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第2章 運命をかえる!
4.いざ、まいる!
しおりを挟む翌日、ふたりはおおいそがしだった。
学校もさぼりたいくらいだったけれど、仮病で休んだりしたら、つぎの日に堂々と出かけられない。
放課後、菜帆果にさそわれたソラは、「セイの調べものがたいへんだから、手伝うことになっちゃって」と苦しい言い訳でことわるはめになったし、高橋さんに一揆のことをいろいろききたかったけれどがまんした。
うっかり『世界の秘密』をもらしてしまったらたいへんだ。
ばたばたとしたいちにちはあっというまにすぎて、決行日の朝。
親には、マウンテンバイクの練習で山すその公園に行く、と言った。
「お、セイ。またバイクはじめるのか?」
ウェア姿でマウンテンバイクにまたがったセイに、お父さんはちょっとうれしそうだ。
「ソラのサポートだよ。大会でもっといい成績とりたいって言うからさ。それには、いっしょに走って見てみないと」
「なんだ、残念。でも、そういうめんどうみのいいところ、セイはお兄ちゃんだよなあ」
お父さんは口もとをゆるめた。
「練習のあと、アスレチック公園とか行くかもしれないから。いってきます!」
いつもなら「セイをお兄ちゃんって言わないで!」とくってかかるはずのソラがそわそわと出発してしまったので、お父さんはすこしつまらなそうな顔になる。
「セイ、あんまりあぶない走りをさせるなよ。ソラは、けっこう無鉄砲なとこあるから」
「うん、わかってる。夕方までには帰るから」
じゃあいってきます、とソラのあとを追って出発したセイは、「その無鉄砲をやりにいくんだけどね」とつぶやいた。
2台のマウンテンバイクが、田んぼ道を走る。
黄色く実った稲が、朝日にきらきらと光ってゆれている。文字どおりの刈りいれ時だ。
お父さんもお母さんも、きょうは農作業の手伝いで、伯父さんの家に行くはずだ。
そのおかげもあって、ふたりでいちにちじゅう出かけることに、あまりうるさく言われない。
学校への道を曲がらずにそのまままっすぐ走ると、やがて農民一揆顕彰会館が見えてくる。
正面入り口から入らずに裏手にまわり、ちょくせつ神社に乗りいれた。
「さて、と。ホルンちゃん、神社で待ってるって言ったよね?」
ふっと風が流れて、ふたりのあいだに神さまホルンちゃんがあらわれた。
「「うわっ!」」
バイクをたおしそうになったふたりに、ホルンちゃんは笑顔で腕をひろげた。
「お待ちしていました。やっぱり夢だったーなんて思われていたら、どうしようかと思っていました。
最近の子は現実的ですからねえ。そういうところは、昔のほうがやりやすかったものです。さささ、どうぞあちらへ」
本殿のお社の扉が自動ドアのように開いた。
「だれかに、見られたりしない?」
まわりを見まわすセイに、ホルンちゃんはだいじょうぶです、と胸を叩く。
「この神社でおきたことは、だれにも見られることはありません。土地神ですからね。それくらいは、お茶の子さいさいのさいです」
「さすが! タイムスリップさせられるくらいだもんね」
ホルンちゃんは、むふふん、と笑う。バイクごと本殿に入ると、かってに扉が閉じた。
「それでは、はじめましょう。いきますよー」
「「ちょっと待って!」」
扉が閉じるなり、万歳ポーズでなにかしようとしたホルンちゃんを、あわてて止める。
「準備させてよ。ほんと、せっかちだね」
不満そうなホルンちゃんはさておいて、最終確認をする。
過去へおろされる錨がソラ、鎖を引きあげるのがセイ。
ふたりでそう決めた。
体力のあるソラが実働役、セイは作戦を練ったりわからないことを調べたりする参謀役だ。時間がないなかで、計画を立てたのもセイだ。
セイが立てた行動計画は、必要最小限のものだった。
刑が執行される日、赦免状を持って走ってくる園原伊織を待ちぶせして、助ける。
よけいなことは考えずに、それだけにしぼった。
これなら過去へ行くのも1回ですむし、不測の事態がおこったときに、予備として2回のチャンスが残る。
持ち物は、携帯食のゼリー飲料、水筒、防寒着、筆記用具、懐中電灯、磁石……。
「こんなにいろいろ、いるかなあ。イオリさんを助けたら、すぐもどってくるのに」
「話しあっただろ。なにかあったら、どうするんだよ。もしものためだ」
「あっと。忘れちゃいけない。いちばん重要な、ミニホルンちゃん」
携帯電話よろしく、ホルンちゃん人形で会話するのはかんたんだった。
ただ、人形の目と耳を通して周りのようすを見聞きする『観察モード』がむずかしくて、かなり集中する必要があった。ソラが現代に残るセイのようすを見る必要はないだろうと、こっちの機能はセイだけが使うことにした。
「よし、だいじょうぶ。行こう!」
「あ、忘れていました。鍵をおわたししていませんでしたね」
出鼻をくじかれて、ソラがコケる。ホルンちゃんは「これが鍵です」、とセイの手に青いビー玉を6個乗せた。
「これをにぎって時の扉をノックすれば、開きます。そして、時の海のなかに目標をさだめて投げこめば、鎖となって道を……まあ、いちど見てみればわかりますよ。
過去へ送るときと引きあげるときに、それぞれ必要になります。ひとつめはわたしが使ってみせますので、よく見ておいてください。
そのあと、鍵をいつ使うかは、おまかせします」
ホルンちゃんはセイの手からビー玉をひとつ取った。
万歳ポーズをとり、「ふぁああ!」と声を上げると、本殿の奥のご神体をおさめた扉のすきまから、虹色の光がもれだした。
「この扉を、時の扉にかえました。扉のむこうは時の海です。目標とつなぐ鎖がないまま海に入れば、遭難してしまいますから気をつけてくださいね」
ビー玉を持った手でノックすると、ゆっくりと扉が開く。
「うわ!」
「すごい! きれい!」
扉のむこうにご神体(ソラもセイも、なにが祀ってあるかは知らなかったけれど)はなく、虹色の光がうねる、ふしぎな空間が広がっている。
「いいですか? 人間の世界のことは、人間でないとかえられないものなのです。わたしたち霊験は、その意思を応援することしかできません。
いまのわたしも、過去のわたしも、できる手だすけはわずかなものです。それを、覚悟しておいてください。
では、350年まえ、苦しむ農民たち、不穏な空気……。そういったものを憂えていた過去のわたし自身を感じとって、目標とします。
……見つけました。いきますよー」
ふぉあ! とホルンちゃんはみじかい腕をふりかぶる。青いビー玉の軌跡が、青い鎖となって一直線に走っていった。
さあ、とうながされて、ソラは青く光る鎖にふれる。
体がふわりと浮かび、虹色の空間につつまれる。
つぎの瞬間、鎖に引っぱられて、時の海のかなたへと吸いこまれた。
「ソラあ!」
セイのさけび声が、ソラの耳から一瞬で遠のいていった。
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