此処ではない、遠い別の世界で

曼殊沙華

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過ぎ行く久遠なる流れの中で、誰もが生き、歩いていく

言い知れぬ憂惧、探し惑う 前編

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【1】

 纏わり付く湿り、肌に微かな寒さを齎す空気。降り止まぬ小雨は大気を濡らす。緩やかに、しとしとと地面も、何もかもを濡らす。降雨の音は微かに、囁くように。
 雨による泥濘が広がり、水溜まりも点在する中、苔生した岩が点々と転がる。蓮を彷彿とさせる小さな植物が影に隠れるように、憐れな姿でしかない朽木が実に細々と伸びる。
 空は曇天で埋め尽くされて陽を遮り、地上を陰らせる。その地の果てまでも湿った雲が雨を降らす。視界が微かに霞む。実に辛気臭く、鬱々とする景色が広がる其処は沼地地帯と呼ばれる。
 其処に踏み入れる数人。誰もが武装し、容赦なく濡らされた後。踏み入れれば当然足、履物は汚れる。それらに気を留めず、彼方を見据えて物思う。赴いた理由、将来にも繋がり、押し寄せるような何かを薄く感じてなのか、顔を引き締めて望む。その中に、ガリードの姿もあった。
「やっと来たっスね。毎回毎回、セントガルドからは本当に長いっスね」
 馬車を牽引するレイホースの手綱を持つガリードが陽気に話す。久し振りの遠出の為か、やる気を感じるものの、やはり久し振りの遠出に際した退屈さに拠る疲れが見えて。
「取り敢えず・・・ローレルに行くんスか?」
「・・・悪いな。あそこしか居住区が無いからな。現地での情報集めもしなきゃ、だしな」
「俺は大丈夫っスよ!だから、まぁ・・・気にしなくてもいけるっスよ」
 並んで歩く元同僚であり、先輩である男性と会話する。大丈夫と語っても、時間が経過しているとしても、当事者である彼にはまだ傷は残る。返答する表情は笑顔でもやや引き攣って。
「・・・さぁて、頑張りましょうか!」
 士気を下げまいとしてか、ガリードは元気を振り撒きながら意気込む。それに続くように同僚達も同じような反応を示し、悲しく降る小雨が包む地を進んでいった。

 丁度、トレイドが高山地帯にて、新たな地帯の発見に至ろうとした頃、彼は曙光射す騎士団エスレイエット・フェルドラーの調査に参加していた。
 事はステインの招集から始まる。戻ってきた彼は翌日、職員の多くをギルドの本拠地に集め、調査を言い渡していた。同時に断言していた。
「・・・この世界に、驚異的な力を有する存在が居る。それは他者に対して明確な敵意を示さない。だが、圧倒的な被害を齎す。どうか、くれぐれも、間違っても、油断するな。命取りに・・・いや、確実に命を落とす。肝に銘じてくれ」
 世界を変え得ると言う不確定な要素は隠しながらも、明確な危険が伴うと告げた。それは新たな不安を与える事になるのだが、直後に狂えた傀儡シャルス=ロゼアに向けての警戒もするように一言入れ、話を続けていた。
 そうした、俄かに信じられない言動と終始口を挟ませない迫力が信憑性を与え、異論を挟ませなかった。
 やや急に思えるが、既に招集の連絡を入れている為、多くの者は粛々と承諾していた。其処にガリードは強引に入り込んでいた。知れば黙って見過ごす事も出来ず、やはり子供達にも被害が及ぶかも知れないと思い立ち、トレイドやステインの反対も押し切って強引に参加してきたのだ。
 また、事前に自身が所属するギルドのリア、アニエスには断りを入れ、快く受け入れてくれていた。また、子供達にも暫く空ける事を謝ると、子供達は頑張れと激励され、益々にやる気を漲らせる形となった。
 加え、丁度良い所にノラも現れ、彼女に子供達を任せられた事が拍車を掛けた。ただ、最初は無表情だが渋られてしまい、咄嗟に交渉を持ち掛けてしまった。戻ってきたら好きなもん作ってやる、と。その瞬間、取引は終了、快諾に終わった。一安心と立ち去る際に聞こえた呟きが彼に悪寒を走らせた。両手では収まらない料理の数、それ以上聞くまいとその場を立ち去って行った。

