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081話:帰途
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チョットした人助けのつもりだったのに、騎士団との戦闘にまで巻き込まれてだいぶ時間を使ってしまった。
これからはもう寄り道せずに村を目指すぞ。
余計なのが着いてきたから不安ではあるけれど。
はぁ・・・なんか疲れる。
元は俺とウシオの二人旅だったのに。
村への移住許可をソンチョーから取り付けるために、カタオカとオオノが同行している。
カタオカはソンチョーとの交渉役、オオノはみどり村へ、彼らの有用性をアピールするのが目的らしい。
昨夜、俺たちが退席した後の話し合いでオオノも一緒に、ということに決まったそうだ。
こんなに役に立つから仲間に入れて~っていうプレゼン要員ってことらしい。
しかし、彼女もたいがい規格外なんだよな。
コンビニ覇道。
名前の通り、コンビニ経営で全国制覇って感じのゲームだ。
仕入れと言う名目で、色々とコンビニアイテムを入手できる。
彼らが未開の土地をわずか数か月で立派な村に開拓できた大きな原動力だったという。
なんせ、エグさはこの世界の食材と変わらないくらい強いし、扱える種類もコンビニ?ってくらい少ないとはいえ、安全に食べられる物がいつでも手に入るという保証は大きい。
今はまだスナック菓子数種とちょっとした文房具くらいだそうだけど、売り上げが上がればレベルが上がり、扱える種類も増えてゆく。
もしコンビニ能力がみどり村に加われば、俺やスロークの魔素抜きと併用してマスターの負担もグッと減らせそうだ。
資金投入してチュートリアルをとっとと卒業させて、取り扱い商品をガンガン増やせば生活改革になるかも。
今のみどり村が数十人程度の規模なら、受け入れも可能ではないかと思うんだけれど・・・俺が死んでからだいぶたっているようだし、そんなわけ無いよなぁ。
ソンチョーの性格から受け入れに前向きになってくれそうではあるけれど、物理的に不可能であれば断らざるを得ないだろう。
開拓みどり村の安全圏には限りがあるのだから。
**
気楽なはずの帰り道、俺の我慢は限界に達しようとしていた。
原因は・・・元黒犬騎士団団長で、元捕虜で、現在カタオカと大野の護衛として同行させられたミリアだ。
中身が男か、Lな人なのかなって思ったんだけど、どうやら中身も女性で、かわいい女の子は好きでも恋愛対象程ではないっていう、なんかよく分からない人のようだ。
俺がエグチとの戦いに横やりを入れたことと、戦いの後冷酷に接したことで敵意をむき出しにしてくるんだよな。
ひょっとしていい人なのかも?なんて感じたのは大きな勘違い、結局こいつは自分勝手なバトルジャンキーだったんだよ。
村ではエグチにまとわりついては、しつこく再戦を迫っていたらしく困り果てたエグチとキタガワ氏が俺に泣きついてきた。
エグチにこだわる理由は、顔が好みで、本気で戦える人だからだってさ。
経験さえ積めばガチで勝負できるに違いないと張り付いていたって、ひどい話だ。
旅の雰囲気も悪くなるしさぁ。
さすがにオオノがたしなめてくれたんだけどね、
「卑怯者と仲良くするほど落ちぶれちゃいない。」
ときたもんだよ。
卑怯者ってところは認めるけどね、いつまでもネチネチと・・・だいたい、俺が介入しなきゃエグチはお前に頭かち割られてたんだぞ。
ちょっとくらいは感謝してほしいもんだ。
道中俺はブリザードウルフのフブキに、ウシオはトライコーンのハヤテに、カタオカとオオノ、3匹のゴブリンがアースドラコのブルに騎乗し、ミリアは自分の馬を使っている。
村の馬と馬車を使って移動するっていう案もあったんだけど、ゲームの騎乗用モンスターで移動した方がいざと言う時に頼れるってことになったんだよ。
