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第三章 林間合宿と主なき神獣
弟の暴走(4)
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「さあ、邪魔な神殺しを殺してしまいなさい!」
手を広げ、高らかに言う花折。
――ドンッ!
――バンッ!
と、周囲はヨルムンガンドの尻尾による攻撃で地面が深く抉られる。結界内にいた夏目は、咄嗟に外へ逃げ衝撃波で吹き飛ばされたものの無事だ。
「ちょっ!? えっ、嘘でしょ!?」
桜は、まさかこうも簡単に結界を壊されるとは思わず驚愕。
「ど、どういことだ……?」
燐も、ヨルムンガンドが夏目を殺しに掛かるという予想外の出来事に困惑。
「やめろ、ヨルムンガンド!」
体勢を整え、叫ぶ夏目の声は主なき神獣に届かない。
「イッ、ウグッ……! アアアアアアアッ……!」
もがき苦しみ、虚ろな瞳を夏目に向けたと思えば睨みつけ猛毒を吐き出す。草木、花が猛毒に触れた瞬間に枯れ腐っていく。
「や、やばいっ……!」
死に至らしめる猛毒を前に、逃げるしかできない夏目はその場から遠ざかり避難。吐き出す行為を止めないヨルムンガンドへ、動けるまでに回復したフェンリルの重い一撃が横っ面に響く。
お返しと言わんばかりの頭突きをぶちかます。
――バコンッ!
「――――ッ!?」
強制的に口を閉ざされ倒れ込むヨルムンガンド。
「目を覚まさぬか!」
吠えるフェンリル、そこへ花折が新たに作った傷口から溢れる鮮血を飛ばす。
「邪魔をするな、神獣風情が!」
「チッ……!」
舌打ちをしてヨルムンガンドのそばから飛び退く。フェンリルは、動き回りながら思考する。何が原因で、弟が我を忘れ正気でいられなくなったのかを。
おまけに暴走状態に陥ったのか。
(何かあるはずだ……! それさえ分かれば、この状況を打破できる!)
「空海様のために! もっと、力を見せつけなさいヨルムンガンド!」
耳障りな花折の声に苛立つフェンリル。その声に反応したヨルムンガンドの胴体が起き上がる。
「お前も、空海様の傀儡になってしまいなさい!」
そう叫び、垂れ流す血をフェンリルに向け飛ばす。やはり、本能が危険と告げ浴びる前に距離を取る。
(最初から、あの血を危険と本能が告げる……。何故だ?)
花折から距離を取り思い返す。あの時、そして今この場で発した言葉にも引っ掛かりを覚える。
――この血には迂闊に近づけないでしょ!
――空海様の傀儡になってしまいなさい!
(あの血が、あの女の能力と見て間違いはない。だが、その血の効果はなんだ?)
思い出せ、そう言い聞かせ状況、場面を記憶から引き出す。
血を浴びるのは危険、そう判断し距離を取った。しかし、ヨルムンガンドはどうだった? 弟は血を浴びたか? いや、浴びたのではなく口内に入りそして様子がおかしくなった。
(まさか、浴びることが危険ではなく……体内に入り込むことで能力が発動するものか!)