 そうした経緯で彼は今沼地地帯に立ち、嘗ての同僚達と泥濘を歩く。魔物モンスターが出れば率先して斃しに向かう。その姿勢は以前とは異なり、恨みを晴らすように力強く。当人は恨みを抱えていない筈だが、やはり心の何処かでは憎しみが沈殿していると言うのか。
 今まさに、鍛え上げた豪腕を駆使し、鉄の塊としか思えない大剣で滑らかで太い蛇体を分割した。荒々しく切断し、且つ勢いはやや遠方に弾き飛ばすほどに。
「・・・そう言えばなんスけどね」
 落下する様を見送りながら一息吐きながらガリードが口を開く。
「ん?如何したんだ?」
 同時期に魔物モンスターを撃退した数人が反応する。その身に付いた血や武器の始末をしながら。
「皆って前の世界では何をしてたんスか?」
「何だよ、藪から棒だな」
「いや、やっぱり俺って前々から雨が好きだなぁ、って思ったらふと思い出したんスよ。因みに、俺はまだ学生だったんですよ、高校生っス」
 そう話を振る彼の笑顔に少し陰が差す。やはり、思い出してしまう。ローレルの一件を、雨に打たれれば自ずと。
 同行者の他愛ない会話を行いながら道を進む。彼の話から始まり、前の世界での話、武勇伝や共通する知識での思い出話などに華を咲かせる。そうする内に、自然とガリードは話から外れていった。話についていけていない訳ではない。思い出話になると、やはり思い出してしまうから。
「・・・如何した?お前から話を振っておいて」
 集団の責任者とも言える強面だが気前の良い青年が問い掛ける。それにガリードは悲しい笑顔を見せた。
「やっぱり、思い出しちまったんスよ・・・母さんの事を」
「・・・親、この世界で亡くなったのか」
「そんな、もんスね・・・この世界に来ちまってから離れ離れで、それ以来会えてねぇっス。何処にも居ないから、死んじまった、って・・・思ってます」
 切ない諦めの言葉に青年は同情を胸に抱く。直ぐ傍では思い出話に盛り上がる中、二人の間の空気は重く沈んでしまう。
「そればっかりは、どうしようもないな・・・慰める訳じゃないが、俺も親父オヤジが死んだ。目の前でな」
 その告白に一瞬息を止める。自身も胸を痛める事実に気分は更に落ちる。
「この世界に来ちまった時は本当にどうしようも無かったな。何が何だか分からない。少しずつ、何かを思い出すように遺伝子記憶ジ・メルリアか?で分かってくるんだけどよ、それでも混乱しっ放しだった。挙句にあの骨の化け物、いや魔物モンスターだったな。に襲われて、沢山、殺された。親父オヤジは、俺を助ける為に身体を張って挑んでいった。普段は無口で頑固だったくせに、あの時は『生きろ』だなんて言ってよ・・・」
 その時の悲しみはどれ程のものか、思い出すだけでも身が引き裂かれような思いだろう。そして、彼の父親の決意、それがどれほど尊いものだったのだろう。思うだけで涙腺は緩んでしまう。
「必死に逃げていた中で俺はレインさんに助けられ・・・後は、今に至るって奴だな」
「辛く、ねぇっスか?」
 その心境を尋ねる。想像は出来ても全ては分からない。踏み出し難い話題だが気付けば尋ねていた。
「そりゃあな、受け入れるしかなかったが、今はもう大丈夫だが、当時は、な」
 思い返す表情は悲しみに満ちる。だが、直ぐにもでも笑顔を見せた。
「如何しようも無かった。でも、考えても仕方なかった。生きるしかなかったし、生きろとも言われたしな・・・考えるよりも動く方が楽だった。そして、レインさんのように誰かを助ける時が、気が楽になった。あの時、誰かの助けが欲しかったように、俺も誰かを助けて、その誰かを悲しませないようにする事で自分を慰めていた。それが何時しか、生き甲斐になっていた、って感じだな」
 そうだとしても後悔は残るようで、思い返した表情にそれが見て取れる。それでも笑い、ガリードの肩を気さくに叩くのは大人である証拠か。
「・・・お前の事は聞いた。お前はどう思っているか知らないが、立派だったとはっきりと言える」
「そんな、事ねぇっスよ・・・」
「お前の行動の全てを否定する事は無い・・・それでも辛かったら、周りに助けを求めろ」
「周り、っスか?」
「俺の時はレインさんや少ないながらも生き残った友人に支えられて生きていた。あれは言葉に出来ないほどに嬉しかった。その時は嬉しいと感じられなくても、思い返すとそうなる。だから、辛いと思ったら、誰かに甘えろ。情けなくたって良い、お前を思ってくれる奴は、お前の為になってくれる筈だ」
 先駆者の助言、ではなく今も苦しむ後輩への気遣い。その優しさに触れ、言葉を受けてガリードの表情が明るくされる。
「・・・それなら、大丈夫っス。俺、色んな人に支えられているっス。今もそうだし、親友ダチすげぇ助けてもらってるっスから」
 強がりではない笑みに前に、言うまでも無かったかと青年は笑みを零した。
「なら、そいつが今度困った時は助けてやらないとな」
「そうっスね!」
 有意義な時間、何時の間にか気持ちは明るくなり、互いに有り難い存在が居ると認識する。その事を互いに褒めるように会話しながら進む。
 そうするうちに先ずの目的地であるローレルへと到着を果たしていた。

