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041話:騙し討ち
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意外と落ち着いている。
もっと緊張すると思っていた。
デモンエイプは魔法を異様なほど警戒するから、範囲魔法と高威力の単体魔法を混ぜて使いながら時間を稼げば問題ない、なんて大口をたたいたけど、実は本当にそうなるなんてかけらも思っていない。
なんせ、前のデモンエイプは権力闘争に敗れて逃げ出した、いわば弱者だ。
今回の相手こそが、デモンエイプ本来の力をもった個体ってことなんだろう。
しかも今回は異世界人が関わっている可能性が高いから、ユーキのモンスターたちのように強化されている可能性もあるってことだ。
そんなデモンエイプが4匹も目の前にいる。
そんな状況なのに、意外なほど冷静でいられることにちょっと驚いていた。
俺も随分と図太くなったものだ。
ライアーとマナは大丈夫だろう、あの二人の戦闘力は申し分ないし、デモンエイプの動きに十分対応できるだけのスピードと技術もある。
それにスロークのサポートもあるだろうし、一番早く決着しそうだ。
あぁ、いまさら気が付いたよ、暗殺系には分体なんてスキルもあったな。
使ってないといいけど。
あれ、本体まで弱体化するからなぁ。
スロークの性格から、分体作ってライアー・マナ組とユーシン両方を同時サポートとかしてそうだ。
いまさら気が付くなんて。
一言注意しておけばよかった。
ユーシンも、無茶をしなければ問題無いはずだ・・・けど・・・。
無理に倒そうとせずにライアーたちの決着がつくまで時間を稼いでくれてるなら余裕で対処してこれる。
って、伝えられていたらよかったんだけどなぁ。
マナさんがかなり怒ってたんだよなぁ、俺が一人で対処するって言いだした時。
俺も時間稼ぎに徹すること、有利な魔法が多いこと、さらにスロークが隠密で自由に動くってことになって、やっとしぶしぶ了承したんだよ。
スロークに対して、俺をサポートしろ的な圧力も感じたし、とても話せる雰囲気じゃかなった。
皆大丈夫かなぁ。
誰にも打ち明けてはいないけれど、このポジションを一人で、圧倒的不利な状況なのに選んだ理由はあるんだ。
ぶっちゃけ、ここ俺にとっては最悪の戦場だよね。
だからこそ、ここに敵のプレイヤー(あえてそう呼ぶ)がいる可能性が高いと思ったんだ。
俺とスロークが同じエイルヴァーンをプレイしていたという例があるように、敵のプレイヤーもユーキと同じマジモンをやっていた可能性が無いとは言えない。
そうだとすると、プレイヤー自身は戦闘力に乏しい可能性がある。
なら最も戦力をそろえて自分自身を守るはずだ、と思ったからだ。
ただの予想なので外れるかもしれないけど、だとしてもここにいる可能性がわずかでもあるなら、ここを選ばない訳にはいかない。
確認したいことがある。
まず、襲撃の目的は何なのか。
これはなんとなくわかるけれど、一応確認はしないとね。
次に迷彩服の男と関係はあるのか。
そして、最も重要なこと。
なぜ狂ったのか。
自分達と同じ境遇の、”仲間”である異世界人の命を、レベルアップのためだなんて理由で簡単に奪えるはずがない。
理性というタガを外したものが何なのか、知らなければならない。
今後のためにも必要だと思った。
ひょっとすると、俺が自分自身に感じている違和感が関係しているのかもしれないし。
それを確認したかったし、できればみんなには聞かせたくなかった。
一人で来ることををゴリ押ししたのはそのためだ。
動揺しかねないんだよな。
特にユーシン。
ちゃんと整理したうえでみんなに話すべきだ。
だから、まずは一人で。
聞きたいことを聞けたら後は時間を稼げばいいさ。
そのための準備もしてきた。
急造のタワーシールドを自分の前に立て、寄りかかるように腕をかけた。
『始める前に聞いておきたいんだけど、君たちはひょっとして、迷彩服着たFPSゲーマーのお友達かな?』
と、日本語で、大きな声で呼びかけた。
「あ~、お友達と来たか・・・ちょっとは緊張感持てよな。」
姿は現さず、声だけが帰ってきた。
"君たち"を否定しないってことは、やっぱり他にもいるね、ヤレヤレ、ライアーやユーシンのところにもプレイヤーとやらがいる可能性が高いな、これはマズいぞ。
それに、やっぱりあいつも仲間なんだね、予定調和だ。
あいつのことはユーキ達に頼んできたから心配ない。
「いきなり襲って来たんでね、名前すら知らないんだ。
こっちも二人ほど死にかけたんで殺したけど、一応正当防衛を主張させてもらうからね。」
本当は死にかけたのは一人だけど、シールドが間に合わなければソンチョーも死んでいたんだし、水増し請求してやる。
「やっぱりかよ、いい狩場見つけたから偵察してくるなんて抜かしやがって、抜け駆けしようとしたか。
それで返り討ちって、やっぱ抜け作だな。」
ご説明アザッス。
俺らの村を狩場とは・・・そうだな、いきなりこの規模で来られていたらいいように狩られていた、迷彩君には感謝するべきか・・・ちょこっとだけね。
「抜け作は所詮抜け作だよな、4~5匹殺ったくらいで強くなった気でいやがるんだから、話になんねぇだろ?
