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046話:シン
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騙し討ちで3匹を瞬殺、非常に良い。
準備時間さえ取れればマジックミサイルの有効性はナンバーワンだな。
3倍よりもっと強化できればもっと使えたのに・・・4倍からは一気に準備時間が長くなるんだよな。
剣を抜いて4匹目と対峙する。
少し距離が離れていたことで躱されたけど、十分脅威として認識してくれたはずだ。
「戦闘って、始まる前から終わってるんだよね。」
(ゲームでの話だけど・・・。
一気に3匹も殺られたんだ、戦々恐々としているだろう。
いい気味だ。
このまま時間を稼いでもいいし、隙があれば倒しに行ってもいい。)
問題は、いまだに姿を見せない敵プレイヤーだった。
戦闘力が無い司令塔タイプならまだいいが、スロークのような暗殺系だとまずいことになる。
が、どうやらそれは無さそうだ。
”警戒”で感知した限りでは、先ほどからまったく動きが無いのだ。
なにか良からぬことでも企んでいるのか、それともビビっているだけなのか。
(う~ん、どうしたものかな、逃走手段を持っていると厄介だしなぁ。
デモンエイプを先に始末・・・してる間に逃げられるよな、やっぱり。
不意打ちはもう通用しそうにないし。
デモンエイプ無視して直接・・・は無理だよな、やっぱ。)
このまま膠着状態が続くというのがシンにとっては理想的な展開、しかし、そううまくいくはずもない。
(考えていても仕方ないか、まずは残ったデモンエイプに対処するとしよう。
奴が逃げだしたら追えばいい、こっちには優秀な暗殺者もいることだし。)
ボディプロテクション エンチャントオーラ スピードアップ パワーアップ ライオンハート ディフェンスアップ オーラウエポン リジェネレーションアルファ
自分自身に強化魔法をかけまくる。
今風に言うとバフってやつだ。
魔法を使うのに声を出さなくてよいという仕様は、非常にありがたい。
昨今はとかく派手になりすぎなゲームが多い、バフ系の魔法にはエフェクトがほとんどかからないエイルヴァーンのシステムは、こういった状況では有利に働く。
(さすがに真正面からデモンエイプとやり逢うのは怖い。
なんて言ったらユーシンに怒られそうだけど。)
とにかく強化てんこ盛りでやり合うことにした。
目標一、みんながやって来るまでダラダラ戦って時間を稼ぐ。
目標二、たぶん無理だけど、あわよくばデモンエイプを始末する。
目標三、敵プレイヤーを拘束、無理なら殺る。
一気に突っ込む。
目の前で火花が散った。
振り抜いた剣が、デモンエイプの爪で弾かれたからだ。
(この反応速度、やっぱり侮れない。
俺が弱いだけとも言うけど。
やっぱりユーシンのように正面からガチ勝負ってのは性に合わんな。)
数度切り結んだが、あえなく撃墜された。
(この巨体で何でこんなに速いん?)
くそ、最初に打ち合ったのはマズかった。)
カブロから購入した剣は早くもあちこち刃こぼれが目立つ。
すでに、わずかに見つけた隙をついて切りつけたくらいじゃ皮一枚切れないほどになってしまっている。
(これ、”強連撃”使っても切れなかったりして・・・意地はらないでスロークから剣借りてくればよかった。
まぁ、充実してたのは短剣と暗殺剣ばっかりだったけど、これよりましだったな。)
不意に体を沈める。
地を這うように走らせた剣がデモンエイプの足首を切り裂・・・けなかった。
(やべぇ、これ。)
スキルこそ使わなかったものの、全力で切りつけたのに刃が止まった。
両手で剣を持って高速回転、遠心力も利用してさらに威力を高めた一撃、も、足首を切ることができない。
「うぉ!」
すかさず振り下ろされた腕の一撃を間一髪で躱すと、その腕に剣先を突き立ててみる。
刺さった、と思う間もなく吹っ飛ばされた。
振り下ろした腕を、そのまま振り上げてきたせいだ。
(くそ、ほんのちょっとだったけど刺さったのに。)
マジックミサイルを準備しておくべきだったと後悔した。
もう、3倍化なんて悠長な時間はできそうにない。
切り付けた剣が打ち落とされるたびに剣が悲鳴を上げ、刃が欠けてゆく。
この世界で流通する剣の多くは、鋼を型に流し込んで軽くたたいてから焼き入れ、刃を研いだだけと言う製法、鋳造で作られる、いわゆる鋳物だ。
高名な刀匠ともなると、柔軟な鋼を叩きのばして形を作り、焼き入れによって浸炭(しんたん)という処置を施すことで、いわゆる日本刀のように中心部は柔軟で、外側が硬い剣を作れるらしい。
まぁ、そんなものが一般人に手に入るはずもない。
(これ、折れるな。)
ただ硬いだけの剣は、扱いを間違えると簡単に折れる。
激しい打ち合い。
普通ならとっくに折れていても不思議じゃないほどに。
まだ剣の体裁を保っていられるのは、前もって強化を施していたからだ。
それだっていつまでもつか。
予備の剣は全く手を加えていない、打ち合えばあっけなく折れるだろう。
デモンエイプは想像以上に強かった。
以前戦った個体が特別弱かったのは分かっていたつもりだけど、それでもこの強さは予想以上だ。
3匹瞬殺?
運よく不意打ちがクリティカルしただけだった。
バフがあったから何とか戦えているようなもので、切れたら一気に大ピンチ確定案件でございます。
隙を見て、短発だけどマジックミサイル2倍化より威力の高いフレイムアローを放ってみた。
余裕で躱されました。
ならばと躱されない距離にまで近づくと、デモンエイプの手数の多さに魔法を使う余裕が無くなる。
(やっぱこいつメンドクサ~い。)
さらに、バフが切れ始めると状況が悪化、かけなおしながらの戦いになってしまいまさにドロ試合化してしまった。
焦りが募る。
魔力が切れたらつんでしまう。
と、思うとチャンスにも魔法が打てなくなる悪循環。
回復にも魔力を残しとかなきゃならない。
ポーションは戦っているみんなや、村で避難準備をするソンチョーたちに全て配ってしまった。
俺は魔法があるから大丈夫なんて余裕ブッコいてしまった。
すでに切りつけても意味は無いと、突きでの戦いにシフトしているが、突きだけに偏るとどうしても単調になってしまう。
小さな傷を作ることがせいぜいで、逆に俺の魔力も気力もみるみる目減りしてゆく。
そんな泥仕合に転機が訪れたのは、魔力も気力もほぼ使い切った後だった。
「シンさん!」
ユーシンの声が、エイプの気を引いた。
助かった!
と思いながらもこのチャンスは見逃さない。
体ごとぶつかるように剣をエイプの胸に突き出した。
同時に、念のため最後の魔力でユーシンにボディプロテクションをかけるのも忘れない。
心臓へ向けて真っすぐに突き刺さる。
が、剣はデモンエイプの心臓には届かなかった。
肉に刺さる感触を感じた瞬間、俺は左肩からの強烈な衝撃に、一瞬意識を飛ばした。
さらに直後、右肩に衝撃。
肩が砕かれる音と激痛。
マジックミサイルが2発胸に、それで倒したと思い込んでいたデモンエイプが意識を取り戻し俺を強襲、弾き飛ばされたうえ、飛ばされた先の木にたたきつけられたことによる衝撃だった。
と気が付いた時には、心臓を貫き損ねた4匹目のデモンエイプが眼前にいた。
鋭い爪が、胸を深く、抉るように切り裂いた。
防御系のバフはとっくに切れていた。
(あぁ、なんで俺はいつもこうなんだ・・・。)
薄れる意識の中、かろうじて自分の血で短いメッセージを残せた。
だれかに伝わってくれることを祈って。
**
「シンさん!!」
悲鳴に似た叫びが二つ。
ユーシンとアオイだ。
鎧ごと体を引き裂き、その爪に大量の血をまとったままのデモンエイプが、振り返り二人を睨みつける。
3体目のデモンエイプは、胸から大量に出血し続けている。
フラフラとユーシンの方に動こうとするが、足がもつれてばたりと倒れた。
シンを吹き飛ばした一撃が最後のあがきだったようだ。
瞬きする間もなく、ユーシンとデモンエイプは剣と爪を打ち合わせていた。
その横をすり抜けるようにアオイがシンの元へ駆け寄る。
「クソザルがぁあ!!」
ユーシンは怒りに任せてデモンエイプの腹へと刀を叩きつけた。
ドスッ
防御に下ろした腕に阻まれた。
骨を断つことができない。
全身の力を込めて押し切ろうとするが、ビクとも動かない。
この使い方じゃない。
本来の使い方さえすれば、腕を両断することなど容易いはず、そして、その使い方はつい先ほど身に着けたはずだ。
切れないはずが無い。
どうして切れないのかを考えることすらできないほど、ユーシンはキレていた。
怒りで何も考えられず、目の前のデモンエイプしか見えていない。
意識もせずに声が出ている。
自分でも何を言っているのか分かっていない。
無意識に口から出た音は、怨嗟のうなりだった。
自分の中が殺意に塗りつぶされてゆく。
ただ力を込めて押していた刀が、突然軽くなった。
デモンエイプが押し合っていた腕を、ゆーしんが力を込める方向へと流したためだ。
急に力のバランスが崩れ前のめりにつんのめるユーシンを、振り上げていた逆の腕が襲う。
強烈な衝撃と共に吹き飛んだユーシンだが、その瞬間、体から光る破片のようなものが離れていくのが見えた。
あぁ、シンさん・・・。
ボディプロテクションが吸収しきれずに砕けた時の光。
その光が、殺意に染まったユーシンを引き戻した。
拳を地面に叩きつけて、吹き飛ばされる自分の体を強引に引き止める。
指が何本か折れた感触も気にしない。
地を蹴って追撃態勢に入っていたデモンエイプを迎え撃つ。
今度はしっかりと、ゲームのモーションをなぞるかのように振り抜いた刀は、蹴り飛ばそうと迫るデモンエイプの足をきれいに切断した。
ゴアァオオオアァア
突然の激痛にのたうち回るデモンエイプ。
振り回す腕が、足が地と土砂を巻き上げる。
とどめを刺そうにも、暴れまわる大木のような腕や足に近づくことができない。
チラリとシンさんの方を見ると、アオイが何事か叫んでいた。
「ポーション!なんで使わないの!」
アオイはシンの体を探すが見つからない。
ユーシンが持っていた最後のポーションは、アオイが使ってしまっていた。
ついて来るならしっかり回復しろと渡され、ここまでの道中で使ってしまったのだ。
我慢できないような怪我じゃなかった、あの一本を、何故使ってしまったのか、残しておかなかったのか、自分が使ってしまったせいで、と自分を責める。
「なんで持ってないのよ!」
アオイの様子にただならぬものを感じたユーシンは、危険を承知で暴れるデモンエイプに飛び込んだ。
デモンエイプは座った姿勢のまま、迫るユーシンを殴りつけようとする。
襲い掛かる腕をかわし、掴みかかる手に切りつけて指を飛ばす。
脅威ではないと感じた攻撃は当たるに任せた。
そうでもしないと、とどめを刺せる位置まで近づけない。
最後は真っすぐ頭上に上げた刀を振り下ろし、デモンエイプの頭をかち割った。
地響きを立てて倒れたデモンエイプ。
シンの元へと向かおうとしたが、全身のいたるところが悲鳴を上げた。
当たるに任せた脅威では無い攻撃も、普通の人間なら即死してもおかしくない強烈な一撃、いくらユーシンといえどもかすり傷では済まない。
悲鳴を上げる体を無理矢理動かしてシンの元へ。
一秒でも早くたどり着きたいのに、一歩一歩がカメの歩みのように重く遅い。
そんなユーシンの状況も気が付かないほど、アオイは錯乱していた。
ポーションが無い。
あんなに大盤振る舞いしていたくせに、自分が持ってないって何なの!
アオイは激しく後悔していた。
アスクラにも体力回復のポーションはある。
当然アオイもレシピは熟知していた。
これまで必要と感じることも無かったし、この戦いが予測されてからアオイは、日本刀を打つことばかりに捕らわれていたため作っていなかったのだ。
自分でもポーションを作ることで協力できたはずなのに、それを放棄してしまっていた。
切り裂かれた胸からは血がとめどなく溢れ出している。
「やだよ。」
なんとか出血を止めようと両手で傷口を押さえるが、効果があるはずもない。
それほど広く、深い。
「もう、おじーちゃんなんて言わないから・・・。」
涙で視界がかすむ。
自分の服を傷口に押し当てて何とか抑えようとする。
グイグイと押さえつけて、必死に止めようとした。
神でも悪魔でもいいから助けてくれと。
出血が収まった気がした。
「よかった・・・!」
ホッとした時、初めて気が付いた。
アオイは、血の池に囲まれていた。
シンから出た信じられない量の血が、大きな血の池を作っていたのだ。
「やだ・・・シンさん・・・。」
嗚咽が漏れる。
出血が治まったのではない。
出る血が無くなった。
「嘘だよ・・・騙されないんだから・・・。」
ウソでなければ何かの間違いだ。
シンさんが死ぬはずがない。
「・・・嘘つき・・・。」
時間を稼ぐだけだから無理はしない、そう言っていたのに、なんでこんな大怪我してるのよ。
すでに顔からは生命を感じることができない。
事切れている。
理性がそう告げるが、認めたくなかった。
認めなければ死にはしない、そんなことを思いながら。
肩に誰かの手が触れた。
涙でグシャグシャニなった顔で振り向くと、そこには悲痛な面持ちで目を閉じ、ゆっくりと首を横に振るユーシンがいた。
自分がポーションを使わなければ。
自分がポーションを作っていれば。
自分が余計なことをしたせいでシンさんの治療ができなかった。
自分がちゃんと準備に加わっていれば治療ができた。
・・・
・・
・
・
自分がシンさんを殺してしまった。
準備時間さえ取れればマジックミサイルの有効性はナンバーワンだな。
3倍よりもっと強化できればもっと使えたのに・・・4倍からは一気に準備時間が長くなるんだよな。
剣を抜いて4匹目と対峙する。
少し距離が離れていたことで躱されたけど、十分脅威として認識してくれたはずだ。
「戦闘って、始まる前から終わってるんだよね。」
(ゲームでの話だけど・・・。
一気に3匹も殺られたんだ、戦々恐々としているだろう。
いい気味だ。
このまま時間を稼いでもいいし、隙があれば倒しに行ってもいい。)
問題は、いまだに姿を見せない敵プレイヤーだった。
戦闘力が無い司令塔タイプならまだいいが、スロークのような暗殺系だとまずいことになる。
が、どうやらそれは無さそうだ。
”警戒”で感知した限りでは、先ほどからまったく動きが無いのだ。
なにか良からぬことでも企んでいるのか、それともビビっているだけなのか。
(う~ん、どうしたものかな、逃走手段を持っていると厄介だしなぁ。
デモンエイプを先に始末・・・してる間に逃げられるよな、やっぱり。
不意打ちはもう通用しそうにないし。
デモンエイプ無視して直接・・・は無理だよな、やっぱ。)
このまま膠着状態が続くというのがシンにとっては理想的な展開、しかし、そううまくいくはずもない。
(考えていても仕方ないか、まずは残ったデモンエイプに対処するとしよう。
奴が逃げだしたら追えばいい、こっちには優秀な暗殺者もいることだし。)
ボディプロテクション エンチャントオーラ スピードアップ パワーアップ ライオンハート ディフェンスアップ オーラウエポン リジェネレーションアルファ
自分自身に強化魔法をかけまくる。
今風に言うとバフってやつだ。
魔法を使うのに声を出さなくてよいという仕様は、非常にありがたい。
昨今はとかく派手になりすぎなゲームが多い、バフ系の魔法にはエフェクトがほとんどかからないエイルヴァーンのシステムは、こういった状況では有利に働く。
(さすがに真正面からデモンエイプとやり逢うのは怖い。
なんて言ったらユーシンに怒られそうだけど。)
とにかく強化てんこ盛りでやり合うことにした。
目標一、みんながやって来るまでダラダラ戦って時間を稼ぐ。
目標二、たぶん無理だけど、あわよくばデモンエイプを始末する。
目標三、敵プレイヤーを拘束、無理なら殺る。
一気に突っ込む。
目の前で火花が散った。
振り抜いた剣が、デモンエイプの爪で弾かれたからだ。
(この反応速度、やっぱり侮れない。
俺が弱いだけとも言うけど。
やっぱりユーシンのように正面からガチ勝負ってのは性に合わんな。)
数度切り結んだが、あえなく撃墜された。
(この巨体で何でこんなに速いん?)
