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048話:後始末
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時間にして1時間弱の闘争は終わった。
当事者たちにとっては果てしなく長く感じたであろう1時間は、一人を失いながらも勝利に終わった。
結局村の中での戦闘はほぼ無く、施設や住人に被害が出ることもなかった。
11匹のデモンエイプ(うち2匹はプレイヤーが化けた姿)と数百のヒエン、2名のプレイヤー(化けていたものを含めると4人)という、想定を遥かに上回る圧倒的な戦力相手に犠牲者が一人というのは十分すぎる戦果と言えた。
でも、彼らは経験していなかった。
仲間の死を。
異様な姿から人の世界にいられず逃げ続けていたクリフト達ですら。
泣き崩れて立つこともできないアオイと、憔悴しきってうずくまったままのユーシン。
このままではマズイ。
そう感じたスロークは、悲しみに蓋をして立ち上がらずを得なかった。
「シンさんを復活させる。」
今のスロークには使えないが、エイルヴァーンには生命力が尽きて戦闘不能に陥った仲間を復帰させる魔法がある。
シングルゲームのエイルヴァーンにとっては、それほど重要な魔法ではない。
同行するNPCや従魔は、戦闘中に戦闘力が0になっても死亡することは無い。
その状態から復活させる魔法なのだが、アイテムを渡しておけば自分たちで勝手に復活するので、転職後まで持ち越す者はまずいなかった。
アイテムも無く、魔法を使うことなく放置すれば一定時間後に消滅する。
エイルヴァーンには死亡というステータスが無いのだ。
生命力が0になっても、ステータスには戦闘不能と表記されるだけ。
だからすでに死亡しているシンに効果があるのか、それがスロークには不安だった。
それに、復帰させる魔法は最上位職、大司教の魔法なのだ。
使うには大司教でレベル80までにならなければならない。
転職とクラスアップでレベル1から到達するには、あまりにも時間がかかりすぎる
それでも、この状況からみんなを抜け出させるためには希望にすがるしかなかった。
「とにかく、シンさんは自分の第三貯蔵庫に入ってもらおうと思う。
第三貯蔵庫なら時間経過が起こらない、このままの状態で保存できるはずだ。
今、自分はその魔法を使える職に無い、復帰させる魔法を使えるようになるには時間がかかるし、その間弱体化する。
復帰の可能性も完全とは言えないし、もしだれか蘇生系の魔法が使えるゲームをプレイしていたなら、教えてほしい。」
「悪りいっス・・・格闘とレースなんで・・・ムリっス。」
ユーシンが消え入りそうな声で答える。
「私も・・・医療ポッドも死者蘇生はできないから。」
「僕の魔法は、モンスターにしか使えない。」
マナもユーキも、声を震わせながらしぼりだす。
「ごめんね・・・私も無い。」
シンの髪を撫でながら、ユーコも告げた。
「弱体化なんて気にすることないよ、もうこんなこと、僕が許さない。」
そう言ってスロークを後押ししたライアーだが、
「でも、弱体化するってことは、その”だいさんちょぞうこ”ってやつ、大丈夫なの?」
と疑問を突きつけた。
考えてもみなかった。
ゲームでは、敵を倒すと一時的に死体は残るが、探索コマンドでドロップ品の回収をすると死体は消える。
死体の状態のままで貯蔵庫に入れたことは無い。
その上、転職によって長期間使用ができなくなったらどうなるのか・・・問題無いとは思うが、確実とは言い切れない。
「すまない、それは想像していなかった。」
「たしか、アスクラのストレージは素材しか入れられなかったはずだし、クラッシュレーサーも車関係限定、マジモンにフラッシュランナー、オートマトン、マッキーアイランドは特定のアイテム以外入れられない仕様だし、ビーバータイクーン、みどり村はインベントリそのものが無くて倉庫って仕様だし、時間経過で腐る。
格ゲーの爆裂学園とストバトも当然無いわけだろ?となると、シンさんを入れて置けるのって、スロークさんの貯蔵庫だけなんだよ。
だけど、そのスロークさんは転職によって長期間シンさんの様子を見ることができなくなる。」
ライアーのゲーム知識には救われてばかりだ。
ここで焦って転職を急ぎ、取り返しのつかないことになってしまったら・・・想像しただけでゾッとしてしまう。
しかし、それならばどうすればいいのか・・・。
「わ、わたし探す!」
涙などで顔をグシャグシャにしたアオイが立ち上がった。
「おじーちゃん保存できる人でも、復活できる人でもいいから、必ず探す!」
グッとこぶしを握り締めるアオイ。
目には力強さが戻っている。
「ばっか、おめぇは村づくりだろ?それを探すのは車で飛び回れる俺の仕事っスよ。」
ユーシンもらしさが戻ってきたようだ。
ひどく不安な希望だが、今はそれにすがるしかない。
シンの遺体を第三貯蔵庫に安置すると、重い足取りのままソンチョーたちの元へと戻った。
**
ソンチョー達と合流すると、危機はもう脱したことを伝えた。
湧きたつ住民たちは、すぐさま避難準備のかたずけを始めた。
「そう・・・シンさんが。」
ソンチョー宅のリビングで、現場にいなかった3人に事の顛末を語ったスローク。
「シンさんは重体で、守護神像が元々安置されていた場所で静養中、現在は絶対安静で面会謝絶。
と、いうことにしておこう、復活した時に変な騒がれ方したくないだろうし。」
「そうだね、宗教化するのはダメだって良く言ってたし。死者蘇生なんて、まさに神の軌跡ってやつだもんね。」
「じゃぁ、それまでにシンさんの喜びそうな料理を再現しなきゃな。」
ソンチョー達の中では、シンの復活は確定事項らしい。
(不安要素の方が大きいんだけどな。)
転職後にみんなにかける負担を少しでも減らすために、持ち越すスキルの熟考と熟練度を上げること、それを自分に課すと決めたスロークだった。
**
村では後始末に追われていた。
9匹のデモンエイプに数百ものヒエン、村人総出での解体作業だ。
得られるのは魔石と皮がメインだ。
デモンエイプの肉は臭く食用には向かないが、干し肉に加工して魔物除けに使えるのではないか、と言うことで回収が決まった。
さらに損傷の無い頭部は頭蓋骨だけに加工すれば、好事家に売れるのではないか、と言うことで確保、カブロがやって来るのを待って相談することに。
ヒエンの方は、実は腿の肉が美味であることが分かった。
大半が筋張っていて臭く、とても食べられる様なものでは無かったのだが、腿肉だけは念入りに臭み消しをすれば、強い弾力がクセになる珍味になるとマスターからお墨付きを得た。
最初解体作業におっかなびっくりだった職人やその家族たちも、作業も半ばに差し掛かる頃にはベテランの風格で淡々と作業を続けている。
技術はベテランとは程遠いが。
急遽つくられた防護壁も解体が始まっている。
元々は村を作る資材だ、無駄にはできない。
開戦後わずか半日、村は活気に包まれていた。
**
後日4人の襲撃者は、村人の目の届かない場所で焼却して迷彩男と同じ場所へ埋められた。
弔う気はしなかったので、掘り起こした穴に雑多に放り込んで埋められた。
村の住民たちには、ソンチョー達との打ち合わせ通りシンは重傷で絶対安静な状態だと伝えてある。
シンが復活したとき、スムーズに村に受け入れられるようにとの措置だ。
復活の希望があるからこそ、スロークたちも前へ進める。
特にアオイは、自分のせいでシンが死んだのではないかとかなりのショックを受け、自分を責めていた。
復活の希望にすがるしかない。
ユーコやマナにそれとなく様子を見てもらっているが、時折思いつめたような様子が見られるという。
これ以上不安を与えては危険だと、シン復活の不安要素は自分の中だけに収めようと、スロークは心に決めていた。
彼が最後に残したメッセージ 魔物=魔石 スロークはすぐにその意図を察した。
自分たちは魔物ではない。
なぜなら、魔石が無いからだ。
奇しくもデモンエイプに変身していた襲撃者との会話で、「自分は魔物なのか」と肯定しかけていたスロークだったからこそ、一目で伝わるメッセージだった。
あの時、「自分が魔物だったとしても気にはならない」と言っておきながら、このメッセージでホッとした自分に気が付いてあきれてしまった。
まだまだ修行が足りない。
シン復活のために、まずは遺体を保管できる方法か、死からの復活魔法を使える者を探さなければならない。
見落としがあるかもしれないと、あらためてみんなのゲームシステムを確認してみた。
保存に関して貯蔵庫やインベントリ以外に何かないか?
