3 / 48
3.家出する
しおりを挟む
ブーツよし、太刀よし、ナイフよし、携帯食料よし、水筒よし、、、何度目かわからない確認をして家を出る。しょっちゅう抜け出しては森でピクニックという名の害獣駆除をして遊んでいたので、抜け出すことも公認になり、父さんに捕まることも、最近はなくなった。だが、今日の行き先は、森ではない。行商のおじさんの荷馬車に、勝手に潜り込んだ。行き先は何処だか知らないが、別に何処でも構わない。お母様が逃げた先も、どこだかわからないのだから。
日が昇る前に家を出たので、うっかり寝ていた。ゴトゴトと揺れる荷馬車は、乗り心地が良くない。崩れた商品か何かに、叩き起こされた。でも、起こされなくても、起きなければならないようだった。
「おじさん、おはようございます」
商品の山をずんずん踏み越えて、御者台に顔を出した。
「き、君は! え? なんで? 大変だ!」
声をかけるまで、謎の歌をご機嫌に歌っていた行商のおじさん、オーランドさんが、見るも哀れな顔色で手綱を落とした。とても危ない運転だ。乗る馬車を選び間違えたかもしれない。
「風の精霊様、手綱を拾って下さい。おじさん、落とし物ですよ」
風魔法で手綱を拾って、おじさんに返そうと思ったのに、受け取ってもらえなかった。私が操縦しなければならないのだろうか。裸馬には乗り慣れているが、馬車の扱いなど知らない。困った。
「ジョ、ジョエルさんちの子だよね? 今すぐ村に引き返すから! ちょっと待ってね!!」
口では引き返すと言っているのに、まだ手綱を引き取ってもらえない。仕方がないので、おじさんの横に座って、馬車を引き受けることにした。
「引き返されると困りますよ。私は、おじさんに無理矢理馬車に乗せられたのですから」
「なんで、そんなシャルルちゃんみたいなことを言うのかな。おじさんが、ジョエルさんに殺されてしまうよ。絶対にやめてよ」
「私は、シャルルちゃんの息子ですから、諦めてください。パパなら、口先三寸で止められますが、お父様は言い訳する前に魔法を放ってきますので、私にも止めることができませんよ」
「諦めたくないよ?!」
「でも、私を誘拐して、幸運でしたね。お父様に殺される前に、現在、飛竜に狙われていますが、そちらなら私が対応できますよ」
「飛竜?!」
「ご安心下さい。私が倒してきます。できたら、手綱を引き取って頂けると有り難いのですが」
「もう終わりだ!!」
行商のおじさんは、大人のハズなのに、全く話にならなかった。こんな大人にならないよう、私も強く生きていこう。
「お兄ちゃん、手伝おうか?」
反対側から、翡翠が出てきた。翡翠まで無断乗車していたとは、このおじさん、もう終わったな。私だけならいざ知らず、父3人に猫可愛がりされている翡翠の誘拐犯になってしまえば、私だって許してもらえる気がしない。
「悪いが、手綱を持っていてくれるか? 危なくなれば、馬車を見捨てて飛び降りてくれて構わないから」
「おっけー。まーかせて!」
不安がないではないが、馬車は翡翠に託そう。手綱を翡翠に渡し、背中に負った太刀を抜いた。
「風の精霊様、飛竜の下へお連れ下さい」
身体が浮いて、一息に飛竜の近くへ飛んだ。
飛竜は、空を飛ぶ小型の竜だ。大型の鳥と言い換えても良い。空を飛び、絶対の安全圏から急降下して、地表の動物を襲う。クチバシや爪で攻撃されるのも恐ろしいが、一番気をつけないといけないのは、足で掴まれてさらわれることだ。そのまま巣に連れ帰られるのはいい方で、基本はその辺で落とされ、絶命したところを食われる。
通常であれば、弩弓か魔法の遠距離攻撃で地面に落としてトドメをさすのだが、私は近接戦闘も魔法も使えるから、飛んで攻撃した方が早い。飛んでいれば、落とされる心配がないのだから、安心だ。
飛竜の背に降り、太刀で首を切り落とす。飛竜の落下に備えながら振り下ろしたのだが、硬くて傷一つ付けることができなかった。鍛えていたつもりだったが、4歳の筋力では、太刀打ちできなかった。
なんということだ! 格好悪い!! 下で妹が見ているのに、こんな有様では、お母様に叱られる。
私は、もう一度太刀を振り上げ、小さな声で呪文を唱えた。
「風の精霊様、皮一枚残して首を斬り落として下さい」
呪文に合わせて、太刀を振り下ろす。格好良い兄の完成だ。残りの飛竜に飛び移り、同じ作業を繰り返した。
馬車に戻り、翡翠から手綱を返してもらい、一度、馬車を停めた。
「風の精霊様、飛竜の遺体を運んでください」
魔法で飛竜の身体を集めた。馬車には乗せない。そのまま魔法で浮かべて運ぶ。
「おじさん、私を誘拐して、幸運でしたね」
「幸運だったかもしれないけど、喜べないな」
ようやく、おじさんが、会話可能に戻った。戻らなければ、このまま馬車ジャックをしてしまえば目標は達成できたが、手間は省けた。
「私の誘拐罪なら半殺し程度に収めることもできたでしょうが、翡翠の誘拐罪は、死刑確定です。申し訳ありませんが、最寄りの繁華街に連れて行って頂けませんか? そこで別れようと思います」
「こんな小さな子を、置き去りにはできないよ! 死刑は怖いけど、送り返すよ」
「お気遣いありがとう御座います。ですが、それでは私の目的は果たせません。このまま先に進んで下さい。伯父の保護下に入る予定です。心配はいりませんよ」