くそ、最初に打ち合ったのはマズかった。)
カブロから購入した剣は早くもあちこち刃こぼれが目立つ。
すでに、わずかに見つけた隙をついて切りつけたくらいじゃ皮一枚切れないほどになってしまっている。
(これ、”強連撃”使っても切れなかったりして・・・意地はらないでスロークから剣借りてくればよかった。
まぁ、充実してたのは短剣と暗殺剣ばっかりだったけど、これよりましだったな。)
不意に体を沈める。
地を這うように走らせた剣がデモンエイプの足首を切り裂・・・けなかった。
(やべぇ、これ。)
スキルこそ使わなかったものの、全力で切りつけたのに刃が止まった。
両手で剣を持って高速回転、遠心力も利用してさらに威力を高めた一撃、も、足首を切ることができない。
「うぉ!」
すかさず振り下ろされた腕の一撃を間一髪で躱すと、その腕に剣先を突き立ててみる。
刺さった、と思う間もなく吹っ飛ばされた。
振り下ろした腕を、そのまま振り上げてきたせいだ。
(くそ、ほんのちょっとだったけど刺さったのに。)
マジックミサイルを準備しておくべきだったと後悔した。
もう、3倍化なんて悠長な時間はできそうにない。
切り付けた剣が打ち落とされるたびに剣が悲鳴を上げ、刃が欠けてゆく。
この世界で流通する剣の多くは、鋼を型に流し込んで軽くたたいてから焼き入れ、刃を研いだだけと言う製法、鋳造で作られる、いわゆる鋳物だ。
高名な刀匠ともなると、柔軟な鋼を叩きのばして形を作り、焼き入れによって浸炭(しんたん)という処置を施すことで、いわゆる日本刀のように中心部は柔軟で、外側が硬い剣を作れるらしい。
まぁ、そんなものが一般人に手に入るはずもない。
(これ、折れるな。)
ただ硬いだけの剣は、扱いを間違えると簡単に折れる。
激しい打ち合い。
普通ならとっくに折れていても不思議じゃないほどに。
まだ剣の体裁を保っていられるのは、前もって強化を施していたからだ。
それだっていつまでもつか。
予備の剣は全く手を加えていない、打ち合えばあっけなく折れるだろう。
デモンエイプは想像以上に強かった。
以前戦った個体が特別弱かったのは分かっていたつもりだけど、それでもこの強さは予想以上だ。
3匹瞬殺?
運よく不意打ちがクリティカルしただけだった。
バフがあったから何とか戦えているようなもので、切れたら一気に大ピンチ確定案件でございます。
隙を見て、短発だけどマジックミサイル2倍化より威力の高いフレイムアローを放ってみた。
余裕で躱されました。
ならばと躱されない距離にまで近づくと、デモンエイプの手数の多さに魔法を使う余裕が無くなる。
(やっぱこいつメンドクサ~い。)
さらに、バフが切れ始めると状況が悪化、かけなおしながらの戦いになってしまいまさにドロ試合化してしまった。
焦りが募る。
魔力が切れたらつんでしまう。
と、思うとチャンスにも魔法が打てなくなる悪循環。
回復にも魔力を残しとかなきゃならない。
ポーションは戦っているみんなや、村で避難準備をするソンチョーたちに全て配ってしまった。
俺は魔法があるから大丈夫なんて余裕ブッコいてしまった。
すでに切りつけても意味は無いと、突きでの戦いにシフトしているが、突きだけに偏るとどうしても単調になってしまう。
小さな傷を作ることがせいぜいで、逆に俺の魔力も気力もみるみる目減りしてゆく。
そんな泥仕合に転機が訪れたのは、魔力も気力もほぼ使い切った後だった。
「シンさん!」
ユーシンの声が、エイプの気を引いた。
助かった!
と思いながらもこのチャンスは見逃さない。
体ごとぶつかるように剣をエイプの胸に突き出した。
同時に、念のため最後の魔力でユーシンにボディプロテクションをかけるのも忘れない。
心臓へ向けて真っすぐに突き刺さる。
が、剣はデモンエイプの心臓には届かなかった。
肉に刺さる感触を感じた瞬間、俺は左肩からの強烈な衝撃に、一瞬意識を飛ばした。
さらに直後、右肩に衝撃。
肩が砕かれる音と激痛。
マジックミサイルが2発胸に、それで倒したと思い込んでいたデモンエイプが意識を取り戻し俺を強襲、弾き飛ばされたうえ、飛ばされた先の木にたたきつけられたことによる衝撃だった。
と気が付いた時には、心臓を貫き損ねた4匹目のデモンエイプが眼前にいた。
鋭い爪が、胸を深く、抉るように切り裂いた。
防御系のバフはとっくに切れていた。
(あぁ、なんで俺はいつもこうなんだ・・・。)
薄れる意識の中、かろうじて自分の血で短いメッセージを残せた。
だれかに伝わってくれることを祈って。
**
「シンさん!!」
悲鳴に似た叫びが二つ。
ユーシンとアオイだ。
鎧ごと体を引き裂き、その爪に大量の血をまとったままのデモンエイプが、振り返り二人を睨みつける。
3体目のデモンエイプは、胸から大量に出血し続けている。
フラフラとユーシンの方に動こうとするが、足がもつれてばたりと倒れた。
シンを吹き飛ばした一撃が最後のあがきだったようだ。
瞬きする間もなく、ユーシンとデモンエイプは剣と爪を打ち合わせていた。
その横をすり抜けるようにアオイがシンの元へ駆け寄る。
「クソザルがぁあ!!」
ユーシンは怒りに任せてデモンエイプの腹へと刀を叩きつけた。
ドスッ
防御に下ろした腕に阻まれた。
骨を断つことができない。
全身の力を込めて押し切ろうとするが、ビクとも動かない。
この使い方じゃない。
本来の使い方さえすれば、腕を両断することなど容易いはず、そして、その使い方はつい先ほど身に着けたはずだ。
切れないはずが無い。
どうして切れないのかを考えることすらできないほど、ユーシンはキレていた。
怒りで何も考えられず、目の前のデモンエイプしか見えていない。
意識もせずに声が出ている。
自分でも何を言っているのか分かっていない。
無意識に口から出た音は、怨嗟のうなりだった。
自分の中が殺意に塗りつぶされてゆく。
ただ力を込めて押していた刀が、突然軽くなった。
デモンエイプが押し合っていた腕を、ゆーしんが力を込める方向へと流したためだ。
急に力のバランスが崩れ前のめりにつんのめるユーシンを、振り上げていた逆の腕が襲う。
強烈な衝撃と共に吹き飛んだユーシンだが、その瞬間、体から光る破片のようなものが離れていくのが見えた。
あぁ、シンさん・・・。
ボディプロテクションが吸収しきれずに砕けた時の光。
その光が、殺意に染まったユーシンを引き戻した。
拳を地面に叩きつけて、吹き飛ばされる自分の体を強引に引き止める。
指が何本か折れた感触も気にしない。
地を蹴って追撃態勢に入っていたデモンエイプを迎え撃つ。
今度はしっかりと、ゲームのモーションをなぞるかのように振り抜いた刀は、蹴り飛ばそうと迫るデモンエイプの足をきれいに切断した。
ゴアァオオオアァア
突然の激痛にのたうち回るデモンエイプ。
振り回す腕が、足が地と土砂を巻き上げる。
とどめを刺そうにも、暴れまわる大木のような腕や足に近づくことができない。
チラリとシンさんの方を見ると、アオイが何事か叫んでいた。
「ポーション!なんで使わないの!」
アオイはシンの体を探すが見つからない。
ユーシンが持っていた最後のポーションは、アオイが使ってしまっていた。
ついて来るならしっかり回復しろと渡され、ここまでの道中で使ってしまったのだ。
我慢できないような怪我じゃなかった、あの一本を、何故使ってしまったのか、残しておかなかったのか、自分が使ってしまったせいで、と自分を責める。
「なんで持ってないのよ!」
アオイの様子にただならぬものを感じたユーシンは、危険を承知で暴れるデモンエイプに飛び込んだ。
デモンエイプは座った姿勢のまま、迫るユーシンを殴りつけようとする。
襲い掛かる腕をかわし、掴みかかる手に切りつけて指を飛ばす。
脅威ではないと感じた攻撃は当たるに任せた。
そうでもしないと、とどめを刺せる位置まで近づけない。