冷凍という案もあったが、現状村に冷凍技術は無い。
コールドの魔法でもできるのは氷、せいぜい-1~-2℃までだ。
水を瞬間的に凍らせるという魔法なら瞬間的に-40℃とかになったかもしれないが、スロークの魔法コールドでは、あくまで何もないところに氷を作り出す、という種類の魔法だった。
とうぜん遺体は冷凍することができないし、時間がたてば溶けてしまう。
マスターの氷系魔法も超低温で氷を作るが、その状態を持続させるものではなかった。
氷は残るが、発動直後以外はスロークと同じような状況だった。
ライアーの指摘どおり、マスターがプレイしていたゲーム、マッキーアイランドではHPが0になっても、戦闘後には復活する仕様で、死亡という状況そのものが無かった。
アイテムを入れる魔法のカバンには、あらかじめ入れられるアイテムが決まっており、ゲームのアイテム以外入れられなかった。
アオイもストレージ機能があり、時間停止のような機能というか、ゲーム自体に食物が傷むという概念が無かったが、素材しか入れられない。
他のみんなもライアーの指摘通りであることが再確認されただけだった。
やはり、復活かインベントリーを持ち、仲間となれる者を探して招く、という案で長期戦覚悟で慎重に進めるしかないようだ。
ふと、自分たちのような存在の呼び方を決めておいた方が良いのでは?という声が上がった。
「プレイヤーでいいんじゃないんスか?」
「あいつらの言い方なんてイ~ヤ~~。」
速攻でユーコが拒否った。
元々は迷彩男が言っていた呼び方だし、仲間の襲撃犯たちもそう言っていたので、何となく嫌だ、と言うことらしい。
「なら異世界人でいいんじゃない?」
「捻りが無いからいやぁ。」
「捻りって・・・。」
話し合いは続き、ユーシンの「クソ悪魔拉致られ会」は全会一致で即刻否決された。
結局良い案は出ず、とりあえずは異世界から渡ってきた人、ワタリビトで統一することになった。
否決しまくっていた当のユーコが飽きてしまったからだ。
魔物に関する呼び方も、村にいるゴブリンやオークたちとデモンエイプのような存在を一緒に魔物と呼ぶのはなんか嫌だという理由で、意思疎通ができて、協力も可能な魔物を「魔者」、それ以外を「魔獣」と呼ぶことにした。
ワタリビト間の取り決めだけど、魔物の呼び方は村の住民に周知していこうということで決定した。
**
村は真冬、雪も深まる中、向けて急ピッチで建築が進んでいた。
シンの従魔だったオヤカタ達は、そのまま村に残っている。
スキルは失われ、流暢だった言葉にもたどたどしさが感じられるようになったが、それまでに村の面々とかわしてきた関係性は変わらず、そのまま村に残って勤勉に働いてくれている。
スキルによる超絶な正確性や速度といった恩恵は失ったが、体に染みついた技術力などはしっかり残り、それぞれが村の仕事に従事してくれている。
オークのグラン族一行は、パラミドとお付きのパナ、パトを残して村を出た。
バラバラになった民を探し出して、みどり村へ案内するためだ。
どれだけ生き残っているかも分からない中での捜索なので、数年がかりとなるだろう。
その間パラミドたちは、オリヒメと服飾班として働いてもらうことになっている。
食べものの魔素抜きもスロークが受け継いでいるし、酒の研究も、忙しい合間を使ってマスターがシンに引き続き取り組んでいる。
シンの貯蔵庫に入っていた建材も、紛争前に貯蔵庫からあらかた運び出されており、ゴブリンのンダバたちが仕分けを進めている。
何の問題も無い。
ふと、スロークの背筋に冷たいものが走った。
シンがいなくても、村づくりは滞りなく進んでゆく。
彼は、自らができることも、率先して周囲の者へと知識や技術を共有していた。
食料の魔素抜きなど、秘匿するべき技術ですら簡単にスロークたちへ教えた。
彼は、そうすれば自分が楽できるから、なんて言っていたけれど。
こういう事態を想定して、そう仕向けていたんじゃないのか。
