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4.ベイリー伯父さんと緊急依頼
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「送ってくださり、ありがとう御座いました。ここからは、妹と2人で大丈夫です」
城壁を越え、街への入場が済み次第、別れようとしたのだが、伯父に引き渡すまではついてくると言われたので、諦めて冒険者ギルドへ向かった。もうおじさんには用はないが、邪魔をしないならば一緒にいても構わない。
伯父の1人がギルドで働いているハズだ。面倒なアレコレを全て伯父に丸投げしてしまいたい。
石造りのビルが建ち並ぶ通りに、簡素な木造二階建ての建物がポツンと建っていた。想像していたより、大分ショボいギルド建物だった。別の街に行った方が良かったかもしれない。
そうは思うが、来てしまったものは仕方がないので、飛竜の死骸を2階の屋根の上に放置して、窓口へ向かった。
「ごめんね。ここは小さなお友達が遊びに来るところじゃないのよ。お母さんは、どこかしら?」
何か言う前から、門前払いだ。見る目のない受付嬢め! 子どもがウロウロしてるのを見かけたら、とりあえず保護しろよ。
「誤解をなさらないで下さい。私は迷子なのです。こちらで伯父が働いていると聞いて、助けを求めに参上致しました。私は、ベイリーの甥の琥珀と申します。伯父に会うことは、できますか?」
「え? 支部長の甥っこ君? ちょ、ちょっとそこで待っててね」
窓口嬢が引っ込んで、どこかへ去った。伯父の勤務日など知らなかったが、迷子の4歳児が訪ねてきたとあれば、連絡をつけるくらいはしてもらえるだろう。そう呑気に構えていたら、伯父が走ってこちらに来た。
「琥珀君? どうしたのかな。一人で来たの?」
「いえ、妹の翡翠と、行商のおじさんと、猫も一緒です」
翡翠と猫は、建物の外で遊んでいる。猫は、きっと翡翠の護衛でついてきたのだと思うので、翡翠は放置で問題ない。翡翠に声をかける人間の末路は責任を取れないが、私は4歳児なのだから、大人がなんとかすればいい。
「あ、オーランドさん、こんにちは。この度は、甥姪が大変お世話になったようで、ありがとう御座いました」
「大したおもてなしもできませんでしたが、ベイリーさんに出会えて助かりました」
「琥珀君、ちょっと今、立て込んでてね。家から遣いを出させるから、少し待っててもらってもいいかな」
お忙しいところにお邪魔してしまったらしい。言われて見れば、いつもスマートでおしゃれな伯父の後ろ髪とタイが少し乱れていた。急に来たのだから、そういうこともあるだろう。急いではいないので、待つ分には構わない。翡翠が待てるかはわからないが、私は待てる。もう4つのお兄ちゃんなのだから!
「いえ、個人的に、ベイリーさんに用事があるので、お仕事が終わるまで待たせていただきたいです」
「ごめんね。ちょっと今日は無理かな。飛竜って知ってる? あれの群れが街の近くに出たらしくてね。討伐隊を組んでいるところなんだ」
「私の用事も、その飛竜についてです。このギルドで飛竜の買取りをしていただけないか、ご相談をさせて頂きたいのです」
「買取り? 物があれば買取りはするけれども、飛竜は倒すのが大変だから、それに見合う料金はつかないかもしれないよ」
「実は今、無一文なのです。足下を見て下さって構いませんので、買取りをお願い致します。金額次第では、追加討伐もお引き受け致しますよ」
「え? 追加討伐?」
伯父は、まだ気付かないらしい。飛竜を倒して買取りを頼んだ私が、飛竜を倒せないことなどあるだろうか。見た目の年齢に誤魔化されているのかもしれないが、私の出身村は、ほぼ全員超級の魔法使いなのである。飛竜くらいなら、文字の書き取りができない年齢でも倒せる。
「私の師は、SSSランク剣士ジョエルと黒髪の村魔法軍総帥のシュバルツですよ。飛竜ごときを倒せなければ、夕飯を食べさせてもらえません。まぁ、食べたければ、もう1人の父のところへ行けばいいだけですが」
「いや、でも流石に、こんなに小さい子に討伐依頼を出す訳には」
「実は、私は、先月18歳になったのです」
「いやいやいやいや。伯父相手に、それは無理だよ。1つ2つならともかく、その年で14歳もサバをよむのは、無理だよ」
「嘘ではありません。学習年齢です。今は、大学受験対策と、語学習得に励んでおります」
「じゃあ、翡翠は13歳ね」
外で遊んでいたハズの翡翠が、会話に混ざってきた。翡翠は勉強に熱心ではないし、実年齢は4歳だ。13歳の根拠はなんだ?
「翡翠は、まだ10歳にも満たないだろう」
「1つ2つくらいじゃ面白くないって、お母様なら言うよ」
「そうだな。じゃあ、13歳にしよう。ベイリーさん、2人分の身分証を作って下さい。それで、飛竜討伐をお引き受け致します。私が失敗しても、猫がいます。討伐自体が失敗することも、私の身に危険が迫ることもありませんよ」
翡翠が連れている猫は、パパくらいしか倒せる人がいない強い魔獣なのだ。飛竜くらいは、敵じゃない。私がお願いしたくらいでは動いてくれないが、ヤル気になってさえくれたら、瞬殺だ。
「そうか。猫に討伐依頼? 猫じゃダメじゃないかな。受理されないよ」
「猫は、母の使役する魔獣として登録されています。パパのパーティに依頼を出したことにして、こっそり末端に私たちの名を連ねて頂ければ充分かと。パパなら翡翠が駄々をこねたことにしたら、まるめこめます。心配いりません」
「ええと。琥珀君、ホントに4歳?」
「18歳で登録して下さい。母よりは、しっかりしているつもりですから」
「しっかりしてるというか、年齢相応のピュアな心は、どこに置いてきたのかな」
「よし! 身分証入手の目処が立った! 風の精霊様、飛竜の下へお連れ下さい」
翡翠と猫は、伯父に預けた。ちゃちゃっと飛竜を倒して来よう。
ギルドから出たら、魔法で上空へ。360度見回して、目標を確認。そのまま飛んで飛竜に近付いたら、魔法を放つ。今度は翡翠が見ていないから、格好良く倒す必要はない。
「風の精霊様、視認できる飛竜の首を全部切り落として下さい」
ギャースギャースと騒ぐ30匹ほどの飛竜の群れは、一撃で倒すことができたと思う。だけど、1匹1匹屠っていくより、一度にまとめて倒す方が、早くて簡単な反面、効率が悪く、魔力食いだ。何が言いたいかと言うと、調子に乗りすぎて、魔力が尽きた。飛竜が全滅してたら、魔力が尽きてもなんとかなるけれど、現在、空中遊泳中なのだ。墜落するしかない。
「すっげカッコわりー」
翡翠をおいて来て、良かった。
私は、ひらひらと落ちながら、意識を失った。
城壁を越え、街への入場が済み次第、別れようとしたのだが、伯父に引き渡すまではついてくると言われたので、諦めて冒険者ギルドへ向かった。もうおじさんには用はないが、邪魔をしないならば一緒にいても構わない。
伯父の1人がギルドで働いているハズだ。面倒なアレコレを全て伯父に丸投げしてしまいたい。
石造りのビルが建ち並ぶ通りに、簡素な木造二階建ての建物がポツンと建っていた。想像していたより、大分ショボいギルド建物だった。別の街に行った方が良かったかもしれない。
そうは思うが、来てしまったものは仕方がないので、飛竜の死骸を2階の屋根の上に放置して、窓口へ向かった。
「ごめんね。ここは小さなお友達が遊びに来るところじゃないのよ。お母さんは、どこかしら?」
何か言う前から、門前払いだ。見る目のない受付嬢め! 子どもがウロウロしてるのを見かけたら、とりあえず保護しろよ。
「誤解をなさらないで下さい。私は迷子なのです。こちらで伯父が働いていると聞いて、助けを求めに参上致しました。私は、ベイリーの甥の琥珀と申します。伯父に会うことは、できますか?」
「え? 支部長の甥っこ君? ちょ、ちょっとそこで待っててね」
窓口嬢が引っ込んで、どこかへ去った。伯父の勤務日など知らなかったが、迷子の4歳児が訪ねてきたとあれば、連絡をつけるくらいはしてもらえるだろう。そう呑気に構えていたら、伯父が走ってこちらに来た。
「琥珀君? どうしたのかな。一人で来たの?」
「いえ、妹の翡翠と、行商のおじさんと、猫も一緒です」
翡翠と猫は、建物の外で遊んでいる。猫は、きっと翡翠の護衛でついてきたのだと思うので、翡翠は放置で問題ない。翡翠に声をかける人間の末路は責任を取れないが、私は4歳児なのだから、大人がなんとかすればいい。
「あ、オーランドさん、こんにちは。この度は、甥姪が大変お世話になったようで、ありがとう御座いました」
「大したおもてなしもできませんでしたが、ベイリーさんに出会えて助かりました」
「琥珀君、ちょっと今、立て込んでてね。家から遣いを出させるから、少し待っててもらってもいいかな」
お忙しいところにお邪魔してしまったらしい。言われて見れば、いつもスマートでおしゃれな伯父の後ろ髪とタイが少し乱れていた。急に来たのだから、そういうこともあるだろう。急いではいないので、待つ分には構わない。翡翠が待てるかはわからないが、私は待てる。もう4つのお兄ちゃんなのだから!
「いえ、個人的に、ベイリーさんに用事があるので、お仕事が終わるまで待たせていただきたいです」
「ごめんね。ちょっと今日は無理かな。飛竜って知ってる? あれの群れが街の近くに出たらしくてね。討伐隊を組んでいるところなんだ」
「私の用事も、その飛竜についてです。このギルドで飛竜の買取りをしていただけないか、ご相談をさせて頂きたいのです」
「買取り? 物があれば買取りはするけれども、飛竜は倒すのが大変だから、それに見合う料金はつかないかもしれないよ」
「実は今、無一文なのです。足下を見て下さって構いませんので、買取りをお願い致します。金額次第では、追加討伐もお引き受け致しますよ」
「え? 追加討伐?」
伯父は、まだ気付かないらしい。飛竜を倒して買取りを頼んだ私が、飛竜を倒せないことなどあるだろうか。見た目の年齢に誤魔化されているのかもしれないが、私の出身村は、ほぼ全員超級の魔法使いなのである。飛竜くらいなら、文字の書き取りができない年齢でも倒せる。
「私の師は、SSSランク剣士ジョエルと黒髪の村魔法軍総帥のシュバルツですよ。飛竜ごときを倒せなければ、夕飯を食べさせてもらえません。まぁ、食べたければ、もう1人の父のところへ行けばいいだけですが」
「いや、でも流石に、こんなに小さい子に討伐依頼を出す訳には」
「実は、私は、先月18歳になったのです」
「いやいやいやいや。伯父相手に、それは無理だよ。1つ2つならともかく、その年で14歳もサバをよむのは、無理だよ」
「嘘ではありません。学習年齢です。今は、大学受験対策と、語学習得に励んでおります」
「じゃあ、翡翠は13歳ね」
外で遊んでいたハズの翡翠が、会話に混ざってきた。翡翠は勉強に熱心ではないし、実年齢は4歳だ。13歳の根拠はなんだ?
「翡翠は、まだ10歳にも満たないだろう」
「1つ2つくらいじゃ面白くないって、お母様なら言うよ」
「そうだな。じゃあ、13歳にしよう。ベイリーさん、2人分の身分証を作って下さい。それで、飛竜討伐をお引き受け致します。私が失敗しても、猫がいます。討伐自体が失敗することも、私の身に危険が迫ることもありませんよ」
翡翠が連れている猫は、パパくらいしか倒せる人がいない強い魔獣なのだ。飛竜くらいは、敵じゃない。私がお願いしたくらいでは動いてくれないが、ヤル気になってさえくれたら、瞬殺だ。
「そうか。猫に討伐依頼? 猫じゃダメじゃないかな。受理されないよ」
「猫は、母の使役する魔獣として登録されています。パパのパーティに依頼を出したことにして、こっそり末端に私たちの名を連ねて頂ければ充分かと。パパなら翡翠が駄々をこねたことにしたら、まるめこめます。心配いりません」
「ええと。琥珀君、ホントに4歳?」
「18歳で登録して下さい。母よりは、しっかりしているつもりですから」
「しっかりしてるというか、年齢相応のピュアな心は、どこに置いてきたのかな」
「よし! 身分証入手の目処が立った! 風の精霊様、飛竜の下へお連れ下さい」
翡翠と猫は、伯父に預けた。ちゃちゃっと飛竜を倒して来よう。
ギルドから出たら、魔法で上空へ。360度見回して、目標を確認。そのまま飛んで飛竜に近付いたら、魔法を放つ。今度は翡翠が見ていないから、格好良く倒す必要はない。
「風の精霊様、視認できる飛竜の首を全部切り落として下さい」
ギャースギャースと騒ぐ30匹ほどの飛竜の群れは、一撃で倒すことができたと思う。だけど、1匹1匹屠っていくより、一度にまとめて倒す方が、早くて簡単な反面、効率が悪く、魔力食いだ。何が言いたいかと言うと、調子に乗りすぎて、魔力が尽きた。飛竜が全滅してたら、魔力が尽きてもなんとかなるけれど、現在、空中遊泳中なのだ。墜落するしかない。
「すっげカッコわりー」
翡翠をおいて来て、良かった。
私は、ひらひらと落ちながら、意識を失った。
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