【2】

 穏やかな小雨に包まれ、得も言えぬ侘しさの中でその村はひっそりと存在する。だが、笑顔が端々に映る、目立たなくとも逞しき光景を広げる場所。この沼地地帯の唯一の居住区である、ローレル。
 踏み入って直ぐにガリードは立ち止まった。少しずつ離れていく仲間達の後景を、込み上げた感情で細めてしまった双眸で見渡す。
 あの日の痕跡は雨が大方を洗い流し、既に復旧は済まされる。爪痕、陰惨な歴史を覆い隠すように、在りし日を更新する景観が広がる。そして、人々はそれを思わせない表情で雨の中を歩いていた。
 取り戻された日常を前に胸を痛め、想い馳せるのはあの時の惨劇、抱えた苦悩と哀惜。無力感に沈んだ後悔を。向き合い、立ち直ったとしても目の前にしてしまえば蘇ってしまう。
 雨が涙に思わせる表情の彼に誰かが話し掛けようとした時、出迎えるように近付いてきた一人に気を取られる。その者はガリードとは多少の顔見知りであった。
「・・・少し、予定よりも遅れていると思ったが、無事に来たな」
 不機嫌そうに出迎えたのは此処に常駐するナルナッドである。彼も加わるのだろう、武装し、戦意を感じる面持ちであった。
「悪いな、ナルナッド。言い訳になるが、魔物モンスターとの遭遇が少し多かった」
「そうか。まぁ、無事に着いたなら構わない」
 気に留めつつも些事だと述べながら到着した仲間達を見渡す。折にガリードと目が合った時に僅かな反応を示していた。
「これから調査に向かってもらう、積もりだったんだが、準備に手間取っていてな。特にレイホースの手配が遅れた。もう直ぐ来ると思うから、それまで休憩を兼ねて待機していてくれ」
 事が急だった為、準備に手間取っていると話す。
「そうか・・・なら、宿を取らないとな」
「ああ、そうしてくれ。もし、そっちが良かったら手伝ってやってくれ。支所で準備を進めている・・・その間、少しガリードを借りていく」
「俺っスか?」
 指名され、何をするのかと疑問に思いつつも応じ、宿の手配は仲間に任せ、歩いて行くナルナッドの後に続いた。
 途中、何処に行くのかを尋ねるのだが彼は答えなかった。隣に立ち、その横顔から悲しみが感じ取れ、少なくとも仕事に関わる事ではないと察する。そして、その理由には直ぐにも辿り着いていた。
 丁度、村の反対側であろう。雨に濡れた道程を越えた先、更に雨に濡れるように沈黙する其処を前に、ガリードは噛み締めるような苦しき顔で立ち尽くした。目の前に建てられていたのは墓であった。
 共同墓地、石を削り出して形成したそれは人を越える大きさであり、見上げるほど。手の込んだ意匠はされず、表面に何も刻まれていないのだが、それでもそれが墓石である事は一目瞭然。それは村の外れに、その敷地は狭く、物陰に隠れるように有りながらも目に付く。厳かな空気を纏い、大きければ当然だろうか。
 案内された理由も、眠らされている誰かも頭に浮かんでしまう。横目でナルナッドを見れば、彼は目を瞑って黙祷していた。その顔には後悔が滲む。彼もまた、同じように抱えているのだろう。
 数歩近付き、顔を歪めて跪く。濡れる事も厭わず、まるで土下座のする直前のように、けれど確りと墓石を眺めて佇んだ。涙を流さない。だが、伝った雨が涙と見せていた。
 心中で思い続けるのは深い謝罪。やはり、あの時に助けられなかった事へを必死に謝った。返答がなく、その思いが済む前に次に抱いたのは鎮魂。無念のままに命を喪った。なら、せめてこれからは静かに、穏やかに寝ていて欲しいと切実に思った。
 最後に、これからの決意を語り掛けていた。託された命、それを一人前の大人になるまで導き、共に生き、守っていく事を。生涯に渡るような決意を、己に刻み込む様に告げていた。
 どれ程の時間、思いを捧げたのだろう。身が程良く濡れ、その感触を実感した頃にガリードはゆっくりと立ち上がった。まだ足りないような様子を示しながらも振り返り、傍で待っていたナルナッドと目を合わせた。どのような顔を浮かべていたのか、小さく頬が緩んでいる事が指し示して。
「・・・戻るか」
「そう、っスね」
 顔を拭いながら応じ、その場を立ち去っていく。様々に感情を抱くが、此処に来た事に、断らなかった事は間違いではなかったと確信するような足取りで。