自分がいついなくなってもいいように。
もう、自分はいなくても大丈夫だなんて、そんなことを考えて、一番危険な場所へ向かったのではないか。
これこそスロークが勝手に思ってしまったことだけれど、的を射ているような気がしてならない。
考えてみれば、迷彩服の男の襲撃時も、彼は一番の問題を引き受けて村から出て行こうとしていた。
無性に怒りが込み上げてきた。
勝手すぎる。
シンがいなければ、ここは村にすらなっていなかっただろう。
それなのに、与えるだけ与えて消えてしまおうとするなんて。
許さない。
何が何でも生き返らせて、文句を言ってやらねば気が済まない。
自分たちをバカにするなと。
(はぁ・・・疲れてるな。)
勝手な妄想でバカなことを考えているものだと自嘲した。
妄想を振り払うように頭を数回振ると、日課の巡回をはじめた。
ユーシンとユーキ、ライアーは、暇を見つけては模擬戦を繰り返している。
もう誰一人死なせないと、自己鍛錬に余念がない。
スロークが転職することで一気に低下する防衛力を補うつもりのようだ。
三人は村周辺の巡回と魔獣の駆除も始めている。
(そのうち自警団とか組織しそうだな。)
襲撃者の一人を軟禁していた倉庫は、改装して診療所として利用することになった。
診療所には連日職人やハンターたちが押しかけ、マナが対応に追われている。
回復用の医療ポッドが現地の住人にも利用可能だと分かった。
元々はソンチョー宅の増設した一室に設置されていたが、それとは別にポイントを使って新たに診察室に設置され、マナが仮の医師として就任している。
どうも最近では、マナ目当てで手当ての必要のない連中まで通っているようだ。
そんな一人をつまみ出してから巡回に戻る。
(マナが過労とストレスで倒れないうちに、何か対策を考えた方がいいな、ソンチョーに相談してみよう。)
村の食を一手に手掛けるマスターもかなりの過剰労働といえる。
弟子たちが育ってきているとはいえ、メイン料理やメニュー開発など負担は大きい。
春には解決しそうだけど、それまでは彼に頼らなければならないし、この問題もソンチョーに相談して対策を考えないといけないだろう。
そんな中、あいかわらずのんびりと暮らすユーコ。
日中は子ゴブリンたちの世話、というか戯れ、隙を見つけては日向で寝ている。
そして夕方からは食堂で給仕の手伝い、夜は酔っ払いの介抱と、食堂にとって、なくてはならない存在になってはいたが、あれ以前とあまり変わった様子はない。
まぁ、自分にそう見えているだけで実際にはいろいろと頑張っているんだろう。
あの戦いで彼女のすごさをしっかりと認識できたから、そう思えるようになった。
クリフトとソンチョーは村の開拓、特にインフラ整備にかかりきりになっている。
忙しくすることで辛さを振り払おうとしているようで、時折心配になるほど集中していた。
「シンさんが起きてきたら唖然とするほど発展させる」なんてソンチョーが言っていたな。
不安なのがアオイで、日中は道路やインフラ整備の手伝いをして、夕方からは籠って鍛冶に打ち込んでいる。
何としてもちゃんとした日本刀を作りたいと言っているらしいが、現状あまりうまくいってないようだ。
あの時のことを引きずっているのは間違いないようで、ユーコとマナに頼んでたびたび様子を見てもらってはいるが、どうしても心配になってしまう。
それぞれがそれぞれのペースで、一歩ずつでも、確実に前進していた。
当事者たちにとっては果てしなく長く感じたであろう1時間は、一人を失いながらも勝利に終わった。
結局村の中での戦闘はほぼ無く、施設や住人に被害が出ることもなかった。
11匹のデモンエイプ(うち2匹はプレイヤーが化けた姿)と数百のヒエン、2名のプレイヤー(化けていたものを含めると4人)という、想定を遥かに上回る圧倒的な戦力相手に犠牲者が一人というのは十分すぎる戦果と言えた。
でも、彼らは経験していなかった。
仲間の死を。
