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第三章 林間合宿と主なき神獣
ヨルムンガンド(2)
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大き過ぎる体のヨルムンガンドに頼み小さくなってもらう。マフラーほどの長さ、ショップに売られている蛇のぬいぐるみほどの大きさへ。
そのヨルムンガンドを抱え、湖から離脱し夏目の服の下に隠し部屋へ集まる。
「とりあえず、美哉にも報告しないと」
夏目は美哉との約束、現状の報告も兼ねてテレビ電話を繋げ今後のことを話し合う。ワンコールで電話に出る美哉は嬉しそうに声を弾ませていた。
『夏目! 待ってましたよ!』
スマホの画面に映る美哉は、夏目からの電話を心待ちにしていた様子。楽しげな恋人には悪いが、今は楽しく話をしている場合ではないため切る。
「あ、悪いけど今はそれどころじゃないんだ」
『むっ、どういう意味ですか?』
それに対して見るからに不満かつ怒る美哉だったが、画面越しに映る海のように蒼く澄んだ鱗を持つ蛇、それを抱える夏目を見て表情が変わった。
『……っ! 今、そこにいるのは夏目だけですか?』
「いや、燐と桜もいる」
『二人も一緒なんですね。何があったのですか?』
説明を求める美哉に、桜が簡潔に答える。
『なるほど。小さくなっているとはいえ夏目が抱えているのが、ヨルムンガンドだということは分かりました。まずは、彼の話を聞くのが先です』
ヨルムンガンドは、夏目の腕の中でとぐろを巻きながら語る。
「えっとね、ボク、日本じゃない場所の海底を自由気ままに泳いでたんだ。でも――」
ある日、ヨルムンガンドの存在を知った何者かが海底に罠を張った。その罠の存在に気づかなったヨルムンガンドは、いつものように泳いでいたらあっさり罠に掛かり、海から引き上げられ呪術式が施された檻に入れられ日本に運び込まれたのだと。
それが一ヶ月前の出来事。
「逃げ出そうと暴れたけど、体中に巻かれた能力封じの鎖と呪術式のせいで身動きが取れなかったんだ」
しかし、能力封じの鎖も呪術式にも限界があったのか解けた一瞬の隙きに逃げ出した。身を隠すために水がある場所を探し彷徨いながらも追手から逃げ続け、追手もヨルムンガンドを捕まえようと使徒の三人を寄越してきた。
「逃げ出せたんだけど、ここがどういう場所かも分からなくて……。ただ、知ってる気配というか存在を感じてひたすらにそこを目指したの。けれど……」
その三人は、逃げるヨルムンガンドに追いつき死ななければ何でもありと言わんばかりに攻撃を仕掛けた。
胴体を殴られ、斬りつけられ、全身に痛みが絶え間なく送り続けられ恐怖と死にたくない思いでいっぱい。
フェンリルは、ヨルムンガンドが言う知っている気配というか存在が、己のことだと理解する。同じ神の子である兄弟だ、感じ取れてもおかしい話ではない。
「死にたくなくて、追いかけ回される恐怖の中で、必死に逃げてこの湖に辿り着いたんだ……」
湖の底に身を隠し、傷が癒えるのを待った。
「動けるようになったら、お腹が空いて日が沈んで静かになった夜更けに食べ物を探して出てくるの。ここしばらくはそんな生活をしてて、出てきたら知らない人がいて怖くなって攻撃したんだ。ごめんね……」
そう説明するヨルムンガンド。あの時間、タイミングが良いか悪いかは置いておいて、夏目たちと出くわしたということらしい。
「そういうことだったのか。やはり、あの三人の狙いはヨルムンガンド」
「捕まえるために、死ななければ何でもありとかバカじゃないの!」
「使徒三人で、何がなんでも捕まえたいみたいだしな」
燐、桜、夏目がそれぞれ思ったことを口に出す。
腕を組みしばし考え込み、燐は可能性の一つとして意見を述べた。
「ただ、ヨルムンガンドを日本に運び込んだ人物が誰なのか、契約を交わすためとはいえ大胆な行動に出たものだ。あの女の使徒が言っていた『空海様』という人物も関わっている、と見ていいだろう」
それにはフェンリルも同意した。
「そうだな。空海という奴は、悪神側の神殺しと見ていいだろう」
『そうですね。敵対する以上、ヨルムンガンドが奪われるとあちら側に引き渡すでしょう。ヨルムンガンドも、兄のフェンリル同様に強大かつ誰もが欲しがる存在の神獣。こうして、意思疎通ができるのなら抹殺ではなく保護するべきです』
話を聞いていた美哉は、ここいるメンバーに言っているように見えて視線は夏目に向けていた。他の誰でもない、ヨルムンガンドをフェンリルと共に護ってほしい、とそう言葉の裏に込めて。
(ああ、そうだな。あいつらにフェンリルの弟は渡さない。俺たちでヨルムンガンドを護る)
夏目も同じ気持ちのようで、画面越しに映る美哉へ強く頷いて見せる。その反応を見て微笑む。
(主よ、迷惑を掛けてすまぬ……)
念話でフェンリルが謝る。
(迷惑だなんて思ってないよ。俺の方がずっと、迷惑を掛けてるんだし。それに、これくらい問題ない。大丈夫、俺たちで護ろう。大事な弟をさ)
(主……! くくっ、そうだな。世話の焼ける愚弟だが、敵に奪われるわけにはいかぬ)
(ああ!)
