偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第二部 第七章 終わりの始まり

幕章 待っている

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〈※夏目目線に戻ります〉




 ――時は遡り……。



 美哉を蘇生して一ヶ月。しかし、彼女は目覚めない……。

 ずっと眠り続けていた。ヘル曰く、仮死状態に近いのだと。

 べッドで眠る美哉のそばに俺は常にいた。相棒たち以外は、誰もこの部屋に入れさせない。

 ……美哉を蘇生した時、アザゼルたちに驚かれそして危険行為だと怒られた。が、そんなことどうでもいい。



 アザゼルは、



「一歩、間違えればお前もフェンリルたちも死んでいたんだぞ!?」



 と。だが、俺からすれば美哉のいない世界で生きる気など毛頭ない。だがら、言い切る。



「美哉が死ぬのなら、俺も喜んで死んでやる」



 俺の言葉に、仲間は言葉を飲み込み黙った。

 ただ、紅だけは俺の姿を見て少し悲しげに言う。



「夏目くん。力を酷使したんだね……」



 俺の髪は真っ白になっている。命を削った後遺症とでも言おうか、まあ気にすることもないが。



「これ以上、話すことはない。部屋に戻る」



 話を切り上げ、リビングから出て自室に戻る。仲間が心配し怒る気持ちも分からないわけではない、だが俺にとってそれ以上に大事なのは美哉だ。



 部屋の中に入ると鍵をかけ、椅子に座り左足を見た。美哉を蘇生するために自らの命を使い、寿命を削ったがそれを補ったのが相棒たちだ。その結果、俺の肉体は人間のそれとは大きく異なる。

 代償に支払った左足は義足だったが、今では生身の足が再生し血が通い元通りに。神の子である相棒たちのお陰で、俺は人間から神の子に近い肉体を得た。

 軽度の傷なら一瞬で再生し、骨が折れたとしても数分で治すほどに。臓器は、一日もあれば完治するだろう。

 即死級の攻撃にも耐えるだろうな。まだ、試したことはないため分からないが。



 他にもヘルが持つ氷結、ヨルムンガンドが持つ猛毒、何よりフェンリルが持つ青い炎も手助けなく行使できる。

 俺は、そんな肉体を新たに手に入れた。



 とはいえ、変わったのは肉体だけではない。心も。

 以前の俺なら、仲間を心配させないよう行動には気をつけ、根は優しく思いやりがあると言われたことも。美哉からは、押しに弱く面倒ごとに巻き込まれるタイプだと。

 俺自身にも心当たりならある。恋愛やエッチなことに関しては奥手だった。



「が、今は違うな。思考も感情も……」



 顔を手で覆い、今は美哉に触れたくて仕方がない。

 すぐにでも抱きしめたい、温もりを感じたい、誰にも触れさせたくはない、その目に映すのは俺だけでいい。求めるのも、必要とするのも、愛するのも俺だけ。

 どこにも行かせない、俺の手の届く範囲にいればいい。俺のそばにいろ、俺にだけ笑みを見せてくれ。



 ……そんな、ドロドロとしたドス黒い感情がずっと渦巻き、抑制するのが困難になりつつある。

 仲間の目を気にするつもりもなく、俺の邪魔は許さない。敵は全て殺す、一人も一体残らず殺し尽くす。

 そう考え行動するようになった。

 まず、家の周辺には桜に結界を張らせ、燐には敵の情報を集めさせ、俺は足りない知識を頭に叩き込んだ。

 最近では、ただ敵を倒すための戦い方ではなく確実に殺すための戦い方に変更し、深夜に徘徊し機械人形が有象無象しており実戦にはちょうどいいからと試している。

 現状、そんな生活を続けている。



「ふぅー……」



 息を吐き出し、眠る美哉を見つめる。今の俺を見たら美哉はどう思うだろうか?

 ――怖がる? 嫌う? 遠ざける?

 そんなことを考えたあとに必ず行き着く思考回路。



「ははっ」



 笑みをこぼし、指の隙間から美哉だけを視界に映す。

 自分でも分かる。俺の目は、虚ろで狂気を孕み、それでいて愛おしくて堪らない壊れ狂った愛情がある。



「大丈夫だ。そんなことは起きない、起こさせない」



 ……だって、俺が美哉を心の底から愛し求めているんだぞ? 俺たちは相思相愛だ。

 もし、そんなことになるなら……そうなる前に体にも心にも刻めばいいこの俺を。

 俺なしでは生きていけないようにすればいい。



「そうだろ? 今の俺のように」



 と、口に出す。そして、心の底から願う。

 ああ、早く目覚めてくれ美哉――と。
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