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April
混沌の中の王子様①
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そこはもう、今まで見た中でもダントツで混沌な状態だった。
大半が、泣き喚く声や許せないと怒り狂う声。
それは、1階席だけではなく、2階席からも聞こえてくる。
「やべぇな」
「ほんまによ。陽希に聞いて、親衛隊がざわつきそうやって思ったから着いてきたけど、思った以上にヤバいやつやん。どうしよ」
ナギは、学園にある全ての親衛隊をまとめあげる幹部団の総隊長。つまり、全親衛隊のトップだ。
彼が上についてから、制裁や過激派の動きはきちんと統率されていた。
だが、今の状況ではこれまで通りにはいかないだろう。
それがわかっているナギは、少しイラついたようにスマホを弄っている。
チラッと見えた内容から、それぞれの親衛隊長に指示をしているようだ。
ちなみにナギが親衛隊の総隊長であることはトップシークレットである。
陽希はというと、驚くほどにのんびりと、撮影していたビデオカメラの映像を確認していた。
視線に気付いたのか、ふと顔を上げた陽希。
俺はなんとなく呼びかける。
「陽希」
「蒼葉はどう思う?」
「へ?」
どう思う、とは何を聞いているんだ?
食堂イベとして点数をつけるなら何点か、みたいな話だろうか?
だとしたら、ほぼ完璧だろう。
マリモが逃げてしまった以外は、テンプレ通りだ。
なんせ、生徒会は全員落ちたのだから。
「98点くらいか?」
「ん? 何の話や?」
あ、違ったらしい。
だったら何の話しをしているのか。
俺は頬杖をつき、尋ねる。
「じゃあ、なにが“どう思う”なんだ? 食堂イベについては、俺はほぼ完璧だと思ったけど」
「あ、今の点数って食堂イベの完成度みたいなことか。えー、でもほんまにそうか? 俺は、非王道やなぁと思ったで」
「まぁ、マリモが走り去って行ったのは非王道的展開だけど、それ以外は──」
「ちゃうちゃう。全部や」
一体陽希は何が言いたい?
言いたいことがわからず、口をつぐんだ俺。
陽希は手を前で手を組んで顎に当てる。
そして、おもむろに俺に視線を向けた。
なんだそのかっこいい表情は。くそ、イケメンめ。
「季節外れの転入生。めちゃめちゃむずい編入試験を満点でパスした、理事長が溺愛してる甥。そんなハイスペックなやつが、あんなオタルックのもさもさ野郎やっただけでも十分興味は唆るやろ? ほんで話してみたら、今まで自分らの周りにはまずおらんタイプの人間やった。タメ口やし、呼び捨てやし、いちいち全力やし、自分の意見押し付けてくるし。そんな王道くんに、生徒会は興味持った。ただそれだけや。つまり、恋愛的には全く落ちてない」
陽希の大演説を聞いて、なるほどと納得はした。
ただ1点を除いては。
「恋愛的に落ちてないって、何で言い切れるんだよ?」
「だって、これ見てや」
再生された、食堂イベントの一部始終。
動画を見ながら、陽希は言う。
「誰も王道くんのこと“好きや”とはゆうてないやろ? 会長のチューにも深い意味なんかないやろな。あの人は歩くR指定、手ぇが早いことで有名なわけやし。ほんで蒼葉のゆう通り、王道くんは本気で嫌がって去っていった」
確かに、面白いとか気に入ったとは言っているが、好きだとは一言も言ってない。
だが、言ってないだけってことも大いにある。人目のあるところだったし。
混沌な1階を見やる。
出来事が出来事だけに、生徒たちはなかなか落ち着かない。
食事どころではなくなって、散らかし放題になってしまったテーブルを片付けるために、ウェイターさんも忙しく動き回っている。
ここでさえこの騒ぎ。
きっとすぐにでも学園中に広まって、さらなる大混乱に陥るはずだ。
それは、王道的展開に違いはない。
腐男子としては楽しみな気持ちももちろんある。
だが、なんだか罪悪感というか、不安感というか、そんな複雑なものに苛まれる。
静かに悩む俺に対して、陽希は晴れやかな笑顔を浮かべている。
「ほんまにおもろかったわ! ここまで待った甲斐があった!」
「……お前はいつも幸せそうだな」
「食堂イベの一部始終を見れたんやから、そら幸せやよ!」
「まぁ、気持ちはわかるんだけど。俺は、さすがに心配だな……」
学園の行く末もだけど、主にこの生徒たちが。
生徒会を崇め奉っている、この学園の生徒たちが。
大丈夫だろうか?
憎しみに埋もれたりしないだろうか?