口内に入り、飲み込んだことで使徒の権能が発動。ヨルムンガンドは直後、もがき苦しみ始め虚ろな瞳で暴走を起こし誰の言葉も届かない。ただし、権能の持ち主たる花折の命令は聞くように。
「やはり、あの女の権能が原因か!」
ヨルムンガンドの状態、これまでの状況から答えを導き出し怒りを滲ませるフェンリル。
夏目の元へ駆け寄る。
「フェンリル! 大丈夫か?」
「むろんだ。それよりも、ヨルムンガンドの状態だがあれは女の使徒の権能が原因だ」
「権能? 何か分かったのか?」
「うむ。あの女の血には、おそらく洗脳に近い類いの能力がある。ヨルムンガンドは、その血を口に入れられ飲み込んだと同時に暴走。そして、我輩たちの声は届かないが使徒の女の命令だけは届くようだ」
「解く方法は?」
夏目の問いに首を横に振るフェンリル。原因が判明したとしても、それを解く方法が分からず手が打てない。
その反応に夏目の表情も険しくなる。このまま暴走状態が続けば最悪、ヨルムンガンドを危険と判断され抹殺しなければならなくなってしまう。
それだけは何としても避けたいが、この洗脳は神殺しや巫女にも有効なのか、同時に何人と何体に効果があるのか、何も分からない現状。
今も尚、もがき苦しみ暴れ狂うヨルムンガンド。
夏目は、燐と桜に視線を向ける。しかし、二人も男の使徒と戦闘に入りこちらに助力は不可能。花折の権能が洗脳だとしても不明な点がある以上は下手に突っ込めない。
(それでも、ヨルムンガンドをこのままになんて、できやしない)
ヨルムンガンドに向き直り、夏目はフェンリルへ命じる。
「フェンリル、女の使徒の相手をしろ」
「なっ、主!?」
その命令に驚く。弟のヨルムンガンドの相手をしろと命ずると思っていたのだ。夏目も危険を承知の上で命じている。
花折の権能、洗脳がフェンリルにも効けばこの状況は絶体絶命だろう。
だが、暴走状態を止め洗脳を解かなければ他の誰でもない兄で相棒自らが牙で弟を殺す。そう思ってしまっからこそこの決断を下す。
ヨルムンガンドは、自分が相手をし必ず止めて見せると。
「………………」
フェンリルは、一瞬何かを言いかけたが軽く頭を振り命令に従う。
「主よ、弟を任せる」
そう言い残し、夏目の元から離れ花折の方へ向かう。その背中を見送り、眼差しを暴れ狂う神獣へ向け一言。
「ああ」
と応え、睨み上げる夏目と睨み返し見下ろすヨルムンガンドと視線が絡み合う。
夏目は、全身に神通力を流し纏い脚に力を込め跳躍。目線が同じ高さになり、ヨルムンガンドは大きな口を開け噛み殺しにくる。
「グゥァワアアアアアアアッ」
「――っ!」
――ガチンッ。
開いた顎が勢いよく閉じ、夏目は口の中へ。上顎を左腕で、下顎を足で己の肉体が生え揃う牙で噛み砕かれるのを防ぎながら、右手は拳を作り一番近い一本の牙に狙いを定め殴り折る。
「おらあっ!」
――ボギッ!
「~~~~~~ッ!?」
ヨルムンガンドはその痛みに声にならない声を出し、顎が緩み口から抜け出て顎下を思い切り蹴り上げる夏目。
「もう一発、食らえ!」
――ドゴッ!
「ングッ……!」
蹴られた衝撃で、舌を噛むヨルムンガンドの口の端から血が滴る。蹴り上げ、落下していく夏目は空中で体勢を変え地面に着地。
歯を折られ、舌を噛んでもすぐに動く神獣は夏目に向かって尻尾による連続で叩きつける攻撃に打って出た。
バンッ! ドンッ! ゴンッ!
と地面を何度も揺らし穴を空け、土煙を巻き起こし視界が悪くなる。煙の中から飛び出した夏目は、上下左右に振り乱し叩きつける尻尾へ飛び乗り鱗に覆われた体を駆けた。
「これならどうだっ!」
腹に一発、ぶん殴る。神通力を纏った一発は、春人との決闘の時よりも更に磨きをかけ数倍の威力をつけた打撃へと。
――バゴンッ!
鈍い音を立て、鱗を打撃だけで剥がし硬く守られていたはずの露わになった肉体へ衝撃が伝わる。
「ゴブッ……」
口から血の塊を吐き出したヨルムンガンドは湖へ沈む。
体から飛び降り、右手が赤く腫れ上がり砕いた鱗が刺さり血が流れシュウウッと煙を上げる。見たからに痛々しい傷だが、その痛みは消え血が止まり傷口が塞がり治っていく。
「これでしばらくは大人しくなるといいけど」
手応えのある一撃に、夏目は湖に沈んだヨルムンガンドを見つめながら呟く。
手を広げ、高らかに言う花折。
――ドンッ!
