異世界言ってみよう

サラニネル

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掲示板の悲(喜)劇

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個室から受付に戻ると、マーサは次の説明を始めた。
「冒険者にはランクがあってねえ。仕事を受けて実績が上がれば、ランクが上がるんだよ。だから受けられる仕事もランクで決まってるし、ランクの高い仕事ほど報酬も高くなるからね。ランクは新人がFで、初級者はC、中級者はB、上級者はAになるね。あと、そのさらに上に最上級Sがあるんだよ」

「次は依頼の受け方だね」マーサは壁を指差した。
「あそこに掲示板に貼ってあるのが、街の人からの依頼書だよ。まず、ランクが書いてあるから、自分のランクで受けられる仕事を選びなさい。それから依頼を受けたいのがあったら、さっき渡したカードと依頼書を持ってきてちょうだい。そして依頼を達成したら、依頼書に書かれた達成の証拠や依頼された物を、ここに持ってくれば報酬がもらえるんだよ」3人はマーサの説明で頷くだけだった。
「それじゃあ、好きなものを選んできてちょうだい」
マーサは3人が掲示板に向かうと一息ついた。

掲示板の周りを見ると、まばらにいる冒険者達が依頼書を確認したり、取っていったりした。
「ツッコ、なんか職安みたいなとこだね...あ~あ結局また失業者になっちゃたね」
ボッケは職安に行った時を思い出し少し嫌な気分だった。
「まあ、漫才師になるまでは色々してたよな...けど体力系の仕事は、ほぼしてなかったな」ツッコも職安にはいい思い出は無くため息をついていた。
「失業者じゃないよ、吟遊詩人の冒険者だよ」アマリの言葉に、2人は苦笑した。
「そうだな、今はできるの探すしかねえな」ツッコは気を持ち直した。

各自が掲示板に張り出された依頼書を食い入るように見つめたが、どれもこれも出来ない事ばかりで、なかなか手が出なかった。
そんな中やっと、ある依頼の前でツッコの目が止まった。
その依頼は「ギルドの素材や道具の積み込みと整理」だった。
受けられるランクはF以上で報酬は1人銅貨80枚だった。内容的に積み込みとあり肉体労働ではあるが、整理とも書いてあるし、これならできそうだと思えた。
「お!これなら俺たちでも、できるんじゃねえか!?」
早速ツッコは2人を呼びに行った。

2人を引き連れ依頼書の前に戻ってきた瞬間だった、横から依頼書を取られてしまった。
見ると、まだ幼さの残る勝気な青年が、ひょろっとした同年代のおとなしそうな青年を引き連れていた。そして、どちらも農民のような格好だった。
「フン。早い者勝ちだ!行くぞトム」
驚いた3人に尻目に、勝気な青年は受付の方へ向かって行った。
「ジム待ってよ!」
おとなしそうな青年は、渡された依頼書を大事そうにしまうと、去り際に申し訳なさそうにお辞儀をしてから後を追った。どうやら勝気な方がジム、おとなしそうな方がトムという名前だった。

「くっそお!あのガキ、俺の方が先に見つけたのに!」
ツッコは2人を睨みつけながら悔しがった。
「あれえ、取られちゃったね。そっか!取らないと、ダメだったんだね...依頼書消えてイライラしよう!」
ボッケは気を取り直すために笑いに変えてみた。
「それじゃあ、取られるの待ってなきゃいけねえだろ阿呆」
ツッコは呆れて少し笑ったが、後悔が残り、ため息をついた。
「お兄ちゃん疲れた」アマリは何が起こったか分かってなかった。

その時だった後ろで笑い声がした。
「ハッハッハ!面白いやつらだ!なあフローラ!」
長いひげを蓄え、ずんぐりむっくりして迫力のある背の低い男が立っていた。
「...さっさと行くわよ」
横には口を押さえがら笑いを堪えた、凛とした小柄な女性がいた。見ると女性は綺麗な色の髪と特徴的な長い耳が付いていた。

ここまで、人間しか見てなかった3人は見るなり驚いて喋り出した。
「あの本に載ってたドワーフとエルフってこの人達じゃないの、ゲームみたい!スマホがあれば絶対撮るのに!」
ゲーム好きのアマリは明らかにテンションが高くなった。
「確かに漫画とかに出てくるドワーフとエルフと似てるね!実際に見るとすごいね!」ボッケも2人を色々な方向から見回した。
「そうだな俺も初めて見たけど、エルフってやっぱ綺麗だな!」
ツッコも驚いていたが、どちらかというとエルフの方ばかり見ていた。
「は、初めまして、私アマリです。握手してください」
珍しく人見知りのアマリから挨拶した。
アマリは何を驚いているかわからない様子の2人に握手してもらって、「やったあ」と喜んでいる。

とりあえず悪い気はしてないようで、全員が握手してもらった。
「まあ?よくわからんが俺はドワーフのロルフ、そっちはハーフエルフのヴィリディフローラだ、今は2人でパーティーを組んでるんだ。よろしくな。...しかしジムとトムに取られてたし、お前ら初心者だろ。まあ、頑張んな!」
ロルフは片手をあげると笑いながら受付に向かった。
「フローラだけでいいわ、頑張ってね!」
手に依頼書を持つと苦笑しながらロルフに合流した。

その後も探し続けていたのだが、良い依頼は無く掲示板の前で途方に暮れている3人の姿は、他の冒険者たちからすれば邪魔な存在だった。またもや、心無い言葉を浴びせられ、彼らはギルドの隅へと追いやられていった。

受付に来る冒険者もいなくなり、マーサが辺りを見ると、今日受付をした新人の3人が隅で座って落ち込んでいた。
そんな様子を不憫に思い声をかけることにした。
「あなたたち、まだ仕事が見つからないのかい?」
ツッコは気づいて立ち上がると頭を掻いた。
「すまねえんだけど俺たち戦ったことねえんだ。戦わないで、できる仕事ないかな?」

「そうなのかい...一応、吟遊詩人なら歌や詩を歌って稼ぐのも、できるはずなんだけどね...正直、登録の時を思い出せば無理だろうね」
マーサの言葉に肩を落とす3人だった。
マーサは、そんな様子を見て少し考えた後に閃いた。
「そうさね、薬屋のエーリカの所へ行ってみたらどうだろね?薬草を探してくれる冒険者を常時募集していたしね。それなら初心者向でも場所さえ間違えなければ戦闘は無いはずだよ」

「薬草探し、か...」
ツッコは不安な顔のままだったが、その仕事に興味を持った。

「よし、お前ら行くぞ!エーリカの店だ」

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