太刀を突き付けて、誠心誠意お願いをした。人は、話せばわかり合えるものだ。私のお願い通り、希望の街まで送ってもらえることになった。
日が昇る前に家を出たので、うっかり寝ていた。ゴトゴトと揺れる荷馬車は、乗り心地が良くない。崩れた商品か何かに、叩き起こされた。でも、起こされなくても、起きなければならないようだった。
「おじさん、おはようございます」
商品の山をずんずん踏み越えて、御者台に顔を出した。
「き、君は! え? なんで? 大変だ!」
声をかけるまで、謎の歌をご機嫌に歌っていた行商のおじさん、オーランドさんが、見るも哀れな顔色で手綱を落とした。とても危ない運転だ。乗る馬車を選び間違えたかもしれない。
「風の精霊様、手綱を拾って下さい。おじさん、落とし物ですよ」
風魔法で手綱を拾って、おじさんに返そうと思ったのに、受け取ってもらえなかった。私が操縦しなければならないのだろうか。裸馬には乗り慣れているが、馬車の扱いなど知らない。困った。
「ジョ、ジョエルさんちの子だよね? 今すぐ村に引き返すから! ちょっと待ってね!!」
口では引き返すと言っているのに、まだ手綱を引き取ってもらえない。仕方がないので、おじさんの横に座って、馬車を引き受けることにした。
「引き返されると困りますよ。私は、おじさんに無理矢理馬車に乗せられたのですから」
「なんで、そんなシャルルちゃんみたいなことを言うのかな。おじさんが、ジョエルさんに殺されてしまうよ。絶対にやめてよ」
「私は、シャルルちゃんの息子ですから、諦めてください。パパなら、口先三寸で止められますが、お父様は言い訳する前に魔法を放ってきますので、私にも止めることができませんよ」
「諦めたくないよ?!」
「でも、私を誘拐して、幸運でしたね。お父様に殺される前に、現在、飛竜に狙われていますが、そちらなら私が対応できますよ」
「飛竜?!」
「ご安心下さい。私が倒してきます。できたら、手綱を引き取って頂けると有り難いのですが」
「もう終わりだ!!」
行商のおじさんは、大人のハズなのに、全く話にならなかった。こんな大人にならないよう、私も強く生きていこう。
「お兄ちゃん、手伝おうか?」
反対側から、翡翠が出てきた。翡翠まで無断乗車していたとは、このおじさん、もう終わったな。私だけならいざ知らず、父3人に猫可愛がりされている翡翠の誘拐犯になってしまえば、私だって許してもらえる気がしない。
「悪いが、手綱を持っていてくれるか? 危なくなれば、馬車を見捨てて飛び降りてくれて構わないから」
「おっけー。まーかせて!」
不安がないではないが、馬車は翡翠に託そう。手綱を翡翠に渡し、背中に負った太刀を抜いた。
「風の精霊様、飛竜の下へお連れ下さい」
身体が浮いて、一息に飛竜の近くへ飛んだ。
飛竜は、空を飛ぶ小型の竜だ。大型の鳥と言い換えても良い。空を飛び、絶対の安全圏から急降下して、地表の動物を襲う。クチバシや爪で攻撃されるのも恐ろしいが、一番気をつけないといけないのは、足で掴まれてさらわれることだ。そのまま巣に連れ帰られるのはいい方で、基本はその辺で落とされ、絶命したところを食われる。
通常であれば、弩弓か魔法の遠距離攻撃で地面に落としてトドメをさすのだが、私は近接戦闘も魔法も使えるから、飛んで攻撃した方が早い。飛んでいれば、落とされる心配がないのだから、安心だ。
飛竜の背に降り、太刀で首を切り落とす。飛竜の落下に備えながら振り下ろしたのだが、硬くて傷一つ付けることができなかった。鍛えていたつもりだったが、4歳の筋力では、太刀打ちできなかった。
なんということだ! 格好悪い!! 下で妹が見ているのに、こんな有様では、お母様に叱られる。
私は、もう一度太刀を振り上げ、小さな声で呪文を唱えた。
「風の精霊様、皮一枚残して首を斬り落として下さい」
呪文に合わせて、太刀を振り下ろす。格好良い兄の完成だ。残りの飛竜に飛び移り、同じ作業を繰り返した。
馬車に戻り、翡翠から手綱を返してもらい、一度、馬車を停めた。
「風の精霊様、飛竜の遺体を運んでください」
魔法で飛竜の身体を集めた。馬車には乗せない。そのまま魔法で浮かべて運ぶ。
「おじさん、私を誘拐して、幸運でしたね」
「幸運だったかもしれないけど、喜べないな」
ようやく、おじさんが、会話可能に戻った。戻らなければ、このまま馬車ジャックをしてしまえば目標は達成できたが、手間は省けた。
「私の誘拐罪なら半殺し程度に収めることもできたでしょうが、翡翠の誘拐罪は、死刑確定です。申し訳ありませんが、最寄りの繁華街に連れて行って頂けませんか? そこで別れようと思います」
「こんな小さな子を、置き去りにはできないよ! 死刑は怖いけど、送り返すよ」
「お気遣いありがとう御座います。ですが、それでは私の目的は果たせません。このまま先に進んで下さい。伯父の保護下に入る予定です。心配はいりませんよ」
太刀を突き付けて、誠心誠意お願いをした。人は、話せばわかり合えるものだ。私のお願い通り、希望の街まで送ってもらえることになった。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる