63 / 220
第三章 林間合宿と主なき神獣
調査開始(3)
しおりを挟む
太陽が沈む時間まで待機となった。その時間、夏目は部屋で体を休めることに。使徒の能力に当てられた可能性があるため、フェンリルから神通力を流し異状がないか診てもらう。
「俺の体は大丈夫か?」
「うむ……。体内に異物はないようだ。他も特に異状はない」
「そっか。よかった……」
一安心する夏目。
改めて思い返す。あの霧に手を入れ、何か掴めないかと腕を動かし確かめていたところまでははっきりと覚えている。しかし、その直後の記憶がなく意識を取り戻した時には、フェンリルの背に乗り飛び起きたこと。
その間の空白の記憶が綺麗さっぱりない。
「何なんだ、あの濃霧は? 俺だけ記憶がなくて、フェンリルたちには何ともないなんて」
「神殺しと神獣、巫女の違いかもしれぬ」
「その違いって?」
「分からぬ。使徒の能力に関係しているのは確かであろう。だが、今の現状では何も言えぬ」
何も分からないまま、日没の時間となりロビーに集まりもう一度、あの濃霧が立ち込める場所へと向かう。
「夏目、わたしたちの後ろから前に出るな。あと霧にも触れるな」
「夏目くんにまた何かあったら大変だから」
「分かった」
二人の言い分を素直に聞き後ろに回る。濃霧は薄れ、その先が微かにだが視認できた。とはいえ、辺りは暗く懐中電灯を片手に燐を先頭に奥へ進む。
ゆっくりと進むと洞窟の入り口に辿り着き、懐中電灯の灯りで照らせば更に奥へ道がある。
「行くか……」
「え、ええ……」
「何も出てきませんように……」
生唾を飲み込む燐が握る懐中電灯に力が入る。桜の顔も強張り、それでもここで引くわけには行かず意を決し踏み出す。夏目は、二人のあとをついて行きながら暗く何か出てきそうな雰囲気に怖がる。
フェンリルも、夏目の心情を察し安心させるため影から現れ傍らに。
三人と一匹で洞窟内へ歩むを進める。しばらく歩くと、開けた場所に着く。おそらくここで行き止まりなのだろうが、その場にはランタンと折りたたみ式のテーブルとその上にペットボトルが三つ、空になったものが一つにアウトドアチェアが二つ。
明らかに人の手が入った空間、その地面に転がる食い散らかした保存食の袋が大量に転がっていた。
捨てられら袋の量から、燐が推測を立てる。
「これは一人ではなく数人での行動と見ていいだろう」
「そうね。どう見ても集団行動よ。すぐにここを離れた方が賢明ね。もしかすると使徒と、鉢合わせなんてことになるかもしれないし」
燐の言葉につけ加える桜の台詞に背後から気配はなく、パチパチと拍手の音が洞窟内に響き渡った。
「「「「――――っ⁉」」」」
その音に三人とフェンリルは一斉に振り返れば、出入り口を塞ぐように拍手を送る女一人とその後ろに男が二人。
先頭に立ち拍手を送る手を止めた女が笑みを浮かべ言う。
「正解。よくこの場が分かったわね。でも、ここを見られたからには殺すわ。お前たち、殺れ。空海様の邪魔は誰だろうとさせはしない!」
「「はっ!」」
女の指示に短く応える男二人が同時に飛び出し襲い掛かる。
「三人共、耳を塞ぐがよい!」
フェンリルが叫び、耳を両手で塞ぐ。それを見てから、息を大きく吸い込み空気で腹を膨らませた。
「フーッ……、グゥォォオオオオオオオオオオオオオオンンッ――――!!」
使徒であろう男二人に向け咆哮を上げた。狭い洞窟内で響き渡るフェンリルの咆哮が反響し鼓膜を揺さぶり、頭痛を引き起こすくらい頭に響きまともに受けた男二人は立っていられず、その場に膝から崩れ落ち耳を塞ぎ動きを封じることに成功する。
「三人共、我輩の背に乗れ!」
その隙きにフェンリルは三人を素早く背に乗せ洞窟を駆け抜ける。
「く、くそっ! 耳がっ! 絶対に許さない!」
駆け抜ける際に女の口から恨みじみた言葉がもれた。
森を走るフェンリルの背の上で、まだ少し痛む耳と頭を押さえながらぼやく。
「うぅっ……、耳と頭が痛い……」
「フェンリルの判断のお陰で今は助かったが、面倒なことになったな」
「ええ、本当にね。あたしたちの顔を知られたからには戦う以外はなさそうよ」
「それもそうだが、あの女が口にしていた『空海様の邪魔はさせない』とはどういう意味だ?」
「そもそも、その『空海様』って誰よ?」
そう話す燐と桜の会話に、痛みがようやく収まった夏目も加わり思ったことを口に出す。
「その空海って奴、神殺しだったりしてな」
夏目の言葉に燐も桜も黙り込む。険し表情となり二人はため息と共に言う。
「余計に厄介なことになるぞ」
「神殺しが相手なら、夏目くんの出番だわ」
「そうだな。神殺しには、神殺しが適任だ」
「……あー、やっぱり?」
自分で言ったはいいいが、やはりそういう展開になるよねと言いたげな顔に変わる夏目。もし戦闘になった場合、使徒の相手は巫女である燐と桜に任せることになるだろう。
使徒の登場に、未だに何も手掛かりさせ見つけられず正体さえ分からない未確認生物こと神獣。そして使徒の目的も不明であること。
三人共、嫌な予感がしていた。使徒の目的が、夏目たちと同じではないかと。
フェンリルの背に乗りながら宿舎へ戻る中、そんなことを全員が考える。
「俺の体は大丈夫か?」
「うむ……。体内に異物はないようだ。他も特に異状はない」
「そっか。よかった……」
一安心する夏目。
改めて思い返す。あの霧に手を入れ、何か掴めないかと腕を動かし確かめていたところまでははっきりと覚えている。しかし、その直後の記憶がなく意識を取り戻した時には、フェンリルの背に乗り飛び起きたこと。