ミリアの馬も、ゲーム中コマンドで呼び出せるバトルホースで、この世界の軍馬よりもずっと強力でタフだ。
さすがに黒犬騎士団では使っていなかったそうだけど。
魔導地図があるから迷う心配はないし、戦力的にも曲がりくねって遠回りになる街道を進む必要なんてないし、道なき道を進むならやっぱりゲーム仕様のじゃないとね。
街道通ってのんびりと、ってわけではないけれど、急がなくてもいい旅だ。
平和っていいなぁ。
誰かさえいなければ。
魔導地図を見ながら南へ。
道中は結構いろいろと話しながら旅ができた。
ノスサンザ大森林の旅とは警戒レベルが遥かに低くて済むから、ちょっと気が緩んでいたかも。
特にウシオとは会話も弾んだ。
二人とも実年齢は大人だし、ウシオがレトロゲームマニアということもあって、リアルタイムに近い形でレトロゲーを嗜んでいた俺とは会話も合った。
本業というだけあって畜産の知識も豊富だし、若い頃は興味本位で養鶏場に勤めていたこともあったらしいのでとても勉強になる。
カタオカやオオノともだいぶ打ち解けて、気兼ねも無くなり快適な道中だった。
ミリアは・・・まだだいぶ分厚い壁がありそう・・・俺とだけ。
まぁ、俺の戦い方って騙し討ちとかそう言うのばっかりだから、脳筋な彼女には受け入れられないんだろう、あの時も激怒してたし。
オオノという緩衝材がいなかったら、さぞギスギスした旅になっていただろう。
感謝。
10日程かけて、サンサテ付近の街道に出ることができた。
感では左手がサンサテ方向のはずだ。
なに、俺の感は危険だと?
方向音痴?
違う、全て必然だったのだ。
ちょっと運が悪かっただけさ・・・。
いやいや、元々不運なんかじゃなかったんだよ。
うん、グレートベアに遭遇したことも、結果として魔道具の燃料として使えたし、洞窟にたどり着いた上、事故っぽく中に入っちゃったことも、ウシオと出会うきっかけになったし、その結果ノエルさん家で癒され・・・じゃない、腑にに落ちない点の多かった謎を解明するための布石だったのさ。
そうに違いない。
そうなんだったらそうなんだい!
その上今は異世界のお守りまで装備して確変フィーバー中なんだから、感を信じていいのさ!ドンとこいだよ。
一応魔導地図で確認したけどね。
いちおうね。
サンサテも近いので、フブキとブルを格納した。
さすがに街道を大きなオオカミと、サイのような竜種の魔物とで移動するわけにもいかないしね。
貯蔵庫から荷馬車を取り出してハヤテに引かせる。
ミリアの馬に引かせたかったけど断られた。
しかしね、トライコーンなんてこの世界にはいないしなぁ。
「3本角、どうしよう。」
なんて悩んでいたら、オオノが簡単に解決してくれた。
「デコって飾りって言い張ればいいんじゃないですか?」
ハイ、採用。
**
町が見えてきた。
ちょうど良いことに夜が近い。
ゴブリンたちには大きめのローブとマフラーで姿を隠させているけれど、さすがに日中はバレないか心配だったからね。
立派な城門はあれど、基本開きっぱなし。
衛兵は森から飛び出す魔物を監視するのが役目なので城壁の上にいる。
サンサテの治安はこの世界基準からすると良い方に入るので緩い。
城門をくぐると見たことがある街並み、なんだかとても懐かしい。
さて、もうすっかり日が落ちているけど、今は一文無しだ。
貯蔵庫にある金貨は使うのが面倒だって、黒歴史で記憶から抹消したある砦での出来事で知っていた。
一応カタオカたちが持ってきた異国のお金、ラカも使えないし換金も出来ない。
国交が無い国の通貨とは換金できないんだって。
経済格差もひどいから価値ないし。
食事代と宿代くらいは至急作らないといけない。
俺たちは、真っすぐに魔石の買い取り店へ向かった。
高額品も取り扱う都合で、魔石の買取店は深夜まで営業している。
高額の魔石を持ち込む人ほど、人目の多い時間帯を避けるからだそうだ。
俺一人で店へ入ると、マッチョな警備員さんに武器を預けて木札を受け取る。
そのまま奥の買い取り部屋へ。
数はそこそこあるけど、大物はないのですんなり終了。
グレートベアの魔石はノエルさんのために使っちゃったしね。
さて、ひとまず現金が手に入ったから落ち着こうか。
「知ってる酒場があるから、そこで軽く食事してから宿を探そうか。」
みんなにそう言って、ベリッサの酒場へ向かう。
「あれ?」
酒場の扉は塞がれ、売り店舗の立て札が。
「ウソだろ。」
みどり村に支店を出すんだと張り切っていたのに。
何があったんだろう。
考えてみれば、俺結構長い間死んでたんだよな・・・支店出したことで経営がおかしくなったとか・・・あるよなぁ。
不動産屋にそそのかされて拡張したら、数年後立ち行かなくなって廃業したって居酒屋もいくつか知っている。
そのうち一件は俺の顧客で、売掛金の回収に苦労した記憶が・・・。
「つぶれるようじゃ大した店じゃないんだろ、他探すよ。」
ドライなミリアの一言にイラッとしつつも、大人の対応でスルーだ。
仕方がないので、先に近場の宿を取ることにした。
そう言えば、ちゃんとした宿に泊まるのって初めてだな。
旅人用の安宿に入ると、カウンターにいる不愛想な店員に代金を支払って部屋の鍵を受け取る。
個室一泊素泊まり5000セイルを4部屋と大部屋8000セイルを一部屋。
なんか、微妙に高いな。
いや、かなり高いな。
個室って言ってもかなり狭い。
小さめのベッドが置かれていて、それ以外にはベッドと同じ程度のスペースしかない。当然風呂もシャワーも無い。
別料金で頼めば桶にお湯をくれるそうだけど、1桶1000セイルと強気なお値段。
食事も食堂も無し。
この世界の一般的な宿屋は、基本的にこういうスタイルだと久しぶりな”常識”さんが思い出した。
食事は近隣の食堂や酒場へ行けってことらしい。
合理的だよね、保存技術の無い世界での食材って、かなり無駄が出ちゃうし。
食事・・・さすがに見知らぬ店に入る気もしなかったので、カタオカたちの大部屋に集まって、貯蔵庫からサンドイッチを取り出して食べた。
食料を提供する気はなかったけど、もう何か食堂行く気にならなかった。
むしろカタオカたちにはその方が良かったようだけど。
しかしなぁ・・・。
なんか、ショックだな。
あんなにやる気になってたのに。
旦那さんの腰、想像以上に悪かったのかな。
どうしても気になった俺は、夜も更けてから一人で情報収集がてら、適当に賑わっている酒場に入った。
開いている席に座ると、ミードを頼んで一口。
う~ん、甘くてエグい。
この世界でデフォルトのミード、蜂蜜酒だ。
アルコールで舌をバカにすれば何とか・・・その前にギブだけど。
周囲を見回すと、痩せた男二人が、不味そうに干し肉を齧っている。
そういえば、この世界って、おデブちゃんどころか、ふくよか、ぽっちゃり、とか、そういった人いないんだよね。
食事情がこんなだから、必要最低限しか食わないんだろうなぁ。
「まったくよう、なんだって閉めちまったんだ?ベリッサのところはよぅ。」
小声で話す男たちの言葉に、気になっていた人物の名前が混じっていたのでこっそり聞き耳を立てる。
「なんだ、知らねぇのか? なんでも、森の奥に引っ越したらしいぞ。」
「あの、英雄の村か?良く許可が降りたなぁ、隣のババァはダメだったって、ブンむくれてたぞ。」
「コネでもあったんだろうよ、あそこで出してた干し肉とか、英雄の村の物だったらしいからな。」
なるほど、支店を出すんじゃなく移転したのか。
ちょっと、いやかなり安心した。
旦那さんの腰がダメだったとか、あの肉のせいでトラブルにでも巻き込まれたのかとか、無理して支店出して資金繰りがとか、いろいろ心配しちゃったよ。
それにしても、英雄の村って・・・みどり村のことだよね?
どうしても気になったので、話しかけてみた。
「森の中の村って、今じゃあ英雄の村なんて呼ばれてるのかい?」
「なんだぁ?知らねぇのかよ。どこの田舎もんだぁ?」
めんどくさそうに睨まれちゃった。
う~ん、仕方ない、エイルヴァーン産だけどいいか。
「まぁまぁ、この街に来たのは半年ぶりくらいなんだよ、前はそこまで騒がれてなかったろ?」
そう言って、こっそりと干し肉を数切れ渡す。
「おま、これって!まさか!」
魔素に汚染されていない干し肉だ。
味付けも本格的だし、以前卸していたものよりも美味いはずだ。
「仕方ねぇなぁ、久しぶりに来たんじゃぁ知らねぇはずだ。」
そういって、男たちはなぜ、みどり村が英雄の村と呼ばれるようになったのかを語りだした。
・・・
・・
・
なるほどぉ。
まず、大きな被害を出した氾濫の元凶ともいわれるデモンエイプの討伐、これは噂になってるってことまでは知ってる。
デモンエイプの魔石を売ったことで話題が話題を呼び噂が真相に近づいてしまったんだった。
そのせいで、職人の手配をカブロに頼んだだけのはずなのに移住希望者が殺到するハメになった。
デモンエイプの群れとの攻防に完全勝利・・・これってあれだよな・・・俺が死んだ件。
どこから話が漏れたんだ?
ってか、俺死んだんだけど完全勝利?
なんかモヤモヤするんだけど・・・ひょっとして、俺帰ってももういる場所無かったりして。
次に、何十年もの間興行団に扮して各地を荒らしていた犯罪集団討伐。
悪事の限りを尽くしてきた団体の罪を暴いて解体へ導いたって、なにそれ?いつの間にか正義の味方活動始めたの?
さらに、つい最近はコリント伯爵領で起こったごく小規模の氾濫。
通常ではありえないほど規模が小さかったのは、英雄の村が裏で解決したからに違いないと・・・ん?違いない?
「あぁ、全部噂だよ、でも事実だろ、興行犯罪団の解体の時はあの村の幹部連中がここに集結してたしよ。」
なぜか誇らしげに語る男。
なにそれ?俺が死んだり生き帰ったり穴に落ちたり戦争してる間に何があったの?
あ、最後のコリント領のって、ひょっとして、土砂降りで遭遇したグレートベアのせいだったり?
時期的にも位置的にもそれっぽいな・・・。
あの時はかなり奥深くに迷い込んだと思ってたけど、後で魔導地図見て確認したら、意外とコリント領に近い場所だった。
土砂降りだったからグレートベアに気が付く魔物が少なくて、しかも早い段階の時に俺が始末しちゃったから大きな影響が出なかったってことか。
村は関係ないじゃ・・・ん?・・・関係ないとも言えないか、俺、村の関係者だし・・・関係者だよね?
う~ん。
ま、いいか。
「スゴイスネ~。イッテミタイナァ~。」
「そうだろそうだろ!移住するには厳しい試験があるらしくてなぁ、俺も文字くらいは読めるように勉強しておくんだったぜ。」
「だよなぁ、さすがに今からじゃぁなぁ。」
はぁ~っと大きなため息を吐く二人。
この後も雑談増し増しだったけど、周辺事情とか色々聞けた。
ここからはかなり離れているけど、隣国のファーランでは革命が起こって、英雄王と呼ばれる若い王が即位したらしい。
後継問題で揺れていたらしいけど、毒殺された王女を蘇らせ、全軍の8割にも登る正規軍を打ち破った平民の青年が、王女と結婚して即位したそうだ。
部下も超人揃いらしくて、槍の一振りで数十人の重騎士を薙ぎ払ったとか、巨大な術式杖を無尽蔵に使う少女だとかが、10人ほどいるらしい。
バカバカしい作り話だと笑っていたけど、たぶん事実なんだろうなぁ。
槍使いは無双系のゲームかな、術式杖ってのは重火器っぽいしFPS系か。
別の大陸では、空に浮かぶ城が現れたとか、魔物の軍団が侵攻を開始したとか、世界中で様々な異変が起こっている。
というウワサ話が後を絶たない。
うん、めんどうだから忘れよう。
