GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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036話:水路

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 「しかし、守護神像の加護ってのはとんでもねぇなぁ。
 いつのまにかこんな水路ができちまってるとは。」
 朝も早くからギリョウたち職人組にたたき起こされて用水路の視察に付き合わされている。
 なんで俺が?と思ったけど、現在単身で住んでいるのは長屋暮らしの俺とクリフト、食堂のマスターに俺の従魔たちだけ。
 その中で、住んでいるのが従魔じゃないと一目で分かったのが俺の部屋だったらしい。
 今日から使いかけの資材はきちんと片付けるようにしよう。
 そもそも見に行くだけなら魔除けの魔導具持って勝手に行けばいいのに、と思ったけど、なんかそんなところだけは律儀なんだよ、このおっさんたち、村の創設メンバーに声もかけずに行くわけにもいかんって。
 「見事なもんだ。
 できれば、もっと村に近い方が良かったんだがなぁ。
 まぁ、作業中の水分補給に飲むのは井戸からでもいいが。
 なんちゅうか、物足りないんだよな。」
 なぬ?
 このオッサンたちまで水の味が分かるの?
 うそ。
 エグい飯しか無かったこの世界のオッサンより味音痴なの?俺・・・。
 衝撃的な事実にしばし呆然としてしまった。
 「でも、川の水はそのまま飲めないでしょ。
 いちいち煮沸してたら大変じゃない?」
 何とか立ち直ってささやかな反撃を。
 「ん?煮沸?水なんて、水瓶に入れときゃ良いじゃないか。」
 ミズカメ?
 そういえば村や町で見たことある。
 建物の裏に置かれた人の背丈ほどもある大きな焼物の瓶。
 「まさか知らんのか?あれに水を入れとけば、川の水だろうが雨水だろうが次の日には飲める水に変わるってぇもんだが。」
 「それって、浄化とか殺菌ってこと?」
 うそ、何でそんな当たり前っぽいこと”常識”さんが知らないの?
 「浄化?殺菌?なんだそりゃ。
 腹ぁ壊さなきゃ飲める水だろ?」
 あぁああ!浄化・殺菌はこの世界で認知されてないのか!
 「カメに入れると、なんで飲めるようになるの?」
 まさかとは思うけど、一応聞いてみる。
 「知らん、腹壊さなきゃいいだろ。」
 だぁあぁぁ!そうだった!"常識"さんは"常識"しか知らないんだった!
 どれだけ知識が上がっても、この世界で認識されてないことは知らないんだ。
 「月に一回洗わにゃならんのが面倒だがな。エグみも取れるし、腹壊すよりはましよ。」
 そういえば、ランザ砦で汲んだ井戸水も仄かにエグみを感じたな。
 う~ん、水のエグみが取れたってことは、魔素が抜けたってことか。
 まさか魔道具?聞いてみたけど誰も知らなかった。
 考えたこともなかったと。
 それでいいのか?
 ちょっとは疑問に思えよ。
 って思ったけど、爺様の代からの常識だし、どんなもんか知らんでも使えりゃいいんだ、とのごもっともなご意見。
 了解しました。
 ならば、これは調べねばなるまい。
 「それって、カブロから買えるのかな?」
 「おう、移住者の準備もあるし、いくつかは持ち込んでくると思うぞ。
 でかいから大量には無理だろうが。」
 早起きした(させられた)甲斐があった。
 ひょっとすると、飲める水道も夢じゃないかもしれないぞ。
 職人たちには、ここからさらに分岐して村の中へつながる水路も計画中だと簡単に話して、後は勝手に見とけとばかりにソンチョー宅へ急いだ。
 水瓶確保を進言せねば。

 飛び込んだソンチョー宅では、新たな問題が発生していた。
 「シンさん!これ、どうしよう。」
 ユーキが指さしたのは、村のランクが3に上がった時にFAXからバージョンアップしたデスクトップパソコン。
 かつて一世を風靡した、中身が透けてるあれのパチモンだ。
 ただ単に即日発送で到着まで1日早くなったのと、画像を見ながら選べるだけだと思ってたけど。
 「なんか、いろいろできそうなんでいじってたら変な画面になって注文ページが表示されなくなっちゃった。」
 顔面蒼白で縋り付いてくるユーキ。
 彼がこんな風になるのは珍しいな。
 なんて珍しがっている場合じゃない。
 とりあえずパソコンを見てみる。
 ん?