キャラのレベル上げだけじゃなくプレイヤースキルを上げろってあれだけ言ってやったのによぉ、あげくにこんなうまそうな狩場を俺らに黙って食おうとしてたなんてな。」
人(にん)じゃなく匹か・・・やっぱりかぁ、どうやってそこに気が付いちゃったか興味はあるけど、たぶん間違いなんだよなぁ、それ・・・困ったな。
「君たちはそれをどうやって知ったの?クソ悪魔は隠そうとしてたっぽいけど。」
あいつ、問い詰める前に逃げやがるから確信では無いんだよ。
「なんだ、知ってんのかよ。
死にかけにバラしてやるのが楽しかったのによ、ってか、クソ悪魔?聖都に行ったんじゃねぇの?行かねぇであの悪魔から聞き出したのかよ、そっちの方がショーゲキなんだけど。」
聖都?
大陸中央、リンデール聖王国の都、聖都リムヴァ。
魔物を敵対視する宗教国家の一都市。
聖都を囲むように退魔結界が張られ、魔物が入ろうとするとはじかれる。
膨大な魔力を消費するためと言って、多額のお布施を要求する胡散臭い街。
かつて人に擬態する魔物が暴れまくったそうで、対策のためとされている。
と"常識"さんが教えてくれた。
二度言うけど、胡散臭いよね。
死んでも行きたくないな。
しかしなるほど・・・。
そこではじかれたのか。
「ああ、死に際に言った復讐って、そういうこと?宗教国相手に、無茶するねぇ。」
「オイオイ、んなことまでしゃべったのかよ、みっともねぇなぁ。
復讐とかぬかしてたのはヤツだけだって、この世界の間抜けども従えて持ち上げられてよ、勇者気取りで意気揚々と聖都に入ろうとしたらはじかれたんだとよ。
あっという間に囲まれて、魔物の手先ってんで、手下どもみんな公開処刑よ。
俺たちの助けで逃げられたヤツだけが生き残ったんだけどな、必ず皆殺しにしてやるとか息巻いてやがったのにな、ダセぇ。」
そうか、彼の場合は殺された手下の復讐のためって事だったわけか。
親友、恋人的な相手でもいたかな?
ってか、おかしいな。
あいつだけを助けたっていうふうに聞こえたけど・・・こいつ・・・。
「それでレベル上げるためにプレイヤーキラーって、本末転倒じゃない。」
「いいじゃねぇか、どうせ化け物同士なんだ、醜く殺しあえばいいんだよ。
このくだらねぇ世界で、ハデに花火打ち上げればいいのさ。
どうせここで死んでも向こうじゃ普通に生きてるわけだしよ。」
え?
そういう風にとらえるの?
マジ?
あぁ、自分の考えのなんと浅はかだったことか。
向こうにいるのが本体なら、ここでの自分が死んでも、自分が死んだことにはならない。
だから何をやってもいい、そういう理屈か?