異様な姿から人の世界にいられず逃げ続けていたクリフト達ですら。
泣き崩れて立つこともできないアオイと、憔悴しきってうずくまったままのユーシン。
このままではマズイ。
そう感じたスロークは、悲しみに蓋をして立ち上がらずを得なかった。
「シンさんを復活させる。」
今のスロークには使えないが、エイルヴァーンには生命力が尽きて戦闘不能に陥った仲間を復帰させる魔法がある。
シングルゲームのエイルヴァーンにとっては、それほど重要な魔法ではない。
同行するNPCや従魔は、戦闘中に戦闘力が0になっても死亡することは無い。
その状態から復活させる魔法なのだが、アイテムを渡しておけば自分たちで勝手に復活するので、転職後まで持ち越す者はまずいなかった。
アイテムも無く、魔法を使うことなく放置すれば一定時間後に消滅する。
エイルヴァーンには死亡というステータスが無いのだ。
生命力が0になっても、ステータスには戦闘不能と表記されるだけ。
だからすでに死亡しているシンに効果があるのか、それがスロークには不安だった。
それに、復帰させる魔法は最上位職、大司教の魔法なのだ。
使うには大司教でレベル80までにならなければならない。
転職とクラスアップでレベル1から到達するには、あまりにも時間がかかりすぎる
それでも、この状況からみんなを抜け出させるためには希望にすがるしかなかった。
「とにかく、シンさんは自分の第三貯蔵庫に入ってもらおうと思う。
第三貯蔵庫なら時間経過が起こらない、このままの状態で保存できるはずだ。
今、自分はその魔法を使える職に無い、復帰させる魔法を使えるようになるには時間がかかるし、その間弱体化する。
復帰の可能性も完全とは言えないし、もしだれか蘇生系の魔法が使えるゲームをプレイしていたなら、教えてほしい。」
「悪りいっス・・・格闘とレースなんで・・・ムリっス。」
ユーシンが消え入りそうな声で答える。
「私も・・・医療ポッドも死者蘇生はできないから。」
「僕の魔法は、モンスターにしか使えない。」
マナもユーキも、声を震わせながらしぼりだす。
「ごめんね・・・私も無い。」
シンの髪を撫でながら、ユーコも告げた。
「弱体化なんて気にすることないよ、もうこんなこと、僕が許さない。」
そう言ってスロークを後押ししたライアーだが、
「でも、弱体化するってことは、その”だいさんちょぞうこ”ってやつ、大丈夫なの?」
と疑問を突きつけた。
考えてもみなかった。
ゲームでは、敵を倒すと一時的に死体は残るが、探索コマンドでドロップ品の回収をすると死体は消える。
死体の状態のままで貯蔵庫に入れたことは無い。
その上、転職によって長期間使用ができなくなったらどうなるのか・・・問題無いとは思うが、確実とは言い切れない。
「すまない、それは想像していなかった。」
「たしか、アスクラのストレージは素材しか入れられなかったはずだし、クラッシュレーサーも車関係限定、マジモンにフラッシュランナー、オートマトン、マッキーアイランドは特定のアイテム以外入れられない仕様だし、ビーバータイクーン、みどり村はインベントリそのものが無くて倉庫って仕様だし、時間経過で腐る。
格ゲーの爆裂学園とストバトも当然無いわけだろ?となると、シンさんを入れて置けるのって、スロークさんの貯蔵庫だけなんだよ。
だけど、そのスロークさんは転職によって長期間シンさんの様子を見ることができなくなる。」
ライアーのゲーム知識には救われてばかりだ。
ここで焦って転職を急ぎ、取り返しのつかないことになってしまったら・・・想像しただけでゾッとしてしまう。
しかし、それならばどうすればいいのか・・・。
「わ、わたし探す!」
涙などで顔をグシャグシャにしたアオイが立ち上がった。
「おじーちゃん保存できる人でも、復活できる人でもいいから、必ず探す!」
グッとこぶしを握り締めるアオイ。
目には力強さが戻っている。
「ばっか、おめぇは村づくりだろ?それを探すのは車で飛び回れる俺の仕事っスよ。」
