待て、妊活より婚活が先だ!

檸なっつ

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「なんかシオンの想い人は誰だって、いろんな人に聞かれたんだけど」
「放っておけ」
 部屋に戻ってくつろいだ格好になったシオンにお祝いでもらったお酒を出すとぶっきらぼうに言われた。
 第八部隊は奇人変人の集まりだから、基本他人のことには興味がない人たちばかり。
 だから部隊の人間にシオンの言動について聞かれることはなかったが、パーティ帰りに顔見知りや知り合いが俺にしつこく聞いてきた。

 シオンってばちゃんとレミレル様にフォロー入れたのかな……。

 俺のことをジッと眺めるシオン。
 シオンの想い人はレミレル様だって知っているけれど、黙っている俺は偉い子だ。
 だから探るような目で見られても胸を張っていられる。
 オレハシャベッテイナイ。

 ホットはちみつティーの入ったカップをもってシオンの隣に座った。
 バディは共同生活をするので、俺たちは個人の部屋で寝る以外ではたいてい共有スペースでまったりと過ごしていた。

 ここに置かれた若草色のソファは俺が一目ぼれしたものを誕生日にシオンがサプライズで買ってくれた。
 部屋に帰ったら設置してあるんだぞ。ほんと感動したよね。
 ソファのクッションがふかふかすぎて隣に座ると体が沈んでシオンに密着しちゃうのが難点だけど、くっついてもシオンはなにも言わないから俺も気にしていない。

 家事は当番制でうまくやっている。料理は俺の方が得意なのでその分シオンは後片づけを引き受けている。なんだかんだいっても俺たちは相性がいいようだ。

「まあでも……これでシオンは堂々と好きな人と結婚できるね」
 なににせよ、王のお墨付きをもらうのだ。貴族だって平民だって関係ない。
 それなりの功績で妻にもらうのだから、誰も文句はいわないだろう。
「まあ……そうだな」
 ぶっきらぼうに答えたシオンだが、やっぱりちょっと嬉しいのか口もとが緩んでいた。
「で、いつ結婚するの?」
 俺がそう切り出すとシオンは視線を外した。
「相手さえいいならすぐでも」
「そんなの王様がなんとかしてくれるでしょ」
「え、でも指名されてするものじゃないだろ」
「指名? そんなのシオンが好きなら問題ないよね」
「そうなのか?」
「シオンに結婚を申し込まれて断る人なんていないよ」
 俺が言うとシオンは黙った。
 たくさん恋文をもらっているって聞いているし、プロポーズしたらレミレル様が断るって思っているのか?
 二人のことだから俺が口出すことじゃないけれど……。

「タオは……結婚したいって思うか?」
「俺? うーん。俺はまだ十九歳だし。自分が稼げるようにならないと嫁さんなんてもらえないよ」
「……十九か。月日は早いな」
「あー。シオンと出会ってから五年になるからね」
「初めは理屈ばっかり言う変な奴だと思っていたな」
「今も思ってるくせに」
「はは……」
 シオンが笑う。彼が笑うと男の俺が見てもちょっとかわいい。たまには外で笑ってやれば『眼光が怖い』なんて敬遠されることもないだろうに。
「んー……でもいつかは俺のことが好きでたまらないって子を見つけて結婚したいな」
 俺の理想はそんな相手がいい。両親がそうだったからお互いに大好きだって思える相手と一緒になりたい。そう思って言ったのだけれど、シオンが目をむいて俺を見ていた。
「なに、そんなに不思議?」
「いや……顔とか、性格とか好みはないのか? 俺にいろいろと聞いてくるから細かくあるかと思ったのに」
「そういうのも大事かもしれないけど、俺って恋の駆け引きとか興味ないから、めっちゃ俺のことが好きな子がいいんだよね……そんで俺もその子を大切にするんだ。浮気とか無理だし」
 俺のささやかな希望を聞いてシオンは考え込んだ。
 自分と照らし合わせているのかな。俺の考えなんてどーでもいいだろうに。

「タオは世界一タオのことが好きな人間がいたら、結婚してもいいって思うのか?」
「え……まあ相性もあると思うけど」
「じゃあ、相性が良くてどうしようもなくタオが好きだったらいいのか?」
 シオンの迫力に押されて口ごもる。
「そりゃ俺のことが好きで相性良ければいいだろうけどさ。なんなんだよ、今はシオンの話だろ。自分のことをちゃんと考えなよ」
「ああ。そうすることにする。タオ、俺来週からしばらく休みをもらって南の森に行って魔獣を狩ってくる」
「え?」
「どうしても必要なものがあるんだ」
「ふ、ふうん?」
 決心したようにシオンはそう言って俺が知る限り初めて休みをもらっていた。

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