ベリッサは村へお引越し、と。
これだけでいいや。
面倒事につながりそうな情報はスルーして、宿に帰った。
とっとと寝るぞ~。
これからはもう寄り道せずに村を目指すぞ。
余計なのが着いてきたから不安ではあるけれど。
はぁ・・・なんか疲れる。
元は俺とウシオの二人旅だったのに。
村への移住許可をソンチョーから取り付けるために、カタオカとオオノが同行している。
カタオカはソンチョーとの交渉役、オオノはみどり村へ、彼らの有用性をアピールするのが目的らしい。
昨夜、俺たちが退席した後の話し合いでオオノも一緒に、ということに決まったそうだ。
こんなに役に立つから仲間に入れて~っていうプレゼン要員ってことらしい。
しかし、彼女もたいがい規格外なんだよな。
コンビニ覇道。
名前の通り、コンビニ経営で全国制覇って感じのゲームだ。
仕入れと言う名目で、色々とコンビニアイテムを入手できる。
彼らが未開の土地をわずか数か月で立派な村に開拓できた大きな原動力だったという。
なんせ、エグさはこの世界の食材と変わらないくらい強いし、扱える種類もコンビニ?ってくらい少ないとはいえ、安全に食べられる物がいつでも手に入るという保証は大きい。
今はまだスナック菓子数種とちょっとした文房具くらいだそうだけど、売り上げが上がればレベルが上がり、扱える種類も増えてゆく。
もしコンビニ能力がみどり村に加われば、俺やスロークの魔素抜きと併用してマスターの負担もグッと減らせそうだ。
資金投入してチュートリアルをとっとと卒業させて、取り扱い商品をガンガン増やせば生活改革になるかも。
今のみどり村が数十人程度の規模なら、受け入れも可能ではないかと思うんだけれど・・・俺が死んでからだいぶたっているようだし、そんなわけ無いよなぁ。
ソンチョーの性格から受け入れに前向きになってくれそうではあるけれど、物理的に不可能であれば断らざるを得ないだろう。
開拓みどり村の安全圏には限りがあるのだから。
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気楽なはずの帰り道、俺の我慢は限界に達しようとしていた。
原因は・・・元黒犬騎士団団長で、元捕虜で、現在カタオカと大野の護衛として同行させられたミリアだ。
中身が男か、Lな人なのかなって思ったんだけど、どうやら中身も女性で、かわいい女の子は好きでも恋愛対象程ではないっていう、なんかよく分からない人のようだ。
俺がエグチとの戦いに横やりを入れたことと、戦いの後冷酷に接したことで敵意をむき出しにしてくるんだよな。
ひょっとしていい人なのかも?なんて感じたのは大きな勘違い、結局こいつは自分勝手なバトルジャンキーだったんだよ。
村ではエグチにまとわりついては、しつこく再戦を迫っていたらしく困り果てたエグチとキタガワ氏が俺に泣きついてきた。
エグチにこだわる理由は、顔が好みで、本気で戦える人だからだってさ。
経験さえ積めばガチで勝負できるに違いないと張り付いていたって、ひどい話だ。
旅の雰囲気も悪くなるしさぁ。
さすがにオオノがたしなめてくれたんだけどね、
「卑怯者と仲良くするほど落ちぶれちゃいない。」
ときたもんだよ。
卑怯者ってところは認めるけどね、いつまでもネチネチと・・・だいたい、俺が介入しなきゃエグチはお前に頭かち割られてたんだぞ。
ちょっとくらいは感謝してほしいもんだ。
道中俺はブリザードウルフのフブキに、ウシオはトライコーンのハヤテに、カタオカとオオノ、3匹のゴブリンがアースドラコのブルに騎乗し、ミリアは自分の馬を使っている。
村の馬と馬車を使って移動するっていう案もあったんだけど、ゲームの騎乗用モンスターで移動した方がいざと言う時に頼れるってことになったんだよ。
ミリアの馬も、ゲーム中コマンドで呼び出せるバトルホースで、この世界の軍馬よりもずっと強力でタフだ。
