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奪われどちらでもない案内役
第23話
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秋斗のそばに駆け寄る木藤。
「秋斗……! 秋斗……!」
何度も名前を呼ぶ。すると、ゆっくりと目蓋が開き木藤より先に僕へ。
「ありがとう……」
と、消え入りそうな声で礼を口にする。そして、木藤へ謝る秋斗。
「先生、ごめんなさい……」
「違う……。違うよ。秋斗が謝る必要なんかない……。悪いのは、何もしてやれなかった俺なんだ……! 俺が、俺がしないといけないことだったのに、何もできなくて……。その結果、秋斗をもっと苦しめることに……。ごめんよ、秋斗……。本当にごめんっ……」
泣きながら、秋斗の顔に触れ謝り続ける木藤。
そんな木藤に秋斗は首を微かに横へ振り、違うと。
「先生のせいじゃないよ。先生に出会えたから、ぼくは生きてこられた。先生のお陰なんだよ。だから、泣かないで。最期に、先生に会えて嬉しいんだ。これで、みんなのところに逝ける」
そう笑って目蓋を閉じていく。一筋の涙を流しながら……。
秋斗は、木藤に看取られ亡くなった。
息を引き取った秋斗の身体に変化が起こる。
巨人サイズだった身体が縮み、僕と変わらないサイズへと。これが本来の秋斗の身長なのだろう。しかし、本来の姿に戻った途端に肉体が灰に。
これはいったい……?
どうして、秋斗の身体が灰になっていくんだ?
疑問だからけの僕に木藤が説明をしてくれる。
「肉体の活動を終えると、本来の姿に戻るんだけど実験の影響で命が尽きた時、灰になって何も残らなくなるんだよ……」
……そうなのか。それは、知らなかった……。ということは、僕も死ねば灰になって何も残らないということなのか……。
秋斗の最期を見送り、木藤に支えられながら車まで戻る。
「ナイくん。治療するから、そこに座って」
街を出て、入口付近に停めていた車の下まで戻ってきた僕ら。その頃には日も沈み、辺りは暗くなり始めていた。車の近くに焚き火を起こし、折りたたみの椅子に座り木藤が持ってきていた医療キットで治療を受ける。
「ナイ。大丈夫なの?」
「ああ。真冬も、疲れたろ? 座席を使っていいから休むといい。僕はこのまま、木藤に治療を受けるから」
「でも……」
「気にするな。こういうことは今までも経験している」
「分かったわ……」
僕を心配する真冬を少々、強引にだが車で休ませる。あまり、傷だからけの身体を見られたくはないからな。
前に座る木藤に、服を脱いで傷を見せ消毒やガーゼ、包帯と治療を受ける。
しばらく、会話はない。真冬も、やはり肉体的にというより精神的に疲れたのだろう。助手席で丸まってすぐ眠ってしまった。
まあ、色んなものを見て聞かせてしまったからな。
腕や脇腹、身体中にガーゼや包帯を巻かれた僕は焚き火を前に休む。
炎の揺らめきを見て、パチパチと音を聞く僕に木藤が色々と聞いてくる。
「あまり無茶をしない方がいい。消えない傷を増やすのはよくないよ」
「急になんだ?」
炎のゆらめきから顔を上げ木藤を見る。
僕の身体を見た感想か? 確かに、身体中には傷が絶えないがそれをどうして今に言う?
「傷だらけだとこの先、困るだろう?」
「………………」
は? 困る? 僕が? なぜ?
疑問符しか浮かばない僕の思考回路。
木藤は、いったい僕に何が言いたい? それと、その父親面みたいな言い方はやめろ。気持ち悪いぞ。
「こんな地下街でも出会いはあるはずだから」
「……………………」
本当に何が言いたいんだ? 言っている意味が分からない……。
木藤は、疑問だらけの僕を置いて言葉を続けた。
「傷を負い続けて、いざって時に心からそう思える人に出会っても、子が成せない身体だと嫌だろう? 好きな人との子を望むのは誰でも同じ――」
「余計なお世話だ」
木藤の話を遮る。声に怒気を含み睨みつける。
何が言いたいのかと思えば、そんなくだらない話を僕にするなよ。
なにが、出会いがあるはず、子が成せない身体は嫌だろう、好きな人との子を望む、だ! 僕は一度もそんなことを思ったことも望んだこともない!
