偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第三章 林間合宿と主なき神獣

第二幕 調査開始(1)

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 林間合宿の前日、夏目は自室で事前確認をしていた。



 燐と桜が裏で働きかけてくれたお陰で、班行動は彼女たちと共にする運びとなった。クラスメイトと行動を共にする必要がなくなり、気持ち的に楽で調査にも集中できることだろう。



「えっと、まずは宿舎に到着後は部屋に荷持を置いてロビーに集合っと」



 生徒たちも同様に部屋へ荷物を置いたあと、一日目は生態観察を行う予定だ。林間合宿の周りは森林に囲まれ、様々な生態を見ることができるようでそれらを観察し、レポートを取り提出。



 夏目たちは提出などはなくその間に、未確認生物とされている神獣が撮影された場所へ向かい調査開始。



「手掛かりを探す、といってもそう簡単に見つかるとは思わないが調べないと始まらないか」



 二日目も、調査といった具合いで遊ぶ暇はなさそう。何せ、この二泊三日で解決しなければならない案件だからだ。



「経ったの二日で解決とかハードになりそうだな……」



 少し不安があった。神獣関連となれば、最悪の場合はそれを狙う神殺しや使徒と戦闘となる可能性もある。



 一年ズだけで無事に解決できるのか、と考えてしまう夏目の部屋の扉が開きドライヤーを片手にワイシャツ一枚だけを着た美哉が入ってくる。



「……またその格好か、美哉」

「この格好の方が楽なんですよ? 締めつけがなくて」

「せめて髪くらいは乾かしてから来いよ。風邪引くぞ?」



 お風呂上がりの美哉は首にタオルを巻き、髪の雫を拭き取りながら机に向かう夏目の背後へ。背中に抱きつき甘えてくる。



「なら、夏目が乾かしてください」

「やれやれ……」



 どうせ離れろ、と言っても離れやしないし聞かないことを分かっている夏目は肩を竦めた。

 シャンプーと柑橘系の石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。夏目宅では、柑橘系の爽やかな香りの石鹸を使う。刺激が強い香り系は、夏目が嫌うためである。



「ほら、ベッドの前に座った座った。乾かしてやるから」

「うふふ。お願いしますね」



 ベッドに腰掛け夏目に言われた通り、ドライヤーを渡し背中を見せて足の間に座る美哉はご機嫌な様子。

 ドライヤーのスイッチを入れ、温かい風が美哉の紫色の黒髪を靡かせる。



「痛くないか?」

「ええ。大丈夫ですよ」

「そうか」



 撫でるように髪を指の隙間で梳かし乾かす。

 髪を乾かしてもらう最中、美哉は夏目へあることを伝える。



「そういえば、夏目。フェンリルには、妹と弟がいるんですよ」

「へぇ~、フェンリルに弟妹がいるんだな」



 これといって驚きもなく普通に返す。指に髪を通しながら、根本から毛先にかけ乾かしていく。



「妹はヘラ、弟はヨルムンガンドと言うんです。まあ、詳しくはフェンリルに聞くのがいいでしょうね」

「美哉って、そういうことに詳しいよな。神話とか神獣について」

「ふふっ。神話や神獣について知れば知るほど、奥が深く面白いものですよ」



 笑って返す美哉。今度、フェンリルに訊いてみようと思う夏目。ただ何故、今この時に言ったのか気になって訊く。



「どうして今、それを俺に言うんだ?」

「あの写真からでは断言できませんが、もしかしたら弟のヨルムンガンドの可能性があるからです」

「はっ? はいいっ⁉ えっ、なんで⁉」



 こちらの情報の方がよっぽど驚いた様子で叫ぶ。

 美哉は、何を根拠に言い出したのか。



「ヨルムンガンドの姿は蛇なんです。それに、数年前に目撃情報があり今回その可能性が高いと判断されました。だからこそ、春人は夏目に助力を申し出たのでしょうね。ただ、さっきも言いましたけどあの写真だけで、ヨルムンガンドだと断言はできませんけど」



 そう話す美哉。思いもしないところから、まさかのえにしが巡り会い尚のこと抹殺はしちゃいけないのではと考えてしまう夏目。

 髪を乾かし終わりドライヤーのスイッチを切ると、美哉は振り返り夏目へ。



「もし、ヨルムンガンドなら殺さず味方につけるべきです。何より、兄のフェンリルに弟を殺させるなんて結果は避けてください」



 真っ直ぐ見つめられ、夏目も美哉と同じ気持ちだ。相棒で、これからも先も共にいると決めたフェンリルに弟を殺させたくはない。



「ああ。分かってる」



 見つめ返し力強く頷く。



 翌日、正門の前に集まる一年生たち。

 林間合宿へ向かうバスに乗り込むためだ。



「………………バスか。そりゃあ、そうだよな……」



 バスを目の前に青い顔になる。事前に酔い止めの薬を飲んだが、吐かずに済むか不安しかない。夏目はバス酔いが酷い。車なら平気なのだが、どうもバスのように長い乗り物には弱く幼少期の頃からバスは酔って吐くためエチケット袋は必須。



(この時点で、なんか気持ち悪いような……)



 顔色が悪い夏目のそばに燐と桜が近寄る。



「大丈夫か? なんだか青い顔をしているが」

「夏目くん、もしかして車酔いが酷いとか?」

「あー、いや車は平気なんだが……バス酔いが酷くて」

「バス? ああ、そう言えば伝え忘れていたな。わたしたちが乗るのはバスではなくあっちだ」

「へっ……?」



 首を傾げ、燐が指差す方へ視線を向ければ離れた位置に一台の軽自動車が停まっていた。



「秋山家と東雲家の権限で、別の車を用意させてある。運転はわたしの家の者がしてくれる手筈になっていてだな、わたしたちは先に林間合宿場へ向かいすぐ調査に入る。時間が限られているからな、そのための処置だ」

「な、なるほど」



 燐の説明に顔色が少し戻り、内心ほっと安心する夏目。



「まあ、それが余計に夏目くんをクラスメイトから遠ざけてしまう原因でもあるけど。仕方がないとはいえ一般人とは色々、あたしたちはかけ離れているし」



 そう口にし横目で、集る生徒たちを見る桜。離れているため、夏目たちや用意させた車に気づく生徒はいない。



「と、とにかくだ。いつまでもここにいると面倒だから、そちらに乗るぞっ」

「お、おう」



 桜の言葉が聞こえていない様子の夏目は、燐に連れられ秋山家の者に荷物を預け後部座席に乗り込む。



 隣に桜が乗り、助手席には燐が。こうして、三人を乗せた車は先に林間合宿場へ向け走り出す。
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