人魚はぶっかけが好き

檸なっつ

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囚われる1

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「さっそく売り込むぞ」
 王様の挨拶が終わると花火が打ちあがり、王立祭が始まる。
 俺は企画書と真珠のサンプルを持ってパーティ会場の貴族のサロンを目指した。
 そこでは有力貴族たちが集まって政治などの情報交換をしている。
 俺は貴族ではないが、コネがあるのでサロンの出入りの許可をもらっていた。

 まずは、知り合いのウェイバー子爵辺りから説得して……と、勇んで廊下を進んでいたところ、俺は急に強く腕を引かれた。
「わっ……!」
 そうして部屋の一室に引きずり込まれる。
 あっという間に客室のベッドに放り込まれた俺は、上から体を押さえ込まれていた。

 なんだ⁉
 強盗か?
 抵抗しようにも力が強すぎる。
 見上げればフードの男が俺の腕を掴んでいる。
 この男……どこかで?
 そういえば王様の後ろに立っていた男と同じ色のフードだ……。

 いや……そんな男が俺を押さえ込んだりするか?
 誰だ……どうしてこんなことをする。
 状況を把握して、この危機を脱するために考えなくては……。

 たまに気になる女性をこうやって客室に連れ込む輩がいるとは聞いていたが、俺を押さえているのはどう見ても男だ。
 俺はスーツを着ているし、女性と間違われたとは思わない。

 マッドレーに恨みを持つ者……そっちはいっぱいいるからな。
 その方向で交渉してみるしかないか。
 俺が口を開けようとすると、その前に男はぐっと近づいてきた。

「ん、んんーっ!」
 そして、いきなりキスをしてきた。
 なんだ、こいつ! なにをっ!
 ……あ、あれ?

 くちゃ……。
 お構いなしにキスを続ける男が誰だかわかると、俺は目を疑った。
 だって……この顔……この逆らえないキスは……。

「セイジル……どうして……?」
 声を出すとフードを取ったセイジルが俺をじっと見つめていた。
 なんだか……恨めしそうに見えるのは錯覚か……。

「どうして? だと? 私からまんまと逃げたつもりだろうが、そうはさせない」
「に、逃げた……のは、そうだけど……」
 それは、セイジルが俺を捨てたからで。
 いや、どうしてこんなところに!

「私がいない間、誰かにこの体を許してはいないだろうな……」
 ぶちりと恐ろしい力でセイジルがシャツを引きちぎる。
 新調したばかりの一張羅が……!
 しかし、あまりの恐怖に俺は体を硬直させて動けなかった。

 ひとまずどうしてここに居るかは置いておこう。
 まずは興奮状態のセイジルを落ち着かせないと。
 考えろ……。
 考えろ、俺。
 これは想定外の出来事だ……!

 このままセイジルを怒らせるととんでもないことが起きると悟る。
 こんなに怒気を含んだセイジルを初めて見て、俺ももう震えるしかない。

 その間、簡単に俺を裸にしてしまったセイジルは見分するように体に触れた。
「ここも……」
「んっ」
 強く乳首をつねられて、痛い。痛いのに、じわじわと俺は慣れ親しんだ快感を思い出していた。
 ……あれ?
 俺、ちょっと反応してないか?

「淫乱め」
 そう言ったセイジルの視線の先には俺の肉棒がある。
 ずっとフニャフニャだった息子は、セイジルを前にして硬さを少し取り戻していた。

 まさか。
 ずっとダメだったのに?

「あっ!」
 しかし、考える暇もなく足を大きく開かされて、前戯もなく押し入られる。
 やっぱり……大きいっ。

「ここはどうだ…⁉」
「ぐうっ……セイジルっ、そんなっ! 乱暴にしないで……あなた以外は……あなた以外はダメなの……にっ」
 さすがにこうも太いものをほぐさないで突っ込まれると痛い。
 セイジルにはいつも十分に愛撫されて挿入されていたので、無理やり入れられたことなど一度もない……。
 しかし強引にされているというのに、俺の肉棒は久々の期待にカチカチになって、さらに我慢汁まで出していた。

「あなた以外は……? この期に及んでそんな戯言……」
「嘘じゃありません……あなた以外でこんなになったことはありません。どんなに恋しかったか」
 ……セイジルの性技とその持ちものが。
 ああ、いっぱいいっぱいに広げられて、痛みも感じているのに……それなのに俺の体が喜んでいる。
 もう勃ちあがることすら無理だと思っていた俺の肉棒がビクビクと……。
 セイジルの迫力がすごくて怖いのに、恐ろしいのに、めちゃくちゃ反応している!