 そうしてガリードは皆の下へ、曙光射す騎士団エスレイエット・フェルドラーの支所へと向かう。ギルドの統合前は法と秩序ルガー・デ・メギルの支所として使われ、その名残が隣の部屋に見られる其処で一同は介していた。少々手狭だが仕方なく。
 其処でナルナッドの進行で予定が組まれる。とは言っても、人海戦術で沼地地帯を改めて隈なく調査すると言うものではあるが。
 話している内に彼の指示で行われていた準備は完了となった。遠出、野宿の為のそれは全て馬車に積まれ、生意気そうなレイホースが支所の前に停められた事で準備は完了を示していた。
 その報告から小休憩を挟んだ後、此処に駐在する同僚達と共に外へと繰り出していった。

 それから隈なく調査を行ったのだが、その日はこれと言った成果は得られず、野宿する構えとなる。雨で濡れそぼり、泥が広がる地で火を起こす事は困難、此処でガリードの役目はあまりないと言える。拠って、事前に購入した料理を囲っていた。それも直ぐにも終わって。
 野宿に差し当たって、魔物モンスターが居る以上、警戒はしなければならない。その為の見張りを立て、残りの仲間は馬車内で休憩とする。
 馬車内を仄かに照らし上げる、小さな石。最近、周知され始めた不可思議な光を放つそれが馬車の中央に置かれる。大きさの為か、性能の為か、薄暗く照らす、相手の顔を認識出来る程度なので心ばかりと言ったもの。
 そうした室内でやや手狭ながらも各々好きな事で時間を潰す。明日の為に武器の手入れを、瞑想するように眠りに落ちたり、ただボーっとしたり、会話をしたり、報告の為に今日の成果を書き留めていたりと。
「つくづく面倒な世界だよな、しょっちゅう変化が起きて、その度に調査に出ないといけないんだからな」
 そう、態度が悪い青年がぼやく。量の足りなさを紛らわすように、持参した干し肉を噛みながら。
「そうね。その点は諦めるしかないんでしょうけど」
 濡れた髪を拭き、梳かす女性が答える。退屈、或いは面倒だと言うように溜息を零す。
「それよりも、ステインさんの言っていた事、本当なのか?・・・危険な存在が居るとか、何とかさ」
 ステインが話した存在、それに対する疑問に触れる。眠たそうな表情の彼、しかし、考え過ぎだとは思えないから相談の為に告げる。
狂乱者クレスジア・・・いや、狂えた傀儡シャルス=ロゼアか。それも今迄に居た。それも十分脅威だ。それは・・・カッシュの事が証明だな」
「でもよ、俺は聞いたぜ?少し前の地震の時、ステインさんがセントガルドの外に飛び出した時があったんだよ。その後を追いかけた奴が見たんだよ、凄まじい戦闘跡をさ」
「それは知ってる。でも、操魔術ヴァーテアスだろうし、そこまで考える必要はないんじゃないのか?やろうと思えば、魔族ヴァレスも出来そうだしよ」
「・・・ん~、でも、そいつって世界を変える原因かも知れねぇって話っスよ?」
 途中でガリードが付け加えてしまった。ステインでさえも話さなかった不確定要素。それが事実なら人の領分を容易く越え、人手には余ると言うもの。勝機の一つも無くなり、絶望に瀕する事だろう。だが、そう簡単に信じる訳が無い。
「そんな訳がないだろ。そんなが居たら俺は真っ先に逃げるぜ」
「そうよね、勝てる訳が無いわ」
「だよねぇ」
 耳にした皆が眉唾物、噂にも至らない虚言の類と吐き捨てる。それで幾分か空気が和んで。
「俺は・・・その時によるが、そんな事言ったガリードは如何する?」
 纏め終わった責任者の一人の青年が話に参加、付け加えた当人に尋ね返す。すると、真剣な面持ちで考え込んだ。実に真剣に、まさにそれに対峙した心境で。
「いや、逃げねぇっスね」
「本気で言ってんのか?」
 決意を篭めた発言に茶化す思いが乗った疑問が返された。けれど、揺るがぬ目で、変わらぬ顔で見返す。
「もし、其処で逃がしちまったら、他に危険が及ぶって事っスよね?そしたら、ガキ共が・・・俺の知ってる奴、大切にしている奴が危険になるんなら、俺は全力でぶっ倒す。そいつがどんなに強くても、遥かに俺より強くても、俺は戦うっス。それで死んじまう事になっちまっても、絶対に・・・!」
 そう並々ならぬ覚悟と責務を抱いて宣言した。それは単なる雑談にはそぐわない、彼の信念、その根幹に則した気概が見えた。その気迫は皆を黙らせた。
 急激に張り詰めた馬車内、息遣いだけが聞こえるように静けさを、責任者の青年が破った。
「・・・そうだな。俺達は戦える。戦えない者、隣に居る誰かを守らないとな・・・さぁ、そろそろ寝るぞ。見張りの交代もあるからな」
 同調して場の空気を弛緩させてから備えろと指示する。その言葉に皆は仕方ないと言った様子で休憩に移っていく。
 薄暗い空間の中、二人の言葉に賛同する声は少なかった。けれど、納得、理解出来るものだと考える者も居て。見直すように一瞥し、各々の姿勢で眠りに至る。ガリードもまた眠る。抱いた気持ちを抑えながら。

