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第五章 真実に近づく者たち
堕天使総督と魔王と女神(5)
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さあ、気を取り直して夏目の監視もとい観察を続行するヘル。
お風呂から上がってきた夏目は、どこか疲れているように見るのだが反対に美哉は、肌がツヤツヤしている気がしてならない。
「あのあと、いったい何があったというんですか……? いえ、気にする必要はないです」
と、呟き頭を軽く振り切り替えるヘル。
お風呂のあとは、どうやらそれぞれの時間のようで夏目はフェンリルのブラッシング。ヨルムンガンドも撫でてもらおうと順番待ち、美哉は明日の献立を考えながら楽しそうな様子。
「痛くないか?」
「うむ。ほどよい力加減で良いぞ」
「そっか」
フェンリルは、気持ち良さそうに目を細めリラックス。背中を優しく梳く夏目の太ももに顎を乗せ、尻尾がゆらゆらと揺れ動きこのまま眠ってしまいそうになるほど。なのだが、それを許さないのが弟のヨルムンガンドだ。
まだか、まだか、と周りを這い視線を送り続けそれが気になって寝るに寝られない。
「ほい。終わり」
「む? そうか」
「終わった!? 終わった!?」
のそりと起き上がり背筋を伸ばすフェンリルと、待ってましたと言わんばかりに這い寄るヨルムンガンドは夏目を独占し始める。
「夏目、早く早く!」
「分かった、分かった」
笑いながらもヨルムンガンドの要望に応えてくれる。全身を撫で回し、尻尾がお腹周りを巻きつけても怒らない。まるでペットと飼い主のような光景に「ヨル兄様をペット扱いするなです!」と文句の一つを言いたいが、嬉しそうに笑みを作り甘えるヨルムンガンドを前に何も言えないヘルにフェンリルが近寄る。
「主は、我輩たちのことを真剣に考え、その上で見てくれる。我輩の望み、愚弟の望みを聞き応えようと。契約などではなく、我輩たちの間だけで交わされる約束だ」
「……約束、ですか? それはいったいどのような?」
「旅だ。全てが終わったのち、共に美味いものを食べ尽くす旅をするという約束。愚弟も、同じく旅を共にする。こんな毎日を共に過ごす、という主の言葉。そして何より、暴走した己を止めてくれた主に心を開きそばにいたいと望んだのだ」
おすわりのポーズで語る兄の顔は、優しげで嘘偽りのない言葉。
「それは我輩も同じ気持ちなのだ。故に主が死ぬ時こそ我輩たちも死ぬ時だと」
「兄様……」
ヘルは、そう語り終える兄の目が今まで見たことのない優しく、夏目への思いやりが込められた目をしていることに気づき視線を向けた。
ヨルムンガンドを未だに撫で回し楽しそうに会話をしている。兄たちがここまで、信頼を寄せ心を許していることが分からないヘルは返す言葉が思いつかない。
就寝時は、やはり美哉が夏目のベッドに潜り込み抱きつきそのまま眠る。
兄弟も同じ部屋でそれぞれ与えられた毛布やクッションを下に眠る。その姿を見つめるヘル、彼女にも使っていない部屋に布団を敷き好きに使っていいと言っていたが、近くで監視するため夏目の部屋に上がり込んでいた。
「自分に、殺気を放ち侮辱した相手を簡単に自室へ上げるなど、警戒心がまるでない。こんな能天気な神殺しはそうそういないです……」
と、ため息と共に吐き出される言葉。
「でも……」
大好きな兄たちは、言葉巧みに騙されていると思っていた。しかし、夏目との約束を語るフェンリルや甘えるヨルムンガンドを見て騙されているとは到底思えず、どうすればいいのか分からなくなる。
だが、それでも己自身では人間をそう簡単に信用できない。
「………………」
過去を思い出すヘル。
父たるロキの娘ということで死者の国を支配しろと命じられ、遠隔地であるニヴルヘイムへ追放、オーディンはそこに九つの世界において名誉ある戦死者を除く、たとえば疾病や老衰で死んだ者達や悪人の魂を送り込み、ヘルに死者を支配する役目を与えた。
その地は、彼女の名と同じく”ヘル”と呼ばれる。
自ら望み支配してわけではなく、それ以外の選択肢がなかったのだ。
そして、今もまた選択肢があるようでない。アザゼルやルシファーに保護されたお陰で神殺しと、強引に契約を交わすような事態には陥ってはいないがどう転んでも、神殺しと契約を交わさなければならないことに嫌気が差す。
「本当の自由が、わたくしにはないです……」
せめて、自らが望む神殺しと契約を、と思うようにしてはいるが、そんな人間に出会えずそれが現状である。
「…………」
