GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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111話:苦戦

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 白く巨大なトカゲ。
 俺もレベル60を超え、知力もかなり高まった。
 それによってかなりアップグレードしているはずの”常識”さん情報でも全く分からない。
 この森の深淵、東側中央付近を除けば、生息していると思われる魔獣、魔者の種類と、ザックリではあるが生息域まで”思い出して”いるはずなのに。
 分からないということは、まだ”知らない”深淵部から来たのか、それとも.
 なんだか、とんでもメンドクサ~な予感がする。
 <突然真上から降ってきよった>
 真上から・・・この言葉が引っかかっていた。
 迷惑この上ないアホ王がいるのも確か・・・村めがけて故意に落とそうとしている、なんてことは無いと信じたい。 
 とにかく得体のしれない相手には最大戦力でかかるべきだよな。
 俺が選んだのは、エイルヴァーンでも中堅最強の剣、魔剣ウリエガノフ。
 元々光の属性付きで、ゲーム終盤でも活躍できる剣だ。
 魔剣なのに光属性って何なんだ?とか思っていた時期もあったよ。
 エイルヴァーンでは 魔力のこもった剣=魔剣 って分類になっていただけなんだけどね。
 かな~り時間をかけて強化したんだよね、5本ほど強化中に失敗して壊したけど。
 唯一俺のスパルタ強化に耐えたこいつは、ダメージ増強や出血のスリップダメージも付与してある。
 現状の俺が使える武器では最大の攻撃力を叩きだせる武器だ。
 さらに、ハイパワーアップ(筋力強化大)、クイックリー(速度強化大)で自己強化、スキル”斬撃”も発動して、二段ジャンプが可能になるスキル、衝撃脚で飛び上がると、首を切断するつもりで切りつけた。
 (!?)
 すんなりと刃が入り、地面に降り立った。
 が、その異様な手ごたえに、めいっぱい地面を蹴って距離を取った。
 手ごたえがほとんど無かった。
 剣は容易く通り、首は真っ二つに切り裂かれたはずだった。
 (出血が無い、スリップダメージは?ってか、切り口がもうふさがってる・・・。)
 再生とは何かが違う・・・それ以前に、アレは本当に切ったと言えるのか?・・・まるで、元の世界にあったオモチャのスライムを切った感じだった。
 ひょっとすると、痛みすら感じていないのではないか、そんな違和感。
 「シンさん!こいつ、本当に生き物だと思いますか?」
 レインも俺と同じようなことを感じていたのかもしれない。
 しかし生き物か?か・・・確かにしっくりくる表現だ。
 実際動いて戦っているのに、生物らしさを感じない。
 「考えられる限りの方法で攻撃するんだ、少しでも効いたと感じた方法に集中するしかないよな、これは。
 腹くくるしか無いぞ、長期戦だ。」
 細かく説明している暇はない。
 (これで伝わればいいけど・・・こいつ、鈍いからなぁ。)
 完全に俺をターゲットにしたらしい白トカゲの噛みつきを躱すと、これも真っ白な目玉に剣を突き刺す。
 が、やはり手ごたえがほとんどない。
 「なるほど、了解です!」
 (伝わった?・・・そうか、こいつもレベルアップで知力系が上がってるんだ・・・俺より頭良くなってたりして・・・可能性としてゼロじゃないな、後でこっそり鑑定しちゃろって、あぶね!)
 巨大白トカゲの尾が俺の目の前を叩き、弾かれた土塊が降り注いだ。
 トカゲのような外見ではあっても、全く違うものだと思い知らされた。
 顔面を俺に向けたまま、前脚のすぐ後ろからグニャリとエビ反り、どころかクルリと丸まって尻尾を振り回している。
 (いかんいかん、前にもこんなことあったな・・・余計なことに気を取られる癖、直さなきゃ。)
 マジックミサイルを放つ。
 無属性の魔法攻撃。
 続けて風属性のエアスラッシュに炎属性のフレイムアロー、とにかく、多様な攻撃方法で弱点になりそうなものを見つけるしかない。
  ・・・
  ・・
  ・
 ありえない。
 どれだけ戦い続けているのか、いくら切っても、弱ることすらないのだ。
 魔法で焼いて、凍らせて、電撃を打ち込んだが効果無し。
 どれだけ深く切り裂いても、気が付くとくっ付いているのだ。
 出血もしない。
 炎で攻撃した時、若干再生、というか、元に戻る速度が鈍い気がした。
 でも所詮はその程度だ。
 もっと強い火力がいるのか?
 それも、全身を一度に包むほど大きな炎か。
 「いや無理だろ。」
 思わず声に出てしまった。
 巨大白トカゲの頭の先からしっぽの先まで、20m以上はありそうだ。
 エイルヴァーンで最高範囲の炎系魔法、インフェルノストームでも、有効範囲はせいぜい直径10mだ、たとえ半分を焼き尽くせたとしても、クールタイム60秒が明ける前に再生、復活してしまうだろう。
 頭を削ったとしても意味がないことは散々試してきた。
 (くそ、後試していないのは・・・)
 「エース!」
 俺は、空中からの牽制を続けていたエースを呼んだ。
 