さすがに黒犬騎士団では使っていなかったそうだけど。
魔導地図があるから迷う心配はないし、戦力的にも曲がりくねって遠回りになる街道を進む必要なんてないし、道なき道を進むならやっぱりゲーム仕様のじゃないとね。
街道通ってのんびりと、ってわけではないけれど、急がなくてもいい旅だ。
平和っていいなぁ。
誰かさえいなければ。
魔導地図を見ながら南へ。
道中は結構いろいろと話しながら旅ができた。
ノスサンザ大森林の旅とは警戒レベルが遥かに低くて済むから、ちょっと気が緩んでいたかも。
特にウシオとは会話も弾んだ。
二人とも実年齢は大人だし、ウシオがレトロゲームマニアということもあって、リアルタイムに近い形でレトロゲーを嗜んでいた俺とは会話も合った。
本業というだけあって畜産の知識も豊富だし、若い頃は興味本位で養鶏場に勤めていたこともあったらしいのでとても勉強になる。
カタオカやオオノともだいぶ打ち解けて、気兼ねも無くなり快適な道中だった。
ミリアは・・・まだだいぶ分厚い壁がありそう・・・俺とだけ。
まぁ、俺の戦い方って騙し討ちとかそう言うのばっかりだから、脳筋な彼女には受け入れられないんだろう、あの時も激怒してたし。
オオノという緩衝材がいなかったら、さぞギスギスした旅になっていただろう。
感謝。
10日程かけて、サンサテ付近の街道に出ることができた。
感では左手がサンサテ方向のはずだ。
なに、俺の感は危険だと?
方向音痴?
違う、全て必然だったのだ。
ちょっと運が悪かっただけさ・・・。
いやいや、元々不運なんかじゃなかったんだよ。
うん、グレートベアに遭遇したことも、結果として魔道具の燃料として使えたし、洞窟にたどり着いた上、事故っぽく中に入っちゃったことも、ウシオと出会うきっかけになったし、その結果ノエルさん家で癒され・・・じゃない、腑にに落ちない点の多かった謎を解明するための布石だったのさ。
そうに違いない。
そうなんだったらそうなんだい!
その上今は異世界のお守りまで装備して確変フィーバー中なんだから、感を信じていいのさ!ドンとこいだよ。
一応魔導地図で確認したけどね。
いちおうね。
サンサテも近いので、フブキとブルを格納した。
さすがに街道を大きなオオカミと、サイのような竜種の魔物とで移動するわけにもいかないしね。
貯蔵庫から荷馬車を取り出してハヤテに引かせる。
ミリアの馬に引かせたかったけど断られた。
しかしね、トライコーンなんてこの世界にはいないしなぁ。
「3本角、どうしよう。」
なんて悩んでいたら、オオノが簡単に解決してくれた。
「デコって飾りって言い張ればいいんじゃないですか?」
ハイ、採用。
**
町が見えてきた。
ちょうど良いことに夜が近い。
ゴブリンたちには大きめのローブとマフラーで姿を隠させているけれど、さすがに日中はバレないか心配だったからね。
立派な城門はあれど、基本開きっぱなし。
衛兵は森から飛び出す魔物を監視するのが役目なので城壁の上にいる。
サンサテの治安はこの世界基準からすると良い方に入るので緩い。
城門をくぐると見たことがある街並み、なんだかとても懐かしい。
さて、もうすっかり日が落ちているけど、今は一文無しだ。
貯蔵庫にある金貨は使うのが面倒だって、黒歴史で記憶から抹消したある砦での出来事で知っていた。
一応カタオカたちが持ってきた異国のお金、ラカも使えないし換金も出来ない。
国交が無い国の通貨とは換金できないんだって。
経済格差もひどいから価値ないし。
食事代と宿代くらいは至急作らないといけない。
俺たちは、真っすぐに魔石の買い取り店へ向かった。
高額品も取り扱う都合で、魔石の買取店は深夜まで営業している。
高額の魔石を持ち込む人ほど、人目の多い時間帯を避けるからだそうだ。
