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112話:ドワーフ村
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洞窟の中にある村、立ち込める蒸気、まるでスチームパンクのような世界。
そんな様子を想像していたんだけれど、ドワーフたちの村は意外にもヒトの村とあまり変わらなかった。
森を切り開いた土地を頑丈な石積みの高い壁で囲み、家は石積みの土台に丸太を使ったログハウス風の物。
そうだよな、ドワーフといったら鉱山、洞窟ってイメージが強くなってきているけれど、森の小人たちって描かれ方をする童話も多い。
「あの青い火って、夜に使っていた魔物除けと同じ物なんですか?」
壁や村の中のあちこちに取り付けられたランタンには、日中であるにもかかわらず青い火が灯っている。
ヒトの村と決定的に違う点だ。
「鉱山から取れる希少な鉱石でな、退魔石と呼んどる。」
そう言って、腰のポーチを開いて、中の赤い粉末を見せてくれた。
「これは掘り出した時に出るクズを粉にしたもんだがな、本来は鉱石を加熱加工してから鉱山内に設置するんだ。
どういう理屈かは知らんが、それを設置すると周辺の瘴気が薄れるし、魔物も沸いてこなくなる。
粉の方は、火にくべると魔物が寄ってこなくなる。
鉱山や森で暮らすワシらにゃ無くてはならんもんだよ。」
つい忘れそうになるけれど、この世界の洞窟は、地下深くなればなるほど魔素が濃くなり、魔素から強力な魔物が発生しやすくなる。
濃すぎる魔素は体調不良の原因にもなる。
ドワーフたちの話から、彼らが瘴気と呼ぶものが魔素のことを指していることも分かった。
つまり、退魔石と加熱加工した物は、何らかの効果で魔素を薄くするようだ。
さらに、火にくべると魔物除けにもなるという。
非常に魅力的な物質だ。
「そんなことよりこっちだ、まずは長老連中に挨拶してくれぃ。」
ゲンドウに案内されて村の中央にある大きな建物へ。
中にいたのは、当然だけどみんなドワーフだ。
なんか感動モノの光景。
皆筋骨隆々、背が低い分余計にガッチリした体つきに見える。
ザっと見た感じ、身長は130cmから150cmくらいか。
長いひげは三つ編みにしたり、小さな編み込みを施していたり、アクセサリーを編み込んでいたりとなかなか・・・おしゃれ?
ゲンドウたちが何もせずモジャモジャだったから意外だ。
「ん?珍しいか?わしらも外に出ないときは手入れをするぞぃ。」
どうやら、果物を取りに行ったり、狩りをするために村を出る時は髭のおしゃれはしないようだ。
鬱蒼と生い茂った森の中を進むこともあるので、枝や棘が引っかからないようにだと言っていた。
残念ながら、時間的に昼食前で女性の姿は無い。
ドワーフの女性に関しては髭がある、髭は無い、男と見分けがつかないなど、作品によっていろいろな解釈がある。
それだけに見てみたかったんだけど・・・長老たちとの会談後の楽しみとしよう。
建物の中は大きなホールになっていた。
石をくみ上げて作られたホールの中には、5人のドワーフが床に胡坐をかいていた。
「長老殿、彼らが酒の神に愛された者たちです。」
へ?