夏目とフェンリルの間で話す内容は誰にも分からない。だが、ヨルムンガンドは何かを感じ取り交互に顔を見つめ小動物みたいに可愛く首を傾げていた。
「よしっ。ならば、今後の方針は決まった。ヨルムンガンドを保護し、その上で使徒の三人を倒す」
「そうね。使徒を倒すための作戦を練るわ」
燐がそう告げれば、桜もやる気満々での表情で頷く。
それに、夏目とフェンリルも、おおっ! と答える。
『私が出る幕はなさそうですね。三人共、無理は禁物ですよ? みんな、無事に帰ってきてください』
画面越しに美哉が、三人と二匹にそう伝える。
「ああ、分かってる。みんないるから、大丈夫だよ」
「主と弟のことは、我輩に任せよ」
「ボクのこと、心配してくれてる?」
笑って美哉を安心させる夏目、胸を張り問題ないと言うフェンリル、美哉を金色の瞳が見つめ心配されていることが不思議なヨルムンガンド。
「はい、先輩」
「分かりました。美哉先輩」
燐と桜も、先輩の言葉を肝に銘じる。返事を聞いた美哉とは、ここで通話を終える。
そのヨルムンガンドを抱え、湖から離脱し夏目の服の下に隠し部屋へ集まる。
「とりあえず、美哉にも報告しないと」
夏目は美哉との約束、現状の報告も兼ねてテレビ電話を繋げ今後のことを話し合う。ワンコールで電話に出る美哉は嬉しそうに声を弾ませていた。
『夏目! 待ってましたよ!』
スマホの画面に映る美哉は、夏目からの電話を心待ちにしていた様子。楽しげな恋人には悪いが、今は楽しく話をしている場合ではないため切る。
「あ、悪いけど今はそれどころじゃないんだ」
『むっ、どういう意味ですか?』
それに対して見るからに不満かつ怒る美哉だったが、画面越しに映る海のように蒼く澄んだ鱗を持つ蛇、それを抱える夏目を見て表情が変わった。
『……っ! 今、そこにいるのは夏目だけですか?』
「いや、燐と桜もいる」
『二人も一緒なんですね。何があったのですか?』
説明を求める美哉に、桜が簡潔に答える。
『なるほど。小さくなっているとはいえ夏目が抱えているのが、ヨルムンガンドだということは分かりました。まずは、彼の話を聞くのが先です』
ヨルムンガンドは、夏目の腕の中でとぐろを巻きながら語る。
「えっとね、ボク、日本じゃない場所の海底を自由気ままに泳いでたんだ。でも――」
ある日、ヨルムンガンドの存在を知った何者かが海底に罠を張った。その罠の存在に気づかなったヨルムンガンドは、いつものように泳いでいたらあっさり罠に掛かり、海から引き上げられ呪術式が施された檻に入れられ日本に運び込まれたのだと。
それが一ヶ月前の出来事。
「逃げ出そうと暴れたけど、体中に巻かれた能力封じの鎖と呪術式のせいで身動きが取れなかったんだ」
しかし、能力封じの鎖も呪術式にも限界があったのか解けた一瞬の隙きに逃げ出した。身を隠すために水がある場所を探し彷徨いながらも追手から逃げ続け、追手もヨルムンガンドを捕まえようと使徒の三人を寄越してきた。
「逃げ出せたんだけど、ここがどういう場所かも分からなくて……。ただ、知ってる気配というか存在を感じてひたすらにそこを目指したの。けれど……」
その三人は、逃げるヨルムンガンドに追いつき死ななければ何でもありと言わんばかりに攻撃を仕掛けた。
胴体を殴られ、斬りつけられ、全身に痛みが絶え間なく送り続けられ恐怖と死にたくない思いでいっぱい。
フェンリルは、ヨルムンガンドが言う知っている気配というか存在が、己のことだと理解する。同じ神の子である兄弟だ、感じ取れてもおかしい話ではない。