「恋しい……?」
 ずっと勃たなかった愚息が反応して嬉しいのか、セイジルに強引にされて怖いのか、俺の感情はぐちゃぐちゃで涙が出る。
 対してセイジルは俺の泣き顔を見て少し落ち着きを取り戻したようだった。

「私が恋しかったのなら、どうして逃げたというのだ」
 そしてセイジルが俺に質問する。
 腰を微妙に揺らしてくるのは……わざとに違いない。
「んっ」
 そこを……もっとこすってもらえたら……。
 気持ちいことに集中したいのに、そうは言っていられない。
 緊迫したこの空気に、俺の答えによっては死が待っているのだ。

 間違えるな。
 間違えるなよ……俺。

「セイジルが顔を見せてくれなくなって……捨てられたのだと思いました」

 これは……セーフか?
 俺が答えるとセイジルは眉をひそめた。

「確かにしきりに会いたがっていたとはヨヨに聞いていたが……。そんなふうに思っていたのか。私は……足が治った途端、お前が陸に帰りたがるから腹を立てていた。私のほうこそ用なしにされると思ったのだ」
「用なしだなんて……それは私のほうなのに」
「陸に戻れば『魔力に反応しない人間』を私に見つけてくると言われて頭に血が上ってしまった。だから「陸に戻してくれ」と頼まれるのが嫌で避けていたのだ」

「そ、それは……セイジルほど素晴らしい人に私は見合っていないから……」
「そんなことを気にしていたのか……。ヨヨが言っていた通りだ。カミルはなんと奥ゆかしい……しかし、自分を卑下してはならん。私がカミルを選んだのだ」
「え……選んだ?」
「カミルはただ私に愛されていればいい」
 ヨ、ヨヨはいったいセイジルになにを言ったのだ……なにか勘違いしてないか?
 ……しかしそんなことより尻の穴がじわじわと刺激を求めている。
 動かないなんて……生殺し……。
 早く会話を終わらせて、動いてほしい……。
 
「では、カミルは私から逃げたのではなく……身を引いたのか」
 身を引いた……というよりは『逃げた』んだけど……。
 でも、ようやくセイジルの機嫌がよくなってきたのに、言わない方がいい。
「私はただ陸に戻って、家族に無事だったと伝えたかったのです」
「では、伝えたら戻るつもりだったと?」
 いえ、戻るつもりはあんまり……。
 だめだ、正直に答えたら。
 言い方……、言い方は間違えないようにしないと。

 ああ……激しく突いてほしい。
 言えないけれど。

「戻りたくとも戻れません……セイジルと会えなくなって、うろこを貰えなくなったらと思うと怖くて……」
「そうか……そんなつもりはなかったが、追い詰めてしまっていたのだな。確かに私が会うことを避けて、ヨヨにうろこを渡すだけになっていたからな……寂しくて不安だったのか……」
 セイジルは美しい指で俺の涙をぬぐうとまたキスをしてきた。
 いつの間にか生理的に涙が出てたよ。
 くう……やっぱりセイジルのキスは気持ちがいい。

 て、いうかセイジルは俺を連れ戻すつもりで来たのか?
 陸に上がって来てまで?
 まさかな……。

「で、でも……セイジルには妃がいるんですよね? 俺なんかが……」
 やっと得られそうな快感。
 けれどあの生活に戻るつもりはない。なんとか予防線をはっておかないと、と妃の話を出しておく。後で様子を窺いながら身を引くとかなんとか言えば、セイジルの気が済むかもしれないからな。

「妃がいることも聞いたのか。……だとすると不安もさらに大きかったのだな。あれらは子を作るためにいるから安心していい」
 なにそれ、じゃあ、俺はなに要員よ? 
「いや、だから俺はなおさらセイジルの側には……」
「なるほど、カミルは私に妃がいると知って、心を痛めていたのか」
 ……なんか違う。だって、そっちは子どもをつくる立派なお妃じゃないか。
「俺はなにもできないお荷物で……」


「もう、いい。お前の気持ちはわかった。やはり……お前は可愛いな」
 言えば言うほど誤解を生んでいるような気がする。
 おかしい……。
 人魚の国に戻る話をどうにか回避しようと頭を巡らしていると、セイジルが指先で俺の乳首をクニクニと押した。
 優しい愛撫だ。
 これ……好き。
 このままじゃダメだって考えようとしても、セイジルの愛撫が始まると快感で頭がおかしくなっていく。
 焦らされて、焦らされて……。
 もう、受け答えを考える余裕なんてない。
 とにかく、動いてほしい。

「私が交わる相手はお前だけだ。……この小さな胸を痛めて苦しんだのだな、私の可愛いカミル」
 え、妃……いるんだよね?
 子ども……産んでもらうのに、俺だけだって、なに言ってるの?

「くっ」
 セイジルが舌で乳首を刺激する。
「ハア……ハア、ハア……」
 ああ、この舌使い……。

「お前が好きなところをたくさん突いてやろうな」
 そうしてセイジルは俺の最高に感じる場所を肉棒で擦る。
 やっと、やっと、与えられる……硬くて、太くて、熱い……。
「あああうっ」
 ズドン、と突かれて体が揺れる。
 俺は、これを、求めてたんだ!
 ぬめぬめして、少し冷たくて、気持ちいい舌で時々乳首を弄ばれて……ガツガツと体の中を突かれまくる。
 快感が高まってきた時に体を反転させられて、今度はバックから激しく突かれた。
「カミル……ああ、カミル」
「いいっ、気持ちいいっ……ハア、ハア……ん、んーっ」
 心得たように堅くなった息子がセイジルに握られ、俺の欲しかった速度で擦りあげられる。

 体の中も、外も。
 こんなにいっぺんに刺激されたら……俺!

「セイジルッ! ああっ!」

 一気に放出される俺の精液……。
 久しぶりの射精……。
 俺史上、一番出たかもしれない。

 俺……不能じゃなかった……。

「さあ……では仲直りしなくてはな」
 ハアハアと息を整えながらぼんやり見上げると、獰猛な目をしたセイジルが俺を見て舌なめずりをしていた。
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