その間の空白の記憶が綺麗さっぱりない。
「何なんだ、あの濃霧は? 俺だけ記憶がなくて、フェンリルたちには何ともないなんて」
「神殺しと神獣、巫女の違いかもしれぬ」
「その違いって?」
「分からぬ。使徒の能力に関係しているのは確かであろう。だが、今の現状では何も言えぬ」
何も分からないまま、日没の時間となりロビーに集まりもう一度、あの濃霧が立ち込める場所へと向かう。
「夏目、わたしたちの後ろから前に出るな。あと霧にも触れるな」
「夏目くんにまた何かあったら大変だから」
「分かった」
二人の言い分を素直に聞き後ろに回る。濃霧は薄れ、その先が微かにだが視認できた。とはいえ、辺りは暗く懐中電灯を片手に燐を先頭に奥へ進む。
ゆっくりと進むと洞窟の入り口に辿り着き、懐中電灯の灯りで照らせば更に奥へ道がある。
「行くか……」
「え、ええ……」
「何も出てきませんように……」
生唾を飲み込む燐が握る懐中電灯に力が入る。桜の顔も強張り、それでもここで引くわけには行かず意を決し踏み出す。夏目は、二人のあとをついて行きながら暗く何か出てきそうな雰囲気に怖がる。
フェンリルも、夏目の心情を察し安心させるため影から現れ傍らに。
三人と一匹で洞窟内へ歩むを進める。しばらく歩くと、開けた場所に着く。おそらくここで行き止まりなのだろうが、その場にはランタンと折りたたみ式のテーブルとその上にペットボトルが三つ、空になったものが一つにアウトドアチェアが二つ。
明らかに人の手が入った空間、その地面に転がる食い散らかした保存食の袋が大量に転がっていた。
捨てられら袋の量から、燐が推測を立てる。
「これは一人ではなく数人での行動と見ていいだろう」
「そうね。どう見ても集団行動よ。すぐにここを離れた方が賢明ね。もしかすると使徒と、鉢合わせなんてことになるかもしれないし」
燐の言葉につけ加える桜の台詞に背後から気配はなく、パチパチと拍手の音が洞窟内に響き渡った。
「「「「――――っ⁉」」」」
その音に三人とフェンリルは一斉に振り返れば、出入り口を塞ぐように拍手を送る女一人とその後ろに男が二人。
先頭に立ち拍手を送る手を止めた女が笑みを浮かべ言う。
「正解。よくこの場が分かったわね。でも、ここを見られたからには殺すわ。お前たち、殺れ。空海様の邪魔は誰だろうとさせはしない!」
「「はっ!」」
女の指示に短く応える男二人が同時に飛び出し襲い掛かる。
「三人共、耳を塞ぐがよい!」
フェンリルが叫び、耳を両手で塞ぐ。それを見てから、息を大きく吸い込み空気で腹を膨らませた。
「フーッ……、グゥォォオオオオオオオオオオオオオオンンッ――――!!」
使徒であろう男二人に向け咆哮を上げた。狭い洞窟内で響き渡るフェンリルの咆哮が反響し鼓膜を揺さぶり、頭痛を引き起こすくらい頭に響きまともに受けた男二人は立っていられず、その場に膝から崩れ落ち耳を塞ぎ動きを封じることに成功する。
「三人共、我輩の背に乗れ!」
その隙きにフェンリルは三人を素早く背に乗せ洞窟を駆け抜ける。
「く、くそっ! 耳がっ! 絶対に許さない!」
駆け抜ける際に女の口から恨みじみた言葉がもれた。
森を走るフェンリルの背の上で、まだ少し痛む耳と頭を押さえながらぼやく。
「うぅっ……、耳と頭が痛い……」
「フェンリルの判断のお陰で今は助かったが、面倒なことになったな」
「ええ、本当にね。あたしたちの顔を知られたからには戦う以外はなさそうよ」
「それもそうだが、あの女が口にしていた『空海様の邪魔はさせない』とはどういう意味だ?」
「そもそも、その『空海様』って誰よ?」
そう話す燐と桜の会話に、痛みがようやく収まった夏目も加わり思ったことを口に出す。
「その空海って奴、神殺しだったりしてな」
夏目の言葉に燐も桜も黙り込む。険し表情となり二人はため息と共に言う。
「余計に厄介なことになるぞ」
「神殺しが相手なら、夏目くんの出番だわ」
「そうだな。神殺しには、神殺しが適任だ」
「……あー、やっぱり?」
自分で言ったはいいいが、やはりそういう展開になるよねと言いたげな顔に変わる夏目。もし戦闘になった場合、使徒の相手は巫女である燐と桜に任せることになるだろう。
使徒の登場に、未だに何も手掛かりさせ見つけられず正体さえ分からない未確認生物こと神獣。そして使徒の目的も不明であること。
三人共、嫌な予感がしていた。使徒の目的が、夏目たちと同じではないかと。
フェンリルの背に乗りながら宿舎へ戻る中、そんなことを全員が考える。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~
ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。
そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。
30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。
カクヨムで先行投稿中
タイトル名が少し違います。
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~
https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる