案内役という簡単そうに見えるお仕事

ゆー

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分からせるための旅路

第9話

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 路地裏へ逃げても、見失うまで追いかけてくる屍人の群れ。

 ちっ。面倒なことになった!

「真冬!」

 路地から出ると空き家に素早く入り身を隠す。

「声を出すな」
「ええ……」

 小声で真冬に言い、抱き寄せ屍人の群れが過ぎ去るまで息を殺す。

 唸り声、いくつもの足音が隠れた空き家の前を通っていく。僕の心臓も、抱き寄せた真冬から伝わる心臓も早鐘を打つ。

 考えろっ……! 考えろっ……!

 あれを使えばこんな数、どうとでもなるがそう上手くいかない事情もある。いざって時に使えないからなあれは……。

 ならどうする? このままここで隠れていても状況が変わるわけでもない……。なら、外に出て戦う? いや、それは無理だ。真冬を護りながら、その上で逃げ道を確保など僕には不可能だ。

 じゃあ、どうする……!

 思考を巡らせ策を考えるが答えは出ない。
 真冬を見れば、少し青い顔をしていた。

「真冬、引き返すか?」

 そう小声で訊く。
 ここで引き返してくれれば、計画は成功で死ぬ確率も下がる。案内の途中で死なれては意味がない。

「ひ、引き返したりしないわ……」

 やれやれ。頑固だな……。

 真冬は深呼吸で落ち着かせようとする。足音は遠くなり、とりあえずは難を逃れたと思っていいだろう。問題は、このあとどうするかだが……。
 外の様子を伺うため、そっと顔を隙間から出し見る。

「――っ⁉」

 まずいっ!

「真冬!」
「え、なに⁉」

 真冬を抱き寄せたまま奥へと飛び退く。数秒後、僕らがいた場所に一体の屍人が壁を突き破り飛んできた。

 おいおい! いったいなんなんだ⁉ 屍人が宙を舞ってこちらに飛んでくるなんて! あと数秒、遅れていたら僕も真冬も巻き込まれて怪我では済まないぞ!

 僕の行動に驚いていた真冬も、飛んできた屍人を見て理解したようで固まる。

「真冬、固まってる場合じゃない! すぐ、ここを離れるぞ!」

 これだけ大きな音を出せば離れていった屍人も気づきこちらへ向かって来る!

 真冬を起こし手を取って空き家から出ていく。出てすぐ、派手な音で屍人が戻ってくる姿を捉え、また走って逃げる羽目に。

 背後から、

『ウウウウゥァアアアアアアアッ――』

『アアアアアアアアアアアアアッ――』

 と、低い唸り声と獲物を逃さんと興奮気味の不気味な声が聞こえる。
 振り返る余裕など僕にも真冬にもない!

 押し寄せる目に見える恐怖がすぐそこまで迫ってくる! 僕にも恐怖を感じる感情はある! それは真冬も同じだろう!

 路地へ逃げることはせず広場へと出た僕ら。

 しかし、

「くそっ! あちこちから声が反響してどこに屍人の群れがいるのか分からないっ!」

 足音もするせいで耳だけじゃ判断できない!

 どの道だ⁉ どうしてこの広場は、分かれ道が五つもある⁉
 まずい! 一瞬の迷いが死を分ける!

「お二人さん、こっちよ!」

 焦り、迷う僕らに声がかけられた。
 九時の方向に目を向けれれば、ショートボブの女性が手招きをしている。

「早く! こっちへ!」

 迷う暇もなく、手招きする女性の方へ走る。促されるまま、二階建ての家へと入る僕と真冬だった。
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