怒りを顕にする僕。それでも、木藤は僕を見つめたまま話を続ける。
「いくら第二世代だとしても、幸せになる権利くらいはあるはず」
ちっ!
舌打ちと共に吐き捨てるように言い切る。
「僕らにそんなものはない」
その言葉に木藤は押し黙った。
「政府共はな、反乱や復讐を恐れて僕らから生殖機能を切除したんだよ」
僕が放った言葉に目を開き固まる木藤。僕は話を続けた。
「好きでそうなったわけじゃない。木藤は知らないかもしれないが、第二世代のほとんどが親に捨てられ、死を望まれ、育児放棄や虐待から保護された子供たちなんだよ。だけど、子供ってのは何かとお金がかかる。育てるのも一苦労だ。だから、そういう子供たちを寄せ集め実験体にされた。そして、その身に能力を植えつけられこの地下街に縛られた」
脳内に過ぎる過去。いいように、肉体を弄られ望んだわけでもない能力を植えつけられもう二度と拝むことのない太陽と地上の世界。
「それに、能力を持つ第二世代同士が子を成せばどうなると思う?」
木藤に問いかけるが何も答えは返ってこない。
「人工ではなく、能力そのものを持って産まれたその子は、復讐を望む者から利用したい奴らから狙われ奪い合い、殺し合いの始まりだろうな」
考えたくもないことだよ。産まれたその子には、なんの罪もないのに産まれた瞬間から命の危険しかないなんて……。
「だから人としての権利も、あるはずの機能も奪われ一生を縛られるのが第二世代だ」
最後に、木藤へ警告する。
「僕たちに性別はない。それと、この話を他の奴らにはするな。すれば怒りを買って殺されるから気をつけろ」
そこまで話すと会話は消えた。
焚き火のパチパチという音がやけに大きく聞こえる。
「秋斗……! 秋斗……!」
何度も名前を呼ぶ。すると、ゆっくりと目蓋が開き木藤より先に僕へ。
「ありがとう……」
と、消え入りそうな声で礼を口にする。そして、木藤へ謝る秋斗。
「先生、ごめんなさい……」
「違う……。違うよ。秋斗が謝る必要なんかない……。悪いのは、何もしてやれなかった俺なんだ……! 俺が、俺がしないといけないことだったのに、何もできなくて……。その結果、秋斗をもっと苦しめることに……。ごめんよ、秋斗……。本当にごめんっ……」
泣きながら、秋斗の顔に触れ謝り続ける木藤。
そんな木藤に秋斗は首を微かに横へ振り、違うと。
「先生のせいじゃないよ。先生に出会えたから、ぼくは生きてこられた。先生のお陰なんだよ。だから、泣かないで。最期に、先生に会えて嬉しいんだ。これで、みんなのところに逝ける」
そう笑って目蓋を閉じていく。一筋の涙を流しながら……。
秋斗は、木藤に看取られ亡くなった。
息を引き取った秋斗の身体に変化が起こる。
巨人サイズだった身体が縮み、僕と変わらないサイズへと。これが本来の秋斗の身長なのだろう。しかし、本来の姿に戻った途端に肉体が灰に。
これはいったい……?
どうして、秋斗の身体が灰になっていくんだ?