俺一人で店へ入ると、マッチョな警備員さんに武器を預けて木札を受け取る。
そのまま奥の買い取り部屋へ。
数はそこそこあるけど、大物はないのですんなり終了。
グレートベアの魔石はノエルさんのために使っちゃったしね。
さて、ひとまず現金が手に入ったから落ち着こうか。
「知ってる酒場があるから、そこで軽く食事してから宿を探そうか。」
みんなにそう言って、ベリッサの酒場へ向かう。
「あれ?」
酒場の扉は塞がれ、売り店舗の立て札が。
「ウソだろ。」
みどり村に支店を出すんだと張り切っていたのに。
何があったんだろう。
考えてみれば、俺結構長い間死んでたんだよな・・・支店出したことで経営がおかしくなったとか・・・あるよなぁ。
不動産屋にそそのかされて拡張したら、数年後立ち行かなくなって廃業したって居酒屋もいくつか知っている。
そのうち一件は俺の顧客で、売掛金の回収に苦労した記憶が・・・。
「つぶれるようじゃ大した店じゃないんだろ、他探すよ。」
ドライなミリアの一言にイラッとしつつも、大人の対応でスルーだ。
仕方がないので、先に近場の宿を取ることにした。
そう言えば、ちゃんとした宿に泊まるのって初めてだな。
旅人用の安宿に入ると、カウンターにいる不愛想な店員に代金を支払って部屋の鍵を受け取る。
個室一泊素泊まり5000セイルを4部屋と大部屋8000セイルを一部屋。
なんか、微妙に高いな。
いや、かなり高いな。
個室って言ってもかなり狭い。
小さめのベッドが置かれていて、それ以外にはベッドと同じ程度のスペースしかない。当然風呂もシャワーも無い。
別料金で頼めば桶にお湯をくれるそうだけど、1桶1000セイルと強気なお値段。
食事も食堂も無し。
この世界の一般的な宿屋は、基本的にこういうスタイルだと久しぶりな”常識”さんが思い出した。
食事は近隣の食堂や酒場へ行けってことらしい。
合理的だよね、保存技術の無い世界での食材って、かなり無駄が出ちゃうし。
食事・・・さすがに見知らぬ店に入る気もしなかったので、カタオカたちの大部屋に集まって、貯蔵庫からサンドイッチを取り出して食べた。
食料を提供する気はなかったけど、もう何か食堂行く気にならなかった。
むしろカタオカたちにはその方が良かったようだけど。
しかしなぁ・・・。
なんか、ショックだな。
あんなにやる気になってたのに。
旦那さんの腰、想像以上に悪かったのかな。
どうしても気になった俺は、夜も更けてから一人で情報収集がてら、適当に賑わっている酒場に入った。
開いている席に座ると、ミードを頼んで一口。
う~ん、甘くてエグい。
この世界でデフォルトのミード、蜂蜜酒だ。
アルコールで舌をバカにすれば何とか・・・その前にギブだけど。
周囲を見回すと、痩せた男二人が、不味そうに干し肉を齧っている。
そういえば、この世界って、おデブちゃんどころか、ふくよか、ぽっちゃり、とか、そういった人いないんだよね。
食事情がこんなだから、必要最低限しか食わないんだろうなぁ。
「まったくよう、なんだって閉めちまったんだ?ベリッサのところはよぅ。」
小声で話す男たちの言葉に、気になっていた人物の名前が混じっていたのでこっそり聞き耳を立てる。
「なんだ、知らねぇのか? なんでも、森の奥に引っ越したらしいぞ。」
「あの、英雄の村か?良く許可が降りたなぁ、隣のババァはダメだったって、ブンむくれてたぞ。」
「コネでもあったんだろうよ、あそこで出してた干し肉とか、英雄の村の物だったらしいからな。」
なるほど、支店を出すんじゃなく移転したのか。
ちょっと、いやかなり安心した。
旦那さんの腰がダメだったとか、あの肉のせいでトラブルにでも巻き込まれたのかとか、無理して支店出して資金繰りがとか、いろいろ心配しちゃったよ。
それにしても、英雄の村って・・・みどり村のことだよね?
