偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第五章 真実に近づく者たち

新担任の正体は(4)

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 昼休みは時間が限られているため、放課後に改めて話をすることに。

 神話オカルト研究会の部室に集まるメンバー。真冬や陽菜、春人も合流し四音からの話を聞く。



 フェンリルとヨルムンガンドも、目を覚まし夏目の傍らに控える。

 四音は、桜が淹れてくれた紅茶を飲み一息ついてから語った。



「瑠々川四音は、人間界で生活するための名でもあるの。経歴や過去は、わたしの魔力で人間界に干渉し作り上げた人物像。今になって、神山町にきたのは逢真くんに会うため」



 夏目を見つめ微笑み言う。



「その目的は、北欧神話に連なる神獣二匹と契約を交わしているから。兄弟とどのような関係を築いているのか、主従関係なのかそれとも特別な関係なのか。それを確かめるべく、学園に教師として入り込んだというわけよ」



 夏目、フェンリル、ヨルムンガンドを順に見て話す。嘘を言っている感じはしない。四音は話を続けた。



「想像していた以上に、強い絆で繋がっているのも確認できたから、彼女と会わせても上手くやっていけると思うわ」



 と、語り終える。フェンリルは、あの資料室での出来事を振り返る。突然に、夏目の背後を取り危害を加えると思い込み、足元の影から姿を見せ威嚇し殺気を四音に放つ。



 ヨルムンガンドも、兄同様に夏目を護ろうと体に巻きつき「あっちへ行け!」と声を出して威嚇した。

 それが、美哉たちが知らない事の経緯だ。



 そして、四音は二匹の行動と夏目を護る姿勢がただの主従関係ではないと判断。とはいえ、何もしないし危害を加える気はない、と言っても信じてもらえるわけがなく。なので、兄弟の頭に直接、話しかけとある名を口にして信じてもらったのだ。



「話は分かりましたが、ずっと口にする”彼女”とは誰のことですか?」



 美哉も、夏目も気になっている”彼女”という存在。四音は、その問いに兄弟を交互に見ては微笑み口に出す。



「北欧神話における老衰、疾病による死者の国を支配する女神。フェンリルとヨルムンガンドの妹、ヘルよ」



 その名に固まるメンバーたち。まさか、ここで妹の名を聞くことになると予想していなかった。

 夏目は、ヘルという女神が分からずフェンリルと見つめ説明を求めた。やれやれと、思いつつもいつものことなので、妹のヘルについて語る。



「ロキが巨人のアングルボザとの間にもうけたと云われ、我輩とヨルムンガンドはヘルの兄弟でもある。だが、ヘルだけは――」



 ――ロキがアングルボザの心臓を食べて、その後に女巨人に変身して自らヘルを生んだという説もある。



 ヘルは、オーディンによって兄弟たち同様に遠隔地であるニヴルヘイムへ追放さ、オーディンはそこに九つの世界において名誉ある戦死者を除く、たとえば疾病や老衰で死んだ者たちや悪人の魂を送り込み、彼女に死者を支配する役目を与えた。



 その地は、彼女の名と同じく『ヘル(ヘルヘイム)』と呼ばれる。北欧神話の中で唯一、死者を生者に戻すことができる人物である。



 ヘルの半身は青く、もう半身は人肌の色をしている。資料によっては上半身は人肌の色で、下半身は腐敗して緑がかった黒へ変色しているとされる。これは彼女の体の半分が生きていて、もう半分が死んでいるということを意味している。



 フリッグの命を受けたヘルモーズがバルドルの蘇生をヘルに懇願したが、ヘルは九つの世界の住人すべてが、バルドルのために泣いて涙を流せば蘇生させてもいい、という条件を与えた。



 しかし、女巨人セックに化けたヘルの父のロキが涙を流さなかったのでバルドルが蘇ることはなかった。



 ラグナロクの時は、死者の爪で造った船ナグルファルに死者たちまたはスルトの一族ないし霜の巨人族が乗り、巨人に加勢する死者の軍団がアースガルドに攻め込んでくるという。



 書物によっては死者の軍勢を送り、彼女自身はヘルヘイム(ニヴルヘルともいう)に残ったままという説もある。



 ラグナロクが起きた後で彼女がどうなったのかはわからない。だが冥界の住人がラグナロクが起きている間、慄いている描写があり、冥界は滅びなかったと唱える者もいる――。



「というのが、ヘルの神話に語られる話だ」



 と語り終えたフェンリルの話に、ヨルムンガンドも頷く。



(やっぱり、兄妹揃って逸話がすごいな。でも、なんでそんなすごい女神を俺に?)



 夏目の中で一つ、疑問に思う。



「瑠々川先生はどうして、俺に会わせようとするんですか? いくら、兄弟と契約を交わしているからって。不思議に思うんですけど……」



 疑問を口にする。それは誰もが疑問を抱くこと、悪魔のそれも魔王自らが行動に起こしてまでする理由が分からない。下手すれば、夏目たちと戦う結果になっていた可能性もあるほど。



 その問いに四音は、笑顔を消し真剣な顔つきへ変わり告げる。



「このままいけば、わたしも貴方たち全員も”悪神”の手によって死ぬからよ」



 その言葉に部室の空気が凍てつく。誰もが険しい表情に、夏目は背筋に悪寒が走り冷や汗が流れていく。

 四音は言葉を続けた。



「わたしとアザゼルは、それをなんとしても回避するべく、悪神に狙われているヘルを保護し隠したの。彼女をこのままにはできない、契約が必要と判断して。そこで、契約に最も相応しい人物を密かに捜していた」



 一度、言葉を止め夏目を真っ直ぐ見つめる四音。一呼吸、置いて言う。



「そこで見つけたのだが逢真夏目くん、貴方よ。フェンリルと契約を交わし、短期間でヨルムンガンドと縁を結び契約を交わす。それだけではなく、信頼と強い絆で繋がっている貴方なら、ヘルを任させられるとわたしが判断したの」



 息を吐き出し、紅茶を飲む四音。半分に減ったカップを見つめながら教える。



「今、この神山町にアザゼルとヘルも来ているわ。わたしと同様に、アザゼルもこの学園に表向きでは教師でありこの部活の顧問として赴任する手筈よ。裏では、貴方たちの味方でありみんなを強くするための師匠みたいな役割を担うわ。あ、わたしもその気でいるからよろしくね」



 唐突に、そんなことを言われた神研メンバーは全員が、聞いてませんけど!? と言いたげな表情へ。



 生徒会長であり学園の運営も担っている春人は、あまりの手際の良さに額に手を当て困惑気味でため息しか出ず。



 風紀委員長の真冬さえ、何とも言えない様子でこちらも大きなため息を吐き出す始末。



 陽菜は、巫女であっても力はないからと欠伸を噛みしめ頑張って起きていられるよう目を開ける努力中。



「あ、そうそう。もう一つ、言い忘れていたわ。今度の土曜日に、アザゼルとヘルに会いに行きましょうか」



 教師、顧問、味方で師匠などと情報処理をする前に次から次ヘと投下していく。

 お陰で四音の話には、情報量が多すぎて口を挟めない夏目たちであった。
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