最後は真っすぐ頭上に上げた刀を振り下ろし、デモンエイプの頭をかち割った。
地響きを立てて倒れたデモンエイプ。
シンの元へと向かおうとしたが、全身のいたるところが悲鳴を上げた。
当たるに任せた脅威では無い攻撃も、普通の人間なら即死してもおかしくない強烈な一撃、いくらユーシンといえどもかすり傷では済まない。
悲鳴を上げる体を無理矢理動かしてシンの元へ。
一秒でも早くたどり着きたいのに、一歩一歩がカメの歩みのように重く遅い。
そんなユーシンの状況も気が付かないほど、アオイは錯乱していた。
ポーションが無い。
あんなに大盤振る舞いしていたくせに、自分が持ってないって何なの!
アオイは激しく後悔していた。
アスクラにも体力回復のポーションはある。
当然アオイもレシピは熟知していた。
これまで必要と感じることも無かったし、この戦いが予測されてからアオイは、日本刀を打つことばかりに捕らわれていたため作っていなかったのだ。
自分でもポーションを作ることで協力できたはずなのに、それを放棄してしまっていた。
切り裂かれた胸からは血がとめどなく溢れ出している。
「やだよ。」
なんとか出血を止めようと両手で傷口を押さえるが、効果があるはずもない。
それほど広く、深い。
「もう、おじーちゃんなんて言わないから・・・。」
涙で視界がかすむ。
自分の服を傷口に押し当てて何とか抑えようとする。
グイグイと押さえつけて、必死に止めようとした。
神でも悪魔でもいいから助けてくれと。
出血が収まった気がした。
「よかった・・・!」
ホッとした時、初めて気が付いた。
アオイは、血の池に囲まれていた。
シンから出た信じられない量の血が、大きな血の池を作っていたのだ。
「やだ・・・シンさん・・・。」
嗚咽が漏れる。
出血が治まったのではない。
出る血が無くなった。
「嘘だよ・・・騙されないんだから・・・。」
ウソでなければ何かの間違いだ。
シンさんが死ぬはずがない。
「・・・嘘つき・・・。」
時間を稼ぐだけだから無理はしない、そう言っていたのに、なんでこんな大怪我してるのよ。
すでに顔からは生命を感じることができない。
事切れている。
理性がそう告げるが、認めたくなかった。
認めなければ死にはしない、そんなことを思いながら。
肩に誰かの手が触れた。
涙でグシャグシャニなった顔で振り向くと、そこには悲痛な面持ちで目を閉じ、ゆっくりと首を横に振るユーシンがいた。
自分がポーションを使わなければ。
自分がポーションを作っていれば。
自分が余計なことをしたせいでシンさんの治療ができなかった。
自分がちゃんと準備に加わっていれば治療ができた。
・・・
・・
・
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自分がシンさんを殺してしまった。
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だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
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そんなお話です。
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「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
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七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
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それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
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その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
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