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救う方法はただ一つ
第16話
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轟音と共に地面が揺れた。
「きゃっ」
「真冬!」
体勢を崩しそうになった真冬を抱きとめる。揺れは長く続き、遠くから煙が立つのが視認できた。
「ナイ……」
「ちっ。面倒ごと間違いなし、というやつだ」
「じゃあ……」
「ああ。あの煙が上がる場所に原因があるのだろう」
揺れが収まるまで動かず抱き合ったままの僕ら。揺れが引き、僕はただ一点を見つめる。それから、木藤と目を合わせ頷き合う。
煙が上がる場所へ向かうと、そこには数十人の人と巨人が戦闘を繰り広げていた。
声を荒げる男の声、指示を出す女の叫び。剣を握る数人が巨人に向かい振るい、援護射撃と仕留めようと急所を狙う銃撃。
しかし、巨人は怯む様子もダメージを受けている感じもせず成人男性ほどの太さのある腕を横へ一閃。その瞬間、衝撃波が起こり接近戦の数人が後方へ吹き飛ぶ。
『オオオオオオオオオオッ!』
低い獣の咆哮を上げ、腕を振り上げ手を組み振り下ろし地面を割る。
「まずいっ⁉ 真冬、木藤! 離れるぞ!」
真冬を抱え、木藤も僕の言葉に反応しその場から距離を取る。数える時間を与える暇なく、地面に衝撃が巻き起こり亀裂が走り割れていく。
数メートル離れた僕らの下まで亀裂が届く。幸い、割れることはなかったが。
それはそうと、なんて威力だ……! あの手、成人の頭を包むほどの大きさはある! それにあの太い腕で殴られれば最悪、内蔵が損傷して即死くらいの力もあるぞ!
なんなんだ、あの巨人は⁉
割れた衝撃で体勢を崩した中に突っ込む巨人。
銃弾も分厚い皮膚が護り、動きを止めるだけの効果がない。
巨人の突進で、一人また一人と投げ飛ばされビルの壁に直撃、あるいは高く投げられ地面に叩きつけられ動かなくなる。
他にも、巨人から見れば木の枝ほどの細い腕を片手で握り潰し、横たわる彼らを足で踏み潰し、胴体を握り拳で殴られくの字になって血を吐きながら吹き飛び、脚を捕まれ何度も地面に叩きつけ骨が砕ける音が鳴り響く。
いつしか周りは死体と血の臭いが充満し地獄絵図と化していた……。
その光景に僕も、真冬も言葉を失くす。
真冬は、人がこうも簡単に死んでいく現状を目の前にして身体が固まり動けなくなっていた。僕もこんな光景を見たのは久しぶりだ……。
人が死ぬ姿を何百回と見てきたはずなのに、身体が鉛のように重く動かせないなんて……。
「……ダメだ……。やめるんだ……」
その声に首だけがようやく動いた。声の主は木藤。何度も、同じことを繰り返し言う木藤。
何を言っている……。そんなことを呟いたところで、あの巨人は止めることなんかしないだろ……。
そう思いもう一度、視線を戻してそこで気がついた。
木藤が説明していた特徴に。
「冗談だろ……」
そんなことしか言えない。
だって、泣きぼくろと口元にあるもう一つのほくろが見えた。
最悪だ……。こんな場面に出くわすなんて誰が予想できるかよ……。
あの巨人は……木藤が助けたいと言っていた秋斗だ……。
同じ言葉を繰り返す木藤の肩を揺らす。
「おい、木藤! 秋斗を止める方法はないのか⁉」
「やめるんだ……」
「木藤!!」
「――っ! あっ、え……」
やっと、僕を見たな。そんな木藤の肩を揺らしもう一度、声を荒げながら訊く。
「秋斗を止める方法は⁉」
「あ、ああ……! これを、秋斗の首に打てば効果が現れるはず……!」
木藤から受け取った白い小さな箱。それをポケットにしまい込み、そばにいる真冬へ。
「真冬、木藤と一緒に離れていろ。いいな?」
「ナイ……。ええ」
真冬は一瞬、何かを言いかけたが飲み込み僕の言葉に従う。木藤は、真冬を連れて離れたビルに身を隠す。それを確認してから、僕はあの子たちに念じる。
――いけるよな?
――クゥン。
――オォン。
そう身体の内側から聞こえる獣の声。
未だに暴れ続ける秋斗。生き残った者たちとの戦闘は、全員が死ぬまで続くだろう。本当なら、真冬に見せたくなかった。あの能力も、その姿も……。
それでも、この状況を止めなければ真冬に危険が及ぶ。躊躇っている場合ではない。
「くそっ……」
やるしかない……!