いや、ちょっと違うな。
たぶん、もっと単純だ。
本体が向こうにいるなら、自分は何なのか。
しかも、自分が魔物だと突きつけられたことで、自分自身の心が保てなくなったか。
いわば最上級の自暴自棄。
ひどい話だ。
勘違いも甚だしい。
そんな理由で襲撃とか、ふざけやがって。
しかもコイツ、迷彩男を引き込むために聖王国に売ったな。
でなければ、都合よくその場に、結界に触れることなくいるはずがない。
結界の外はスラム同然だって”常識”さんが言っているのだから。
だんだんイライラして来たゾ。
タワーシールドの裏では、隠すようにマジックミサイルを準備、すでに3倍化まで集中している。
ここからは慎重に、チャンスがあれば攻撃も辞さない覚悟で。
「ひとつ言っておきたいんだけど、俺たちは魔物じゃないぞ。」
「は?」
ハイ、確定。
その反応で確認できました。
「多いんだよなぁ、そう思い込んでる奴。」
煽る、いかにもこっちの方が正確に知っているんだと思い込ませるために。
「迷彩男の遺体は焼いて埋めたけど、魔石は出なかったぞ。
たぶん、君たちが殺してきたプレイヤーからも出なかっただろ?」
返事は無い。
姿を見せていないから反応が見れないけど、もし出ていたら反論してくるかあざけってくるだろうから魔石は出て無いんだろう、ヨシヨシ。
「たしかに、俺たちがこの世界に生まれたシステムは人よりも魔物の起源に近いかもしれないけどな、俺たちは魔物じゃあないんだ。」
あえて諭すように、ゆっくりはっきりと言ってみる。
一応時間稼ぎはするよ。
だって、俺もまだ死にたくないし。
誰でもいいから早く来て~って今でも思ってるし。
「じゃぁなんで、聖都は俺たちを拒絶した!魔物だからだろう。」
やっぱり、彼もはじかれていたんだ。
そんな気はしていたよ。
弾かれたことで、否応なく自分は魔物だというレッテルを自分自身に張ってしまった。
そして、それを利用して恩を売り、手下を作るために罠を張っていたんだ。
・・・落ち着け、怒りに任せて台無しにするな・・・。
「はぁ・・・分かって無いなぁ。
あんなもの、単純に魔力や魔素の保有量で計っているだけさ。
知ってるかい?あの宗教では、宗教上の理由とかで魔法使いは邪教徒、存在を認められなくなったんだ、聖都に結界が張られる直前にね。
つまり、魔物を弾くための結界を張ったけど、魔力の高い人間もはじいてしまうからそれをごまかすために魔法使いは邪教徒だなんて方便を付け加えたのさ。
魔力と魔素は似ているからな、あの結界は、その程度も区別できない欠陥品なんだよ。」
実際に魔法使いが邪教扱いされたのがいつからかは知らないから、完全にハッタリだけど、創設当初は魔法使いが邪教扱いされていなかったことだけは"常識"さんが知っていたから利用してやった。
「それ以外にどうやって判断する?魔石の有無なら、君たちははじかれることは無かった、魔物も人と同じ、ほどんどが親から生まれる、魔素だまりから発生することなんてほとんどないんだぞ。
そもそも生まれの違いなんて、判別しようがないじゃないか。
じゃぁ、どうやって魔物か人か判別するんだい?この世界の魔法は非常に未熟だ、人と魔物の判別なんて、そんなたいそうなことはできないんだよ。
魔石の有無で判断するのもダメだ、魔石は結界を維持するための貴重なエネルギー源だ、それを拒絶したら、結界のエネルギー源を結界の中に入れられない、つまり結界を維持できない。
だから、体内の魔素の量で判断するしかなかったのさ、魔素と魔力の違いも判断できないくせにね。」
半分以上は出まかせだ。
少しでも考え込んでくれればそれでいい。
一分、一秒でも時間が稼げれば。
ゴブリンたちと暮らすようになってから、人と魔物の違いが何なのか、魔石以外に何がわけているのかを考えたことがある。
結果、魔石以外に何もないと結論付けたんだ。
魔物たちは、無意味に人間を襲わない。
縄張りを守るためだったり、食べるためだったり、生き残るためだったり。
ゴブリンたちも、武具を奪うためにヒトを襲うが、自分達では作れないから奪うという理由があった。
武具を作れないのは、圧倒的弱者であったからだ。
武具を作れるほど発展することができずに、他の魔物やヒト達に殺されてゆく。
結果、原始的なまま発展できず、生き残るためには武具が必要で、ならば武具を作り、自分達でも倒せる可能性が高く、自分たちを殺すヒトから奪う、という発想につながっていった。
魔物だからという理由だけで殺すヒトの方がよほど魔物と言えるのではないか?
