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奥様はお仕置き中

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 胸の重みを感じながら目覚めるとリアムが私を覗き込んでいた。

「アーロン神は来てくれたんだね。」

「……うん。レナ神の事はミルバ神に頼むことになったから大丈夫だと思う。レナ神は?」

「ベッドで眠ってる。悶えてるけどね。そっとしておこうか。」

「エイデン、ありがと。」

 振り向いて後ろの温かみに感謝すると私を抱きしめてくれていた腕がきゅっと反応した。エイデンはレダの生まれ変わりが現れてからずっと不安そうだ。ミルバ神に任せて眠っているとはいえ、時折甘い吐息を吐きながら身もだえるレナ神を見ているわけにもいかないので皆でそっと部屋を離れた。イーサンは部屋の前でレナ神を守るって残ってたけど。

 誰が言い出すこともなくリアムの部屋に集まる。レナ神の醜態を知られてはならないと申し訳ないがレナ神が落ち着くまではラウラには少し眠ってもらえるようエイデンが魔法をかけていた。

「しかし、レナ神てもっと怖いひとだと思ってた。」

「--あ、いや、ゼス神に力を奪われてアレで大人しかったらしいぞ……。」

 ライリーが補足するように言う。いつもはもっと怖いってことか。

「てかさ、なんで皆私に黙ってたわけ??」

「「「気づかない方がおかしいんだよ!!」」」

「え。」

「--それよりも。アーロン神はうさちゃんと冥界の王が作れることをどう思ってるの?会えたんなら話をしたんじゃないの?」

 何故か皆に突っ込まれて唖然としていたらエイデンに聞かれた。

「--冥界の王とか関係なしにして私との子供が欲しいって言われた。」

「はああ~。やっぱりなぁ。アーロン神、パオラにでっろでろだもんなぁ!」

「兄妹……なのに……。」

「リアム、神様は事情が違うから!別で考えて!ほんと、妹の事となると……。ちゃんと頭動かしてよ!--色々すっ飛ばして結果だけ考えるとレナ神が祝福を与えてくれたらヴィーテ神の思惑とは違って冥界の王が誕生するってことだよね。」

「それは、あり得ないと思う!レナ神が私とアーロンの事を許すとは思えないもん!って産む気もないし!!」

「あーー俺はなんか、レナ神が許すような気がするなぁ……。」

「俺も。」

「僕もそう思うんだよね。後はキモうさ次第……。」

「エイデン……。アーロンの子供産むとか考えたことないし。そもそも恋愛もよく分かんないもん。」

「でも、キモうさはレダと結婚するんでしょ?アーロン神とそういう事にはならないよね?……どっちも僕は嫌だけど。」

「レダは誰よりも大切だよ。でもそういう……性的な対象でレダを見たことないから。」

 むしろ、こないだリアムに与えられる快感の方が身もだえる気がする。じっと皆を見渡す。リアムと……エッチは出来る気がする。ライリー……とも多分。エイデン……も。イーサンは……まあ、いいや。

「今レダは赤ちゃんだけど、大きくなってパオラと結婚したいって言ったらパオラはどうするの?」

「もちろん、レダが望むならそうすると思う。」

「……やっぱり、そうだよね。」

 がっかりとしたエイデンの顔を見上げながら胸で眠る温もりを手でさすった。

「そもそも、さ。私が育った孤児院は女の子は建前じゃあ違う職種でもよっぽど何かの才能の無い子は大概は娼婦か愛人に収まるような環境だったの。それでも皆悲観したりしないでお金をためて自由になる方法を模索してた。だから孤児院から卒業しても先輩たちが時折戻ってきて情報や生きるすべを教えてくれてた。実際に自由になって体を売らない商売している子だっていたし、幸せな結婚した子もいたよ?--私もレダと結婚していたとしても、生活が苦しければ体を売っていただろうし。」

「そんなに、パオラの貞操観念低いの!?」

 驚くエイデン。エイデンだって低いくせに。

「貞操を守るって考えがないだけ。もちろん病気も怖いから安売りはしないよ。自分が利用できるものを最大限に利用しようと考えただけ。パオラは外見だけは人より優れてるもん。もちろん、使わなくて済むならそれでいいよ。良くも知らない男に体触られるのもあんなの体に入れられたり想像するだけでキモイ。寒気がする。」

「……パオラは小さいころからそういう目にさらされてきたから性的な事に本当は嫌悪が有るのかもね。」

 そこでリアムが私をじっと見て言った。

「嫌悪??あるのかな?体売ることも一つの方法であるとは思っているよ。それってリアムたちも同じだと思ってたけど。」

 確かに教会へいくと大人たちは私を舐めるように見ていた。まあ、嫌だな、とは思っていた。

「俺も性的な事を利用してきたことは否定しない。そうだね、俺とパオラはよく似ているのかもしれない。俺もどこかで無意識にそういう事を嫌悪している。」

 リアムの言葉を聞いて育ての両親を思い出す。そうだ。私もあの二人に憧れていた。あんな夫婦になりたいと思っていた。

「ああ。パオラ。お前のちいせぇ頃に俺が会っていたらそんなのから全部守ってやったのにな。」

 ぐう、と唸るようにライリーがそう言った。その言葉でほろりと涙が頬を伝った。

「パオラ。俺たちはパオラを大事に思ってる。だから無理に冥界の王をアーロン神と作る必要はないよ。エイデンやライリーも反対でしょ?もちろん、俺も。」

 リアムが皆に問いかけると皆はウンウンと頷いた。

「なんでも相談しろ。悪いようにはしねぇ。抱え込むな。」

 ライリーの優しい声、ちょ、半端ないんですけど。

「パオラがこの先、体を売ることはない。俺たちが守る。なにか勘違いしてるみたいだけど、自分を卑下しすぎじゃないの?パオラはバカじゃない。今回だってちゃんと考えてゼス神に交渉できてる。側にいたレダが特別だったからそう思い込んでない?」

 リアムが呆れたように私に言う。

「え。」

「うん。この際、言うけどひそかに僕と仲間と思ってるようだけど、僕、王都一の学園くらいなら余裕で首席で通るくらいは頭いいからね。黒魔法なんて教える側で大陸一と呼ばれてるんだから!レダは知らないけど、リアムは規格外だし!ライリーがバカなのはそうだけど!」

「「え!!」」

 驚愕のライリーと私。顔を見合わせるとライリーが「俺はフツーだ。」とにかっと笑った。--私とライリーが仲間だったのか。

「ちょ、どこ行くの?」

 エイデンの膝からライリーの膝へ。おお、仲間よ。手を広げると当たり前のようにライリーが迎えてくれた。

「ったく。」

 不満げにエイデンが頬を膨らませていたがやっぱり膝はライリーが一番。

 でも。

 そうなの?リアムに褒められてすごく嬉しい。認められるって嬉しい。ライリーの胸にギューッと抱き着いてちょっとその嬉しさに酔いしれていた。
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