なんつー紹介の仕方だよ。
「火酒だ、火酒を持って来い。」
壁際にいた若い(?)ドワーフに火酒の催促をするゲンドウ。
長老たちに動揺の気配が・・・
「ゲンドウ・・・正気か?」
細かい三つ編みにした髭が、針金でも仕込んでいるのかイカの足のようにうねっているドワーフが、目を見開いて言葉を絞り出した。
「わ、わしゃあまだ死にとうないぞ。」
「衛兵!ゲンドウの気が触れたぞ!捕縛せい!!」
「謀反じゃあ~。」
「短い人生じゃった。」
「長老ともあろう方々が何たる弱腰か! 潔くはらをくくりなさい。
それにバルデどの、あなたは200年も生きておいて何が短い人生ですか!」
「まだまだ生きたいんじゃあ!!」
と大騒ぎになった。
いや、そんなもんなら作るなよ。
すったもんだの末にゲンドウが、「俺が最初に飲むから、それを見て判断しろ。」と啖呵を切ってようやく落ち着いた。
「これで飲まんで済みそうだの。」
「骨くらいは拾ってやる。」
「はよ飲めぃ。」
「飲め飲め~。」
「次の果実班隊長は誰にするかのう。」
とたんにこれだ。
ってか、ドワーフ火酒ってマジでなんなんだよ。
呆れながらも、まずは果実酒割りを作る。
「むぅ?何をしたんだ?」
「何したって無駄無駄。」
次の瞬間、樽ジョッキに入った果実酒割りを一気に飲み尽くしたゲンドウ。
樽ジョッキを逆さまにして、残ってないことをアピールしつつニヤリと笑った。
「やはり美味い!」
二杯目を準備しようとした手を、長老の一人が止めた。
「狂っちまったわけじゃないんだな?」
疑うような表情でゲンドウの目を覗き込む。
「あたりまえよ!
こいつはな、火酒を果実酒で割ったもんだ。」
「わった?」
驚愕に言葉を失う長老たち。
ドワーフにとって、酒は強くてナンボ、というのが一般的な考えらしくて、強い酒を弱い酒で割る(薄める)という発想が無かったそうだ。
「ワシにも飲ませんかぃ!」
さっきまで飲みたくないと大騒ぎしていたくせに。
さすがにちょっと呆れてしまう。
が、どうせだからまだ試していない他のレシピも試してみよう。
良い実験台もいることだしね。
死屍累々・・・もとい、泥酔したドワーフたちが累々と。
あの後、ミード割りや水割りに、レシピメモには無かったドワーフたち秘蔵の蒸留酒割と試していった挙句がこの惨状。
割ったと言っても元は火酒だから・・・水割り以外は酒で割ってるわけで、度数高い酒をカパカパやってたらこうなるよな。
気が付いたら世話役のドワーフや、帰りが遅いんで様子を見に来た長老たちのご家族やら、騒ぎを聞きつけて覗きに来たやじ馬まで混じってどんちゃん騒ぎ・・・火酒の樽が2つも空になっていた。
他の酒は・・・数えたくも無い。
ミード割りの段階で落ちたレインもどこかに混ざってると思うけど、よく見たらドワーフ以外も結構混じってるな。
見たことの無い獣人に・・・あれはリザードマンか?
ドワーフの村って、意外といろんな種族と交流してるんだな。
リザードマンは沼地に生息する二足歩行のトカゲ。
魚を主食にしているはずだけど、この付近に湖や川は無いはずだから、近くに魚が取れる大きな池か沼でもあるのか?
同じ爬虫類系の亜人には、竜の末端といわれるドラコニオがいるけれど、全くの別種。
外見上も、細マッチョでつるんとした頭部のリザードマンに対して、ドラコニオはガチムチで角や棘でいかにも痛そうな頭部と顎をもつのですぐに見分けがつく。
”常識”さん情報では、好戦的で肉を主食とするドラコニオに対して、雑食で温和なリザードマンとは交流できそうな気がする。
この世界に来てから魚はあんまり食べて無いんだよなぁ。
村の水源になっている川には小魚くらいしかいない。
サイズの割に骨が硬くて大きく、さらに魔石があるから食べるところがほとんど無いとマスターを悩ませていた。
食いたいなぁ、淡水魚だと生はヤバそうだけど、塩焼きとか・・・ぜひ交流せねば。
累々と横たわる中には猫獣人に犬獣人(コボルトとは違う)もチラホラと。
豹っぽい人もいるし、牛っぽい人も・・・”常識”さんが分からないってことは、結構レアな存在かも。
俺はキュアかけながら飲んでたから平気だけど・・・うん、レインには悪いけど、何日か滞在しよう。
話し合いたくても今日明日は復活は無理そうだし。
キュアをかけて無理やり復活させるって手もあるんだけど、魔法のことを説明するわけにはいかないし、急速に回復したことがこの酒の特性だと勘違いされたらマズイ。
ここは辛い思いをしてもらって、この酒の飲み方を理解してもらわないと。
ついでにレインも・・・今回はキュアしてやらん。
村までの道中に、朝方スッキリ復活できたのは俺がこっそりキュアしてやったからだって言っておいたのに。
最初からカパカパ飲んで真っ先にダウンしやがって。
しっかり反省しなさい。
「フフ、君もなかなかやるようだねぇ。」
声の方に振り向くと、そこには一人の猫獣人が・・・フラフラだけど大丈夫か?あいつ。
「なかなかに香しい美酒の数々、すばら・・・うっぷ・・・」
おいおい、強がってないで寝込んでおけよ、猫だけに・・・0点だ。
それにしても変な猫獣人だな、彼らって、動きを阻害しないようにとか、毛づくろいのために基本服は着ないはずなのに。
コイツは、ガッチリと服を着こんでいる。
あれでは毛づくろいできないだろうに。
「最近っぷ・・・ハデに、フラれてしまいましてね、かの有名なドワーフ火酒で何もかも忘れてしまおうと思ったのですがっぷ・・・これほど美味と・・・は・・・。」
ばたりと倒れた猫獣人。
無理すんなって。
倒れる瞬間までカッコつけようとしていたあたり、メンドクサそうなやつだ。
あんまり関わらないようにしようっと。
**
さすがだ。
丸一日、ひょっとすると次の日まで復活しないだろうと思っていたけれど、みんなは昼前には普段通りに活動を開始していた。
レイン以外は。
いや、こいつが普通なのか。
獣人や亜人たちまでドワーフ並みとは驚いた。
「でなきゃドワーフと取引はできんからな。」
と、気のいいリザードマンのモルガ氏が教えてくれた。
この村へ取引に来られるのは、彼らの集落で一番の酒豪が選ばれるんだとか。
そして、最初の一杯で火酒の洗礼を受けるんだとか。
ろくでもねぇ・・・。
「じゃぁ、次からはちょっとはマシになりそうですね、その洗礼。」
「はっはっは、俺らと同じ思いをしないままドワーフと関わろうなんて許さな・・・いやいやこれは一つの儀式だからな、伝統は重んじないと。」
モロ本音ぶちまけてますけど。
ご愁傷さま、未来の若人よ。
俺はキュアで飲み会中から自己ケアしていたおかげで全然平気だったわけで、早朝から完全に通常営業。
復活していく順に片っ端から話をしていった。
この村、というか、この大森林にドワーフの村はここ一つだけみたいだけれど、500人近いドワーフたちが暮らしているそうだ。
俺たちが今いるのは森側の区画で、坑道の入り口も外壁の中にある。
坑道の中にも一部が住宅化していて、2割ほどの住人がそこで暮らしているんだそうだ。
もちろんそこに暮らすのは坑道で採掘をしているドワーフたち。
森で木を伐り、坑道で掘りだした鉱石や金属を加工して作られた日用品や武具を求めて、周辺に住む他種族たちが食材や薬草なんかを持って交換にやってきている。
そして、それらの種族同士もお互いに足りないものをやり取りしている。
ちょっとした経済圏の中心地になっているようだ。
物々交換みたいだけれどね。
ドワーフたちは、俺が提示した干し肉やドライフルーツに興味を示してくれた。
どういうわけかこの村の食事は、エグみが薄い。
何でも一度茹できっちゃえ、なヒトの食事と違って、茹でてエグみを取るような加工はしていないようだけれど、下手したら人の食事よりエグみを感じなかった。
さらにもっと衝撃なのがドワーフ火酒だ。
初めて口にしたときはあまりの強烈さに気が付かなかったけれど、これにはエグみを全く感じないのだ。
ストレートで飲むと、感じる間もなく喉が焼けてのたうち回るのだが・・・。
ドワーフたちのミードや果実酒で割った時は、確かにエグみを感じた。
だけど、水で割った時や俺の持ってきた酒類で割ると、エグみを感じないのだ。
つまり、火酒はエグみ(魔素)が無いってことになる。
興味本位で聞いてみたけれど、製法は一切教えてくれなかった。
代わりに大量の火酒をもらった。
大量に・・・たいりょ・・・う・・・
「毎年催事として火酒を作るんだがな、ほぼ消費されないまま保管され続けとるで・・・どんだけあるんだろうのう?」
最長老からしてこれだ。
使われなくなった坑道に樽ごと放置され続けているため、全く把握していないそうだ。
詳細鑑定で製造年が分かるんだけれど、ざっと見でも100年以上前の樽がゴロゴロ・・・ワインとかウイスキーとかだと、年代物はすごく美味くなるとか言ってなかったっけ?
貧乏人にそんな年代物の高級な酒が飲めるはずも無かったからわかんないけど。
これ、ひょっとしたら宝の山かも。
坑道内はひんやりしていて、自然のワインセラーみたいになっているし、金になる予感だ。
それに、火酒はエグくない理由も分かっちゃったし。
「美味い飲み方を教えてもらったが、その分飲み過ぎる危険があるでの、消費は抑えんといかんじゃろうな。
好きなだけやるから、いつでも取りに来るといい。」
ありがたいお言葉をいただいた。
交易の約束も無事締結。
とりあえずは俺の自由になる分の食材を提供、代わりに鉱石やレアメタル、日用品を下ろしてもらえることになった。
他の種族との取引もしたいって話をしたんだけど、難しい話は本人たちと直接やってくれと言われてしまった。
要するに直接交渉の許可をもらえたってことで、長老には感謝の果実酒をプレゼントした。
事後だから賄賂じゃないぞ。
・・・たぶん。
そんな様子を想像していたんだけれど、ドワーフたちの村は意外にもヒトの村とあまり変わらなかった。
森を切り開いた土地を頑丈な石積みの高い壁で囲み、家は石積みの土台に丸太を使ったログハウス風の物。
そうだよな、ドワーフといったら鉱山、洞窟ってイメージが強くなってきているけれど、森の小人たちって描かれ方をする童話も多い。
「あの青い火って、夜に使っていた魔物除けと同じ物なんですか?」
壁や村の中のあちこちに取り付けられたランタンには、日中であるにもかかわらず青い火が灯っている。
ヒトの村と決定的に違う点だ。
「鉱山から取れる希少な鉱石でな、退魔石と呼んどる。」
そう言って、腰のポーチを開いて、中の赤い粉末を見せてくれた。
「これは掘り出した時に出るクズを粉にしたもんだがな、本来は鉱石を加熱加工してから鉱山内に設置するんだ。
どういう理屈かは知らんが、それを設置すると周辺の瘴気が薄れるし、魔物も沸いてこなくなる。
粉の方は、火にくべると魔物が寄ってこなくなる。
鉱山や森で暮らすワシらにゃ無くてはならんもんだよ。」
つい忘れそうになるけれど、この世界の洞窟は、地下深くなればなるほど魔素が濃くなり、魔素から強力な魔物が発生しやすくなる。
濃すぎる魔素は体調不良の原因にもなる。
ドワーフたちの話から、彼らが瘴気と呼ぶものが魔素のことを指していることも分かった。
つまり、退魔石と加熱加工した物は、何らかの効果で魔素を薄くするようだ。
さらに、火にくべると魔物除けにもなるという。
非常に魅力的な物質だ。
「そんなことよりこっちだ、まずは長老連中に挨拶してくれぃ。」
ゲンドウに案内されて村の中央にある大きな建物へ。
中にいたのは、当然だけどみんなドワーフだ。
なんか感動モノの光景。
皆筋骨隆々、背が低い分余計にガッチリした体つきに見える。
ザっと見た感じ、身長は130cmから150cmくらいか。
長いひげは三つ編みにしたり、小さな編み込みを施していたり、アクセサリーを編み込んでいたりとなかなか・・・おしゃれ?
ゲンドウたちが何もせずモジャモジャだったから意外だ。
「ん?珍しいか?わしらも外に出ないときは手入れをするぞぃ。」
どうやら、果物を取りに行ったり、狩りをするために村を出る時は髭のおしゃれはしないようだ。
鬱蒼と生い茂った森の中を進むこともあるので、枝や棘が引っかからないようにだと言っていた。
残念ながら、時間的に昼食前で女性の姿は無い。
ドワーフの女性に関しては髭がある、髭は無い、男と見分けがつかないなど、作品によっていろいろな解釈がある。
それだけに見てみたかったんだけど・・・長老たちとの会談後の楽しみとしよう。
建物の中は大きなホールになっていた。
石をくみ上げて作られたホールの中には、5人のドワーフが床に胡坐をかいていた。
「長老殿、彼らが酒の神に愛された者たちです。」
へ?
なんつー紹介の仕方だよ。
「火酒だ、火酒を持って来い。」
壁際にいた若い(?)ドワーフに火酒の催促をするゲンドウ。
長老たちに動揺の気配が・・・
「ゲンドウ・・・正気か?」
細かい三つ編みにした髭が、針金でも仕込んでいるのかイカの足のようにうねっているドワーフが、目を見開いて言葉を絞り出した。
「わ、わしゃあまだ死にとうないぞ。」
「衛兵!ゲンドウの気が触れたぞ!捕縛せい!!」
「謀反じゃあ~。」
「短い人生じゃった。」
「長老ともあろう方々が何たる弱腰か! 潔くはらをくくりなさい。
それにバルデどの、あなたは200年も生きておいて何が短い人生ですか!」
「まだまだ生きたいんじゃあ!!」
と大騒ぎになった。
いや、そんなもんなら作るなよ。
すったもんだの末にゲンドウが、「俺が最初に飲むから、それを見て判断しろ。」と啖呵を切ってようやく落ち着いた。
「これで飲まんで済みそうだの。」
「骨くらいは拾ってやる。」
「はよ飲めぃ。」
「飲め飲め~。」
「次の果実班隊長は誰にするかのう。」
とたんにこれだ。
ってか、ドワーフ火酒ってマジでなんなんだよ。
呆れながらも、まずは果実酒割りを作る。
「むぅ?何をしたんだ?」
「何したって無駄無駄。」
次の瞬間、樽ジョッキに入った果実酒割りを一気に飲み尽くしたゲンドウ。
樽ジョッキを逆さまにして、残ってないことをアピールしつつニヤリと笑った。
「やはり美味い!」
二杯目を準備しようとした手を、長老の一人が止めた。
「狂っちまったわけじゃないんだな?」
疑うような表情でゲンドウの目を覗き込む。
「あたりまえよ!
こいつはな、火酒を果実酒で割ったもんだ。」
「わった?」
驚愕に言葉を失う長老たち。
ドワーフにとって、酒は強くてナンボ、というのが一般的な考えらしくて、強い酒を弱い酒で割る(薄める)という発想が無かったそうだ。
「ワシにも飲ませんかぃ!」
さっきまで飲みたくないと大騒ぎしていたくせに。
さすがにちょっと呆れてしまう。
が、どうせだからまだ試していない他のレシピも試してみよう。
良い実験台もいることだしね。
死屍累々・・・もとい、泥酔したドワーフたちが累々と。
あの後、ミード割りや水割りに、レシピメモには無かったドワーフたち秘蔵の蒸留酒割と試していった挙句がこの惨状。
割ったと言っても元は火酒だから・・・水割り以外は酒で割ってるわけで、度数高い酒をカパカパやってたらこうなるよな。
気が付いたら世話役のドワーフや、帰りが遅いんで様子を見に来た長老たちのご家族やら、騒ぎを聞きつけて覗きに来たやじ馬まで混じってどんちゃん騒ぎ・・・火酒の樽が2つも空になっていた。
他の酒は・・・数えたくも無い。
ミード割りの段階で落ちたレインもどこかに混ざってると思うけど、よく見たらドワーフ以外も結構混じってるな。
見たことの無い獣人に・・・あれはリザードマンか?