だからこそ、魔物だけを判別して正確にはじく巨大な結界があるなんて、ちょっと信じられない。
ソンチョーの村システムだって、障壁が判断しているのは体内に魔石があり、意識があること、この2点が存在する者を弾いている。
ソンチョーの許可があることで特例措置を作り入ることを容認している。
だから意識の無いただの魔石だけなら素通りできるし、意識を失った状態なら生きている魔物も入ることができてしまうのだ。
「俺たちは、生贄になった犠牲者の魔素によって体をつくられた、確かに魔物の起源に近いつくられ方だ、でもヒトだよ。
若干魔物寄りかもしれないけど、魔石は無い。
ヒトなんだよ。
それに、この世界で自分たちが死んでも向こうで死なないなんて、あのクソ悪魔は言ってないぞ。」
自分を魔物だと思い込んでいた相手に、そうではない理由をまくしたてた上さらに爆弾を投下する。
頭の中をオーバーヒートさせてやるのだ。
「は?何言ってんだよ、俺たちはかけらだぞ!向こうとは切り離されてここに拉致られたんだろうが!」
うんいい兆候だ、とりあえず冷静ではいられていないっぽい。
「おいおい、思い出せよ、奴はこう言ったんだ。
向こうでは、そのまま、これまで通りの生活をしている。
魂のほんの一部、かけらにすぎない。
家族にも、仕事にも何の問題もないから安心しろ。
奴が言ったのはこれだけだ。
あの、白い部屋にいた時点では普通に生活しているって言っていただけだ、先のことには一切触れていない。
こっちで死んでも向こうは無事だなんてことも言ってない。
連れてこられたのは魂の欠片だ、でも、向こうに残った魂とつながりが無くなった、なんて言われていない。
魂は魂だ、別々の世界にあるだけで、二つに分かれたわけじゃないんだ。
こっちで死ねば、とうぜん魂の片割れである向こうでも死ぬんだよ。」
これはかなり強引なデマカセだけど、まんざら嘘とも言い切れない気がしている。
でなければ、魂の一部を、なんて表現はせず「コピーした」なり言えば済むはずなんだ。
あいつのことだからいろいろ隠したり胡麻化しているのは間違いない。
とりあえず今は、動揺してくれて時間が稼げればいい。
「うそだ、そんなわけがねぇ。」
ギリ聞き取れる程度の声。
うん、動揺してくれてるね、おかげでけっこう時間が稼げそうだ。
しばらくブツブツと、何かつぶやいていたようだけど聞き取れなかった。
知りたいことは知れたし、後はみんなが来るまで時間を稼げればいいので静観、襲ってくるならガッツリ準備できたマジックミサイルの洗礼だ。
あとできそうなことは無いかな・・・
「そうだ・・・。」
ブツブツと言っていたつぶやきが途切れた。
「奴を締め上げて吐かせればいいんだ・・・。」
ん?
あれ?やばい方向に考え出しちゃってる?
「そうだよ。あいつならできるはずだ、こいつ等だって聞き出してるじゃないか・・・そのためには・・・。」
やべ、煽り方間違えたかも。
デモンエイプたちの殺気が高まる。
「力をつけないとなぁ、殺れ!」
はぁ、最終的にはそういう結論になるんじゃないかとは思ったけどさ、早すぎでしょ。
もっとこう、考えなきゃ。
短慮ではオッサンにはかないませんよ。
・・・年上だったらごめん。
急造タワーシールドを手前に倒すと、すでに準備万端のマジックミサイルを、迫りくる巨大な猿たちに放った。
十分すぎるほどの時間があったおかげで、狙いもばっちり、近かった2匹の心臓を正確に貫いた。
少し遅れた1匹は心臓を外れたけど、2本が胸に当たり致命傷だろう。
最後の1匹は距離があった分着弾までのわずかな時間差で躱されて外してしまったけど、声の主は動かず。
ってことは、やっぱり戦闘力無い系かもな。
不意打ちはもう通用しないだろうけど、最上の上を行く極上の結果だ。
これで勝ちの目が見えてきたな。
ラスト一匹もいっちゃいますか!
