GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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131話:予定外

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 「どうする?ベリエイル。」
 決行まであとわずか、そのタイミングでターゲットに大きな動きがあった。
 村から18リーグ(20Km程度)の距離、整備中の街道を見下ろすことのできる崖の上で、”下天”の一団が作業中の現場を監視していた。
 メインターゲットのユーシンが鉄の車を召喚、それにターゲットの一人、アオイと乗り込んで移動しようとしている。
 事前調査において、このユーシンというターゲットは要注意人物に指定されていた。
 個人の戦闘力はもとより、召喚する多彩な鋼の車や魔道具に対しては、上級兵2名でかかるべきという評価になっていた。
 ありえない量の土砂を詰め込む車に、大木の根をいとも簡単に引き抜く鋼の魔道具まで使役していた。
 その魔道具は、数人で半日はかかるであろうものを、あっという間に掘り起こしてしまっていた。
 あの力が敵対するとなればかなりの脅威になるだろう。
 他には戦力的な脅威となる存在の確認はできていないが、現実とはとても思えないような土木能力を見せつけられており、確実に処理しなければならないとの指示を受けていた。
 「仕方ない、ベディーロ、クラウルは私に同行しろ、鉄の車を追跡、決行時間と同時にしかける。
 レンゲルアは他の者とこの場にとどまり、カイト、アカネ、クリフトを最優先、オークやゴブリンは上位種も混じっていると思われる、侮ることなく全力で処理しろ。」
 指揮官のベリエイルは、ユーシンに対して上級兵1名と中級兵1名を共として追跡に移り、この場は上級兵への昇進が確定しているレンゲルアに指揮を任せる、という判断をした。
 「行くぞ。」
 ベリエイルの合図と同時に、各々が持ち場へ着くべく行動を開始した。
 
    **
 
 「なんスか?あんたら。
 車の前に飛び出したら危ないって習ってないんスか?」
 資材の補給に向かう途中、いきなり目の前に飛び降りてきた3人の人影。
 殺気を含んだ雰囲気を感じたユーシンは、即座に軽トラを収納して荷台に積んであった刀を手に取った。
 「車なんて知らないでしょ?この人たち。」
 いきなり座っていたシートが消えて地面にしりもちをついたアオイが不満げに答えた。
 「いや、でもこれ、コスプレって奴だろ?
 甥っ子がこんな感じの寝巻着てたぞ。」
 「寝巻ってあんた・・・え?じゃぁ、この人たちワタリビト?」
 「さぁ・・・とりあえず敵っぽいけどな。」
 ユーシンは刀を抜いて、鞘を地面に突き立てた。
 「でぇ、そんだけ殺気まき散らしてんだから、死ぬ覚悟はできてるんスよね?」
 そう凄むユーシンの隣で、アオイも剣を抜いた。
 ペチン
 「った!なにすんの。」
 剣を抜いたアオイに、すかさずユーシンのデコピンがおでこに炸裂していた。
 「剣ブンブンしかできねぇくせにバカやろうとしてねぇで、とっととシェルター作る!」
 そう言って自分の後ろを指さすユーシンを不満そうに睨むと、アオイはプイッと後ろを向いて下がっていった。
 「なっ・・・。」
 後ろに下がったアオイが、瞬く間に自分を中心とした小さな石の建物を作り上げたことに驚きの声を上げた襲撃者たち。
 資材すら無いこの状況で、いきなり積みあがっていくブロック状の建材に自分の目が信じられなかった。
 「ひょうひゃく!」
 3人のうち一人が、両腕を胸の前でクロスして叫んだ。
 クロスした腕が光ると、次の瞬間、深緑色の鎧が装着されていた。
 「ひょうひゃく!」
 さらにもう一人が、空手の型のような動きをしながら叫ぶと、両腕に銀色のガントレットが現れ、肩、足、胸と鎧のパーツが現れてゆく。
 「おお~、なんかカッケぇ、二人とも同じゲームやってた感じなんスか?」
 「男子だんしってそう言うの好きだよね。」
 ババババッ
 アオイが立てこもる建物の表面がはじけ飛んだ。
 変身していない3人目が、腕に付けた銃を建物に向けて連射していた。
 「くそ、何でできていやがる・・・」
 かすかに痕が付く程度の外壁。
 その強度に驚愕しながらも、追撃のためのチャージを開始した。
 レンガ造りの外壁を容易く貫通するチェーンガンは、30発ごとにエネルギーのチャージが必要になる。
 (あっちは大丈夫そうだな、ならこっちは集中できそうっスね。)
 ユーシンの姿が歪む。
 一気に緑の鎧に肉薄すると、バットの大振りのような横なぎの一撃を食らわせる。
 ギッ!
 防ぐ手甲ごと切り飛ばすつもりで放った”フルスイング”だったが、痺れるほどの衝撃が帰ってきた。
 「かたっ!」
 思わず声が漏れた。
 同時に全力で飛び退くと、ユーシンは刀をそっと地面に置き、ウエストポーチから白い布、白ランを取り出した。
 「おいおい、うそだろ・・・?」
 せいぜい小瓶が1~2本入る程度のポーチから、ロングコートが出てきた。
 「いいっしょ、シンさんから貰った、すんげぇいっぱい入るポーチ。」
 緑の鎧、ベリエイルはユーシンの動きに警戒態勢を取った。
 自慢する様子にも焦りを感じられず、わざわざ武器を置いてまで取り出したコートらしきものを、鋼の車のような、強力な武器ではないかと疑ったためだ。
 「にしては滑稽な力だな、コート一枚取り出すだけとは。」
 小さなポーチには入るはずの無いコートを取り出したことで一瞬警戒したが、結局それを羽織るだけで攻撃手段ではないようだと銀の鎧、ベディーロは小ばかにしたような声を上げた。
 「お待たせしたっスね、こっちもこれで準備万端、容赦しないっスよ。」
 オリヒメ特製の、真っ白な長ラン。
 背には“喧嘩上等”、左側の前面には、胸から裾まで大きく派手な上り龍の刺繡がほどこされていた。
 ヤンキー漫画によく出てきそうな、いわゆる特攻服だ。
 ミスリルの糸を編み込んで作られたチェーンメイル状の下地に、スレッドスパイダーの糸と、ミスリルの糸を6:4の割合で織り込んだ生地を重ねた上、シンによる強化まで受けている特攻服は、この世界では完全にオーバースペックな鎧と化していた。
 再び刀を取ったユーシンは、一気に距離を詰めるために駆け出した。
 「馬鹿の一つ覚えか!
 リェイダアァア」
 ベディーロが右こぶしを引いて叫ぶ。
 と、その拳が二回りも大きくなり、光を発した。
 「ナクルゥ!」
 ベティーロが光る拳を突き出し、ユーシンの刀と打ち合い激しく火花が散った。
 「く・・・ どうなってやがる・・・。」
 ベティーロの右こぶしからは、おびただしい量の血が流れ出ていた。
 ユーシンが着た特攻服は、ゲームでユーシンが扱っていたキャラクター、狂弥が着ている特攻服に似せて作られたものだ。
 外見などをゲームのキャラに近づけることで、能力が増す。
 特にレベルアップという概念の無い格闘ゲーマーにとっては重要な要素だと、シンやオリヒメ達が苦労してあつらえてくれた特攻服。
 ゲーム中、岩や車をバットで両断していた狂弥には及ばないものの、アオイが打った隠し武器、断風(タチカゼ)夜叉王(ヤシャオウ)に似せた日本刀らしき剣も手にすることで、岩を破砕する程度のことはできるようになっていた。
 「ベリエイルの腕に傷一つつけられなかったくせに・・・。」
  まさか、コート一枚羽織っただけでユーシンの攻撃力が跳ね上がるなどとは夢にも思わなかったベティーロは、自らの身に起こったことが分からないままでいた。
 「アオイ作の8代目断風夜叉王をなめんでほしいっスね。」
 「ね!」
 「え?そうだったっけ?」
 (っつーか、なんであんなガンガンマシンガンぶっ放されてるのに聞こえるんだよ・・・)
 日本刀の形をしただけの剣は、アオイの気まぐれで度々交換、もしくは作り直されていた。
 「クソ、舐めるな小僧!!」
 再び襲い掛かるベティーロの攻撃をかわし、下段に構えていた剣をくるりと上下回転させて斬り上げた。
 「グッ・・・」
 瞬間的に反応して後ろへ下がったベティーロだったが、ユーシンの剣は想像以上に前へと伸び、刹那の差でベティーロの肩を切り裂いた。
 「なめてかかるからだ、下がれ。」
 ベリエイルがベティーロをかばうように間に割り込むと、ユーシンを前に正眼にそんきょの姿勢を取り、胸の前で両肘から先、拳までもをピタリと合わせた。
 「?」
 突然の無防備ともいえる姿勢に、ユーシンは罠の可能性を感じて一歩引いた。
 「ドゥクァン!!」
 その叫びと同時に、ベリエイルの両こぶしが、緑の光に包まれ巨大化してゆく。
 「なる、デカくする儀式的なやつなんスね?」
 なんて感心している場合では無いのだが、いかにも邪魔そうなあの巨大な拳で何をするつもりなのか、見てみたいという誘惑がユーシンの動きを止めた。
 「ハァンムハァア!!」
 両肘を目いっぱい後ろへ引くと、叫びと同時に両こぶしを前へと突き出したベリエイル。
 拳の形をした緑色の光がさらに巨大化して、ユーシンめがけて発射された。
 ユーシンに直撃した光の拳は、派手に爆炎を上げて周辺の木々や土砂をまき散らした。
 「結構痛いっスね、まぁ、初見殺しはもう通じないっスけどね。」
 特攻服に飛び散った土を払いながら、ユーシンは刀を担ぐように構えた。
 「ドゥクァン!!」
 「へ?
 いやいや、今効かなかったっしょ?そんな無駄な動きの技連発したって・・・!?」
 この時、ユーシンは自分の感情に違和感を感じた。
 悠長に説明してやる筋合いなんてない。
 なんで、わざわざまた受けようとしているのか。
 そもそも、最初の攻撃も何で受けてみようと思ってしまったのか。
 (やべ!これって精神操作とかいうやつか!!)
 「ハァンムハァア!!」 
 再び光る拳がユーシンを襲い、激しい土煙が視界を奪った。
 「リェイダアァア」
 その土煙へめがけて、ベティーロが突進してゆく。
 「ナクルゥ!!」
 光る拳ごと土煙の中へ、手ごたえを感じたと思った瞬間、スッと消えてしまった。
 「チッ!後ろに飛んだか、器用なやつだ。」
 転げまわるようにして脱出したユーシンは、地を蹴って一気に加速、深緑の鎧に襲い掛かろうとした。 
 「ドゥクァン!!」
 再び襲い来た、攻撃を受けたいという誘惑。
 「ぬぁめるぬあぁあ!!」
 絶叫することで振り払い、上段から一気に斬り降ろした。
 「ハ・・・ン・・・」
 胸の前で合わせた腕ごと切り裂かれたベリエイルは、ガクリと膝をつくと、弾け消えてゆくライダースーツと共に命も散らせた。
 「クソがぁ!」
 その声を合図に、クルリと背後へ振り返りつつ、横なぎに剣を振るう。
 ライダースーツごと両断されたベティーロも、はじけ飛ぶライダースーツと共に命を落とした。
 「あとひとり・・・い?」
 最後の一人に向かおうとしたユーシンの視線の先には、アスクラ唯一の飛び道具、ドット絵全開なカクカクしたクロスボウを構えたアオイがいた。
 「私だって、自分の身を守るくらいできるんだからね!」
 ドヤ顔でそう言ったアオイが構えるクロスボウの先には、最後の一人だったと思われる男が、大の字になって倒れていた。
 その胸には、カクカクした矢が深く突き刺さっている。
 「どうよ、やればこのくらい・・・なによ。」
 ユーシンは何も言わずに近づくと、構えたままのクロスボウを持つアオイの手にそっと自分の手を重ね、ゆっくりと下ろさせた。
 震える手が、ひきつったドヤ顔が、無理して強がっていることをバラしてしまっている。
 少なくとも、ユーシンが知るかぎりだが、アオイは初めてヒトを殺した。
 不甲斐なくも敵の術中にはまりかけた自分の身を案じて、無謀ともいえる反撃に出たアオイを叱ることはできなかった。
 「スゲェよ、やっぱりアスクラも戦闘できるゲームだもんな。」
 アオイの服にいくつか穴が開いて血の後らしきシミがあることも、敵の後ろに大量の矢、打ち損じが突き刺さっていることも見なかったことにする。
 ポーションの空き瓶を、気づかれないように蹴り飛ばそうとしたアオイ。
 それも見なかったことにした。
 今は、全力で戦った最愛の相棒を称える時だ。
 「まさかとは思うけど、カイトたちが心配っスね。」
 「それ!」
 「スよね、急いで戻らないと。」
 「それもだけど、そうじゃなくて。」
 「あ・・・気を付けるッ・・・る。」
 
    **
 
 「あれ?追加の作業員なんて聞いてたっけ?」
 突然現れた5人の黒いコートを着た一団。
 カイトは疑いもせずに近づこうとした。
 「お待ちください! この者達からはっ!!」
 カイトを庇うように前に立ったオークは、最後まで言い切ることなく膝をついた。
 「クラトルさん?!」
 駆け寄ろうとするカイトに、左手を後ろに掲げて待ったをかけたオークは、
 「逃げ・・・て・・・。」
 それだけ伝えると、ゆっくりと後ろに倒れた。
 その胸には、派手な装飾のナイフが深く突き刺さっていた。
 「え?・・・クラトル、さん・・・。」
 ついさっきまで、笑い合いながら一緒に作業していた仲間が、目の前で死んだ。
 その衝撃は、まだ幼いカイトには強すぎた。
 頭が真っ白になって、現状に理解が追い付かない。
 代わりに、周りの大人たちが動いた。
 グイッと太い腕がカイトの体に巻き付き、後ろへと引き寄せられる。
 それと同時に、つるはしやシャベルを持ったオークたちが5人の襲撃者へと殺到する。
 戦力として要注意指定されていたユーシンはおらず、ヒトに使役される程度の魔物など敵ではないと、たかをくくっていた襲撃者たちは、オークたちの素早い反応に一瞬たじろいだ。
 ただの土木道具だが、それを扱うオークたちはただのオークではない。
 オークロードに進化したオヤカタの配下であり、オークの上位種であるハイオークのパワーは、UCアンコモンのスーツ、鬼兵オーガニオを装備した襲撃者たちでも無視できない威力があった。
 もし、手に持った武器が剣や斧であったなら、その一撃で終わっていたかもしれない。
 しかし・・・
 
 後方が騒然とする様子に、久しぶりに手伝いに来ていたアカネは身を震わせた。
 騒ぎのある場所には、カイトがいる。
 「アカネちゃん!壁を!!」
 クリフトの声で我に返ると、急いでクラフトを始めた。
 街道工事を始める前、アオイやカイトとともに、不測の事態に備えてシェルターのクラフト練習をしていた。
 まさか、本当に必要になるとは。
 ゲーム中最も硬い黒曜石のブロックを積み上げていく。
 カイトの叫び声が聞こえた。
 ブロックの端から覗き見ると、カイトはオヤカタに抱えられてこちらへと向かってくる。
 (良かった、無事だった。)
 その気持ちは、一瞬で消えた。
 カイトたちの先で、多くのオークやゴブリンたちがバタバタと倒れてゆく。
 カイトの叫びは、倒れ行く仲間たちへの悲痛な叫びだった。
 「アカネちゃん!しっかりするんだ!
 カイトが来たらシェルターをふさいで、ユーシン達が戻るのを待つんだ、いいね。」
 そう言うと、クリフトは襲撃者たちの元へと駆け出していった。
 「待って!」
 クリフトも、アカネたち同様戦闘の無いクラフトゲームのプレイヤーだ。
 行っても殺されるだけ。
 護身用にスロークから拳銃(以前鹵獲した物)を渡されていたが、そんな物でどうにかなるとは思えない。
 「シェルターを閉じてください。」
 アカネが作り上げたシェルターにカイトを無理矢理押し込むと、オヤカタはニッコリと笑って告げた。
 「急いで!」
 その声に、アカネは最後のブロックを設置した。
 「ちくしょう・・・みんな・・・なんで・・・。」
 両手で黒曜石の壁を叩き、両ひざをついて体を震わせるカイト。
 恐怖より、何もできずに守られた悔しさと、襲撃者への怒りが、壁を叩く手を止めなかった。
 
 襲撃者たちは、トウリョーとオヤカタ、護衛として作業員に紛れていた2人のグレーターデーモンがかろうじて抑えていた。
 クリフトも何かできればと出て来たものの、彼らの戦いを目で追うこともままならない。
 そんな状況では、使い方の練習程度しかしていない拳銃が通用するとはとても思えなかった。
 それでも、震える体で真上に銃を向け、1発放った。
 「お前たちのターゲットは俺だろう!」
 確信は無かったが、ユーシンのいないタイミングで襲撃してきた以上、クラフトゲームの能力を持つクリフト達が目当てではないかと思った。
 だから、自分を囮にして気を引ければ。
 そんな思いだった。
 クリフトの目の前で、黒いものが弾けた。
 ボトリと落ちた黒いそれは、伝令役のインプだった。
 「・・・え?・・・」
 ペタンと座り込んだクリフトの頭上を何かが通り過ぎた。
 インプが自分を守って被弾したのだと理解した瞬間、左肩に激痛が走った。
 (あぁ、ここで死ぬのか・・・。)
 敵も銃のような武器を持っていたのだ。
 気を引くどころかとんだ足手まといになってしまった。
 右肩にも激しい衝撃を感じ、クリフトの意識はそこで途切れた。
 
 
    **
 
 両肩の激痛で目を覚ましたクリフトは、ここにいるはずのない人物を真正面に見て困惑した。
 「すいません、遅れまして。」
 面頬を上げたフルプレート姿のレインだった。
 「ミネキアに不穏な動きがあるって知らせを受けて、急いでみどり村へ向かったんですけどね・・・ほとんどお役に立てないまま終わっちゃってたみたいで。」
 レインは、諜報部がつかんだ不審者の動向から、グリンウェル領に対して不穏な動きがあり、そこにミネキア伯爵と外国の組織が関与している可能性がある、として、カルケール伯爵の指示を受けて駆けつけてきたのだという。
 村の入り口付近でライアーと出会い、この場所への援軍を依頼されて飛んできた。
 比喩表現ではない。
 緊急時には、シンとスロークの騎乗モンスターが村の各地で待機、いつでも動けるようにマニュアル化されており、スロークの指示でモンスターたちが配置を完了していたため、入り口付近担当だった巨大雀、チュンターずのタイちゅんに乗って空からやってきたのだ。
 敵はカムイによって瞬く間に一掃され、レインが託されて持ってきたポーションと、レインの治療スキルで応急処置も終わったところだった。
 「みんなは?」
 傷む両肩に顔をしかめながら、レインの手を借りて上半身を起こす。
 「3人・・・間に合いませんでした。」
 「レイン殿が来てくださらなければ半数は命を落としていたでしょう。」
 悔しそうにうつむくレインを、カムイがフォローした。
 カムイには救う力はない。
 それどころか、ポーションなどを所持することもできないのだ。
 「・・・強くなりたい。」
 拳をギュッと握りしめてうつむくカイトがいた。
 「そうだね・・・シンさんに相談してみようか、あの人なら、何かいい案を出してくれるかもしれない・・・一緒に強くなろう。」
 そう言ってカイトに触れようとして、激痛に顔をしかめた。
 「あぁ、すいません、ポーションが足りなくて、クリフトさんはスキルで止血した程度なんです。
 それでもヤバそうな重傷者から順にユーシンさんが村へ輸送中ですから。」
 申し訳なさそうに謝るレインに、
 「感謝してるよ・・・来てくれてありがとう・・・すまないけど・・・あと・・・たの・・・」
 最後まで伝えきれずに、クリフトは再び意識を失った。
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