【3】

 調査は数日を要する。そうしなければならないほどの広さが沼地地帯にある。その沼地も劇的な変化が訪れているとは限らない。以前調べた時と変わり映えの無い景色が広がっていれば、変化が訪れなければ淡々と行うしかなく。
 哀愁が雨の音色と共に流されていく。僅かに視界を霞ませる小雨に紛れた、鬱々早々とした雨天の景色。目を覚まして外に出て直ぐに見渡す世界が寂れてばかりであれば寝起き直後の気分も落ちてしまおうか。一人だけを除いて。
 寂れた景色に潜むように、或いはその景色と共にあるように魔物モンスターとの遭遇は避けられないだろう。事実、数日間で両手では数え切れない数の戦闘を行った。結果、死者が生じる事は無く。
 その内の数度目となる戦いを終え、淡々と彼等は沼地地帯を進む。溜まりを揺らす霧雨の如き降雨を受け、常にどんよりとする外を見渡しながら足跡を増やす。纏う雨具は既に濡れそぼってしまった。  
 泥濘は果てしなく続き、寂れた朽木や苔生した岩が転がる。時折、多少の変化を確認するも以前のそれと変わりなく、落胆を雨音と共に足音で掻き消しながら進む。
「変化も、不審人物も居ねぇっスね」
「そうだが、油断はするなよ。戦い慣れた魔物モンスターでも命取りとなるぞ」
 気を紛らわせる為のぼやきを零したガリードは叱られる。事実、気の緩みを示した仕草を行った為に。
「そうっスよね、すいません」
 彼等の傍には巨大な物体が存在していた。それは、自然は偉大だと、人の考えを遥かに凌駕するもの思い知らせた。
 それは嘗ての姿を保っているとは言え、あまりにも巨大に存在する。何が原因か内部から破壊されるように根本しか残っておらず、偶然出来た傘は周囲の地面の泥濘を減少するほどに。そして、それはまだ命を宿しているのかと思わせるほどに瑞々しく、堅さを有していた。
 以前発見した巨大樹の成れの果て。これを目の当たりにして、人の想像を超えるそれを見て、恐るべき存在も強ち嘘ではないかと思えてくる。それほどにこの世界は不思議と謎に満ちていた。
 自身が矮小な存在だと知らしめてくる絶大な存在感を横にして、歩む一行は進んでいない錯覚を仄かに抱こうか。
「・・・しっかし、こんなのがちゃんとした姿だったらどんな風になってたんでしょうね。此処等一帯が傘の下になってたんですかね?」
「かもね。想像し辛いけど、蟻のような気持ちに浸れたかもね」
「ああ~・・・その例えは良いな。多分、そんなぐらいだったかも」
 雨を受け、周囲に警戒しながら憐れな大樹の果てを眺めて会話する。
「何をしたらこんな風になるんだろうな」
「それでこそ、前に話した存在がしたのではないですか?それとも・・・戦争?」
 想像が膨らむ中、警戒する存在が引き合いに出され、且つ凄惨な結果を生み出す単語が切り出された。それに数人が表情に影を落とす。実際に経験した事はなくとも、知識として保有している為に。
「考えても無駄だ」
 栓の無い事、切り替えろと促される。それで簡単に気持ちが切り替えられるほど簡単な話ではない。だが、最初に話を始めたガリードが明るい様子のまま続ける。
「こんなにでかいの、どうやったら生えてくるんでしょうね。育てられねぇでかさっスから自然に生えてくるしかねぇと思うっスけど」
「確かに、どんな風に成長していったんでしょうね。植わって直ぐに巨大になった訳じゃないと思いますから」
「そうね・・・もし、ちゃんとした姿だったら世界樹のようになっていたでしょうね」
「世界樹?」
 気持ち、空気が少し和んだ時に引き合いに出された台詞に引っ掛かる。雑学として有するかも知れないそれは、ほんの僅かに記憶に触発していた。それは全員に。
「それって、あれですよね?とある神話に出てくる巨大な樹木。地殻まで太く、各地に広く根を張るような、まさに天を覆い尽くすぐらいのデカい大樹、って奴ですよね?
「そう、世界を支えるほど大きい樹。そう言われたら納得しない?」
 前の世界にあった神話、創造のそれだが合致しかねないほどの巨大さに納得が浮かぶ。
「・・・まぁ、そう言われれば、そうかもな。ま、悲惨な姿じゃなけりゃ、そうなってかもな」
「多少の脱力は必要だが、そろそろ気を引き締めるんだ」
 会話は責任者の青年に拠って区切られてしまう。その注意は尤もなので皆は素直に従い、気を引き締めて周囲を見渡す。間も止めなかった歩みに力が僅かに増して
 巨大で憐れに鎮座する株を迂回していく。その最中に極度な変化は無かった。それが訪れるのは丁度反対側に回り、暫く進んだ後であった。

