腐男子な俺が全寮制男子校で女神様と呼ばれている件について

茅ヶ崎杏

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April

かわいい子には、裏がある②

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 隣を歩く蓮の雰囲気が一気に凍りつく。
 2-Aの教室から飛び出してきたマリモ。
 お昼の様子を一切感じさせないテンションで、蓮に話しかける。


「オレずっと心配してたんだぞ! 1日帰ってこなかったから、今から保健室に行こうかとも言ってたんだぜ!」
「……」


 フルシカトの蓮。
 金魚の糞のようにくっつくマリモを後ろに連れながら、蓮はまっすぐ自分の席に行き、自分のカバンだけを持って帰ってくる。

 え、蓮さん。なんでそこまで行ったのに俺のは持ってきてくれないんですか。
 イジメですか。嫌がらせですか。そうですか。

 こっちへ帰ってくる蓮をじとっと睨むと、俺はおもむろに、近くにいた小鳥遊たかなし里緒りおに声をかけた。


「なぁ、里緒」
「どうかした、藤咲くん?」
「悪いんだけど、俺のカバン取ってきてくんね?」
「えー。それは自分でやろうよ」


 里緒は俺を特別扱いしない、関わりやすいクラスメートの1人だ。今も心底嫌そうに俺を見てくる。
 ちなみに、風紀委員でもある。


「頼むよ。マリモ……じゃなかった。えーと、……何だったっけ」


 脳内でマリモって呼びすぎて、本名忘れた。
 あれ、何だった?


「新垣くんね」
「あ、そうそう、新垣朔くん」
「僕だって進んで関わりたくないんだけど。仕方ないなぁ」


 はぁ、とため息をつきながらも取りに行ってくれた里緒。
 なんだかんだ言いながらも取りに行ってくれちゃうんだから、ほんと優しい子です。ありがとう。


「はい」
「さんきゅー!」


 マリモに目をつけられることなく行って帰ってきた里緒。
 マリモは未だにフルシカトされているにもかかわらず、蓮に夢中で話しかけている。
 まぁ王道通りだとすれば、美形ホイホイであるマリモからすると、どちらかと言うと可愛い系である里緒は対象外なのかもしれない。

 そんなことを考えながら、差し出されたカバンを受け取ろうと手を伸ばした俺。
 しかしカバンはなぜか逃げていった。
 鳩豆顔で里緒を見る。
 瞳に映った里緒は、いつもの幼さを湛えた子犬みたいな顔ではなく、いたずらっ子のような笑みを浮かべていた。

 え、何それ。
 いつもとのギャップで萌えますですよ。
 まさかそれが狙いか!


「取ってきてあげたんだから、明日はちゃんと全部の授業に出ること。今日みたいに逃げちゃダメだからね」
「え」
「え。じゃないの。分かった?」


 俺は今カバンを人質に、明日の登校を強制されそうになっている。あの里緒に!
 これはもう、明日は寮から出ずに仮病でも使ってやろうと思ってた俺の脳内が読まれているとしか思えない。
 自分の保身のためにも、明日は来たくない。
 というか、しばらく来たくない。

 そんなふうに考えて頑なに口を噤んでいると、とんでもない人名が里緒の口から飛び出した。


「明日もし休んだら、雅楽代うたしろ先輩に連絡を──」
「絶対来ます!!」
「よろしい。言質とったからね」


 一瞬でした。
 いやだって、その人はダメだわ。
 その人に言ったら、マリモなんて目じゃないほどの状況に陥るじゃないか俺が。

 まさかこんなカタチで明日の登校を取り付けられるとは。
 人畜無害そうな顔して、マジで里緒こっわ。


「藤咲くん、今僕のこと怖いって思ったでしょ?」
「えっ!? エスパー!?」
「やっぱり。酷いなぁもう。僕なんて、副委員長の足元にも及ばないって言うのに」


 さっきのいたずらっ子とは違い、悪い顔でニヤリと笑った里緒に、背筋が震えた。
 副委員長とは間違いなく桜花ちゃんのことだろう。うちの風紀委員、可愛い顔して怖すぎ。腹の中真っ黒じゃんかもう。
 まぁ、その怖い部分はまだあまり見た事ないんだけども。

 無事に戻ってきたカバンを手に、里緒に聞こえるようにため息をついた。
 里緒はくすくすと笑っていた。
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