    **
 
 レイン、俺、ドワーフたちが分かれて、4チーム交代で戦い続けているが全く先が見えない。
 最終手段を託したエースが飛び立ってどれくらいになるだろうか。
 魔力を治癒だけに使うようにしてきたが、それもそろそろ限界だ。
 レインもSPやMPを節約しながら戦っていたが、どちらも尽きたのかだいぶ前から通常攻撃しか使わなくなっている。
 ドワーフたちへの治癒ができなくなれば一気に瓦解してしまうだろう。
 (やっぱりマジックポーションの製造は急務だな。)
 エイルヴァーンのポーションは、どういうわけか経口摂取が基本のようだ。
 ラノベとかだと、ポーションって飲んで良し、かけて良しのお手軽仕様なのに。
 ゲームでポーション使ったときのアクションがそのまま影響しているんだろうけどさ。
 こういった乱戦での治療には非常に効率が悪い。
 どうしても範囲治療のできる魔法頼りになるのだが、魔力の補給は休息かマジックポーションでしかできない。
 貧乏性の俺でも、マジックポーションはゲームで多用していて在庫はあまり持っていなかった上、レベルアップのための洞窟特訓でもかなり消費してしまっていた。
 作れればいいのだけれど、エイルヴァーンの素材は手に入るものが少なくいまだに目途すら立っていなかった。
 (またこれだ、優先順位を間違えて痛い思いをする。
 酒だのなんだの言ってないで、何が何でもポーション製造を優先させているべきだった。)
 「さすがに・・・腕が上がらなくなってきたわい。」
 「酒が足らんのだ、 酒が。」
 「やかましいわ、お前はさっきまで飲んどっただろうが。」
 「ありゃ酒じゃない、アルコール入りのジュースだ。」
 「それを酒っちゅうんじゃ、バカタレが。」
 (ドワーフジョークかよ?・・・なんか余裕ありそうだな、こいつら。)
 チラリと見れば、休憩中のドワーフたちは地面に仰向けに転がって息も絶え絶えって感じだ。
 戦闘中のメンツも、”よっこらせ”なんて声が聞こえてきそうな様子で、何とか斧を振り上げている。
 ドワーフたちの無駄なおしゃべりは、疲れ切った体を無理矢理動かすためらしい。
 (余計疲れそうだけどな。)
 6本もある足のうち2本がドワーフたちのロープで、尻尾の根元付近を俺の魔法、ヒートバインドで拘束できているおかげで、疲弊しきっている割にこちらの被害は大きくない。
 熱でもダメージが通るかと思って使ってみたが・・・本来ヒートバインドで拘束された箇所は焼けただれるものなのに、火力が全く足りていないようだ。
 さすがにもう限界。 
 その時だ。
 キューーーーー
 (来た!)
 上空から合図の鳴き声がした。
 「みんな離れろー!!」
 そう叫ぶと、打ち合わせ通り全員が巨大白トカゲから全力で離れてゆく。
 そして・・・。
 巨大白トカゲが砂煙に包まれた。
 直後に ズドォーン!! と、何かがぶつかったような音と衝撃波、一瞬遅れて、周囲に土砂降りの雨?が数秒。
 視界を遮っていた土煙が雨に叩き落されると、そこにはローション状の何かに飲み込まれた巨大白トカゲの姿があった。
 巨大白トカゲを飲み込んでいるのは、デモンスライムのスラりんだ。
 俺が呼んだ最終手段。
 酸による溶解攻撃。
 ゲームでも、これに捕らわれたら脱出不可能、死亡確定だった。
 これでダメならもうお手上げだ。
 
 もがく巨大白トカゲだったが、スラりんの中で膨大な泡を噴出しながら、じわじわと小さくなり続けている。
 待つこと10分、巨大白トカゲはきれいに無くなってしまった。
 ようやく終わった。
 もう動けんぞ。
 「いったい、何なんだ、これは。」
 大の字になって横たわるドワーフの一人がグチ交じりに呟いた。
 どっちのことだろう。
 スラリンは元の大福型に戻って、上下にプルプルしている。
 言葉も表情も無いけど、なんだかうれしそうだ。
 「スラりんです。」
 一応紹介しておいた。
 ペシぺシと表面を叩いてやると、上下運動が少し大きくなった。
 「俺の従魔なんですよ。」
 ・・・
 ・・
 ・
 「ありがとなぁ~。」
 エースに運ばれていくスラりんに感謝を伝えると、ドワーフたちの輪に戻った。
 話によると彼らは、南に見える山に住む部族で、今回は酒の材料になる果実を探しに来ていたらしい。
 「ここいらの魔物なら苦も無く倒せるんだがのう・・・あんな化け物は初めてだ。」
 そう言ってきたのは、最初に重傷だったところを助けたドワーフ、ゲンドウだ。
 日も陰って来たので、このまま野営するというゲンドウ達。
 恩人をそのまま返すわけにはいかないと、彼ら自慢の酒を振舞ってくれるという。
 断るなんてもったいない選択は無いので、ご相伴にあずかることにしたよ。
 ドワーフと懇意になれるなんて、この先もう無いかもしれないしね。
 焚火の周りをぐるりと取り囲んで座るドワーフたち、魔物除けだという粉を焚火に振りかけたからか、炎が青い。
 なんだろうあの粉、是非詳しく聞きたいところだけれど・・・。
 隣でレインがのたうち回っている。
 「ガハハハ、喉が焼けるだろう。」
 ドワーフ火酒、現物がここに・・・って、樽ジョッキで飲むものなのか?
 さすがに死なないよね?
 チラリと周りを見ると、ドワーフたちはグビグビとやっている。
 ええい、ままよ。
 グイッとあおる。
 グ・・・喉が・・・焼ける。
 一気に体から汗が噴き出し、心臓が躍る。
 あ。
 苦しみの遥か彼方に、ほんの少し、微かに旨味が・・・。
 バタン。
 強烈だった。
 レインの様子を見て、事前にキュアを準備しておいてよかった。
 速攻で準備していたキュアで解毒したのに、まだフラつくような気がする。
 恐るべしドワーフ火酒。
 「おう、いけるじゃねぇか、初めてで持ち直したヤツは久しぶりに見たぞ。」
 やられた!
 なんでも、このドワーフ火酒、集落でも普段飲むことは無く、成人の儀で度胸試しに飲ませる物らしい。
 狩りや収穫に出るときに所持するのは、助からないほどの負傷をしたとき、最後の苦しみを紛らわせるために、ということなんだって。
 「ガハハハハ、こいつを飲んだお前さんらはもう、わしらの家族同然よ。」
 一応、歓迎してくれてるんだろうな。
 かなり手荒いけど。
 そういう彼らが飲んでいたのは、かなり度数が強いけど普通に飲める果実酒だった。
 おぉ、かなりエグみが薄いな、それ以上に旨味も香りも良いし。
 完璧に魔素抜きすれば、俺の作った果実酒よりずっと美味いかも。
 しかし、憧れのドワーフ火酒がこんなとんでもな酒だったとは・・・火酒?
 ・・・まさかな、でも気になる。
 ちょっと試してみようか。
 出発前に見たメモを思い出す。
 
 <火酒3:水7〇 火酒2:ミード8〇 火酒1:果実酒9〇 火酒ST×>
 
 (STって、たぶんストレートのことだよな、ってことは、割る割合って考えればいいのかな。)
 試しに飲んでいる果実酒に、ほんの少し、9:1になるかなって感じで火酒を入れてみる。
 「おい、お前まだ火酒を・・・って。」
 直感を信じてグイッとあおった。
 「マジかよ・・・。」
 「勇者だ。」
 いや、この世界に勇者なんていないだろうが。
 しかし・・・美味い!
 これは美味いぞ。
 エグみを感じなくなるうえ、果実酒のさわやかな香りが引き立つ。
 しかも、後から火酒の深い味わいが余韻として残る。
 小さなグラスでチビチビとやるのにいいかもしれない。
 さっそく他の飲み方も試してみ・・・る前に、
 「あ、これ、果実酒9に火酒1で割るとすんごく美味い・・・ですよ。」
 あまりの美味にトリップしかけていた俺を心配して、というより、再び火酒を飲むという暴挙に出た俺に興味津々だった感じのドワーフたちにちゃんとご説明。
 「なんじゃこりゃぁ~!」
 「神だ、酒の神が降臨された。」
 「くそう!なんでもっと火酒を持ってこなかったんだぁ!」
 大騒ぎになった。
 俺の持っていたミードや果実酒、干し肉(どれも魔素抜き済み)を提供してようやく落ち着きを取り戻した。
 「これも美味いな、酒精は弱いが、不快な雑味が無いじゃないか。」
 「おい、こっちの干し肉も信じられんほど美味いぞ。」
 期待通りの反応アザッス。 
 こうしていろいろと語り合ったわけだけど、彼らの持っていた地図と俺の魔導地図を見比べてみた。
 「なるほど、村から真っすぐ南に進路を取ると、ベイロール山をかすめるわけか。」
 「おう、わしらの集落はこの山、お前さんらの言うベイロール山の中腹にある。」
 ただ今絶賛工事中のコリント伯爵領への街道からそれほど離れていない所だ、これは好都合、交易もできそうだぞ。
 って、まだ飲んでるんかよ。
 いったいどれだけ持ってきてるんだ?
 って聞いたら、10リットル以上は余裕で入りそうな大きな樽を背負ってきていた。
 それを全員持ってきているそうだ。
 アホかよ!
 
    **
 
 「いやぁ、あんなひどい思いしたんだから、絶対二日酔いだと思ったんですけどねぇ。
 なんかスッキリです。」
 それは、朝方俺がこっそりキュアかけてやったからなんだけど・・・
 「ガハハハハ、ならお前さんも強くなるぞ!間違いない。」
 「がんばりまっす!」
 ・・・教えるのはまたあとにしよう。
 「そうだ、助けてもらった礼にこいつをやろう。」
 そう言って、一本のナイフを渡された。
 ん?この色って・・・
 「まさか、ミスリルですか?」
 「おう、人にとっては貴重なんだろ?集落一の職人が打ったもんだ、なかなかの技物だぞ。」
 「なら、こいつももってけ。」
 そう言って渡されたのは、大きな、デモンエイプの物をはるかに超えるほどの魔石だった。
 「これは?」
 「さっき拾ったもんだ、たぶん、あのオオトカゲのもんだろうよ。
 倒したのはお前さんの従魔だろ?なら権利があるのはお前さんだ。
 まぁ、わしらも手伝ったがな、だがまぁ、魔石は分けられんしの、その、なんだ、別の物で分けてくれてもいいんだがの。」
 ドワーフのモジモジはかわいくないぞ。
 分かってますよ。
 残っていた干し肉と、果実酒の瓶2本、小樽に入ったミードを進呈するとしましょう。
 「いったいどこにしまっとったんだ? あ!こら!村へ持って帰るんだから飲むんじゃない!」 
 セーフ。
 貯蔵庫の利用時は気をつけましょう。
 勝手に飲みだしたドワーフのオッサン、グッジョブです。
 「是非村に来てくれ、火酒の新しい可能性を見つけ出してくれたのは、間違いなく酒の神の思し召しってもんだ、部族あげて歓迎するぞぃ。」
 うれしいお言葉をいただいた。
 ドワーフの村・・・行ってみたい。
 でも、俺一人じゃないし・・・と、レインをチラリと見たら
 「是非お邪魔したいです!」
 ときた。
 そうだよな、ファンタジーゲームやってるやつでこんなチャンスを棒に振るやつはいないよな。
 「では、他にいくつか思いついた飲み方を試しに行きましょう。」
 俺のこの一言でドワーフたちは歓喜の声を上げたのだった。
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