【4】

「此処は・・・」
「記憶が正しければ、無かった筈ですね」
 一行の前には湖が広がっていた。いや、そうとは言い辛い、景観が広がる。沼、泥以上に淀んだ色に染まった巨大な水溜まり。沼で形成された湖、差し詰め大沼湖とでも形容しようか。
 周囲に植物の類は無く、岩も転がっていない。ただ突然に、そして景色に融け込む様に在る。気付かずに踏み入れてしまえば飲み込まれてしまうだろう。そして、それが底なしであれば一巻の終わりか。
 嘗ては美しく煌びやかな湖だったのかも知れない。視界に捉え切れない巨大な其処、周囲に鮮やかな植物が乱れていれば、湖面と言わず水底まで見えるほど澄み切っていれば実に見惚れるほどの美景であったに違いない。だが、命を欲する底無し沼の様に一層じめじめと、辛気臭く不穏な雰囲気しか見られない。そう、泥中に何かが潜んでいても不思議ではないほどに。
 その湖畔に足を止めた皆は観察する。周囲に魔物モンスターや不審人物、その影が無いかを探りながら心構える。
「・・・薄気味悪い場所だな。相当の規模の湖、なのか?」
「そう、思いますが・・・」
 目の当たりにした誰もが同様の感想を抱き、不穏を漂わせる景色を警戒は深まる。
「兎も角、変化を発見出来た訳だが・・・」
 変化点を書き留めながら、疑問と警戒の言葉が零れる。
「あの地震、最近起きたか?」
 それは累異転殻震カスティルロウを指す。被害を及ぼさず、ただ生物を昏倒させ、次には世界が変化する、その前兆たる地震。記憶ではない為に仲間に尋ねるのだが誰もが否定した。
「多分、起きてない筈ですね」
「また、何かしら起きたと言う事なんでしょうか。そもそも、あの地震と世界の変化が関係していないとか」
「それか、もう気を失わせる影響力が無くなったか。どっちにしても答えは出てこないな・・・」
 憶測の域を出ないと考える事を止める。今は事実だけを書き留め、報告する為に雨の中手早く要点を書き留めていく。
「あまり近付くなよ、何が居るか分からないからな」
 近付き、沼の中を覗き込もうとするガリードに注意が飛ぶ。覗いた彼は直ぐにも応じて離れる。際に見えた者は澱んだ色の水面しか確認出来ず。
「じゃあ、次に行くぞ」
 その指示の下、皆は意識を解き、待機させていたレイホースに指示を送って馬車を動かす。その左右へ移り、移動を開始する。此処を起点にいざ新たな変化を探しに向かう。
「ッ!?全員!伏せろッ!!」
 陽気に進むガリードは微かな違和感を察知、即座に背負った大剣を引き抜く。その目は鋭く、その身は俊敏に動き、膨れ上がった警戒心のままに警告を告げていた。
 咆哮に似たそれと共に大剣は唸りを上げていた。鍛え上げた肉体、その限界を、それ以上を引き絞る勢いで一心に振られる。その太き刀身が急激に接近する物体を捉えていた。
 大きく撓り、人の径以上太さを有するそれは迎撃するガリードを強打した。咄嗟の攻撃は少し遅れ、鮮烈にもその身は宙へ弾き飛ばされていた。それでも成果はあり、最初に気付き、最初に打たれた彼の一撃が他に及ばせない方向に逸らせていたのだ。