もっと緊張すると思っていた。
デモンエイプは魔法を異様なほど警戒するから、範囲魔法と高威力の単体魔法を混ぜて使いながら時間を稼げば問題ない、なんて大口をたたいたけど、実は本当にそうなるなんてかけらも思っていない。
なんせ、前のデモンエイプは権力闘争に敗れて逃げ出した、いわば弱者だ。
今回の相手こそが、デモンエイプ本来の力をもった個体ってことなんだろう。
しかも今回は異世界人が関わっている可能性が高いから、ユーキのモンスターたちのように強化されている可能性もあるってことだ。
そんなデモンエイプが4匹も目の前にいる。
そんな状況なのに、意外なほど冷静でいられることにちょっと驚いていた。
俺も随分と図太くなったものだ。
ライアーとマナは大丈夫だろう、あの二人の戦闘力は申し分ないし、デモンエイプの動きに十分対応できるだけのスピードと技術もある。
それにスロークのサポートもあるだろうし、一番早く決着しそうだ。
あぁ、いまさら気が付いたよ、暗殺系には分体なんてスキルもあったな。
使ってないといいけど。
あれ、本体まで弱体化するからなぁ。
スロークの性格から、分体作ってライアー・マナ組とユーシン両方を同時サポートとかしてそうだ。
いまさら気が付くなんて。
一言注意しておけばよかった。
ユーシンも、無茶をしなければ問題無いはずだ・・・けど・・・。
無理に倒そうとせずにライアーたちの決着がつくまで時間を稼いでくれてるなら余裕で対処してこれる。
って、伝えられていたらよかったんだけどなぁ。
マナさんがかなり怒ってたんだよなぁ、俺が一人で対処するって言いだした時。
俺も時間稼ぎに徹すること、有利な魔法が多いこと、さらにスロークが隠密で自由に動くってことになって、やっとしぶしぶ了承したんだよ。
スロークに対して、俺をサポートしろ的な圧力も感じたし、とても話せる雰囲気じゃかなった。
皆大丈夫かなぁ。
誰にも打ち明けてはいないけれど、このポジションを一人で、圧倒的不利な状況なのに選んだ理由はあるんだ。
ぶっちゃけ、ここ俺にとっては最悪の戦場だよね。
だからこそ、ここに敵のプレイヤー(あえてそう呼ぶ)がいる可能性が高いと思ったんだ。
俺とスロークが同じエイルヴァーンをプレイしていたという例があるように、敵のプレイヤーもユーキと同じマジモンをやっていた可能性が無いとは言えない。
そうだとすると、プレイヤー自身は戦闘力に乏しい可能性がある。
なら最も戦力をそろえて自分自身を守るはずだ、と思ったからだ。
ただの予想なので外れるかもしれないけど、だとしてもここにいる可能性がわずかでもあるなら、ここを選ばない訳にはいかない。
確認したいことがある。
まず、襲撃の目的は何なのか。
これはなんとなくわかるけれど、一応確認はしないとね。
次に迷彩服の男と関係はあるのか。
そして、最も重要なこと。
なぜ狂ったのか。
自分達と同じ境遇の、”仲間”である異世界人の命を、レベルアップのためだなんて理由で簡単に奪えるはずがない。
理性というタガを外したものが何なのか、知らなければならない。
今後のためにも必要だと思った。
ひょっとすると、俺が自分自身に感じている違和感が関係しているのかもしれないし。
それを確認したかったし、できればみんなには聞かせたくなかった。
一人で来ることををゴリ押ししたのはそのためだ。
動揺しかねないんだよな。
特にユーシン。
ちゃんと整理したうえでみんなに話すべきだ。
だから、まずは一人で。
聞きたいことを聞けたら後は時間を稼げばいいさ。
そのための準備もしてきた。
急造のタワーシールドを自分の前に立て、寄りかかるように腕をかけた。
『始める前に聞いておきたいんだけど、君たちはひょっとして、迷彩服着たFPSゲーマーのお友達かな?』
と、日本語で、大きな声で呼びかけた。
「あ~、お友達と来たか・・・ちょっとは緊張感持てよな。」
姿は現さず、声だけが帰ってきた。
"君たち"を否定しないってことは、やっぱり他にもいるね、ヤレヤレ、ライアーやユーシンのところにもプレイヤーとやらがいる可能性が高いな、これはマズいぞ。
それに、やっぱりあいつも仲間なんだね、予定調和だ。
あいつのことはユーキ達に頼んできたから心配ない。
「いきなり襲って来たんでね、名前すら知らないんだ。
こっちも二人ほど死にかけたんで殺したけど、一応正当防衛を主張させてもらうからね。」
本当は死にかけたのは一人だけど、シールドが間に合わなければソンチョーも死んでいたんだし、水増し請求してやる。
「やっぱりかよ、いい狩場見つけたから偵察してくるなんて抜かしやがって、抜け駆けしようとしたか。
それで返り討ちって、やっぱ抜け作だな。」
ご説明アザッス。
俺らの村を狩場とは・・・そうだな、いきなりこの規模で来られていたらいいように狩られていた、迷彩君には感謝するべきか・・・ちょこっとだけね。
「抜け作は所詮抜け作だよな、4~5匹殺ったくらいで強くなった気でいやがるんだから、話になんねぇだろ?
