偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第二部 第七章 終わりの始まり

最愛の人との再開(2)

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 二階へ上がり、自室の扉を開けて戻れば見守るヘルと未だに目覚めず眠り続ける美哉がいた。

 俺を捉えたヘルが、美哉の状態を報告。



「主様。美哉様の体温、脈拍と共に異常はなくただ、眠っているだけです」

「そうか」



 この同じ報告を毎日のように聞く。繰り返しだが、それが大事なことだ。何か異常があればすぐ気づけるし、俺自身がヘルから聞かないと安心できない。

 ベッドの端に座り、眠る美哉の頬に触れる。

 生きている者と同じ温もり、血色も悪くなく、寝息を立てる姿。



「美哉……」



 俺は待ち続ける。最愛の人が目を覚ますその時を。



「今日はな、新しい仲間を招いたんだ。ウロボロスの転生体で、俺が味方だと判断した。今後は、この家を護る護衛役を担ってもらうことになる。まあ、護衛といっても美哉が目覚めるまでの間だけだが……」



 こうして、眠る美哉にその日に起きたことを語る。



「でだ、その転生体は二人いてな三つ編みの子が双葉奏、左の横髪を伸ばしている子が二条遥だ。奏の方はそうだな、活発で元気娘って感じで。遥の方は、おとなし目であまり感情を表に出さないみたいだ。二人共と話してみたが、お互いのことを大事にしているのが伝わってくるし、俺と美哉のような空気を感じたよ。想い想われる、そんな風に俺には見えた。だから、奏と遥は大丈夫。俺たちの敵じゃない」



 そう語りかけ終えると、美哉の紫色の黒髪を撫で笑みを浮かべそっと額にキスを落とす。

 最後に必ず言うのが「待ってる……」だった。





    ◇◇◇◇◇





 翌日、神前先輩と立花先輩、東雲先輩が帰ってきた。現在、俺の家に住むのは仲間たちだ。元々の家は、あの崩壊で失った。家だけではない、御三家の者の中で亡くなった人もいる。神前先輩は、親を亡くしたが本人は涙一つ見せなかった。

 本人曰く、「今は泣くつもりはないわ。悪神がいる以上、あれを殺すまで涙は流さない」と。

 俺は何も言わない。ただ、仲間に住む場所を用意するくらいだ。

 さて、俺の要望通りに奏と遥は、先輩たちに神殺しの存在理由を話してくれた。

 先輩たちは、二人の話を聞き怒るわけでも驚くわけでもなく淡々と受け止めていた。



 神前先輩は、



「神殺しについて色々と謎が多かったし、先生たちから聞いた話以外にも何かあるんじゃ、とは思ってたから驚きも怒りもしないわ」



 桜が淹れてくれた紅茶と、燐が用意してくれたクッキーを飲食しながらそう口にする。

 この家には、以前から賞味期限が長いお菓子や食べ物を備蓄している。理由は、食べることが大好きなヨルムンガンドのために常に補充していたからだ。

 そのお陰でレトルト類や茶葉、紅茶やクッキーなどが今も残っている。

 東雲先輩も、神前先輩と同意見だろう紅茶を飲みながら、



「そうだね。むしろ、双葉くんたちの話のお陰で納得できたよ。僕らはどこまでいっても、悪神の道具だったということが。まあでも、それは理由と真実を知らない頃の話だけどね」



 不敵な笑みを作り言う。

 さすが、先輩たちだ。この話を聞いても動揺すらせず前向きに捉えるか。

 立花先輩は、相変わらず神前先輩に甘え今も膝枕をしてもらいながら眠ってるな。ま、この二人はこのままでいてほしいが。

 神前先輩は、奏と遥を見つめ笑顔であること投下していく。



「逢真が連れてきたみたいだし、仲間として歓迎するわ。私は、神前真冬。で、膝の上で眠ってる彼女は立花陽菜ね。私の恋人なのよ。”ヒナ”って呼んでいいのは私だけだから、気安く呼んだり傷一つでもつけたら殺すわ♪ そこんとこを覚えておいて。よろしく」



 自己紹介の最後に、俺たちに言った時と変わらない圧をぶっ込んでくるな。

 ほら見ろ、その説明に二人して頬を引き攣らせ乾いた笑みしか返せなくなってるじゃないか。



「え、えっと、双葉奏です……」

「二条遥……」



 おまけに、名前しか言えなくなってるだろ。



「僕は、東雲春人。桜の兄だよ。よろしくね、二人共」



 こちらは笑顔で返してくれて、ほっとする奏と遥。最後に、まだ自己紹介をしていない燐が二人に話す。



「私は、秋山燐だ。地下で会ったから知っているかもしれないが、炎を扱う巫女であり夏目の友人でもある。よろしく頼む。あと一人、海堂紅がいるが今は出払っていていないが、戻って来た時に紹介しよう」



 伸ばす燐の手を握り返し奏から返す。



「よろしく、秋山さんにみなさん!」



 奏に続き遥も短い挨拶を交わす。



「お願いします。燐さん、真冬さんに春人さん」



 これで、それぞれの自己紹介が終わったな。ということは、次にすることは三人が調達してきた物資の確認業だ。

 全員で食料、飲料、日用品と分けていく。その作業中に情報共有をする。

 神山町に残っているのは俺たちだけ。美哉や燐たちの実家の人は、それぞれ別の町へ避難をしている。



「無事な物を探すのも、そろそろきつくなってきたわ」

「洗剤やその他の諸々もなくなってきている」

「食料は、賞味期限があるから物によって備蓄にも限界があるからね」



 神前先輩、燐、東雲先輩がそう口にする。いくら、俺たちだけとはいえ減る一方で供給がなければ底がつくのは明白。

 だが、今は行動に起こせない。美哉は眠ったまま、塔や現在の悪神の情報が少ないため迂闊に動けない。

 こうして、ギリギリの生活を続けていられるのは、この街に残る者が俺たちだけで物資を確保できる面と、桜にこの家を護るための結界を張り続け無傷でライフラインが生きているからだ。

 しかし、それもいずれ限界を迎えるだろうな。半年は保っているが、あとどれくらい保てるかは分からない。



「このまま、続くとさすがに無理があるか……」



 そうこぼす俺の頭に直接、声が届く。



 ――主様!



 ヘルの声! 何かあったのか!?



 美哉のそばにいるはずのヘルが、慌てた様子でリビングへ入ってくるなり俺を呼ぶ。



「主様! み、美哉様が!」

「……っ!」



 ヘルの言葉に、勢いよく立ち上がりリビングを慌てて出る。

 美哉に何かあった!?

 息が苦しい……。階段を駆け上がる俺のあとを相棒たちがついて来る。



「美哉様が、目を覚ましたのです!」

「なにっ!?」



 ヘルの一言に心臓が跳ね上がる。

 美哉が、美哉が目を覚ました……!

 自室の部屋の扉を開け放つ俺の視界に映ったのは、



「夏目……?」

「――っ!」



 上体を起こし、部屋に入ってきた俺を見つめる美哉の姿だった。
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