ドワーフの村って、意外といろんな種族と交流してるんだな。
リザードマンは沼地に生息する二足歩行のトカゲ。
魚を主食にしているはずだけど、この付近に湖や川は無いはずだから、近くに魚が取れる大きな池か沼でもあるのか?
同じ爬虫類系の亜人には、竜の末端といわれるドラコニオがいるけれど、全くの別種。
外見上も、細マッチョでつるんとした頭部のリザードマンに対して、ドラコニオはガチムチで角や棘でいかにも痛そうな頭部と顎をもつのですぐに見分けがつく。
”常識”さん情報では、好戦的で肉を主食とするドラコニオに対して、雑食で温和なリザードマンとは交流できそうな気がする。
この世界に来てから魚はあんまり食べて無いんだよなぁ。
村の水源になっている川には小魚くらいしかいない。
サイズの割に骨が硬くて大きく、さらに魔石があるから食べるところがほとんど無いとマスターを悩ませていた。
食いたいなぁ、淡水魚だと生はヤバそうだけど、塩焼きとか・・・ぜひ交流せねば。
累々と横たわる中には猫獣人に犬獣人(コボルトとは違う)もチラホラと。
豹っぽい人もいるし、牛っぽい人も・・・”常識”さんが分からないってことは、結構レアな存在かも。
俺はキュアかけながら飲んでたから平気だけど・・・うん、レインには悪いけど、何日か滞在しよう。
話し合いたくても今日明日は復活は無理そうだし。
キュアをかけて無理やり復活させるって手もあるんだけど、魔法のことを説明するわけにはいかないし、急速に回復したことがこの酒の特性だと勘違いされたらマズイ。
ここは辛い思いをしてもらって、この酒の飲み方を理解してもらわないと。
ついでにレインも・・・今回はキュアしてやらん。
村までの道中に、朝方スッキリ復活できたのは俺がこっそりキュアしてやったからだって言っておいたのに。
最初からカパカパ飲んで真っ先にダウンしやがって。
しっかり反省しなさい。
「フフ、君もなかなかやるようだねぇ。」
声の方に振り向くと、そこには一人の猫獣人が・・・フラフラだけど大丈夫か?あいつ。
「なかなかに香しい美酒の数々、すばら・・・うっぷ・・・」
おいおい、強がってないで寝込んでおけよ、猫だけに・・・0点だ。
それにしても変な猫獣人だな、彼らって、動きを阻害しないようにとか、毛づくろいのために基本服は着ないはずなのに。
コイツは、ガッチリと服を着こんでいる。
あれでは毛づくろいできないだろうに。
「最近っぷ・・・ハデに、フラれてしまいましてね、かの有名なドワーフ火酒で何もかも忘れてしまおうと思ったのですがっぷ・・・これほど美味と・・・は・・・。」
ばたりと倒れた猫獣人。
無理すんなって。
倒れる瞬間までカッコつけようとしていたあたり、メンドクサそうなやつだ。
あんまり関わらないようにしようっと。
**
さすがだ。
丸一日、ひょっとすると次の日まで復活しないだろうと思っていたけれど、みんなは昼前には普段通りに活動を開始していた。
レイン以外は。
いや、こいつが普通なのか。
獣人や亜人たちまでドワーフ並みとは驚いた。
「でなきゃドワーフと取引はできんからな。」
と、気のいいリザードマンのモルガ氏が教えてくれた。
この村へ取引に来られるのは、彼らの集落で一番の酒豪が選ばれるんだとか。
そして、最初の一杯で火酒の洗礼を受けるんだとか。
ろくでもねぇ・・・。
「じゃぁ、次からはちょっとはマシになりそうですね、その洗礼。」
「はっはっは、俺らと同じ思いをしないままドワーフと関わろうなんて許さな・・・いやいやこれは一つの儀式だからな、伝統は重んじないと。」
モロ本音ぶちまけてますけど。
ご愁傷さま、未来の若人よ。
