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April
混沌の中の王子様②
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しばらくすると、正面に座っている陽希がふっと笑った気配を感じた。
不思議に思ってそちらを見ると、そこにはさっきまでの下品な顔とはまるで違う、品性溢れるイケメンが。
あ、嫌な予感。
「ほんまに、慈しみに溢れた女神様みたいなことゆうやん」
「……えっ? うわ!?」
「安心しぃ。《女神様》」
「あのな。こんな時に冗談は──」
「そんな簡単に、学園は潰れへんよ」
身を乗り出してきた陽希の大きな手が頭に乗る。
目の前の陽希は、とんでもなく優しい表情で微笑んでいる。
きた。陽希の王子モード。
時々、そして突然発動するこの王子モード。
本人は無自覚らしいのがタチが悪かったりする。
陽希は俺の頭を優しく撫でながら、甘く微笑む。
さすがの俺も少し恥ずかしいぞ。
なんせ、このモードの陽希は色気ダダ漏れだから、人目を引くんだ。
「ちょっと、陽希……」
「ん?」
優しく目を細め、真っ直ぐに俺を見ながら首を傾げる。
「ん?」じゃない。なにその甘い顔。
恥ずい。くっそ恥ずい。
特に2階席から注目されてるからやめろください。
これなら、かなりうるさいけど腐男子モードでいてくれた方が楽なんですけど!
やめろという念を込めて、思いっきり睨んでやる。
しかし、王子モード全開の陽希には1ミクロンのダメージも与えられない。
それどころか、頭を撫でていた手がなぞるように徐々に降りてきて、頬に添えられる。
「そんな睨まんと。可愛い顔が台無しやで、蒼葉」
「……なにを……っ!!」
艶っぽい声色で名前を呼ばれて、ビクッとする。
こいつ、マジでわざとじゃないのか!
顔が熱くなっていくのがわかる。
本当に、無自覚ってタチが悪すぎる。
自分ではどうにもできないことを悟った俺は、助けを求めてナギを見る。
どうやら親衛隊メンバーとのやりとりに夢中で気付いていない様子。
「ナギ。助けてくれ、ナギ」
「……へ? あ。らら」
情けない声でナギを呼ぶと、状況を理解したナギが困ったように笑う。
「こら陽希ぃ! 離れなさい~! 蒼葉くんが困ってるやろ~!?」
小気味いい音を鳴らしながら陽希の頭を叩くナギ。
それを機にやっと我に返ったらしい陽希は、さっきまでの紳士然とした態度とは打って変わり、ぽけっとした顔で、意味がわからないと言いたげに小首を傾げる。
「えっ? 蒼葉、どうしたん? 何に困ってるんや?」
「お前のせいだよ!」
「俺??」
目を瞬かせて、さらに頭を傾ける。
自分のせいと言われてもピンとこない様子。
今、陽希の頭の中にはたくさんのハテナマークが飛び交っているのだろう。
何だかため息が出る。
いやまぁ確かに、悪いことしてるわけじゃないんだけども。
初めの頃は、二重人格なのかと疑ったこともあったな。そのくらいの変わりようだ。
「……どうゆうことや? 俺はただ、リアルに女神みたいなことゆう可愛い蒼葉を安心させたかっただけやで?」
「またさらっとそんなこと言う……」
「え? なんかあかんことゆうた!? ごめん!」
「この天然たらしが……」
天然の人たらしは、もうどうしようもない。
これをナギとか桜花とかにしてくれたら俺は萌えるのに、してるところを見たことがない。
腐れ縁すぎるからそもそも王子モードが発動しないのか、たとえ発動してもナギたちが軽く躱しているのか。
とはいえ、ナギと桜花以外の俺を含む相手には、発動する可能性があると、個人的には思っている。
去年、親衛隊のチワワちゃんにしてるところを何度か見たし。
ぜひそれを今後も俺以外にしてもらって、俺に萌えとネタをたくさん提供してください!
そこまで考えて、ふと気がついた。
さっきまであった食堂イベント後の学園への不安や生徒たちへの罪悪感が、少し紛れてるかもしれない。
「さて。食堂イベも終わったし、昼休みもあとちょっとやし、そろそろ帰ろか~」
ビデオカメラをきちんと片した陽希は、にかっと笑いながら立ち上がる。
もういつも通り、ハイテンション腐男子だ。
本当に調子が狂う。
わざとならやめろって言えるのに、そうじゃないから……。
でもまぁ、言うことは言っておかなければ。
「陽希」
「んー?」
「ありがとな。ちょっと気は紛れたみたいだ」
陽希と視線をちゃんと合わせて告げる。
なんか気恥ずかしくて、最後まで言い終える前に視線を伏せてしまったけど、まぁ許容範囲ないだろう。
お礼の言葉は、その時じゃないと言えなくなっちまうからな。
そんなふうに思っていたのだが。
「は、はにかむ蒼葉とか超激レアやん!! か、カメラ! あああ蒼葉、なんで無表情やねん! 写真撮るからもう1回して!」
「……もうやらね」
「何でや! そんなケチなこと言わんとさああ!! ほらほら蒼葉!! いつでもええで!!」
「ナギ。陽希ってやっぱどこか1本ネジぶっ飛んでるんじゃね?」
「1本どころか数本なくなってると思うよ」
「あ、ちょっと2人とも! ほって行かんといてぇや!!」
不思議に思ってそちらを見ると、そこにはさっきまでの下品な顔とはまるで違う、品性溢れるイケメンが。
あ、嫌な予感。
「ほんまに、慈しみに溢れた女神様みたいなことゆうやん」
「……えっ? うわ!?」
「安心しぃ。《女神様》」
「あのな。こんな時に冗談は──」
「そんな簡単に、学園は潰れへんよ」
身を乗り出してきた陽希の大きな手が頭に乗る。
目の前の陽希は、とんでもなく優しい表情で微笑んでいる。
きた。陽希の王子モード。
時々、そして突然発動するこの王子モード。
本人は無自覚らしいのがタチが悪かったりする。
陽希は俺の頭を優しく撫でながら、甘く微笑む。
さすがの俺も少し恥ずかしいぞ。
なんせ、このモードの陽希は色気ダダ漏れだから、人目を引くんだ。
「ちょっと、陽希……」
「ん?」
優しく目を細め、真っ直ぐに俺を見ながら首を傾げる。
「ん?」じゃない。なにその甘い顔。
恥ずい。くっそ恥ずい。
特に2階席から注目されてるからやめろください。
これなら、かなりうるさいけど腐男子モードでいてくれた方が楽なんですけど!
