今日から不死身なクエスト生活！

奥様はお仕置き中

21

「なぜ、俺の名を知っている。いや、お前はセルドリアムのなんだ！？」

「私がリアムから聞いたアメデオ＝リィーヴァという人間はノーラちゃんを石にして、エイデンの魔力を奪い、ライリーの視力を奪った相当悪い奴だけど？」

　じりじりと近づいてくるアメデオらしき要注意人物に距離を取りながら背にユノ王子を庇う。

「俺がノーラを石にしたのは彼女を守るためだ。時間を置いてから城から連れ出して元に戻すはずだったのをセルドリアムたちに見つかって攻撃を受けて重傷を負ったんだ。やっと傷が癒えたというのにまさか、アイラが殺されて、アイカまで亡くなるなんて思ってもみなかった。」

「どういう事！？」

「セルドリアムは知らないんだよ。あいつの親父がどんなに汚い人間なのかをな。－－と、いうか、お前、その話、セルドリアムから聞いたのか？」

「リアムはわたしの仲間だもん！」

「仲間？あいつの仲間はライリーとエイデンくらいだろう？ノーラが石にされたのを知っているヤツがいるなんて信じられない。」

「リアムの事コミュ障みたいに言わないでくれる？あんたこそ、リアムのお父さんが汚い人間ってどういう事よ！」

「ぱーら……。」

　アメデオに警戒していると後ろから震える声が聞こえる。リアムの話も興味はあるけれど、今はユノ王子を守らないと。震えるユノ王子に駆け寄ってぎゅっと抱きしめる。私だって肉の壁に位はなるはずだ。

「－－ユノ王子が生まれたのは１か月前ほどだぞ？今まで見たことないお前がなぜそこまでして守る？俺はアイカもアイラとも幼馴染なんだぞ？親戚筋でもお前を見たこともない。王の知り合いでもないお前がどうしてアイラの子を守っているんだ。」

「確かにユノ王子と会ったのは数日前だけど、ユノ王子は私の大切な人の生まれ変わりなの。……多分。」

「生まれ変わり？」

「信じなくってもいいよ。モーラ神に教えてもらったもん。」

「モーラ神……って、まさか神託をうけたのか？お前、ますます何者だ！？」

「神託ってことになるのかなぁ？？何者っていわれても今は黒い……生き物？？」

「お前……訳アリっぽいな。ふん。セルドリアムの仲間ってのが引っかかるがそれも最近だろうしな。俺はアイラとアイカの幼馴染で親友だった。だから、アイラが命がけで産んだ子供を守りたい。その気持ちに嘘はない。ユノ王子をさらってきたのはドルトが用意したあの屋敷が今晩襲われるのが分かっていたからだ。セルドリアムが結界を張っていたのは知っていたが、ヤツの魔法も万能ではない。屋敷に前もって術が綻ぶ抜け道を作ってあればこうやって簡単にユノ王子を攫えたんだからな。」

「そういえば、吸血蜘蛛も先に入ってた……。」

　でも誘拐に気づいたらエイデンがすぐにリアムに知らせてくれるに違いないし、そうしたらすぐに身柄を引き寄せてくれるはずだ。ユノ王子にくっついておけば大丈夫。きっと助けてくれる。

「セルドリアムは俺を恨んでいるだろ？今血眼で探してるだろうな。それでもアイラに頼んでノーラを戻してもらえば誤解は解けると思っていたんだ。エイデンの魔力やライリーの視力は戻せないけど……あの時はああしないと俺だって殺されていたからな。悪いとは思っちゃいない。」

「ノーラが元に戻る手立てはもうないの？」

「－－アイラとアイカは死んだ。」

　アメデオはそう言って私が抱くユノ王子に泣いているような顔で微笑んだ。

「もしかして……双子のどちらかが恋人だった？」

「……アイカは俺の恋人だった。俺たちは強引に引き裂かれ、俺は脅されてノーラと婚約させられた。でもノーラは心優しい子だった。俺と同じ哀れな生贄だった。だから、ミレー王のイカレタ考えをぶち破るために彼女を石に変えた。魔法に干渉できないこの呪術を使って。」

「ユノ王子？？」

　先ほどまで震えていたユノ王子が私の肩ごしにアメデオに手を伸ばしてそのフードを引っ張った。こぼれる美しい銀髪はリアムと似ていてその瞳は似ても似つかない黄金色の瞳だった。リアムと親戚と言われればそういう風に見える。しみじみと観察してしまったけれど、ユノ王子の行動にびっくりだ。

「ユノ。」

　ユノ王子が伸ばした指をきゅっとアメデオが掴んだ。その優しげな様子がさっきまで私を殴りつけていた男とは思えなかった。

「本当にユノ王子を助けてくれるの？」

「俺はユノの名付け親だからな。」

　ユノ王子に銀髪を掴まれながら優し気に答えるアメデオがどうしても極悪人には思えなかった。