ユーシンもらしさが戻ってきたようだ。
ひどく不安な希望だが、今はそれにすがるしかない。
シンの遺体を第三貯蔵庫に安置すると、重い足取りのままソンチョーたちの元へと戻った。
**
ソンチョー達と合流すると、危機はもう脱したことを伝えた。
湧きたつ住民たちは、すぐさま避難準備のかたずけを始めた。
「そう・・・シンさんが。」
ソンチョー宅のリビングで、現場にいなかった3人に事の顛末を語ったスローク。
「シンさんは重体で、守護神像が元々安置されていた場所で静養中、現在は絶対安静で面会謝絶。
と、いうことにしておこう、復活した時に変な騒がれ方したくないだろうし。」
「そうだね、宗教化するのはダメだって良く言ってたし。死者蘇生なんて、まさに神の軌跡ってやつだもんね。」
「じゃぁ、それまでにシンさんの喜びそうな料理を再現しなきゃな。」
ソンチョー達の中では、シンの復活は確定事項らしい。
(不安要素の方が大きいんだけどな。)
転職後にみんなにかける負担を少しでも減らすために、持ち越すスキルの熟考と熟練度を上げること、それを自分に課すと決めたスロークだった。
**
村では後始末に追われていた。
9匹のデモンエイプに数百ものヒエン、村人総出での解体作業だ。
得られるのは魔石と皮がメインだ。
デモンエイプの肉は臭く食用には向かないが、干し肉に加工して魔物除けに使えるのではないか、と言うことで回収が決まった。
さらに損傷の無い頭部は頭蓋骨だけに加工すれば、好事家に売れるのではないか、と言うことで確保、カブロがやって来るのを待って相談することに。
ヒエンの方は、実は腿の肉が美味であることが分かった。
大半が筋張っていて臭く、とても食べられる様なものでは無かったのだが、腿肉だけは念入りに臭み消しをすれば、強い弾力がクセになる珍味になるとマスターからお墨付きを得た。
最初解体作業におっかなびっくりだった職人やその家族たちも、作業も半ばに差し掛かる頃にはベテランの風格で淡々と作業を続けている。
技術はベテランとは程遠いが。
急遽つくられた防護壁も解体が始まっている。
元々は村を作る資材だ、無駄にはできない。
開戦後わずか半日、村は活気に包まれていた。
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後日4人の襲撃者は、村人の目の届かない場所で焼却して迷彩男と同じ場所へ埋められた。
弔う気はしなかったので、掘り起こした穴に雑多に放り込んで埋められた。
村の住民たちには、ソンチョー達との打ち合わせ通りシンは重傷で絶対安静な状態だと伝えてある。
シンが復活したとき、スムーズに村に受け入れられるようにとの措置だ。
復活の希望があるからこそ、スロークたちも前へ進める。
特にアオイは、自分のせいでシンが死んだのではないかとかなりのショックを受け、自分を責めていた。
復活の希望にすがるしかない。
ユーコやマナにそれとなく様子を見てもらっているが、時折思いつめたような様子が見られるという。
これ以上不安を与えては危険だと、シン復活の不安要素は自分の中だけに収めようと、スロークは心に決めていた。
彼が最後に残したメッセージ 魔物=魔石 スロークはすぐにその意図を察した。
自分たちは魔物ではない。
なぜなら、魔石が無いからだ。
奇しくもデモンエイプに変身していた襲撃者との会話で、「自分は魔物なのか」と肯定しかけていたスロークだったからこそ、一目で伝わるメッセージだった。
あの時、「自分が魔物だったとしても気にはならない」と言っておきながら、このメッセージでホッとした自分に気が付いてあきれてしまった。
まだまだ修行が足りない。
シン復活のために、まずは遺体を保管できる方法か、死からの復活魔法を使える者を探さなければならない。
見落としがあるかもしれないと、あらためてみんなのゲームシステムを確認してみた。
保存に関して貯蔵庫やインベントリ以外に何かないか?
