案内役という簡単そうに見えるお仕事

ゆー

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救う方法はただ一つ

第17話

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 目の前に突然、現れた僕を敵と認識したようで敵意を剥き出しにする秋斗。

 それでいい。僕を見ろ! 他の連中など、放っておけ!

『アアァァガガガがアアアアアアアアアアアアッ――!』

 野太く獣のような咆哮を上げる秋斗。その声に恐怖した、生き残った連中はその場から逃げ出す。
 対峙する僕と秋斗。

 最初に動いたのは秋斗だ。腕を振り上げ、地面を割るまでにおよそ三秒。
 その三秒間に僕は、秋斗との間合いを詰める。懐に入り込むと、腰から赤黒い二つの尻尾を出現させる。
 尻尾に見えるそれは、尻尾ではなく獣の頭部を持ち意思があり秋斗の振り上げた腕に噛みつく。

『イイイイゥゥウウウウウウウウウウウッ!』

 秋斗は、激痛のあまり叫び獣を振り払おうと腕を上下左右に振り乱す。
 巻き込まれないよう後退。

 腰から生え伸びる赤黒い獣の胴体は、蛇のよに太く前足も後ろ足もない頭だけの歪な二頭。それぞれ一本の角を生やし、顔は豹に似て口は獅子の口のよう。鋭く生え揃った牙が、銃弾を通さなかった皮膚に深々と刺さり血飛沫が飛び散る。

『ウウウウウウウウァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 秋斗は、一頭の頭を鷲掴み無理やり引き剥がすと地面に叩きつけた。もう一頭は、胴体を引っ張り剥がすとハンマー投げのように振り回しビルへ力任せに投げる。

「――っ⁉」

 獣たちが受ける衝撃と投げ飛ばされる獣に引っ張られ、僕も一緒にビルの壁に身体を打ちのめされる。

「がはっ……」

 口から胃液を吐き出す。

 ……うぐっ、い、いってぇ……。

 血を吐き出さなかったのはいいが、上手く息が吸い込めないっ……。
 くそっ……。

 第二世代の人体実験で僕の体内に植えつけられた能力。それは、神が気まぐれに残した神話に登場する獣の意思と肉体の一部。僕はそれに名前をつけた。

 クロ、アカと。

 そして、クロとアカが受ける痛みも衝撃も全て、僕が引き受ける代わりに高い身体能力と獣たちを制御できる能力を得た。

 頭の中に流れる過去の映像。この地下街へ来た日、実験を受け続けた日々の。

 そんな僕の視界に、秋斗の人間の頭など簡単に潰せる大きい拳が迫る。

「ナイ……!」

 遠くから真冬の悲痛な叫びが聞こえる。
 拳は真っ直ぐ、僕を襲う。

 ――クロ、アカ!

「うぐっ……!」

 秋斗の拳を、念じ呼んだクロとアカの胴体が受け止める。が、二頭を通じて僕の身体に届く痛みと衝撃。

「ゲホッ……」

 腹に重い打撃で内臓が潰れそうだっ……。このままだと、まずいっ……。

 秋斗の拳は一発では済まなかった。

『ウウウウッ、ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ――!!!!」

 ――――っ⁉

 ドゴッ、ボゴッ、ドンッ。

 という鈍い音が耳に響く。
 何度も、クロとアカに拳で殴り続ける秋斗。その度に、僕の身体に走る激痛と息苦しさで声が出せないっ……。

「うっ、がっ、はぁっ……」

 く、苦しいっ……。い、息が上手く、す、えないっ……。
 く、口の中が血の味でいっぱいじゃないか! くそっ!

「ちょ、調子に、乗るなっ!!」

 ――クロ、拳に噛みつけ!

 ――アカ、腕に巻きつけ!

 目を開き、獣に命じる。その命令通りに、拳に噛みつき腕に巻きつく。
 秋斗の攻撃が緩み、その隙きに横へ転がり距離を取る。

「ゲホッ、ゴホッ……」

 ビチャ、と地面に血を吐き出す。

「はあっ、はあっ……」

 秋斗は拳に噛みつくクロ、腕に巻きつくアカを振り払い脚を上げ地面にクレーターを作り、それを何度も繰り返す。
 轟音と地響き、煙を上げ視界を覆い尽くす周囲。

「ちっ……!」

 そんな煙の中から飛び出し、クロとアカを左右に引き連れ体勢を整える。
 ほんと、なんていう威力だよ! お陰でこっちは、ボロボロだよ! 内臓がいっていないだけまだマシなのだろうけど。

 それでも、痛みは全身に広がって動くだけでも苦しい。クロとアカがいたから、この程度で済んでいる。これが、まともに当たれば骨は折れるだろうし、内臓も無事では済まないな。

 距離と取り辺りを確認する。
 よしっ、秋斗の背後に回れたのは運がいい。

「クロ、アカ!」

 煙で視界が悪く、秋斗が気づき動き出す前に決着をつける!

 ――秋斗の足首を狙え!

 そう、二頭に念じクロとアカの胴体が伸びる。それを追うように僕も走り、秋斗の背中へ飛びついた。
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