キャラのレベル上げだけじゃなくプレイヤースキルを上げろってあれだけ言ってやったのによぉ、あげくにこんなうまそうな狩場を俺らに黙って食おうとしてたなんてな。」
人(にん)じゃなく匹か・・・やっぱりかぁ、どうやってそこに気が付いちゃったか興味はあるけど、たぶん間違いなんだよなぁ、それ・・・困ったな。
「君たちはそれをどうやって知ったの?クソ悪魔は隠そうとしてたっぽいけど。」
あいつ、問い詰める前に逃げやがるから確信では無いんだよ。
「なんだ、知ってんのかよ。
死にかけにバラしてやるのが楽しかったのによ、ってか、クソ悪魔?聖都に行ったんじゃねぇの?行かねぇであの悪魔から聞き出したのかよ、そっちの方がショーゲキなんだけど。」
聖都?
大陸中央、リンデール聖王国の都、聖都リムヴァ。
魔物を敵対視する宗教国家の一都市。
聖都を囲むように退魔結界が張られ、魔物が入ろうとするとはじかれる。
膨大な魔力を消費するためと言って、多額のお布施を要求する胡散臭い街。
かつて人に擬態する魔物が暴れまくったそうで、対策のためとされている。
と"常識"さんが教えてくれた。
二度言うけど、胡散臭いよね。
死んでも行きたくないな。
しかしなるほど・・・。
そこではじかれたのか。
「ああ、死に際に言った復讐って、そういうこと?宗教国相手に、無茶するねぇ。」
「オイオイ、んなことまでしゃべったのかよ、みっともねぇなぁ。
復讐とかぬかしてたのはヤツだけだって、この世界の間抜けども従えて持ち上げられてよ、勇者気取りで意気揚々と聖都に入ろうとしたらはじかれたんだとよ。
あっという間に囲まれて、魔物の手先ってんで、手下どもみんな公開処刑よ。
俺たちの助けで逃げられたヤツだけが生き残ったんだけどな、必ず皆殺しにしてやるとか息巻いてやがったのにな、ダセぇ。」
そうか、彼の場合は殺された手下の復讐のためって事だったわけか。
親友、恋人的な相手でもいたかな?
ってか、おかしいな。
あいつだけを助けたっていうふうに聞こえたけど・・・こいつ・・・。
「それでレベル上げるためにプレイヤーキラーって、本末転倒じゃない。」
「いいじゃねぇか、どうせ化け物同士なんだ、醜く殺しあえばいいんだよ。
このくだらねぇ世界で、ハデに花火打ち上げればいいのさ。
どうせここで死んでも向こうじゃ普通に生きてるわけだしよ。」
え?
そういう風にとらえるの?
マジ?
あぁ、自分の考えのなんと浅はかだったことか。
向こうにいるのが本体なら、ここでの自分が死んでも、自分が死んだことにはならない。
だから何をやってもいい、そういう理屈か?