どうしても気になったので、話しかけてみた。
「森の中の村って、今じゃあ英雄の村なんて呼ばれてるのかい?」
「なんだぁ?知らねぇのかよ。どこの田舎もんだぁ?」
めんどくさそうに睨まれちゃった。
う~ん、仕方ない、エイルヴァーン産だけどいいか。
「まぁまぁ、この街に来たのは半年ぶりくらいなんだよ、前はそこまで騒がれてなかったろ?」
そう言って、こっそりと干し肉を数切れ渡す。
「おま、これって!まさか!」
魔素に汚染されていない干し肉だ。
味付けも本格的だし、以前卸していたものよりも美味いはずだ。
「仕方ねぇなぁ、久しぶりに来たんじゃぁ知らねぇはずだ。」
そういって、男たちはなぜ、みどり村が英雄の村と呼ばれるようになったのかを語りだした。
・・・
・・
・
なるほどぉ。
まず、大きな被害を出した氾濫の元凶ともいわれるデモンエイプの討伐、これは噂になってるってことまでは知ってる。
デモンエイプの魔石を売ったことで話題が話題を呼び噂が真相に近づいてしまったんだった。
そのせいで、職人の手配をカブロに頼んだだけのはずなのに移住希望者が殺到するハメになった。
デモンエイプの群れとの攻防に完全勝利・・・これってあれだよな・・・俺が死んだ件。
どこから話が漏れたんだ?
ってか、俺死んだんだけど完全勝利?
なんかモヤモヤするんだけど・・・ひょっとして、俺帰ってももういる場所無かったりして。
次に、何十年もの間興行団に扮して各地を荒らしていた犯罪集団討伐。
悪事の限りを尽くしてきた団体の罪を暴いて解体へ導いたって、なにそれ?いつの間にか正義の味方活動始めたの?
さらに、つい最近はコリント伯爵領で起こったごく小規模の氾濫。
通常ではありえないほど規模が小さかったのは、英雄の村が裏で解決したからに違いないと・・・ん?違いない?
「あぁ、全部噂だよ、でも事実だろ、興行犯罪団の解体の時はあの村の幹部連中がここに集結してたしよ。」
なぜか誇らしげに語る男。
なにそれ?俺が死んだり生き帰ったり穴に落ちたり戦争してる間に何があったの?
あ、最後のコリント領のって、ひょっとして、土砂降りで遭遇したグレートベアのせいだったり?
時期的にも位置的にもそれっぽいな・・・。
あの時はかなり奥深くに迷い込んだと思ってたけど、後で魔導地図見て確認したら、意外とコリント領に近い場所だった。
土砂降りだったからグレートベアに気が付く魔物が少なくて、しかも早い段階の時に俺が始末しちゃったから大きな影響が出なかったってことか。
村は関係ないじゃ・・・ん?・・・関係ないとも言えないか、俺、村の関係者だし・・・関係者だよね?
う~ん。
ま、いいか。
「スゴイスネ~。イッテミタイナァ~。」
「そうだろそうだろ!移住するには厳しい試験があるらしくてなぁ、俺も文字くらいは読めるように勉強しておくんだったぜ。」
「だよなぁ、さすがに今からじゃぁなぁ。」
はぁ~っと大きなため息を吐く二人。
この後も雑談増し増しだったけど、周辺事情とか色々聞けた。
ここからはかなり離れているけど、隣国のファーランでは革命が起こって、英雄王と呼ばれる若い王が即位したらしい。
後継問題で揺れていたらしいけど、毒殺された王女を蘇らせ、全軍の8割にも登る正規軍を打ち破った平民の青年が、王女と結婚して即位したそうだ。
部下も超人揃いらしくて、槍の一振りで数十人の重騎士を薙ぎ払ったとか、巨大な術式杖を無尽蔵に使う少女だとかが、10人ほどいるらしい。
バカバカしい作り話だと笑っていたけど、たぶん事実なんだろうなぁ。
槍使いは無双系のゲームかな、術式杖ってのは重火器っぽいしFPS系か。
別の大陸では、空に浮かぶ城が現れたとか、魔物の軍団が侵攻を開始したとか、世界中で様々な異変が起こっている。
というウワサ話が後を絶たない。
うん、めんどうだから忘れよう。
ベリッサは村へお引越し、と。
これだけでいいや。
面倒事につながりそうな情報はスルーして、宿に帰った。
とっとと寝るぞ~。
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