俺はキュアで飲み会中から自己ケアしていたおかげで全然平気だったわけで、早朝から完全に通常営業。
復活していく順に片っ端から話をしていった。
この村、というか、この大森林にドワーフの村はここ一つだけみたいだけれど、500人近いドワーフたちが暮らしているそうだ。
俺たちが今いるのは森側の区画で、坑道の入り口も外壁の中にある。
坑道の中にも一部が住宅化していて、2割ほどの住人がそこで暮らしているんだそうだ。
もちろんそこに暮らすのは坑道で採掘をしているドワーフたち。
森で木を伐り、坑道で掘りだした鉱石や金属を加工して作られた日用品や武具を求めて、周辺に住む他種族たちが食材や薬草なんかを持って交換にやってきている。
そして、それらの種族同士もお互いに足りないものをやり取りしている。
ちょっとした経済圏の中心地になっているようだ。
物々交換みたいだけれどね。
ドワーフたちは、俺が提示した干し肉やドライフルーツに興味を示してくれた。
どういうわけかこの村の食事は、エグみが薄い。
何でも一度茹できっちゃえ、なヒトの食事と違って、茹でてエグみを取るような加工はしていないようだけれど、下手したら人の食事よりエグみを感じなかった。
さらにもっと衝撃なのがドワーフ火酒だ。
初めて口にしたときはあまりの強烈さに気が付かなかったけれど、これにはエグみを全く感じないのだ。
ストレートで飲むと、感じる間もなく喉が焼けてのたうち回るのだが・・・。
ドワーフたちのミードや果実酒で割った時は、確かにエグみを感じた。
だけど、水で割った時や俺の持ってきた酒類で割ると、エグみを感じないのだ。
つまり、火酒はエグみ(魔素)が無いってことになる。
興味本位で聞いてみたけれど、製法は一切教えてくれなかった。
代わりに大量の火酒をもらった。
大量に・・・たいりょ・・・う・・・
「毎年催事として火酒を作るんだがな、ほぼ消費されないまま保管され続けとるで・・・どんだけあるんだろうのう?」
最長老からしてこれだ。
使われなくなった坑道に樽ごと放置され続けているため、全く把握していないそうだ。
詳細鑑定で製造年が分かるんだけれど、ざっと見でも100年以上前の樽がゴロゴロ・・・ワインとかウイスキーとかだと、年代物はすごく美味くなるとか言ってなかったっけ?
貧乏人にそんな年代物の高級な酒が飲めるはずも無かったからわかんないけど。
これ、ひょっとしたら宝の山かも。
坑道内はひんやりしていて、自然のワインセラーみたいになっているし、金になる予感だ。
それに、火酒はエグくない理由も分かっちゃったし。
「美味い飲み方を教えてもらったが、その分飲み過ぎる危険があるでの、消費は抑えんといかんじゃろうな。
好きなだけやるから、いつでも取りに来るといい。」
ありがたいお言葉をいただいた。
交易の約束も無事締結。
とりあえずは俺の自由になる分の食材を提供、代わりに鉱石やレアメタル、日用品を下ろしてもらえることになった。
他の種族との取引もしたいって話をしたんだけど、難しい話は本人たちと直接やってくれと言われてしまった。
要するに直接交渉の許可をもらえたってことで、長老には感謝の果実酒をプレゼントした。
事後だから賄賂じゃないぞ。
・・・たぶん。
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七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
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