――バンッ!
と、周囲はヨルムンガンドの尻尾による攻撃で地面が深く抉られる。結界内にいた夏目は、咄嗟に外へ逃げ衝撃波で吹き飛ばされたものの無事だ。
「ちょっ!? えっ、嘘でしょ!?」
桜は、まさかこうも簡単に結界を壊されるとは思わず驚愕。
「ど、どういことだ……?」
燐も、ヨルムンガンドが夏目を殺しに掛かるという予想外の出来事に困惑。
「やめろ、ヨルムンガンド!」
体勢を整え、叫ぶ夏目の声は主なき神獣に届かない。
「イッ、ウグッ……! アアアアアアアッ……!」
もがき苦しみ、虚ろな瞳を夏目に向けたと思えば睨みつけ猛毒を吐き出す。草木、花が猛毒に触れた瞬間に枯れ腐っていく。
「や、やばいっ……!」
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お返しと言わんばかりの頭突きをぶちかます。
――バコンッ!
「――――ッ!?」
強制的に口を閉ざされ倒れ込むヨルムンガンド。
「目を覚まさぬか!」
吠えるフェンリル、そこへ花折が新たに作った傷口から溢れる鮮血を飛ばす。
「邪魔をするな、神獣風情が!」
「チッ……!」
舌打ちをしてヨルムンガンドのそばから飛び退く。フェンリルは、動き回りながら思考する。何が原因で、弟が我を忘れ正気でいられなくなったのかを。
おまけに暴走状態に陥ったのか。
(何かあるはずだ……! それさえ分かれば、この状況を打破できる!)
「空海様のために! もっと、力を見せつけなさいヨルムンガンド!」
耳障りな花折の声に苛立つフェンリル。その声に反応したヨルムンガンドの胴体が起き上がる。
「お前も、空海様の傀儡になってしまいなさい!」
そう叫び、垂れ流す血をフェンリルに向け飛ばす。やはり、本能が危険と告げ浴びる前に距離を取る。
(最初から、あの血を危険と本能が告げる……。何故だ?)
花折から距離を取り思い返す。あの時、そして今この場で発した言葉にも引っ掛かりを覚える。
――この血には迂闊に近づけないでしょ!
――空海様の傀儡になってしまいなさい!
(あの血が、あの女の能力と見て間違いはない。だが、その血の効果はなんだ?)
思い出せ、そう言い聞かせ状況、場面を記憶から引き出す。
血を浴びるのは危険、そう判断し距離を取った。しかし、ヨルムンガンドはどうだった? 弟は血を浴びたか? いや、浴びたのではなく口内に入りそして様子がおかしくなった。
(まさか、浴びることが危険ではなく……体内に入り込むことで能力が発動するものか!)