いや、ちょっと違うな。
たぶん、もっと単純だ。
本体が向こうにいるなら、自分は何なのか。
しかも、自分が魔物だと突きつけられたことで、自分自身の心が保てなくなったか。
いわば最上級の自暴自棄。
ひどい話だ。
勘違いも甚だしい。
そんな理由で襲撃とか、ふざけやがって。
しかもコイツ、迷彩男を引き込むために聖王国に売ったな。
でなければ、都合よくその場に、結界に触れることなくいるはずがない。
結界の外はスラム同然だって”常識”さんが言っているのだから。
だんだんイライラして来たゾ。
タワーシールドの裏では、隠すようにマジックミサイルを準備、すでに3倍化まで集中している。
ここからは慎重に、チャンスがあれば攻撃も辞さない覚悟で。
「ひとつ言っておきたいんだけど、俺たちは魔物じゃないぞ。」
「は?」
ハイ、確定。
その反応で確認できました。
「多いんだよなぁ、そう思い込んでる奴。」
煽る、いかにもこっちの方が正確に知っているんだと思い込ませるために。
「迷彩男の遺体は焼いて埋めたけど、魔石は出なかったぞ。
たぶん、君たちが殺してきたプレイヤーからも出なかっただろ?」
返事は無い。
姿を見せていないから反応が見れないけど、もし出ていたら反論してくるかあざけってくるだろうから魔石は出て無いんだろう、ヨシヨシ。
「たしかに、俺たちがこの世界に生まれたシステムは人よりも魔物の起源に近いかもしれないけどな、俺たちは魔物じゃあないんだ。」
あえて諭すように、ゆっくりはっきりと言ってみる。
一応時間稼ぎはするよ。
だって、俺もまだ死にたくないし。
誰でもいいから早く来て~って今でも思ってるし。
「じゃぁなんで、聖都は俺たちを拒絶した!魔物だからだろう。」
やっぱり、彼もはじかれていたんだ。
そんな気はしていたよ。
弾かれたことで、否応なく自分は魔物だというレッテルを自分自身に張ってしまった。
そして、それを利用して恩を売り、手下を作るために罠を張っていたんだ。
・・・落ち着け、怒りに任せて台無しにするな・・・。
「はぁ・・・分かって無いなぁ。
あんなもの、単純に魔力や魔素の保有量で計っているだけさ。
知ってるかい?あの宗教では、宗教上の理由とかで魔法使いは邪教徒、存在を認められなくなったんだ、聖都に結界が張られる直前にね。
つまり、魔物を弾くための結界を張ったけど、魔力の高い人間もはじいてしまうからそれをごまかすために魔法使いは邪教徒だなんて方便を付け加えたのさ。
魔力と魔素は似ているからな、あの結界は、その程度も区別できない欠陥品なんだよ。」
実際に魔法使いが邪教扱いされたのがいつからかは知らないから、完全にハッタリだけど、創設当初は魔法使いが邪教扱いされていなかったことだけは"常識"さんが知っていたから利用してやった。
「それ以外にどうやって判断する?魔石の有無なら、君たちははじかれることは無かった、魔物も人と同じ、ほどんどが親から生まれる、魔素だまりから発生することなんてほとんどないんだぞ。
そもそも生まれの違いなんて、判別しようがないじゃないか。
じゃぁ、どうやって魔物か人か判別するんだい?この世界の魔法は非常に未熟だ、人と魔物の判別なんて、そんなたいそうなことはできないんだよ。
魔石の有無で判断するのもダメだ、魔石は結界を維持するための貴重なエネルギー源だ、それを拒絶したら、結界のエネルギー源を結界の中に入れられない、つまり結界を維持できない。
だから、体内の魔素の量で判断するしかなかったのさ、魔素と魔力の違いも判断できないくせにね。」
半分以上は出まかせだ。
少しでも考え込んでくれればそれでいい。
一分、一秒でも時間が稼げれば。
ゴブリンたちと暮らすようになってから、人と魔物の違いが何なのか、魔石以外に何がわけているのかを考えたことがある。
結果、魔石以外に何もないと結論付けたんだ。
魔物たちは、無意味に人間を襲わない。
縄張りを守るためだったり、食べるためだったり、生き残るためだったり。
ゴブリンたちも、武具を奪うためにヒトを襲うが、自分達では作れないから奪うという理由があった。
武具を作れないのは、圧倒的弱者であったからだ。
武具を作れるほど発展することができずに、他の魔物やヒト達に殺されてゆく。
結果、原始的なまま発展できず、生き残るためには武具が必要で、ならば武具を作り、自分達でも倒せる可能性が高く、自分たちを殺すヒトから奪う、という発想につながっていった。
魔物だからという理由だけで殺すヒトの方がよほど魔物と言えるのではないか?
