GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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閑話:VS

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 「ふざけないで、なんであんたの言うこと聞かなきゃなんないのさ。」
 予想通りの反応ありがとうございます。
 レインを鍛えるために、モモ(エグチ)やこいつ、ミリアに訓練相手を頼んでみたんだけどこの反応よ。
 いつでもスロークが相手できるわけじゃないし、格闘ゲームのライアーやユーシンでは畑が違い過ぎると、剣での戦いが基本の二人に声をかけてみたんだ。
 なんせ、今までのいきさつから、レインは恐らく騎士爵を与えられることになるだろうからね。
 剣での戦いを訓練に織り込んでおいた方が良いだろうと思ったわけだ。
 まぁ、モモが快く引き受けてくれたから、別にこいつは良いんだけどね、一応こいつもゲームの職業上は騎士だから、ドストレートに役立つと思ったわけで、ダメもとで声だけかけてみたのさ。
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 「りょーかいりょーかい、一応声かけてみただけだから。」
 そう言って俺は踵を返した。
 ぶっちゃけ、断られる予想はついていたんだ。
 コイツの俺に対する辺りがきついのは、モモとの戦いに俺が割り込んで勝ちをさらったからだ、と思ていたんだけどね。
 最近になって、さらなる理由も見えてきた。
 どうやらモモは、俺に対するコイツの態度をどうにかしようと、俺が実は強いんだって感じのことを言っていたらしいんだ。
 あの戦いのときも、俺の魔法によるサポートがあったから戦えたんだ、みたいなことも言っていたらしいし。
 モモなりに、少しでも俺への態度が軟化すればってつもりでいろいろと動いてくれていたらしいんだけどね。
 モモはどうも、良かれと思ってやることが裏目に出る質のようだ。
 確実に俺に対する敵意が強くなってる気がするもん。
 たぶん、こいつにとって俺は、弱いくせにモモを騙していいかっこしている卑怯者、って思っているんじゃないかな。
 もし、モモの言葉を信じたとしても、それはそれで、強いくせに卑怯な手を使ったのは、俺がミリアを馬鹿にしているからだ、とか、実力関係なく卑怯な手を使う腐った野郎、とか思って余計に敵愾心を持たれていそうだ。
 要するに、モモが俺のためと思ってミリアにアクションを起こすごとに俺への敵愾心を煽ってしまっているわけだね。
 モモさん・・・俺のために動いてくれるのは感謝ですが、はっきり言って有難迷惑です。
 「あっさり引き下げるくらいなら声をかけないでほしいんだけど。」
 はいはい、まったく。
 厭味ったらしいったりゃ無いな。
 「俺のためってわけじゃないからな。
 もしレインが本当に必要だと感じたなら、本人が声をかけるだろうさ、その時は検討くらいはしてやってくれ。」
 俺はやるだけのことをしたから、もう後は知らん。
 「待ちな。」
 イヤだよ。
 と言いたいところだけれど、言っちゃうともう修正不可能になりそうな気がして足を止めた。
 「戦え、お前が勝ったらレインとやらの訓練相手でも教育係でも何でもしてやるよ。」
 うわぁ・・・。
 一番めんどくさいことになっちゃった。
 俺に勝ってモモの目を覚まさせてやる、とか考えてそうだ。
 もっと単純に、あんな負け方に納得いかないからちゃんと戦って俺を叩きのめしたい、とかかな。
 どっちみち俺、負けたらアウトじゃん。
 正直戦いたくはないんだけどなぁ。
 気が重いよ。
 今の俺のレベルでまともにやりあって勝てる見込みはない。
 だからこんな提案はお断りしたいところなんだけれど・・・ことあるごとに卑怯者だなんだと目の敵にされ続けるのも、うんざりでもあるんだよ。
 いや、卑怯者なのは否定しないけどさ。
 でも、ここいらで一つ、横入りではなく真っ向勝負で勝っておいた方が後々のためにもなるかもしれないな。
 だから、仕方が無いけど戦う。
 勝てないだろうけど。
 まともに戦うならね。
 いつかこうなるんじゃないかと思って、一応情報収集はしてあったんだ。
 俺、卑怯者だし。
 