 これって・・・。
 まさかだけど・・・。
 あぁ、ユーキの年齢だと分からないか。
 懐かしきは、旧OSのネットワーク設定画面だ。
 まだ、OSそのものがフロッピーディスクで販売されていた時代の設定画面。
 ってか、これって例の95そのまんまじゃないか。
 ネットワークを削除しちゃってたので、記憶を頼りに復旧してみる。
 よかった、無事復活。
 昔のは簡単にトラブって、それに慌てていろいろとやらかして傷口を広げちゃうんだよね。
 ネットワーク設定を終えると、画面にはマイパソコン、ごみ箱、注文、インターネットのアイコンが。
 ・・・・。
 カチッ
 おぉお!
 ユーキ、大発見だ。
 向こうのインターネットが普通につながる。
 ひょっとして、自分のSNSにログインできたり・・・。
 と、思った瞬間、画面が消えた。
 「「ハァー、ハァー・・・」」
 もう慣れっこだけど、この登場にはちょっと驚いたよ。
 「「いやぁ、困りますねぇ。危うく壊れるところだったじゃないですか。
 間に合ってよかった、ささ、復旧させましょうね」」
 「マテコラ。」
 パソコンに触れようとする悪魔の首根っこを掴んで止める。
 「お前が強制的に止めたんだろうが、つながるんだろ、インターネット。」
 相変わらずイラつく顔面?らしき部分を睨みつけて凄んでみる。
 ユーシンかスロークがいたら任せたい役どころなんだが。
 「「な、なななんのことでしょう。」」
 「・・・・・。」
 「「ふぅ・・・すいません、こちらのミスです。
 インターネットはマズいんです。
 いやホントに、どーか、見なかったことに。」」
 おぉう、ずいぶん素直に認めるな。
 そんだけヤバイってことか?
 と思うけど、ここは納得しない体で黙る。
 「「・・・はぁ、ホントに困った人ですね・・・。メールとかチャットとか、向こうとのやり取りができてしまうと、シャレにならないレベルでやばいんですよ。」」
 「つまりできるってことだね。」
 ユーキが身を乗り出してきた。あ、目がキラキラしてるぞ。
 「「あ~、双方向のやり取りはとても危険なんですよ。
 特に、こちらから向こうへ送る場合がですね。
 なんせ、向こうには魔素がありませんから。
 引っ張るより押し出す方がとてつもなく力がいる、と言うと分かりやすいですかね?条件が同程度なら、必要な力も少なめで済むんですが。」」
 うん、何で押す方が力がいるかはわからないけど、なんでマズイのかはザックリと理解した。
 「「物質のやり取りなんてもってのほか、世界が崩壊しかねません。
 だからどうか、忘れてください。」」
 「だから魂の一部だけ拉致してきたってことか?」
 ずっと疑問だったんだ。
 どうして一部だけなんて面倒なことをしたのか。
 未練を断ち切るため、なんてだけじゃ腑に落ちなかった。
 「「そういうことです。
 できればすべて持ってきたかったんですがね、それには対価があまりにも少なかった。」」
 「人数絞ればよかったんじゃないの?連れてこられた人の中に、どうみたって向いてないゲームとかあるよね。」
 「「残念ながら、あれでもかなり絞ったんですよ。
 対応しきれなかった面があるのは否めませんが、それでも生き抜くべき最低限の対応はさせていただきました。」」
 (それは嘘だ。
 あの人は、1日と生きられずに・・・。)
 「「違いますよ。
 あの方は、大事な道具を捨ててしまった。
 あれさえ持っていれば、あんな場所で、あんな最期を遂げることもなかったんです。」」
 「また勝手に頭の中読んでるのかよ、あれって将棋盤のことか?あんなものでどうやって生き残れるのさ。」
 でも、確かに将棋盤と、彼(彼女?)の血と思われる赤黒い痕とは距離があった。
 「「あの板と駒があれば、あの方は、あのゲームで負けない限り傷つくことはありませんでした。
 しかし、あの方は板と駒を落としたままその場を離れてしまった。
 その隙を、目ざとく飢えたサルどもに付け込まれたのです。」」
 不思議と、悪魔が悲しんでいるように感じてしまった。 
 「「あのガラの悪い彼も、車とやらの中に入ってさえいれば傷つくことはありません。
 戦う力のないものには、それなりの手段を持たせてありました。
 それを生かせない方も少なからずいましたが。
 あ、彼の場合は戦う力も持っていましたね。
 まったく、困った問題でした。」」
 「その言い方だと、やっぱり俺たちに何かを求めてるように聞こえるんだけど?