冷凍という案もあったが、現状村に冷凍技術は無い。
コールドの魔法でもできるのは氷、せいぜい-1~-2℃までだ。
水を瞬間的に凍らせるという魔法なら瞬間的に-40℃とかになったかもしれないが、スロークの魔法コールドでは、あくまで何もないところに氷を作り出す、という種類の魔法だった。
とうぜん遺体は冷凍することができないし、時間がたてば溶けてしまう。
マスターの氷系魔法も超低温で氷を作るが、その状態を持続させるものではなかった。
氷は残るが、発動直後以外はスロークと同じような状況だった。
ライアーの指摘どおり、マスターがプレイしていたゲーム、マッキーアイランドではHPが0になっても、戦闘後には復活する仕様で、死亡という状況そのものが無かった。
アイテムを入れる魔法のカバンには、あらかじめ入れられるアイテムが決まっており、ゲームのアイテム以外入れられなかった。
アオイもストレージ機能があり、時間停止のような機能というか、ゲーム自体に食物が傷むという概念が無かったが、素材しか入れられない。
他のみんなもライアーの指摘通りであることが再確認されただけだった。
やはり、復活かインベントリーを持ち、仲間となれる者を探して招く、という案で長期戦覚悟で慎重に進めるしかないようだ。
ふと、自分たちのような存在の呼び方を決めておいた方が良いのでは?という声が上がった。
「プレイヤーでいいんじゃないんスか?」
「あいつらの言い方なんてイ~ヤ~~。」
速攻でユーコが拒否った。
元々は迷彩男が言っていた呼び方だし、仲間の襲撃犯たちもそう言っていたので、何となく嫌だ、と言うことらしい。
「なら異世界人でいいんじゃない?」
「捻りが無いからいやぁ。」
「捻りって・・・。」
話し合いは続き、ユーシンの「クソ悪魔拉致られ会」は全会一致で即刻否決された。
結局良い案は出ず、とりあえずは異世界から渡ってきた人、ワタリビトで統一することになった。
否決しまくっていた当のユーコが飽きてしまったからだ。
魔物に関する呼び方も、村にいるゴブリンやオークたちとデモンエイプのような存在を一緒に魔物と呼ぶのはなんか嫌だという理由で、意思疎通ができて、協力も可能な魔物を「魔者」、それ以外を「魔獣」と呼ぶことにした。
ワタリビト間の取り決めだけど、魔物の呼び方は村の住民に周知していこうということで決定した。
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村は真冬、雪も深まる中、向けて急ピッチで建築が進んでいた。
シンの従魔だったオヤカタ達は、そのまま村に残っている。
スキルは失われ、流暢だった言葉にもたどたどしさが感じられるようになったが、それまでに村の面々とかわしてきた関係性は変わらず、そのまま村に残って勤勉に働いてくれている。
スキルによる超絶な正確性や速度といった恩恵は失ったが、体に染みついた技術力などはしっかり残り、それぞれが村の仕事に従事してくれている。
オークのグラン族一行は、パラミドとお付きのパナ、パトを残して村を出た。
バラバラになった民を探し出して、みどり村へ案内するためだ。
どれだけ生き残っているかも分からない中での捜索なので、数年がかりとなるだろう。
その間パラミドたちは、オリヒメと服飾班として働いてもらうことになっている。
食べものの魔素抜きもスロークが受け継いでいるし、酒の研究も、忙しい合間を使ってマスターがシンに引き続き取り組んでいる。
シンの貯蔵庫に入っていた建材も、紛争前に貯蔵庫からあらかた運び出されており、ゴブリンのンダバたちが仕分けを進めている。
何の問題も無い。
ふと、スロークの背筋に冷たいものが走った。
シンがいなくても、村づくりは滞りなく進んでゆく。
彼は、自らができることも、率先して周囲の者へと知識や技術を共有していた。
食料の魔素抜きなど、秘匿するべき技術ですら簡単にスロークたちへ教えた。
彼は、そうすれば自分が楽できるから、なんて言っていたけれど。
こういう事態を想定して、そう仕向けていたんじゃないのか。
自分がいついなくなってもいいように。
もう、自分はいなくても大丈夫だなんて、そんなことを考えて、一番危険な場所へ向かったのではないか。
これこそスロークが勝手に思ってしまったことだけれど、的を射ているような気がしてならない。
考えてみれば、迷彩服の男の襲撃時も、彼は一番の問題を引き受けて村から出て行こうとしていた。
無性に怒りが込み上げてきた。
勝手すぎる。
シンがいなければ、ここは村にすらなっていなかっただろう。
それなのに、与えるだけ与えて消えてしまおうとするなんて。
許さない。
何が何でも生き返らせて、文句を言ってやらねば気が済まない。
自分たちをバカにするなと。
(はぁ・・・疲れてるな。)
勝手な妄想でバカなことを考えているものだと自嘲した。
妄想を振り払うように頭を数回振ると、日課の巡回をはじめた。
ユーシンとユーキ、ライアーは、暇を見つけては模擬戦を繰り返している。
もう誰一人死なせないと、自己鍛錬に余念がない。