    **
 
 ミリアが準備している間、俺は自身にスピードアップ、ボディプロテクション、ディフェンスアップ、ライオンハート、パワーアップ、エンチャントオーラ、オーラウエポン、マジックシールドと続けざまにかける。
 今持てる最大戦力にまで自身を高めてゆくのだ。
 ぶっちゃけ、それでもステータス的にはミリアに及ばないだろう。
 死んでレベルがリセットされてなければなぁ・・・なんて愚痴りたくなってしまう。
 事前に、ミリアは剣を強化しているらしいと情報を得ている。
 しかし、それはミリアのバステールオンラインには無い機能だ。
 剣は買うか奪うか下賜されるもので、性能も決められている。
 あくまでもプレイヤースキルによるガチバトルが売りのゲームだったからだ。
 では、剣の強化はどうやったのかというと、ミリアのセカンドゲームであるファンタズマフォールの機能を使ったようなのだ。
 俺の予測通り、ミリアは黒犬騎士団の団長として戦いの場に出た時に、セカンドゲームとしてファンタズマフォールが開放されていた。
 が、転移の力は解放されてはいなかった。
 ゲートキーパーが転移を使うために必須の施設、転移門の設置には、施工専用の配下が必要だったためだ。
 そのため、現状ミリアはファンタズマフォールにおける指揮官(プレイヤー)が共通して使える能力、装備の強化錬成とポーション錬成しか開放できていないわけだが、ミリアにとってはそれで十分だった。
 剣さえ壊れていなければ、あの時負けてはいなかったと、本気で思っているからだ。
 ファンタズマフォールの武器には、ATK(攻撃力)、とMP(魔力値)、CON(耐久値)の3種のステータス、そしてオプション機能が1~3種ついている。
 ミリアは、市販の剣をノブロフから購入して耐久値を可能な限り高める強化をした。
 壊れなければ負けはしない。
 そんな自信があった。
 剣を強化したらしい、ということと、バステールオンライン、ファンタズマフォールのゲームとしての情報をライアーから得ており、それをもとに、どう戦うかを前もってシミュレートしていたシンだったが、剣をどう強化したかまでは知りようも無かった。
 暫しの睨み合いののち、激しく打ち合う剣と剣。
 高熱を発するシンの剣と打ち合っても刃こぼれ一つしないミリアの剣を見て、かなり耐久力を強化していると察した。
 上段から切りつけるミリアの剣を紙一重で躱すと、空いた胸へと突きを放つ。
 が、ミリアの手甲に弾かれ、咄嗟に距離を取る。
 (あっぶねぇ、よく躱せたな、俺。)
 紙一重で躱したのではなく、ただのまぐれだった。
 それほどに二人の差は大きい。
 バフが一つでも切れれば、あっという間に敗北するだろう。
 バキン
 首筋に展開していたマジックシールドが破壊された。
 (殺す気満々じゃねぇかよ。
 おかげで防御する場所が分かりやすくていいけどさ。)
 各種補助魔法の上、こうなることを予測してマジックシールドを展開させていたものの、一撃で破壊されてしまうのは誤算だった。
 すぐさま展開しなおしたが、魔力にも限界がある以上、うかつに攻撃を食らうわけにはいかない。
 矢継ぎ早に繰り出される斬撃を必死にかわして隙を伺うも、そんなものはどこにもない。
 ホント、やんなっちゃうよね。
 バキン
 言ってるそばから・・・
 俺の攻撃は一応当たってるけど、鎧やら手甲に弾かれてしまう。
 さすがにうまい。
 ま、高熱を発する剣なので火傷くらいはしてると思うけど。
 刃先がちゃんと当たればスパッと切れるんだけどなぁ・・・。
 なんてやってると、そろそろ補助魔法の効果が切れ始める。
 ヤバイヤバイ、距離を取って魔法主体に切り替えないと。 
 ジャリッ
 ミリアの斬撃をスキル”パリィ”で受け流す。
 パリィというと相手の攻撃を弾き返して隙を作る、という解釈が多いけど、エイルヴァーンのスキル、”パリィ”は弾き返すのではなく受け流して相手のバランスを崩し隙を作るというもの。
 ちょっと強引だけど、やっと作った隙。
 このチャンスを逃すまいと真後ろに飛んで、”マジックレイン”を使用した。
 光る雨のような矢がミリアを襲う。
 「つっ!こんなもので!」
 間髪入れずにエアスラッシュ、アーストーン、アイストーン、マジックミサイルと連続して放つ。
 ミリアの技量と、今あいつが使っている剣ならすべて撃ち落とすか躱されるだろう。
 それでも使った理由は一つ、時間稼ぎだ。
 魔法を放つ間にも、できる限り距離を取った俺。
 このまま魔法で落とせるなら良かったんだけれど、そんなに甘い相手じゃない。
 自身にスピードアップ、パワーアップ、エンチャントオーラ、オーラウエポンをかけなおす。
 そうしながら、どさくさに紛れて剣をチェンジ。
 よく似た外見ながら、1割ほど刀身が長い。
 代わりにあまり強化していないけれど、威力は度外視だ。
 ここでさらに、一つ罠を仕掛けてから”強連撃”を発動。
 一気に加速してミリアに肉薄、上段から真っすぐに剣を打ち下ろした。
 初撃は剣で防がれた。
 が、”強連撃”は2連撃で一つのスキルだ。
 自動で2撃目がミリアの脇腹を襲う。
 俺の剣は飛び退いて躱すミリアの腹を浅く切り裂いた。
 (くそ、1割の差じゃ届かなかったか、さすがに反応が早い。)
 もっと深く・・・あわよくばこれで決めるつもりだった。
 「相変わらずセコイ手を!」
 いえいえ、本当のセコイ手はこれからです。
 飛び退いた先で足を踏ん張ろうとしたミリアが・・・コケタ。
 俺の仕掛けた罠、ミリアが飛び退くであろう位置を予測して、”コールド”で地面に氷を張ってツルツル滑る地面に仕立てていたのだ。
 浅いとはいえ腹を切られたところにこれだ、流石にこらえきれず、踏ん張ろうとした足を豪快に滑らせて顔面強打コース。
 その首元に俺の剣先が。
 「くそ・・・。」
 地面をたたいて悔しがるミリア。 
 「じゃ、レインの訓練相手よろしく、殺さないようにね。」
 余裕ぶって颯爽とその場を後にした俺だけど・・・すっげぇ怖かった。
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