疑問だからけの僕に木藤が説明をしてくれる。
「肉体の活動を終えると、本来の姿に戻るんだけど実験の影響で命が尽きた時、灰になって何も残らなくなるんだよ……」
……そうなのか。それは、知らなかった……。ということは、僕も死ねば灰になって何も残らないということなのか……。
秋斗の最期を見送り、木藤に支えられながら車まで戻る。
「ナイくん。治療するから、そこに座って」
街を出て、入口付近に停めていた車の下まで戻ってきた僕ら。その頃には日も沈み、辺りは暗くなり始めていた。車の近くに焚き火を起こし、折りたたみの椅子に座り木藤が持ってきていた医療キットで治療を受ける。
「ナイ。大丈夫なの?」
「ああ。真冬も、疲れたろ? 座席を使っていいから休むといい。僕はこのまま、木藤に治療を受けるから」
「でも……」
「気にするな。こういうことは今までも経験している」
「分かったわ……」
僕を心配する真冬を少々、強引にだが車で休ませる。あまり、傷だからけの身体を見られたくはないからな。
前に座る木藤に、服を脱いで傷を見せ消毒やガーゼ、包帯と治療を受ける。
しばらく、会話はない。真冬も、やはり肉体的にというより精神的に疲れたのだろう。助手席で丸まってすぐ眠ってしまった。
まあ、色んなものを見て聞かせてしまったからな。
腕や脇腹、身体中にガーゼや包帯を巻かれた僕は焚き火を前に休む。
炎の揺らめきを見て、パチパチと音を聞く僕に木藤が色々と聞いてくる。
「あまり無茶をしない方がいい。消えない傷を増やすのはよくないよ」
「急になんだ?」
炎のゆらめきから顔を上げ木藤を見る。
僕の身体を見た感想か? 確かに、身体中には傷が絶えないがそれをどうして今に言う?
「傷だらけだとこの先、困るだろう?」
「………………」
は? 困る? 僕が? なぜ?
疑問符しか浮かばない僕の思考回路。
木藤は、いったい僕に何が言いたい? それと、その父親面みたいな言い方はやめろ。気持ち悪いぞ。
「こんな地下街でも出会いはあるはずだから」
「……………………」
本当に何が言いたいんだ? 言っている意味が分からない……。
木藤は、疑問だらけの僕を置いて言葉を続けた。
「傷を負い続けて、いざって時に心からそう思える人に出会っても、子が成せない身体だと嫌だろう? 好きな人との子を望むのは誰でも同じ――」
「余計なお世話だ」
木藤の話を遮る。声に怒気を含み睨みつける。
何が言いたいのかと思えば、そんなくだらない話を僕にするなよ。
なにが、出会いがあるはず、子が成せない身体は嫌だろう、好きな人との子を望む、だ! 僕は一度もそんなことを思ったことも望んだこともない!
怒りを顕にする僕。それでも、木藤は僕を見つめたまま話を続ける。
「いくら第二世代だとしても、幸せになる権利くらいはあるはず」
ちっ!
舌打ちと共に吐き捨てるように言い切る。
「僕らにそんなものはない」
その言葉に木藤は押し黙った。
「政府共はな、反乱や復讐を恐れて僕らから生殖機能を切除したんだよ」
僕が放った言葉に目を開き固まる木藤。僕は話を続けた。
「好きでそうなったわけじゃない。木藤は知らないかもしれないが、第二世代のほとんどが親に捨てられ、死を望まれ、育児放棄や虐待から保護された子供たちなんだよ。だけど、子供ってのは何かとお金がかかる。育てるのも一苦労だ。だから、そういう子供たちを寄せ集め実験体にされた。そして、その身に能力を植えつけられこの地下街に縛られた」
脳内に過ぎる過去。いいように、肉体を弄られ望んだわけでもない能力を植えつけられもう二度と拝むことのない太陽と地上の世界。
「それに、能力を持つ第二世代同士が子を成せばどうなると思う?」
木藤に問いかけるが何も答えは返ってこない。
「人工ではなく、能力そのものを持って産まれたその子は、復讐を望む者から利用したい奴らから狙われ奪い合い、殺し合いの始まりだろうな」
考えたくもないことだよ。産まれたその子には、なんの罪もないのに産まれた瞬間から命の危険しかないなんて……。
「だから人としての権利も、あるはずの機能も奪われ一生を縛られるのが第二世代だ」
最後に、木藤へ警告する。
「僕たちに性別はない。それと、この話を他の奴らにはするな。すれば怒りを買って殺されるから気をつけろ」
そこまで話すと会話は消えた。
焚き火のパチパチという音がやけに大きく聞こえる。
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