スロークが転職することで一気に低下する防衛力を補うつもりのようだ。
三人は村周辺の巡回と魔獣の駆除も始めている。
(そのうち自警団とか組織しそうだな。)
襲撃者の一人を軟禁していた倉庫は、改装して診療所として利用することになった。
診療所には連日職人やハンターたちが押しかけ、マナが対応に追われている。
回復用の医療ポッドが現地の住人にも利用可能だと分かった。
元々はソンチョー宅の増設した一室に設置されていたが、それとは別にポイントを使って新たに診察室に設置され、マナが仮の医師として就任している。
どうも最近では、マナ目当てで手当ての必要のない連中まで通っているようだ。
そんな一人をつまみ出してから巡回に戻る。
(マナが過労とストレスで倒れないうちに、何か対策を考えた方がいいな、ソンチョーに相談してみよう。)
村の食を一手に手掛けるマスターもかなりの過剰労働といえる。
弟子たちが育ってきているとはいえ、メイン料理やメニュー開発など負担は大きい。
春には解決しそうだけど、それまでは彼に頼らなければならないし、この問題もソンチョーに相談して対策を考えないといけないだろう。
そんな中、あいかわらずのんびりと暮らすユーコ。
日中は子ゴブリンたちの世話、というか戯れ、隙を見つけては日向で寝ている。
そして夕方からは食堂で給仕の手伝い、夜は酔っ払いの介抱と、食堂にとって、なくてはならない存在になってはいたが、あれ以前とあまり変わった様子はない。
まぁ、自分にそう見えているだけで実際にはいろいろと頑張っているんだろう。
あの戦いで彼女のすごさをしっかりと認識できたから、そう思えるようになった。
クリフトとソンチョーは村の開拓、特にインフラ整備にかかりきりになっている。
忙しくすることで辛さを振り払おうとしているようで、時折心配になるほど集中していた。
「シンさんが起きてきたら唖然とするほど発展させる」なんてソンチョーが言っていたな。
不安なのがアオイで、日中は道路やインフラ整備の手伝いをして、夕方からは籠って鍛冶に打ち込んでいる。
何としてもちゃんとした日本刀を作りたいと言っているらしいが、現状あまりうまくいってないようだ。
あの時のことを引きずっているのは間違いないようで、ユーコとマナに頼んでたびたび様子を見てもらってはいるが、どうしても心配になってしまう。
それぞれがそれぞれのペースで、一歩ずつでも、確実に前進していた。
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「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
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実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
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大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
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田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
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勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
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俺、何しに異世界に来たんだっけ?
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「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
暗殺者から始まる異世界満喫生活
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異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
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無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
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七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
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