だからこそ、魔物だけを判別して正確にはじく巨大な結界があるなんて、ちょっと信じられない。
ソンチョーの村システムだって、障壁が判断しているのは体内に魔石があり、意識があること、この2点が存在する者を弾いている。
ソンチョーの許可があることで特例措置を作り入ることを容認している。
だから意識の無いただの魔石だけなら素通りできるし、意識を失った状態なら生きている魔物も入ることができてしまうのだ。
「俺たちは、生贄になった犠牲者の魔素によって体をつくられた、確かに魔物の起源に近いつくられ方だ、でもヒトだよ。
若干魔物寄りかもしれないけど、魔石は無い。
ヒトなんだよ。
それに、この世界で自分たちが死んでも向こうで死なないなんて、あのクソ悪魔は言ってないぞ。」
自分を魔物だと思い込んでいた相手に、そうではない理由をまくしたてた上さらに爆弾を投下する。
頭の中をオーバーヒートさせてやるのだ。
「は?何言ってんだよ、俺たちはかけらだぞ!向こうとは切り離されてここに拉致られたんだろうが!」
うんいい兆候だ、とりあえず冷静ではいられていないっぽい。
「おいおい、思い出せよ、奴はこう言ったんだ。
向こうでは、そのまま、これまで通りの生活をしている。
魂のほんの一部、かけらにすぎない。
家族にも、仕事にも何の問題もないから安心しろ。
奴が言ったのはこれだけだ。
あの、白い部屋にいた時点では普通に生活しているって言っていただけだ、先のことには一切触れていない。
こっちで死んでも向こうは無事だなんてことも言ってない。
連れてこられたのは魂の欠片だ、でも、向こうに残った魂とつながりが無くなった、なんて言われていない。
魂は魂だ、別々の世界にあるだけで、二つに分かれたわけじゃないんだ。
こっちで死ねば、とうぜん魂の片割れである向こうでも死ぬんだよ。」
これはかなり強引なデマカセだけど、まんざら嘘とも言い切れない気がしている。
でなければ、魂の一部を、なんて表現はせず「コピーした」なり言えば済むはずなんだ。
あいつのことだからいろいろ隠したり胡麻化しているのは間違いない。
とりあえず今は、動揺してくれて時間が稼げればいい。
「うそだ、そんなわけがねぇ。」
ギリ聞き取れる程度の声。
うん、動揺してくれてるね、おかげでけっこう時間が稼げそうだ。
しばらくブツブツと、何かつぶやいていたようだけど聞き取れなかった。
知りたいことは知れたし、後はみんなが来るまで時間を稼げればいいので静観、襲ってくるならガッツリ準備できたマジックミサイルの洗礼だ。
あとできそうなことは無いかな・・・
「そうだ・・・。」
ブツブツと言っていたつぶやきが途切れた。
「奴を締め上げて吐かせればいいんだ・・・。」
ん?
あれ?やばい方向に考え出しちゃってる?
「そうだよ。あいつならできるはずだ、こいつ等だって聞き出してるじゃないか・・・そのためには・・・。」
やべ、煽り方間違えたかも。
デモンエイプたちの殺気が高まる。
「力をつけないとなぁ、殺れ!」
はぁ、最終的にはそういう結論になるんじゃないかとは思ったけどさ、早すぎでしょ。
もっとこう、考えなきゃ。
短慮ではオッサンにはかないませんよ。
・・・年上だったらごめん。
急造タワーシールドを手前に倒すと、すでに準備万端のマジックミサイルを、迫りくる巨大な猿たちに放った。
十分すぎるほどの時間があったおかげで、狙いもばっちり、近かった2匹の心臓を正確に貫いた。
少し遅れた1匹は心臓を外れたけど、2本が胸に当たり致命傷だろう。
最後の1匹は距離があった分着弾までのわずかな時間差で躱されて外してしまったけど、声の主は動かず。
ってことは、やっぱり戦闘力無い系かもな。
不意打ちはもう通用しないだろうけど、最上の上を行く極上の結果だ。
これで勝ちの目が見えてきたな。
ラスト一匹もいっちゃいますか!
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