9 / 94
April
王道転入生はアンチマリモでした①
しおりを挟む
教室前側のドアから入ってきたのは、我が2-Aが誇るキラキラホスト系担任教師、東弘明先生。担当教科は数学。
すらっとした背丈に甘いマスク。人当たりが良い系のホスト教師である先生は、生徒からの人気も高く、信頼も厚い。
そう、そうだ。まるで自分を指名してくれたお客様をおもてなしするかのような優しい系ホストだったから、俺は油断してしまったんだきっと。
これが薄い本でよく見るツンツンホストなら、王道かどうかを見誤ることなんて……。
少し恨みがましく思いながら、東先生のカッコいいお顔を眺める。
……いやぁ、本当にイケメンだよなぁ。
学園出身だって言ってたし、昔の抱かれたいランキングを遡れば名前があるんじゃなかろうか。もしかしたら、抱きたいランキングにも。
頬杖をつきながら、そんなどうでも良いことを考えていると、遂に時が来てしまった。
「今日はこのクラスに転入してきた仲間を紹介するよ。入っておいで、朔くん」
東先生、転入生って本当にこのクラスなんですね……。
陽希の情報がガセなことを祈っていたのに。遂に陽希が間違ったネタを持ってきたのではと思っていたのに。いや、そう思いたかったのに。
ってか、マジで陽希はどこから情報を得てるんだ?
まさか、クラスメート以上の繋がりが生徒会にあったりするのだろうか?
え、それはアツいぞ。むしろぜひそうであって欲しい。後で陽希を問い詰めてみよう。
それはさておき、やっぱりこれまで予習してきた物語の中の担任教師とはちょっと違うよな。優しい系ホスト教師の話なんて、俺は読んだことない。
そして、名前呼びイベントは不発か。
下の名前でくん付けは、東先生のいつも通りの呼び方だからな。
そんな先生の呼び掛けに応じて、閉まっていた扉を豪快に開け放って入ってきたのは、さっき写真で見た王道転入生こと〈マリモ〉。正真正銘、黒いマリモ。
瓶底メガネと前髪で、表情はほぼ見えない。
唯一見える口元だけが、楽しそうに弧を描いている。なんだか異様な雰囲気を醸し出している。
マリモは、先生が名前を書いてくれたホワイトボードの前に立って、一生懸命自己紹介を始めた。
それはそれはもう、ザ・王道の自己紹介テンプレで。
「新垣朔だ……じゃない、です! よろしくな! あ。よろしく、です!」
マリモもとい、新垣朔くんの大きな自己紹介が、とんでもなく静かな教室内に響き渡る。
それと同時に、俺は窓の外に視線を向ける。
今ので確信した。
この転入生はアンチだ。
本の中では基本的に、学園を荒し回る悪役のように描かれている、あのアンチ王道転入生だ。
アンチ王道転入生の必須スキルと言えば、人類みな友達理論。目線が合えば、年齢役職関係なくもうみんな友達だよ、というスキルだ。
そこまでの慈悲深い心は持ち合わせてない系女神なので、俺はその理論に組み込まれないようできる限り目を合わせないように努める。
関わってしまったら俺の学園生活が崩壊してしまうかもしれない。
前の席の蓮は完全に机に突っ伏している。
こりゃ寝る気だな。まったく、蓮らしい。
「なあ先生! オレはどこに座ったら良いんだっ!?」
さっき頑張ってた敬語はどこにやったんですか?
ほんと詰めが甘いな……。まさに王道ではあるんだけども。
マリモの声は、男にしては少し高い。そのためか、とてもよく通る。
その事実は、変装の下は超絶美人説を裏付けている。
学園のためにも、俺たち腐男子の萌えのためにも、できる限り早急に変装を解いていただきたいものだ。なんてったって、その王道マリモ姿、実際に見ると全く萌えないんだよ……。
それにしても、東先生のことを普通に先生と呼んでいるあたり、やはり名前呼びイベントは失敗。東先生は落ちなかったようだ。残念無念。
まぁ、東先生が1人の生徒を贔屓するなんてこと考えられないけど。
我らが担任の東先生は、本当に誰にでも分け隔てなく優しい人だからな。まさにホストの鑑。
席を聞かれた東先生は、うーんと教室内に視線を巡らす。
去年度よりもクラスの人数が少ないため、王道の特等席以外にも席はいくつか空いている。
その理由は主に退学や転校。クラス替えは無いが、ごくごく稀にクラス落ちすることもあるらしい。蓮みたいに。怖い。
東先生の目が、廊下側の最後尾の席に注がれる。
お。これはもしかすると、巻き込まれ回避出来るかもしれないのでは。
「じゃあ、廊下側の一番うし──」
「先生。俺の隣ではどうでしょうか?」
「ん? あぁ、ありがとう、颯くん。キミになら任せられるよ」
自ら手を挙げてマリモの世話を買って出た生徒に、先生がにこりと微笑む。それだけで、うっとりとした視線を送るクラスメートのチワワくんたち。
これ自体はいつも通りの光景だ。もはや微笑ましくも感じられるのだが、今はそれどころじゃない。
嘘だろ、恨むぞ里中颯くん。
名前の通り、キミが爽やかでスポーツマンで、東先生のように誰にでも優しく気さくな優等生だということは、1年連れ添った俺たちクラスメートが保証する。
だからといって、災いの種を近くに呼ぶ必要はないだろう?
先生は廊下側に連れて行こうとしていたのに、なんでわざわざ近くに呼ぶんだよ!