 俺たちの目的ってのは何なんだよ、自由に、ばっかりで何をすればいいのかさっぱりなんだが。」
 そもそも、何のために呼ばれたのかがわからないから方向性が定まらないんだよな。
 「「残念ながら、契約主は、最終段階であまりに深い絶望によって、半ば正気を失っておりました。」」
 「は?」
 「「契約主の願いはあまりにも壮大で、とても用意された対価で叶えることはできませんでした。
 その結果、契約主が求める結果に近づけること、その可能性があればなでも良い、という事で着地したのです。」」
 なんだよそれ・・・。
 ふざけんなよ!
 10万人もの命を奪っておいて、願いがかなわないから狂った?
 「その結果が、なんで僕たちなのさ。」
 「「私は、願いをかなえるために何をすればいいのか、を考えぬきました。」」
 相変わらずのオーバーアクションで悩むフリ。
 「「その上で、あなた方の世界のゲームは素晴らしかった。
 若干の差異はありましたが、プログラムという単一言語で作られた多種多様な能力。
 戦闘だけにとらわれない力と異世界の知識、経験は、望みを叶えるのに十分と考えたのです。」」
 オーバーアクションを続けるが無視。
 「「しかし、10万の魂では向こうの世界へ働きかけ、多様性の確保に足る量の魂を引っ張り込むにはあまりにも対価が足りず、かと言って少数では多様性が保てず、哀れな悪魔は悩みました。」」
 無視。
 「「やむを得ず、魂の一部のみを召喚しました。
 本来なら完全な魂によって導かれ、周囲の魔素を吸収して構成されるはずだった肉体は形を取らず、仕方なく贄の肉体を魔素に分解し、皆様の肉体として再構築したものです。」」
 補填したって言っていたのはそういう事か。
 魂に犠牲者の魂を混ぜられたのか、という不安は杞憂だったみたいだ。
 真実なら。
 「俺もユーシンも、ひょっとしたら他のみんなも、本来の、というかかつてのというか、今の自分とは何か違っているような気がしてるんだけど。」
 以前から気になりつつも、あえて問題にしてこなかった疑問をぶつけてみた。
 「「?
 何か違いますか?
