腐男子な俺が全寮制男子校で女神様と呼ばれている件について

茅ヶ崎杏

文字の大きさ
11 / 94
April

人は見かけによらぬもの①

しおりを挟む
 教室を出た俺たちは、クラスメートに宣言した保健室ではなく、校舎の屋上へ向かった。

 ここはTSPを翳して開ける寮などと違い、差し込むタイプのリアルな鍵で施錠されている。鍵は職員室で保管されているはずなのだが、なぜか蓮と一緒なら入れてしまう隠れスポットだ。
 なぜ鍵を持ってるのか、なんていう問いはもうしない。気にしたら負けだ。
 この学園には、まだまだ高等部からの外部生である俺には分からないことが数多くある。
 暗黙のルールもたくさん。もう覚え切れる気がしない。分からないことは流されてしまうに限る。じゃないと頭がパンクする。

 屋上のドアを開けると、何とそこには先客がいた。
 こちらを見据えていた少年は、入ってきたのが俺たちだと確認すると、鋭くしていた視線を和らげる。
 柵に預けていた体をこちらに向けて、にこりと微笑みかけてくれる。可愛い。


「蒼葉くんに城ヶ崎くん、おはよ~。またサボり?」
「おはようナギ。うん、サボり。ナギは今日も可愛いね」
「もー、蒼葉くんったら。そんなんサラッとゆっちゃうから、《女神様》なんて言われるんやで?」
「どこがどうつながるのか理解不能だけど、ナギが可愛いのは事実だから仕方ないよな」


 彼は中邨なかむら夕凪ゆうなぎ。俺は〈ナギ〉と呼んでいる。
 陽希とは従兄弟いとこらしく、陽希より可愛らしい感じの関西弁で話す男の娘。2-Dのクラス委員長で、抱きたいランキングは10位だ。

 Sクラスが家柄・容姿・成績が完璧のエリートクラスなのに対し、Dクラスはその反対。
 成績がすこぶる悪い生徒や、生活態度が悪すぎる生徒など、いわゆる問題児を集めたクラスだ。
 そもそも何らかの問題がないとここまで落ちないので、クラスの人数は15人と、他と比べても圧倒的に少ない。
 ちなみに蓮がここにならないのは、家柄がかなり良いのと、校内で喧嘩などの他者との問題行動はほとんど起こさないかららしい。つまり、サボったり服装を着崩していたり程度なので、許されているということだ。
 まぁ実際のところは多分、自分から喧嘩を売るのが面倒なだけなんだろうけど。

 そんな底辺のクラスに、こんなに可愛らしいナギが在籍しているだけでも驚きなのに、クラス委員長を務めている理由。
 それは、ナギの家が“ヤ”のつく家だからに他ならない。

 彼は全国で名の知られている、中邨組の跡取り息子なのだ。
 そのため、ありとあらゆる武術を嗜んでおり、可愛い顔に反してものすごく強い。

 ナギは、その家柄と可愛らしい容姿をバックに、実力と天性のカリスマ性で、バラバラで問題児だらけのDクラスを綺麗に纏めあげた。
 その名声は学年を超えて広がっており、どの学年のDクラスでもナギの一声で統率出来るらしい。マジですごいよな。

 実力まで兼ね備えているからなのか、普通なら自分より弱い人間には欠片も興味を示さない蓮も、ナギとはそれなりに話す。とはいえ、蓮の人見知りは度が過ぎるけど。

 俺たちがナギの近くに着くと、ナギはもたれかかっていた柵から体を離し、ぐっと大きく伸びをする。


「んーっ! ふぅ。さてと。僕はそろそろ教室戻ろかな」
「えー、戻るのか?」


 新学年が始まって、2週間と少し。お互い忙しくて、あまり会えていなかった。
 ちょっとはお喋りとかできるかなと思っていたのに。

 ナギはTSPを確認して、こくんと頷く。


「うん。もとより僕は、ちょっと電話したかっただけやしね」
「……それでここまできたのか?」
「そうやよ~。教室の近くで電話したらあいつらうるさいんよね」
「あー、Dクラスってナギ信者が多いもんなぁ」


 少し困ったように微笑むナギは、学年を問わずDクラスの面々にとても愛されている。
 そういえば今ここにはナギ1人だが、普段は必ず誰かといるイメージだ。特に校舎にいる間は強面の人を引き連れていることが多い。
 そうなると、誰かと電話するといっても、なかなか1人になれないのかもしれない。なるほどそれは少し面倒かも。
 遠巻きにじっと見つめられ続けるのと、どちらがいいだろう。いい勝負だったり。


「そんなことゆうて、Aクラスの《女神様》信仰も十分すごいと」
「もう、ナギまでマジでその呼び方やめてくれ……」
「あはは、ごめんね」


 楽しそうにころころと笑うナギ。
 《女神様》呼び。
 悪口ってわけじゃないんだけど。からかうように友人に言われるのは、何だかなぁ。
 本来なら、是非ともやめて欲しいところだし。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

どうしてそうなるんだよ!!!

藤沢茉莉
BL
俺様な会長、腹黒な副会長、無口な書記、双子の庶務……不本意ながら生徒会役員に選ばれてしまった見た目不良なお人好し主人公が、個性的なメンバーに囲まれながら頑張る話。 多忙のため少々お休み中。 誤字脱字ほか、気になる箇所があれば随時修正していきます。

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...