まぁ、いかにもノーマルっぽい里中くんは、そんなBLテンプレ展開なんて知らないだろうけどさ……。
すらっとした背丈に甘いマスク。人当たりが良い系のホスト教師である先生は、生徒からの人気も高く、信頼も厚い。
そう、そうだ。まるで自分を指名してくれたお客様をおもてなしするかのような優しい系ホストだったから、俺は油断してしまったんだきっと。
これが薄い本でよく見るツンツンホストなら、王道かどうかを見誤ることなんて……。
少し恨みがましく思いながら、東先生のカッコいいお顔を眺める。
……いやぁ、本当にイケメンだよなぁ。
学園出身だって言ってたし、昔の抱かれたいランキングを遡れば名前があるんじゃなかろうか。もしかしたら、抱きたいランキングにも。
頬杖をつきながら、そんなどうでも良いことを考えていると、遂に時が来てしまった。
「今日はこのクラスに転入してきた仲間を紹介するよ。入っておいで、朔くん」
東先生、転入生って本当にこのクラスなんですね……。
陽希の情報がガセなことを祈っていたのに。遂に陽希が間違ったネタを持ってきたのではと思っていたのに。いや、そう思いたかったのに。
ってか、マジで陽希はどこから情報を得てるんだ?
まさか、クラスメート以上の繋がりが生徒会にあったりするのだろうか?
え、それはアツいぞ。むしろぜひそうであって欲しい。後で陽希を問い詰めてみよう。
それはさておき、やっぱりこれまで予習してきた物語の中の担任教師とはちょっと違うよな。優しい系ホスト教師の話なんて、俺は読んだことない。
そして、名前呼びイベントは不発か。
下の名前でくん付けは、東先生のいつも通りの呼び方だからな。
そんな先生の呼び掛けに応じて、閉まっていた扉を豪快に開け放って入ってきたのは、さっき写真で見た王道転入生こと〈マリモ〉。正真正銘、黒いマリモ。
瓶底メガネと前髪で、表情はほぼ見えない。
唯一見える口元だけが、楽しそうに弧を描いている。なんだか異様な雰囲気を醸し出している。
マリモは、先生が名前を書いてくれたホワイトボードの前に立って、一生懸命自己紹介を始めた。
それはそれはもう、ザ・王道の自己紹介テンプレで。
「新垣朔だ……じゃない、です! よろしくな! あ。よろしく、です!」
マリモもとい、新垣朔くんの大きな自己紹介が、とんでもなく静かな教室内に響き渡る。
それと同時に、俺は窓の外に視線を向ける。
今ので確信した。
この転入生はアンチだ。
本の中では基本的に、学園を荒し回る悪役のように描かれている、あのアンチ王道転入生だ。
アンチ王道転入生の必須スキルと言えば、人類みな友達理論。目線が合えば、年齢役職関係なくもうみんな友達だよ、というスキルだ。
そこまでの慈悲深い心は持ち合わせてない系女神なので、俺はその理論に組み込まれないようできる限り目を合わせないように努める。
関わってしまったら俺の学園生活が崩壊してしまうかもしれない。
前の席の蓮は完全に机に突っ伏している。
こりゃ寝る気だな。まったく、蓮らしい。
「なあ先生! オレはどこに座ったら良いんだっ!?」
さっき頑張ってた敬語はどこにやったんですか?
ほんと詰めが甘いな……。まさに王道ではあるんだけども。
マリモの声は、男にしては少し高い。そのためか、とてもよく通る。
その事実は、変装の下は超絶美人説を裏付けている。
学園のためにも、俺たち腐男子の萌えのためにも、できる限り早急に変装を解いていただきたいものだ。なんてったって、その王道マリモ姿、実際に見ると全く萌えないんだよ……。
それにしても、東先生のことを普通に先生と呼んでいるあたり、やはり名前呼びイベントは失敗。東先生は落ちなかったようだ。残念無念。
まぁ、東先生が1人の生徒を贔屓するなんてこと考えられないけど。
我らが担任の東先生は、本当に誰にでも分け隔てなく優しい人だからな。まさにホストの鑑。
席を聞かれた東先生は、うーんと教室内に視線を巡らす。
去年度よりもクラスの人数が少ないため、王道の特等席以外にも席はいくつか空いている。
その理由は主に退学や転校。クラス替えは無いが、ごくごく稀にクラス落ちすることもあるらしい。蓮みたいに。怖い。
東先生の目が、廊下側の最後尾の席に注がれる。
お。これはもしかすると、巻き込まれ回避出来るかもしれないのでは。
「じゃあ、廊下側の一番うし──」
「先生。俺の隣ではどうでしょうか?」
「ん? あぁ、ありがとう、颯くん。キミになら任せられるよ」
自ら手を挙げてマリモの世話を買って出た生徒に、先生がにこりと微笑む。それだけで、うっとりとした視線を送るクラスメートのチワワくんたち。
これ自体はいつも通りの光景だ。もはや微笑ましくも感じられるのだが、今はそれどころじゃない。
嘘だろ、恨むぞ里中颯くん。
名前の通り、キミが爽やかでスポーツマンで、東先生のように誰にでも優しく気さくな優等生だということは、1年連れ添った俺たちクラスメートが保証する。
だからといって、災いの種を近くに呼ぶ必要はないだろう?
先生は廊下側に連れて行こうとしていたのに、なんでわざわざ近くに呼ぶんだよ!
まぁ、いかにもノーマルっぽい里中くんは、そんなBLテンプレ展開なんて知らないだろうけどさ……。
52
あなたにおすすめの小説
どうしてそうなるんだよ!!!
藤沢茉莉
BL
俺様な会長、腹黒な副会長、無口な書記、双子の庶務……不本意ながら生徒会役員に選ばれてしまった見た目不良なお人好し主人公が、個性的なメンバーに囲まれながら頑張る話。
多忙のため少々お休み中。
誤字脱字ほか、気になる箇所があれば随時修正していきます。
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる