内は役割分担など、何を担うか意見を出していたのだが何故か班のメンバーは、愛想笑いをしながら嫌そうな顔をする。



 ただ、「それ、俺がしようか?」と訊けば、「大丈夫だから……!」「逢真は別のでいいよ」「これは僕がするし!」と、オリエンテーリングの地図読みや報告など担おうかと言っても断られる。



 飯盒炊爨の役割も三人で決めてしまい、夏目には何も役割を振り当てることはなかった。



 ここまでされれば、嫌でも分かってしまうものだ。夏目と一緒にやりたくない、という意思表示だということ。

 最終的には、自分の席に戻り窓の外を眺める。そうして今に至る。



(……ああも、アピールされると気分が悪いな。はあー……)



 窓ガラスに映る教室内。班のメンバーは、夏目がいなくなった途端に気まずさや愛想笑いをやめて楽しげに話すのが反射して見える。結局、担任に言われたから入れただけ。



 それ以上のことには関わらないでほしい、仲の良い友人で集まっているのだから邪魔しないでほしい、そう思えてしまい大きなため息が出る。



 騒がしい教室内が、今は耳障りで不愉快でしかない夏目だった。



 ようやく授業が終わり放課後へ。

 夏目は、帰り支度を済ませ早々に教室を出て行く。



 教室にはいたくはない、クラスの空気感が嫌いになっていた。友人はいなし、話が合いそうな生徒もいない。



(息苦しいだけの空間だ)



 と内心で毒つく。苛立ちが募るまま旧部活棟へ来てしまい、部室の扉の前で落ち着かるため深呼吸してから中へ。



「あら、夏目。早いですね」

「そうか?」

「ええ、私の次にいつも部室に来ていますよ」



 いつも、誰より早く部室に来ている美哉がそう言いながら笑顔で迎える。今では定位置となった右側のソファーに座る夏目。二人が来るまでの間、部室にある本を読む。



(あまり、頭に内容が入らないな……)



 美哉に心配をかけまいと普段通りに振る舞う。



「遅くなった!」

「遅れました!」



 と、走ってきたのか息を切らし部屋へ入る燐と桜。



「大丈夫ですよ。二人も来たことですし、始めましょうか」

「ふぅー。授業が少し押して終わるのが遅かったんだ」

「そうなのか? それで二人共、走ってきたわけか」

「ええ。部活の時間がなくなるから。あ、そうだ。林間合宿の件なんだけど」



 燐と桜は隣同士で座り鞄を置き息を整え夏目と話す。

 二人も揃い部活動開始ではなく、昨日も話したように林間合宿の行動範囲を確かめ合う。



「わたしと桜は基本的、自由に行動ができるようになっている。会長からの依頼を最優先に動くことになるだろう」

「授業の方は気にしなくても平気ね。その辺はお兄様が上手くしてくれるみたいだから」

「えっ、そんことあるのか? 一応、この林間合宿も単位が関係してるだろ?」

「ええ、してるわ。でも、神獣絡みとなると授業より優先して調査と解決が必要なの。これも御三家の者として当然の役目なのよ」

「そうなのか。御三家って色んな意味ですごいな」



 燐と桜の行動範囲は自由かつやはり御三家という面が強く、融通が利き林間合宿中の単位も気にしなくて平気だそうだ。



 この学園では、教師より生徒会というより生徒会長の春人の方が権限が上だ。そして、神山学園の運営は東雲家であり理事も東雲の者が務めている。



 そのため、今回の神獣調査が優先され授業も免除ということなのだろう。



「それともう一つ。夏目くん」

「なんだ?」

「夏目くんには、お兄様の命でこの調査に参加してもらうことになるわ。拒否権はないの」

「え? でも、俺は別のクラスだぞ? どうやって桜たちと行動を共にするんだ?」



 桜の言葉に戸惑う夏目。クラスが違うのに、二人と共に行動するのは無理があるだろうに、と言いたげな顔。



「そこは心配するな。わたしが裏で手を回そう」

「何でもありだな……」



 とは言いつつも、内心では喜ぶ夏目。アホ毛が揺れ、嬉しがっている反応を美哉は見逃さなかった。部室へ来た時、アホ毛が後ろに倒れ限界と示していた。



「…………。夏目」

「ん? どうした、美哉?」



 部長椅子に座り、三人の会話を黙って聞いていた美哉が立ち上がり夏目の隣に座り訊く。



「何かありましたね?」

「えっ? な、なんで?」

「アホ毛が教えてくれましたよ」

「アホ毛⁉」

「夏目のアホ毛は、本人以上に感情を表し教えてくれますから。それで、何があったのですか?」

「あ、いや……その、なんだ……。えっとだな……」



 美哉に詰め寄られ問われ、観念して昨日のことと今日のことを語る。

 部室の空気が気まずくなり、桜が淹れてくれた紅茶を飲む夏目。



 話を聞いた三人は、何となく自分たちに非があるのではと目を配らせ顔を近づける。小声で会話をする三人に、夏目の耳には声が聞こず首を傾げ見守る。



「これは……、私が入学早々に生徒たちが見ている前で連れ出したからでしょうか?」

「わたしも縁談の件で夏目との距離が近かったのが原因かもしれない……」

「あ、あたしは特にないと思うけど……。やっぱり、周りから見れば何かあるように見えたのかも。同じ部活だし」

「孤立してたりしませんか? 夏目」

「もしそうならば、わたしたちに問題があるわけで」

「でも、どうやってクラスのみんなと仲良くなるの?」



 三人が同時に夏目を見た。というか、アホ毛に注目する。

 アホ毛が表す感情、それは左右に激しく揺れていた。これは、拒否以上の拒絶だ。



「夏目にはその意思がないようですね。アホ毛が、拒絶を示しています」

「……無理だな」

「無理そうね……」



 美哉の言葉に、燐と桜は自分たちでは何もできない。むしろ、何か行動を起こせば余計にややこしくなる。そう思い、本人も望んでいないお節介やめておこうと。



「あー、ごほんっ。と、とにかくだ。調査には、夏目の神殺しの力が必要になるかもしれないということだ」



 燐が咳払い一つし伝える。



「そ、そうね。お兄様にも、夏目くんの力を借りるように言われているし何も問題はないわ」



 桜も自身が淹れた紅茶を飲みながら言う。



「いいですね、二人共……。私も一緒に行きたかったです……」

「お、おう。分かった」



 とそろぞれ口にする三人。夏目は、それならまだ楽しめるかもしれないと、飲みながらほんのりある紅茶の渋みと甘さが口の中に広がりそんなことを思う。



 こうして一年ズの林間合宿中の行動範囲が決まる。

 班は、燐と桜と共に。部屋も夏目は一人部屋を使い、食事も一般生徒とは別の部屋で、単位のことは気にする必要はなく、神獣の調査を優先するようにと。



 お互いに確認し終わり解散。

 帰りの道中、美哉から夏目へ。



「夏目。合宿中は毎晩、電話をくださいね。電話がなかったら怒りますよ?」

「なんだか子供みたいな要求だな」

「いいじゃないですか」



 ぷくっ、と頬を膨らませこれまた子供っぽく怒る美哉に笑いが出る。



「ぷぷっ。分かった、ちゃんと電話するよ」

「待ってます」



 夏目がそう言うと美哉は嬉しそうに答えた。

 一年ズによる神獣調査と林間合宿が始まる。
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