「死にたくなくて、追いかけ回される恐怖の中で、必死に逃げてこの湖に辿り着いたんだ……」
湖の底に身を隠し、傷が癒えるのを待った。
「動けるようになったら、お腹が空いて日が沈んで静かになった夜更けに食べ物を探して出てくるの。ここしばらくはそんな生活をしてて、出てきたら知らない人がいて怖くなって攻撃したんだ。ごめんね……」
そう説明するヨルムンガンド。あの時間、タイミングが良いか悪いかは置いておいて、夏目たちと出くわしたということらしい。
「そういうことだったのか。やはり、あの三人の狙いはヨルムンガンド」
「捕まえるために、死ななければ何でもありとかバカじゃないの!」
「使徒三人で、何がなんでも捕まえたいみたいだしな」
燐、桜、夏目がそれぞれ思ったことを口に出す。
腕を組みしばし考え込み、燐は可能性の一つとして意見を述べた。
「ただ、ヨルムンガンドを日本に運び込んだ人物が誰なのか、契約を交わすためとはいえ大胆な行動に出たものだ。あの女の使徒が言っていた『空海様』という人物も関わっている、と見ていいだろう」
それにはフェンリルも同意した。
「そうだな。空海という奴は、悪神側の神殺しと見ていいだろう」
『そうですね。敵対する以上、ヨルムンガンドが奪われるとあちら側に引き渡すでしょう。ヨルムンガンドも、兄のフェンリル同様に強大かつ誰もが欲しがる存在の神獣。こうして、意思疎通ができるのなら抹殺ではなく保護するべきです』
話を聞いていた美哉は、ここいるメンバーに言っているように見えて視線は夏目に向けていた。他の誰でもない、ヨルムンガンドをフェンリルと共に護ってほしい、とそう言葉の裏に込めて。
(ああ、そうだな。あいつらにフェンリルの弟は渡さない。俺たちでヨルムンガンドを護る)
夏目も同じ気持ちのようで、画面越しに映る美哉へ強く頷いて見せる。その反応を見て微笑む。
(主よ、迷惑を掛けてすまぬ……)
念話でフェンリルが謝る。
(迷惑だなんて思ってないよ。俺の方がずっと、迷惑を掛けてるんだし。それに、これくらい問題ない。大丈夫、俺たちで護ろう。大事な弟をさ)
(主……! くくっ、そうだな。世話の焼ける愚弟だが、敵に奪われるわけにはいかぬ)
(ああ!)
夏目とフェンリルの間で話す内容は誰にも分からない。だが、ヨルムンガンドは何かを感じ取り交互に顔を見つめ小動物みたいに可愛く首を傾げていた。
「よしっ。ならば、今後の方針は決まった。ヨルムンガンドを保護し、その上で使徒の三人を倒す」
「そうね。使徒を倒すための作戦を練るわ」
燐がそう告げれば、桜もやる気満々での表情で頷く。
それに、夏目とフェンリルも、おおっ! と答える。
『私が出る幕はなさそうですね。三人共、無理は禁物ですよ? みんな、無事に帰ってきてください』
画面越しに美哉が、三人と二匹にそう伝える。
「ああ、分かってる。みんないるから、大丈夫だよ」
「主と弟のことは、我輩に任せよ」
「ボクのこと、心配してくれてる?」
笑って美哉を安心させる夏目、胸を張り問題ないと言うフェンリル、美哉を金色の瞳が見つめ心配されていることが不思議なヨルムンガンド。
「はい、先輩」
「分かりました。美哉先輩」
燐と桜も、先輩の言葉を肝に銘じる。返事を聞いた美哉とは、ここで通話を終える。
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