じっと下を見下ろしながら、俺は柄にもなくそんなことを考えていた。
大半が、泣き喚く声や許せないと怒り狂う声。
それは、1階席だけではなく、2階席からも聞こえてくる。
「やべぇな」
「ほんまによ。陽希に聞いて、親衛隊がざわつきそうやって思ったから着いてきたけど、思った以上にヤバいやつやん。どうしよ」
ナギは、学園にある全ての親衛隊をまとめあげる幹部団の総隊長。つまり、全親衛隊のトップだ。
彼が上についてから、制裁や過激派の動きはきちんと統率されていた。
だが、今の状況ではこれまで通りにはいかないだろう。
それがわかっているナギは、少しイラついたようにスマホを弄っている。
チラッと見えた内容から、それぞれの親衛隊長に指示をしているようだ。
ちなみにナギが親衛隊の総隊長であることはトップシークレットである。
陽希はというと、驚くほどにのんびりと、撮影していたビデオカメラの映像を確認していた。
視線に気付いたのか、ふと顔を上げた陽希。
俺はなんとなく呼びかける。
「陽希」
「蒼葉はどう思う?」
「へ?」
どう思う、とは何を聞いているんだ?
食堂イベとして点数をつけるなら何点か、みたいな話だろうか?
だとしたら、ほぼ完璧だろう。
マリモが逃げてしまった以外は、テンプレ通りだ。
なんせ、生徒会は全員落ちたのだから。
「98点くらいか?」
「ん? 何の話や?」
あ、違ったらしい。
だったら何の話しをしているのか。
俺は頬杖をつき、尋ねる。
「じゃあ、なにが“どう思う”なんだ? 食堂イベについては、俺はほぼ完璧だと思ったけど」
「あ、今の点数って食堂イベの完成度みたいなことか。えー、でもほんまにそうか? 俺は、非王道やなぁと思ったで」
「まぁ、マリモが走り去って行ったのは非王道的展開だけど、それ以外は──」
「ちゃうちゃう。全部や」
一体陽希は何が言いたい?
言いたいことがわからず、口をつぐんだ俺。
陽希は手を前で手を組んで顎に当てる。
そして、おもむろに俺に視線を向けた。
なんだそのかっこいい表情は。くそ、イケメンめ。
「季節外れの転入生。めちゃめちゃむずい編入試験を満点でパスした、理事長が溺愛してる甥。そんなハイスペックなやつが、あんなオタルックのもさもさ野郎やっただけでも十分興味は唆るやろ? ほんで話してみたら、今まで自分らの周りにはまずおらんタイプの人間やった。タメ口やし、呼び捨てやし、いちいち全力やし、自分の意見押し付けてくるし。そんな王道くんに、生徒会は興味持った。ただそれだけや。つまり、恋愛的には全く落ちてない」
陽希の大演説を聞いて、なるほどと納得はした。
ただ1点を除いては。
「恋愛的に落ちてないって、何で言い切れるんだよ?」
「だって、これ見てや」
再生された、食堂イベントの一部始終。
動画を見ながら、陽希は言う。
「誰も王道くんのこと“好きや”とはゆうてないやろ? 会長のチューにも深い意味なんかないやろな。あの人は歩くR指定、手ぇが早いことで有名なわけやし。ほんで蒼葉のゆう通り、王道くんは本気で嫌がって去っていった」
確かに、面白いとか気に入ったとは言っているが、好きだとは一言も言ってない。
だが、言ってないだけってことも大いにある。人目のあるところだったし。
混沌な1階を見やる。
出来事が出来事だけに、生徒たちはなかなか落ち着かない。
食事どころではなくなって、散らかし放題になってしまったテーブルを片付けるために、ウェイターさんも忙しく動き回っている。
ここでさえこの騒ぎ。
きっとすぐにでも学園中に広まって、さらなる大混乱に陥るはずだ。
それは、王道的展開に違いはない。
腐男子としては楽しみな気持ちももちろんある。
だが、なんだか罪悪感というか、不安感というか、そんな複雑なものに苛まれる。
静かに悩む俺に対して、陽希は晴れやかな笑顔を浮かべている。
「ほんまにおもろかったわ! ここまで待った甲斐があった!」
「……お前はいつも幸せそうだな」
「食堂イベの一部始終を見れたんやから、そら幸せやよ!」
「まぁ、気持ちはわかるんだけど。俺は、さすがに心配だな……」
学園の行く末もだけど、主にこの生徒たちが。
生徒会を崇め奉っている、この学園の生徒たちが。
大丈夫だろうか?
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じっと下を見下ろしながら、俺は柄にもなくそんなことを考えていた。
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