口内に入り、飲み込んだことで使徒の権能が発動。ヨルムンガンドは直後、もがき苦しみ始め虚ろな瞳で暴走を起こし誰の言葉も届かない。ただし、権能の持ち主たる花折の命令は聞くように。
「やはり、あの女の権能が原因か!」
ヨルムンガンドの状態、これまでの状況から答えを導き出し怒りを滲ませるフェンリル。
夏目の元へ駆け寄る。
「フェンリル! 大丈夫か?」
「むろんだ。それよりも、ヨルムンガンドの状態だがあれは女の使徒の権能が原因だ」
「権能? 何か分かったのか?」
「うむ。あの女の血には、おそらく洗脳に近い類いの能力がある。ヨルムンガンドは、その血を口に入れられ飲み込んだと同時に暴走。そして、我輩たちの声は届かないが使徒の女の命令だけは届くようだ」
「解く方法は?」
夏目の問いに首を横に振るフェンリル。原因が判明したとしても、それを解く方法が分からず手が打てない。
その反応に夏目の表情も険しくなる。このまま暴走状態が続けば最悪、ヨルムンガンドを危険と判断され抹殺しなければならなくなってしまう。
それだけは何としても避けたいが、この洗脳は神殺しや巫女にも有効なのか、同時に何人と何体に効果があるのか、何も分からない現状。
今も尚、もがき苦しみ暴れ狂うヨルムンガンド。
夏目は、燐と桜に視線を向ける。しかし、二人も男の使徒と戦闘に入りこちらに助力は不可能。花折の権能が洗脳だとしても不明な点がある以上は下手に突っ込めない。
(それでも、ヨルムンガンドをこのままになんて、できやしない)
ヨルムンガンドに向き直り、夏目はフェンリルへ命じる。
「フェンリル、女の使徒の相手をしろ」
「なっ、主!?」
その命令に驚く。弟のヨルムンガンドの相手をしろと命ずると思っていたのだ。夏目も危険を承知の上で命じている。
花折の権能、洗脳がフェンリルにも効けばこの状況は絶体絶命だろう。
だが、暴走状態を止め洗脳を解かなければ他の誰でもない兄で相棒自らが牙で弟を殺す。そう思ってしまっからこそこの決断を下す。
ヨルムンガンドは、自分が相手をし必ず止めて見せると。
「………………」
フェンリルは、一瞬何かを言いかけたが軽く頭を振り命令に従う。
「主よ、弟を任せる」
そう言い残し、夏目の元から離れ花折の方へ向かう。その背中を見送り、眼差しを暴れ狂う神獣へ向け一言。
「ああ」
と応え、睨み上げる夏目と睨み返し見下ろすヨルムンガンドと視線が絡み合う。
夏目は、全身に神通力を流し纏い脚に力を込め跳躍。目線が同じ高さになり、ヨルムンガンドは大きな口を開け噛み殺しにくる。
「グゥァワアアアアアアアッ」
「――っ!」
――ガチンッ。
開いた顎が勢いよく閉じ、夏目は口の中へ。上顎を左腕で、下顎を足で己の肉体が生え揃う牙で噛み砕かれるのを防ぎながら、右手は拳を作り一番近い一本の牙に狙いを定め殴り折る。
「おらあっ!」
――ボギッ!
「~~~~~~ッ!?」
ヨルムンガンドはその痛みに声にならない声を出し、顎が緩み口から抜け出て顎下を思い切り蹴り上げる夏目。
「もう一発、食らえ!」
――ドゴッ!
「ングッ……!」
蹴られた衝撃で、舌を噛むヨルムンガンドの口の端から血が滴る。蹴り上げ、落下していく夏目は空中で体勢を変え地面に着地。
歯を折られ、舌を噛んでもすぐに動く神獣は夏目に向かって尻尾による連続で叩きつける攻撃に打って出た。
バンッ! ドンッ! ゴンッ!
と地面を何度も揺らし穴を空け、土煙を巻き起こし視界が悪くなる。煙の中から飛び出した夏目は、上下左右に振り乱し叩きつける尻尾へ飛び乗り鱗に覆われた体を駆けた。
「これならどうだっ!」
腹に一発、ぶん殴る。神通力を纏った一発は、春人との決闘の時よりも更に磨きをかけ数倍の威力をつけた打撃へと。
――バゴンッ!
鈍い音を立て、鱗を打撃だけで剥がし硬く守られていたはずの露わになった肉体へ衝撃が伝わる。
「ゴブッ……」
口から血の塊を吐き出したヨルムンガンドは湖へ沈む。
体から飛び降り、右手が赤く腫れ上がり砕いた鱗が刺さり血が流れシュウウッと煙を上げる。見たからに痛々しい傷だが、その痛みは消え血が止まり傷口が塞がり治っていく。
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