 警告の真意を問う前に皆はその存在に気付く。ガリードの声が無ければ一網打尽とされていた事だろう。それを把握しながら皆の目に姿を晒した巨体に皆の意識は定められた。
 沼の湖から巨体が起こされる。奇妙な滑り気を帯びて鈍い虹色の光沢を放つ鱗で覆われる。軟体、幾多の関節と進展性の高い皮膚が織り成す胴体は実に滑らかに動く。
 ぎょろりとした双眸、長く裂けた口、長き胴体はまさしく蛇、蛇型の魔物モンスターである。だが、角を彷彿とさせたり、背には幾多の突起を生やし、小さな前足を生やしていたりと、龍を思わせる造形を為す。とは言え、銀龍とは比肩に出来ないだろう。
 長躯は二十メートルを超える為、深みのある湖や沼に生息しており、泥濘を潜行する為に表面は滑り易い体液を分泌する特性を持つ。そうして、潜み、獲物が近付いたなら音もなく襲い掛かる習性を有する。そして、それが今まさに牙を剥いたのだ。
 名はツヴォルブ・サーペント。沼湖の奇蛇と呼ばれ、沼や湖に縁のある者は密やかに恐れられる存在であった。
「ガリード!!っく!全員、戦闘体勢!!」
 不測の事態に困惑する。ガリードが奇襲の餌食となり、心配を抱けども先ずは状況打破、目の前の巨体を倒す事が先決とした指示が飛ぶ。言われるまでも無く全員は武器を構え、打って出た。
 全員を仕留めそこなった事で沼湖の奇蛇は不思議そうに身体を起こして見下す。だが、関係ないかと言わんばかりに沼から出現させた尾を振るった。
 誰もが身構え、警戒して反応した。多くが巨体に因る薙ぎを回避する。しかし、逃げそびれた者が数人。容易く馬車を打ち砕く尾の先端がその者達を打ち付けた。
「あ・・・ぐっ」
 それだけに終わらせず、飛ばさずに器用に絡め取って持ち上げていたのだ。当然締め付けており、拘束された数人は呻きを零す。
「今助け・・・」
 呼び掛け、解放させようとした寸前、皆の視界に駆け抜ける影が一つ。唐突のそれに怯んだ皆の目がガリードである事を認識した。その彼が見せた形相、憎しみを刻み込んだような険しき面は見間違いではないだろう。それは悔しさではなく。
 先の一撃を全く意に介さない彼は一直線に大蛇に接近、感情のままにこれ見よがしに拘束する尾を切断した。急停止する際に散らす泥の音、柄を更に握り込む握力の音、力む際に噛み締めた奥歯の音。それらを呑み込む強振した一撃の音は耳に届くほどに強烈に響いた。
 まるで紙が切られたように尾は落ち、仲間は解放される。落下の衝撃は如何しようも無かったのだが。
 切断された激痛に沼湖の奇蛇は暴れ狂う。声が出せない代わりに、沼を散らす音が盛大に鳴らされる。その内に動きは治まり、更に尖った眼光を、血走る様に筋を刻む双眸で、威嚇の音を響かせてガリードを睨んだ。
 矮小な存在に斬られた屈辱、それを晴らさんと激情に任せて全身の筋肉を躍動させた。巨体を以って全てを轢き潰さんと一直線に身体を伸ばす。
 目の前にしたガリードはその場から動かなかった。近くには仲間居り、負傷した仲間を巻き込まない為には立ち向かうしかなかった。だが、一切の怯えなく、更に力を篭めながら剣を地面に突き刺して踏ん張った。間も無く激突した。
 人を容易く飲み込める長躯、繰り出す突進力はやはり人を易く押し返す。だが、それを受け止めても姿勢を崩さず、弾き飛ばされずに踏み止まり、地面を滑っているだけでも凄まじいものだろう。だとしても、このままではどの道、仲間を巻き込みかねなかった。
「・・・ぅおおおおおおッ!!」
 地を震撼させるような咆哮が飛ぶ。入り混じる感情を顔に刻んで鬼の如き形相の彼、全身を隈なく行使する。支える足、姿勢を保つ胴体、敵を抑え、攻撃の起点となる腕。全ての筋肉が千切れかねないほどに力む。裂けそうなほど血管は浮かび、欠けても可笑しくないほどに食い縛る。その目は何も捉えず、思考は一つしか考えていなかった。
 人体は無意識に制御する。耐え得る以上の力を発揮すれば自壊するのは必至。この時、彼はそれを抉じ開けていたのかも知れない。人は時に想像を超える動きを見せる。全身に加わる負荷に抗い切り、その上で上へと押し勝ってしまった。
 彼の渾身、長躯は僅かに持ち上がる。近くで見れば人が一人分入れるほどの空間。巨体に任せた突進の軌道を逸らしたのだ。その偉業、目の当たりにした者は目を疑っただろう。そして、度肝を抜かれる事となる。
 間髪入れずに構え直した彼は反撃を繰り出した。下方からの一撃、それは先の防御の際に示した怪力をそのまま転用したかの如く。尾の先端とは比べようもない太さの巨体を斬り裂いた。流石に両断には至れず、しかし巨体を無様に転がすには充分であった。
 猛烈に散った泥の中、巨体は持ち上がる。流石はそれなりに恐れられる魔物モンスターであろうか。尚も戦おうとする沼湖の奇蛇。しかし、ガリードには仲間が居る、反撃に移る前に止めを刺されてしまった。
 急遽発生した戦いは終わり、皆は驚きの中に居る。それは勿論ガリードに向けて。
 無我夢中で戦闘を終え、極端に疲弊したガリードは剣を支えにして凭れる。全身が悲鳴を上げ、電流のような痛みが発する。特に痛みが走る両腕、筋が切れたのかと思わせて。
「~・・・ふぅ!!皆、大丈夫っスか!?如何とも、なっていないっスか!?」
 今先程までの裂帛、殺意が迸る表情とは打って変わり、皆を血相変えるように心配を向ける。自分は頭から流血させていると言うのに。
「他人の心配するよりも、先ずは自分の心配しろ!」
 叱責が飛び、急遽応急処置に取り掛かっていた。不幸な事に聖復術キュリアティを使える者が居らず、加えて馬車も全損してしまった。撤退を余儀なくされる。だが、それを差し引いてもあまり余る戦歴であろう。賞賛の言葉が飛び交っていた。

 その後、一旦ローレルに戻った彼等は再び準備を行い、再調査に赴く。それから数日後に調査は終えられた。他の班の報告も合わせ、結果は特筆するような成果は得られなかった。
 確かに数ヶ所では大規模な変化はあった。だがそれだけ。世界の謎に差し迫るような情報や謎の存在への手掛かりも掴めなかった。謎と不安は忍び寄る陰のように深まるばかりであった。
 その傍でガリードは前進を見せていた。有言実行を果たそうと、天の導きと加護セイメル・クロウリアへと戻っていく。再度抱いた誓いと決意を胸に、世話に勤しもうと。何が待ち受けるとも知らずに。
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