深く息を吸い込み、戦場のど真ん中を目指して駆ける。
視界の端に、秋斗によって殺された死体が映り込む。見るも耐えないもの、形は辛うじて残っているもの。鼻をつく血の臭いで顔をしかめる。
この地下街で死体を見るのは珍しくない。なにせ、死ぬ時なんか一瞬なのだから。
屍人がいないのは、秋斗の存在が大きいからなのだろう。恐れを感じる器官があるかは知らないが、でもそうでなければこの場所に屍人が一体もいないことに説明がつかない。
何より、銃弾も剣も通じないと分かれば、自分の身を護るために逃げてくれればいいものを。
などと、考えならが脚に力を込める。
勢いよく踏み込み高く飛び上がった。数メートルは飛び上がり、視界に戦場を捉える。対峙する間に頭上から降り立ち叫ぶ。
「死にたくなければ、今すぐにここから離れろ!!」
「きゃっ」
「真冬!」
体勢を崩しそうになった真冬を抱きとめる。揺れは長く続き、遠くから煙が立つのが視認できた。
「ナイ……」
「ちっ。面倒ごと間違いなし、というやつだ」
「じゃあ……」
「ああ。あの煙が上がる場所に原因があるのだろう」
揺れが収まるまで動かず抱き合ったままの僕ら。揺れが引き、僕はただ一点を見つめる。それから、木藤と目を合わせ頷き合う。
煙が上がる場所へ向かうと、そこには数十人の人と巨人が戦闘を繰り広げていた。
声を荒げる男の声、指示を出す女の叫び。剣を握る数人が巨人に向かい振るい、援護射撃と仕留めようと急所を狙う銃撃。
しかし、巨人は怯む様子もダメージを受けている感じもせず成人男性ほどの太さのある腕を横へ一閃。その瞬間、衝撃波が起こり接近戦の数人が後方へ吹き飛ぶ。
『オオオオオオオオオオッ!』
低い獣の咆哮を上げ、腕を振り上げ手を組み振り下ろし地面を割る。
「まずいっ⁉ 真冬、木藤! 離れるぞ!」
真冬を抱え、木藤も僕の言葉に反応しその場から距離を取る。数える時間を与える暇なく、地面に衝撃が巻き起こり亀裂が走り割れていく。
数メートル離れた僕らの下まで亀裂が届く。幸い、割れることはなかったが。
それはそうと、なんて威力だ……! あの手、成人の頭を包むほどの大きさはある! それにあの太い腕で殴られれば最悪、内蔵が損傷して即死くらいの力もあるぞ!
なんなんだ、あの巨人は⁉
割れた衝撃で体勢を崩した中に突っ込む巨人。
銃弾も分厚い皮膚が護り、動きを止めるだけの効果がない。
巨人の突進で、一人また一人と投げ飛ばされビルの壁に直撃、あるいは高く投げられ地面に叩きつけられ動かなくなる。
他にも、巨人から見れば木の枝ほどの細い腕を片手で握り潰し、横たわる彼らを足で踏み潰し、胴体を握り拳で殴られくの字になって血を吐きながら吹き飛び、脚を捕まれ何度も地面に叩きつけ骨が砕ける音が鳴り響く。
いつしか周りは死体と血の臭いが充満し地獄絵図と化していた……。
その光景に僕も、真冬も言葉を失くす。
真冬は、人がこうも簡単に死んでいく現状を目の前にして身体が固まり動けなくなっていた。僕もこんな光景を見たのは久しぶりだ……。
人が死ぬ姿を何百回と見てきたはずなのに、身体が鉛のように重く動かせないなんて……。
「……ダメだ……。やめるんだ……」
その声に首だけがようやく動いた。声の主は木藤。何度も、同じことを繰り返し言う木藤。
何を言っている……。そんなことを呟いたところで、あの巨人は止めることなんかしないだろ……。
そう思いもう一度、視線を戻してそこで気がついた。
木藤が説明していた特徴に。
「冗談だろ……」
そんなことしか言えない。
だって、泣きぼくろと口元にあるもう一つのほくろが見えた。
最悪だ……。こんな場面に出くわすなんて誰が予想できるかよ……。
あの巨人は……木藤が助けたいと言っていた秋斗だ……。
同じ言葉を繰り返す木藤の肩を揺らす。
「おい、木藤! 秋斗を止める方法はないのか⁉」
「やめるんだ……」
「木藤!!」
「――っ! あっ、え……」
やっと、僕を見たな。そんな木藤の肩を揺らしもう一度、声を荒げながら訊く。
「秋斗を止める方法は⁉」
「あ、ああ……! これを、秋斗の首に打てば効果が現れるはず……!」
木藤から受け取った白い小さな箱。それをポケットにしまい込み、そばにいる真冬へ。
「真冬、木藤と一緒に離れていろ。いいな?」
「ナイ……。ええ」
真冬は一瞬、何かを言いかけたが飲み込み僕の言葉に従う。木藤は、真冬を連れて離れたビルに身を隠す。それを確認してから、僕はあの子たちに念じる。
――いけるよな?
――クゥン。
――オォン。
そう身体の内側から聞こえる獣の声。
未だに暴れ続ける秋斗。生き残った者たちとの戦闘は、全員が死ぬまで続くだろう。本当なら、真冬に見せたくなかった。あの能力も、その姿も……。
それでも、この状況を止めなければ真冬に危険が及ぶ。躊躇っている場合ではない。
「くそっ……」
やるしかない……!
深く息を吸い込み、戦場のど真ん中を目指して駆ける。
視界の端に、秋斗によって殺された死体が映り込む。見るも耐えないもの、形は辛うじて残っているもの。鼻をつく血の臭いで顔をしかめる。
この地下街で死体を見るのは珍しくない。なにせ、死ぬ時なんか一瞬なのだから。
屍人がいないのは、秋斗の存在が大きいからなのだろう。恐れを感じる器官があるかは知らないが、でもそうでなければこの場所に屍人が一体もいないことに説明がつかない。
何より、銃弾も剣も通じないと分かれば、自分の身を護るために逃げてくれればいいものを。
などと、考えならが脚に力を込める。
勢いよく踏み込み高く飛び上がった。数メートルは飛び上がり、視界に戦場を捉える。対峙する間に頭上から降り立ち叫ぶ。
「死にたくなければ、今すぐにここから離れろ!!」
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