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分からせるための旅路
第8話
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人工の太陽の光が降り注ぐ道を自転車で走らせ、東三番街を目指す僕と真冬。到着まで、三日といったところか。
東三番街へ入るためには、三つの街を越えなければならない。無論、その街に屍人もいる。いくら、案内役の仕事をしているからといって絶対に安全なルートなんてもの、この地下街には存在しない。
なのに、
「案内は、ナイに任せるわ。ナイなら、東三番街まで案内してくれるのでしょう?」
と、事前に説明をした時、真冬はそう言った。信じ切った顔で言われ、少し心が痛むがそれでも当初の計画を遂行する。
まず、一つ目の街へ向かう。途中、休憩を挟む。
数時間、走らせた脚を休ませる真冬。その目は、青く晴れた空を見上げ。そんな彼女に、僕は質問を投げかけた。
「真冬は、どうしてそこまでして死んだ者に会いたがる?」
僕の問いかけに顔を向ける。その表情は、不機嫌だったがそれは一瞬のこと。しばらく、黙り込みそして口を開き語る。
「景かげとは幼なじみなの。一番、仲が良くてずっと一緒だった。私、あまり感情を表に出さないし言い方も時々、きつくなって周りに誤解や不快を買うこともあったわ。そんな私に、手を差し伸べてくれたのが景」
そう語る顔は、優しい笑みを浮かべ景という人に想いを馳せる真冬。
「景が、そばにいてくれると今まで感じなかった楽しいことも、嬉しいことも全部、共感できて私を満たしてくれる。私の母は、漫画家で百合系の漫画を描くの。それで同性恋愛を知ったわ。それからよ、徐々に心が狂い始めたのは」
「どういうことだ? 狂い始めたって?」
「景を独占したい、私だけを見て欲しい、求めて欲しい、誰かを好きになるなんて許さない、愛するのも愛していいのも私だけ、依存して、他には何もいらないから死ぬまでそばにいて欲しい、景の全てが欲しいって貪欲に」
その言葉を紡ぐ真冬の目は愛おしそうに、そしてどこまでも景に対して歪んだ狂愛だ。
ここまで想うが故に、景が死んだことに耐えられないということなのだろう。
「……そうか」
僕は、その一言しか答えられなかった。
休憩を終え、また自転車を走らせる。そうして、一つ目の街の入口に着く。
その街は、明治時代を連想させる街並み。しかし、その街を抜けなければいけない。
まあ、この街はそれほど屍人の数は多くない。僕一人でも十分に相手にできるし、恐怖を教えるにはちょうどいいはず。
「真冬。このまま大通りを突っ切る」
「路地は使わないの? そちらの方が安全な気もするけど」
「自転車だと路地には入りにくい。それに、路地で遭遇した時に対処が難しい」
「そうなのね。分かったわ」
あっさり受け入れる真冬。
僕の言葉を疑いもしないのか。そちらの方が、僕としては楽でいいが。
真冬の言う通り、路地を使った方が安全だ。自転車でも通れる路地はいくらでもある。だが、それでは計画を遂行できない。だから、敢えて危険がある道を選ぶ。
真冬になんとしても死にたくない、生きたいと思わせるために。
「行くぞ」
「ええ」
ペダルを踏み込み自転車を走らせる。街に入ってすぐに屍人の姿を目視できた。
爛れた肉体、死臭を放ち、眼球が飛び出しそうなほど目を開き、汚い歯を見せつけながら僕らに気づき向かって来る。
そんな屍人を、片足で腹部を狙って後方へ突き飛ばす。屍人は簡単に、突き飛ばされ地面に背中を打ち起き上がる前に離れる。
一体、二体、三体と繰り返し進むのだが……。
どういうことだ……! 減る一方どころか、増えるぞ⁉
おかしい! この街の屍人の数は多くないはず! 初心者向き、とまで言われている街だぞ⁉ それがどうして増える⁉
『アア、アアアアアアッ』
『ガチ、ガチガチッ』
『ハァアアアアアア、アッアッアッ』
開きっぱなしの口からもれる低い声、歯を鳴らし剥き出しの目を向け、臭い息を吐き獲物を前に涎を垂れ流す。
くそっ……!
冷や汗が流れていく。
大通りには精々、十体ほどだと高を括っていた! それがまさか、三十以上の屍人が大通りにいるなんて……!
この街には何度も出入りしているから地形も覚えているし、屍人のおおよその数も把握しているつもりだった! が、これは予想外だ!
突き進むなんて到底不可能。
「真冬! 自転車は捨てる。来い!」
「え、ええ……!」
真冬も、さすがにこの状況で突き進むなど考えておらず、僕の言葉にすぐ反応して自転車を乗り捨て共に走る。
「ナイ。どうするの⁉」
「今は、逃げるしかないだろ! こっちだ!」
真冬の手を取り路地へと逃げ込む。その姿を捉えている屍人の群れが唸り声を上げ一斉に、僕らを喰らおうと押し寄せてきた。
東三番街へ入るためには、三つの街を越えなければならない。無論、その街に屍人もいる。いくら、案内役の仕事をしているからといって絶対に安全なルートなんてもの、この地下街には存在しない。
なのに、
「案内は、ナイに任せるわ。ナイなら、東三番街まで案内してくれるのでしょう?」
と、事前に説明をした時、真冬はそう言った。信じ切った顔で言われ、少し心が痛むがそれでも当初の計画を遂行する。
まず、一つ目の街へ向かう。途中、休憩を挟む。
数時間、走らせた脚を休ませる真冬。その目は、青く晴れた空を見上げ。そんな彼女に、僕は質問を投げかけた。
「真冬は、どうしてそこまでして死んだ者に会いたがる?」
僕の問いかけに顔を向ける。その表情は、不機嫌だったがそれは一瞬のこと。しばらく、黙り込みそして口を開き語る。
「景かげとは幼なじみなの。一番、仲が良くてずっと一緒だった。私、あまり感情を表に出さないし言い方も時々、きつくなって周りに誤解や不快を買うこともあったわ。そんな私に、手を差し伸べてくれたのが景」
そう語る顔は、優しい笑みを浮かべ景という人に想いを馳せる真冬。
「景が、そばにいてくれると今まで感じなかった楽しいことも、嬉しいことも全部、共感できて私を満たしてくれる。私の母は、漫画家で百合系の漫画を描くの。それで同性恋愛を知ったわ。それからよ、徐々に心が狂い始めたのは」
「どういうことだ? 狂い始めたって?」
「景を独占したい、私だけを見て欲しい、求めて欲しい、誰かを好きになるなんて許さない、愛するのも愛していいのも私だけ、依存して、他には何もいらないから死ぬまでそばにいて欲しい、景の全てが欲しいって貪欲に」
その言葉を紡ぐ真冬の目は愛おしそうに、そしてどこまでも景に対して歪んだ狂愛だ。
ここまで想うが故に、景が死んだことに耐えられないということなのだろう。
「……そうか」
僕は、その一言しか答えられなかった。
休憩を終え、また自転車を走らせる。そうして、一つ目の街の入口に着く。
その街は、明治時代を連想させる街並み。しかし、その街を抜けなければいけない。
まあ、この街はそれほど屍人の数は多くない。僕一人でも十分に相手にできるし、恐怖を教えるにはちょうどいいはず。
「真冬。このまま大通りを突っ切る」
「路地は使わないの? そちらの方が安全な気もするけど」
「自転車だと路地には入りにくい。それに、路地で遭遇した時に対処が難しい」
「そうなのね。分かったわ」
あっさり受け入れる真冬。
僕の言葉を疑いもしないのか。そちらの方が、僕としては楽でいいが。
真冬の言う通り、路地を使った方が安全だ。自転車でも通れる路地はいくらでもある。だが、それでは計画を遂行できない。だから、敢えて危険がある道を選ぶ。
真冬になんとしても死にたくない、生きたいと思わせるために。
「行くぞ」
「ええ」
ペダルを踏み込み自転車を走らせる。街に入ってすぐに屍人の姿を目視できた。
爛れた肉体、死臭を放ち、眼球が飛び出しそうなほど目を開き、汚い歯を見せつけながら僕らに気づき向かって来る。
そんな屍人を、片足で腹部を狙って後方へ突き飛ばす。屍人は簡単に、突き飛ばされ地面に背中を打ち起き上がる前に離れる。
一体、二体、三体と繰り返し進むのだが……。
どういうことだ……! 減る一方どころか、増えるぞ⁉
おかしい! この街の屍人の数は多くないはず! 初心者向き、とまで言われている街だぞ⁉ それがどうして増える⁉
『アア、アアアアアアッ』
『ガチ、ガチガチッ』
『ハァアアアアアア、アッアッアッ』
開きっぱなしの口からもれる低い声、歯を鳴らし剥き出しの目を向け、臭い息を吐き獲物を前に涎を垂れ流す。
くそっ……!
冷や汗が流れていく。
大通りには精々、十体ほどだと高を括っていた! それがまさか、三十以上の屍人が大通りにいるなんて……!
この街には何度も出入りしているから地形も覚えているし、屍人のおおよその数も把握しているつもりだった! が、これは予想外だ!
突き進むなんて到底不可能。
「真冬! 自転車は捨てる。来い!」
「え、ええ……!」
真冬も、さすがにこの状況で突き進むなど考えておらず、僕の言葉にすぐ反応して自転車を乗り捨て共に走る。
「ナイ。どうするの⁉」
「今は、逃げるしかないだろ! こっちだ!」
真冬の手を取り路地へと逃げ込む。その姿を捉えている屍人の群れが唸り声を上げ一斉に、僕らを喰らおうと押し寄せてきた。
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