ふと、眠る夏目を見つめた。兄たちが心を許す変わった人間をどうするべきなのか、自分自身はどうしたいのか悩むヘルだった。
お風呂から上がってきた夏目は、どこか疲れているように見るのだが反対に美哉は、肌がツヤツヤしている気がしてならない。
「あのあと、いったい何があったというんですか……? いえ、気にする必要はないです」
と、呟き頭を軽く振り切り替えるヘル。
お風呂のあとは、どうやらそれぞれの時間のようで夏目はフェンリルのブラッシング。ヨルムンガンドも撫でてもらおうと順番待ち、美哉は明日の献立を考えながら楽しそうな様子。
「痛くないか?」
「うむ。ほどよい力加減で良いぞ」
「そっか」
フェンリルは、気持ち良さそうに目を細めリラックス。背中を優しく梳く夏目の太ももに顎を乗せ、尻尾がゆらゆらと揺れ動きこのまま眠ってしまいそうになるほど。なのだが、それを許さないのが弟のヨルムンガンドだ。
まだか、まだか、と周りを這い視線を送り続けそれが気になって寝るに寝られない。
「ほい。終わり」
「む? そうか」
「終わった!? 終わった!?」
のそりと起き上がり背筋を伸ばすフェンリルと、待ってましたと言わんばかりに這い寄るヨルムンガンドは夏目を独占し始める。
「夏目、早く早く!」
「分かった、分かった」
笑いながらもヨルムンガンドの要望に応えてくれる。全身を撫で回し、尻尾がお腹周りを巻きつけても怒らない。まるでペットと飼い主のような光景に「ヨル兄様をペット扱いするなです!」と文句の一つを言いたいが、嬉しそうに笑みを作り甘えるヨルムンガンドを前に何も言えないヘルにフェンリルが近寄る。
「主は、我輩たちのことを真剣に考え、その上で見てくれる。我輩の望み、愚弟の望みを聞き応えようと。契約などではなく、我輩たちの間だけで交わされる約束だ」
「……約束、ですか? それはいったいどのような?」
「旅だ。全てが終わったのち、共に美味いものを食べ尽くす旅をするという約束。愚弟も、同じく旅を共にする。こんな毎日を共に過ごす、という主の言葉。そして何より、暴走した己を止めてくれた主に心を開きそばにいたいと望んだのだ」
おすわりのポーズで語る兄の顔は、優しげで嘘偽りのない言葉。
「それは我輩も同じ気持ちなのだ。故に主が死ぬ時こそ我輩たちも死ぬ時だと」
「兄様……」
ヘルは、そう語り終える兄の目が今まで見たことのない優しく、夏目への思いやりが込められた目をしていることに気づき視線を向けた。
ヨルムンガンドを未だに撫で回し楽しそうに会話をしている。兄たちがここまで、信頼を寄せ心を許していることが分からないヘルは返す言葉が思いつかない。
就寝時は、やはり美哉が夏目のベッドに潜り込み抱きつきそのまま眠る。
兄弟も同じ部屋でそれぞれ与えられた毛布やクッションを下に眠る。その姿を見つめるヘル、彼女にも使っていない部屋に布団を敷き好きに使っていいと言っていたが、近くで監視するため夏目の部屋に上がり込んでいた。
「自分に、殺気を放ち侮辱した相手を簡単に自室へ上げるなど、警戒心がまるでない。こんな能天気な神殺しはそうそういないです……」
と、ため息と共に吐き出される言葉。
「でも……」
大好きな兄たちは、言葉巧みに騙されていると思っていた。しかし、夏目との約束を語るフェンリルや甘えるヨルムンガンドを見て騙されているとは到底思えず、どうすればいいのか分からなくなる。
だが、それでも己自身では人間をそう簡単に信用できない。
「………………」
過去を思い出すヘル。
父たるロキの娘ということで死者の国を支配しろと命じられ、遠隔地であるニヴルヘイムへ追放、オーディンはそこに九つの世界において名誉ある戦死者を除く、たとえば疾病や老衰で死んだ者達や悪人の魂を送り込み、ヘルに死者を支配する役目を与えた。
その地は、彼女の名と同じく”ヘル”と呼ばれる。
自ら望み支配してわけではなく、それ以外の選択肢がなかったのだ。
そして、今もまた選択肢があるようでない。アザゼルやルシファーに保護されたお陰で神殺しと、強引に契約を交わすような事態には陥ってはいないがどう転んでも、神殺しと契約を交わさなければならないことに嫌気が差す。
「本当の自由が、わたくしにはないです……」
せめて、自らが望む神殺しと契約を、と思うようにしてはいるが、そんな人間に出会えずそれが現状である。
「…………」
ふと、眠る夏目を見つめた。兄たちが心を許す変わった人間をどうするべきなのか、自分自身はどうしたいのか悩むヘルだった。
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