やめろという念を込めて、思いっきり睨んでやる。
しかし、王子モード全開の陽希には1ミクロンのダメージも与えられない。
それどころか、頭を撫でていた手がなぞるように徐々に降りてきて、頬に添えられる。
「そんな睨まんと。可愛い顔が台無しやで、蒼葉」
「……なにを……っ!!」
艶っぽい声色で名前を呼ばれて、ビクッとする。
こいつ、マジでわざとじゃないのか!
顔が熱くなっていくのがわかる。
本当に、無自覚ってタチが悪すぎる。
自分ではどうにもできないことを悟った俺は、助けを求めてナギを見る。
どうやら親衛隊メンバーとのやりとりに夢中で気付いていない様子。
「ナギ。助けてくれ、ナギ」
「……へ? あ。らら」
情けない声でナギを呼ぶと、状況を理解したナギが困ったように笑う。
「こら陽希ぃ! 離れなさい~! 蒼葉くんが困ってるやろ~!?」
小気味いい音を鳴らしながら陽希の頭を叩くナギ。
それを機にやっと我に返ったらしい陽希は、さっきまでの紳士然とした態度とは打って変わり、ぽけっとした顔で、意味がわからないと言いたげに小首を傾げる。
「えっ? 蒼葉、どうしたん? 何に困ってるんや?」
「お前のせいだよ!」
「俺??」
目を瞬かせて、さらに頭を傾ける。
自分のせいと言われてもピンとこない様子。
今、陽希の頭の中にはたくさんのハテナマークが飛び交っているのだろう。
何だかため息が出る。
いやまぁ確かに、悪いことしてるわけじゃないんだけども。
初めの頃は、二重人格なのかと疑ったこともあったな。そのくらいの変わりようだ。
「……どうゆうことや? 俺はただ、リアルに女神みたいなことゆう可愛い蒼葉を安心させたかっただけやで?」
「またさらっとそんなこと言う……」
「え? なんかあかんことゆうた!? ごめん!」
「この天然たらしが……」
天然の人たらしは、もうどうしようもない。
これをナギとか桜花とかにしてくれたら俺は萌えるのに、してるところを見たことがない。
腐れ縁すぎるからそもそも王子モードが発動しないのか、たとえ発動してもナギたちが軽く躱しているのか。
とはいえ、ナギと桜花以外の俺を含む相手には、発動する可能性があると、個人的には思っている。
去年、親衛隊のチワワちゃんにしてるところを何度か見たし。
ぜひそれを今後も俺以外にしてもらって、俺に萌えとネタをたくさん提供してください!
そこまで考えて、ふと気がついた。
さっきまであった食堂イベント後の学園への不安や生徒たちへの罪悪感が、少し紛れてるかもしれない。
「さて。食堂イベも終わったし、昼休みもあとちょっとやし、そろそろ帰ろか~」
ビデオカメラをきちんと片した陽希は、にかっと笑いながら立ち上がる。
もういつも通り、ハイテンション腐男子だ。
本当に調子が狂う。
わざとならやめろって言えるのに、そうじゃないから……。
でもまぁ、言うことは言っておかなければ。
「陽希」
「んー?」
「ありがとな。ちょっと気は紛れたみたいだ」
陽希と視線をちゃんと合わせて告げる。
なんか気恥ずかしくて、最後まで言い終える前に視線を伏せてしまったけど、まぁ許容範囲ないだろう。
お礼の言葉は、その時じゃないと言えなくなっちまうからな。
そんなふうに思っていたのだが。
「は、はにかむ蒼葉とか超激レアやん!! か、カメラ! あああ蒼葉、なんで無表情やねん! 写真撮るからもう1回して!」
「……もうやらね」
「何でや! そんなケチなこと言わんとさああ!! ほらほら蒼葉!! いつでもええで!!」
「ナギ。陽希ってやっぱどこか1本ネジぶっ飛んでるんじゃね?」
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「あ、ちょっと2人とも! ほって行かんといてぇや!!」
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