 特にいじったりはしてませんが・・・あぁ、命を奪うことへの倫理的な拒絶感だけは、若干ですが和らげさせていただきました。」」
 (そうなのか?リルベア殺した時の感覚は未だに寒気を覚えるんだが・・・。)
 「「あぁ、それは拒絶感ではなくただの恐怖感ですよ。」」
 「勝手に頭の中読むなって言ってるだろうが。」
 なんか釈然としないけど。
 これ以上問い詰めても無駄に終わるだろうし今回はここまでか。
 「ひょっとして、僕達をレベル1にしたのって・・・」
 ユーキが何かに思い至ったようにつぶやいた。
 「「ええ、レベル1にしてやる~なんて、意地悪なことを申しましたが、それでしか再現できないほど対価が安すぎたんですよ。
 ガンバったんですよ、私。
 それにですね、いきなり高レベルでこの世界に来たとしたら、皆さんまともに生活できなかったはずですよ。」」
 やっぱりか。
 それ、俺もなんとなくそんな気はしたけど、こいつを認めたくなくて封印していた説だ。
 「「いきなり高レベルで強力なパワーを持っちゃったら、力加減を知ることなく生活する羽目になっていたでしょうし。
 ドアをノックしたつもりがドアそのものを粉砕していた、みたいにね。」」
 いかん、こいつ、実は良いやつなんじゃ、とか思い出しそうで虫酸が走る。
 「で、結局のところ、何をすればいいんだよ。」
 無理やり話題を変える。
 このままヤツのペースにはハマりたくない。
 「「自由になさってください。」」
 「いや、だからさぁ、」
 変わらぬクソ悪魔の回答に、さすがのユーキも苛立ち始めたようだ。
 (全く、こいつは一体何を・・・お?
 あ、なるほど、そういうことか?)
 クソ悪魔がニヤリと笑った。
 気がした。
 「はぁ・・・要するに、この世界に俺たちが存在すること自体が目的なんだな。」
 はぁ~っと大きなため息をつきながら、俺が至った回答を口にした。
 「「察しが良い方、好きですよ。」」
 「やめて、そういう趣味ないし。」
 (あ、これって今の時代言っちゃいけない言葉?
 いいよね、相手は悪魔だし。)
 「「それは誠に残念。
 まぁ、おおむねその通りですが、ただ普通の生活をしていただくよりは、この世界ではありえない、突拍子もないことをしでかしていただくのも大歓迎なんですよ。
 そういった意味で、この村はとても良い方向に進んでくれています。
 そのぶん、気にかけてしまうのです。」」
 「手抜きの尻拭いもしたしな。
 ま、彼らが村に来てくれてかなり助かってるけど。」
 これは本心からの言葉だ。
 どうせ読まれてるだろうしね。
 「「これは珍しい。
 ずいぶんと素直なお言葉に驚きを禁じえません。」」
 「安心しろ、これが最後だから。」
 とりあえず、言い訳は受け取った。
 ここからは交渉の時間だよ。
 「おじーちゃんまた悪い顔してる。」 
 急な登場人物に飛び上がってしまった。
 心臓がバクバクしてる。
 アオイ、いつ来た。
 「朝シャンわぁ、乙女のたしなみなのですぅ。」
 ぬぅ、ニャンコ、じゃないユーコまで来たのか、これはイイ。
 「実はだね、この」
 「「待ちなさい!!あなたね、さっきの私の熱弁は何だと思ってるんですか!!」」
 「ただの言い訳?」
 膝からくずおれて、両手をガックリと床につく悪魔。
 あ、なんかキモチイイ、癖になりそう。
 「「・・・く、何がご希望で?」」
 「必要な力はこっちの魔力でも魔石でもいいからさ、うぃきネットを見られるようにしてくれ。」
 うぃきネットとは、ネット上の百科事典だ。
 世界中のユーザーが編集できる、皆で作る百科事典の最終形と言われるもので、投稿された内容をAIが世界中のネットからデータを収集して真偽を判定、真実であると判定されたもののみが掲載される電子百科事典だ。
 つまり、これが見られれば自分たちでは知りえない色々な知識を補える。
 「「・・・検索1回1,000ベル、検索キーワード半角1文字10ベル、全角1文字20ベル、表示は1回5,000ベル、ではいかがでしょうか。」」
 ん?
 金?
 魔力じゃなくて?
 しかも高い。
 「なんでお金?」
 とユーキも不思議そうだ。
 だよね?
 「なに?何の話?」
 「お金ぇ?ガチャするのぉ?」
 君たち、分かんないならとっとと朝シャンとやらに行きなさい。
 しかし、なんで金?自販機ガチャでもそうだけど、なぜ?
 「「お金とは、欲望の象徴です。
 その欲望はわれらにとっては嗜好品と言ってもよいものなのです。
 わたくしはその欲望を同輩に売りつけて、対価に力を得ております。
 そして、その力で皆様の前に顕現し、導き、さらに景品を作り出しているのです。」」
 「導くってよりおちょくってるんじゃないの?」
 アオイさん辛辣!でも的確!
 「「あなたねぇ、私の導きが無ければ、今頃あなた方はクマの排泄物だったのですよ。
 少しは感謝と敬意を持ってほしいものです。」」
 「うさんくさいからヤダ。」
 すばらしい、この短時間でクソ悪魔の本質をつかんだようだね。
 「「・・・まぁいいでしょう。
 魔力や魔石の魔素をいただくより、お金という欲望をいただいた方が効率よく力を得られるのです。
 力と表現しておりますが、悪魔にとっての魔力とお考え下さい。
 ヒトの魔力よりはるかに高次元のものですが。」」
 「他の悪魔さんはぁ、欲望を集められないのぉ?」
 「「そうですね、我々は、契約が無ければこの世界に干渉することができないのです。
 現在、欲望を集めることができるのは私を含め3名だけです。
 とても貴重なのですよ。」」
 「自分では使わないの?嗜好品なんでしょ。」
 「「もちろん、多少は消費しますよ。
 なにせ私の戦利品なのですから。
 本来はもっと優雅に楽しみたいところですが、残念ながらお呼びした方々には問題の多い方も少なくないものでして。
 対応に苦慮しているのですよ、お分かりですね?なのでぜひともガチャを回してほしいのです。
 そしてこれからはバンバン検索してください。」」
 銭ゲバ化しやがった。
 「考えとく。」
 「「はぁ、もう、良いですよ。
 うぃきネットですか?そちらの方は先ほどの条件で何とかさせていただきますので、それ以外は何卒。」」
 「それ以外ってなぁにぃ?」
 「ちゃっちゃと吐きなさい。」
 「「しゃべったら、うぃきネットも白紙ですからね。
 ではよろしく。」」
 「にげた~。」
 「で、何?」
 「いや、しゃべったらせっかくシンさんが交渉したのが無駄になっちゃうでしょ。」
 一見気が弱そうなユーキをターゲットにするあたり、あなどれない娘!
 「アオイちゃぁ~ん、シャンプーしちゃおうよぉ~。」
 意外と気が利くユーコがアオイを引きはがしてくれた。
 感謝。
 「あ、そういえばソンチョーは?」
 すっかり忘れかけていたけど、ソンチョーに会いに来たんだった。
 「今朝、畑担当のカルリが来て収穫できそうな作物があるっていうんで出ていったよ。」
 そうか、雪がチラついて来たっていうんで肥料ブーストかけてたんだった。
 もう収穫か、手伝いに行きつつ水瓶確保の相談しよう。
 
    **
 
 昔のドラマに出てきそうな豪華な個室オフィス。
 アンティークの、いかにも高級ですと言わんばかりに彫刻が施されたデスクの横に、男が立っていた。 
 「「いやいや、まったく。
 突貫作業というのはいけませんね。
 危うくまた知られてしまうところでした。」」
 いかにも疲労困憊といった様子の男。
 「「彼は詰めが甘いわりに変に感がいいですからね。
 こんなものを見られたら、気づいて彼らのようになってしまったかもしれません。
 いや、間に合って・・・うまく誤魔化せてよかった。」」
 男の目の前にはモニターが。
 そこには、あるネット記事が2件表示されていた。
 一つは、かつてタイトルを取ったことのある高齢プロ棋士の突然死。
 日付は、シンたちが異世界に転生した2日後だった。
 もう一つは最近のもの。
 アパートの一室からの異臭騒ぎで警察騒ぎになった事件の記事。
 中には、腐敗が進んだ男性の遺体があった。
 ゲームの最中に死んだと思われ、遺体前のモニターには、人気のオンラインFPSゲームが起動したままになっていた。
 そのチャット欄には、オンラインのまま突然反応が無くなった彼を心配するメッセージが多数残されていたという。
 男はパソコンを操作してその2件の記事を画面から消すと、深いため息をついた。
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