腐男子な俺が全寮制男子校で女神様と呼ばれている件について

茅ヶ崎杏

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April

《姫様》副会長の微笑み①

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 食堂を出た俺たちは、生徒たちの熱い視線に見送られながら、エレベーターへと乗り込んだ。
 学園には車椅子の生徒もいるため、とてもゆとりのある作りになっている。
 装飾も豪華。さすがは金持ち学園だ。

 本棟の5階でエレベーターを降りる。ここは専門教科の教室が並ぶ階だ。
 どうやらこの後の5限目に専門教科のあるクラスはないらしく、照明は付いていて明るいものの、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。


「みんな驚くかな~?」
「かな~?」
「みんな、蒼葉とは全く面識ないのか!?」
「「うん!」」
「…まぁ、俺は高等部からの外部生だしな」
「ボクたちも、ついこの間入学したばかりだからね
ー」
「ねー」


 双子が、顔を見合わせて楽しそうに笑う。
 確かに高等部に入学したての双子は、まだ1週間程度なわけだし関わりがないのは当然か。中等部も同じ食堂を使っているとはいえ、話す機会なんてないもんな。

 その後も軽く雑談をしながら歩いていく。
 S棟に繋がる渡り廊下を渡り終えたところで、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

 これで5限のサボりが決定。昨日のような自主的なサボりじゃないからか、若干気分は重たい。
 敷かれている高級そうな赤絨毯が、死刑台への道みたいに見える。赤ってのがまた不吉。

 気持ちを紛らわすために、きょろきょろと見渡してみる。
 やはり、さすが5階のS棟。S棟の他の階と比べても、飛び抜けて豪華な装飾だ。
 東洋の城みたいな彫刻の彫られた白い柱に、大きな窓。最上階だからか、天井は馬鹿みたいに高い。

 普通の一般的な学校のように、自分たちで掃除しないといけないとか言われたら、こんな場所掃除のしようがないよな。多分、この学園に通っているおぼっちゃまたちは、こんな庶民的な考えは欠片も思い浮かばないんだろうけど。家にも、お手伝いさんとかメイドさんとかが当たり前にいるんだろうし。


「「到着ーっ!!」」


 元気な双子の声で、現実に戻ってきた俺の目の前に、荘厳と聳え立つ分厚い豪華絢爛な扉。
 これは圧巻だわ。でもここまでの豪華さは果たして必要なのか…?


「やっと着いたー! やっぱり食堂からは遠いなー!!」
「「だよねー」」
「だから、あんまり行かないんだよね」
「うんうん」
「今度叔父さんに、もう少し近くに造るように言ってやるよ!!」
「「やったー!」」


 おぉ、突然の甥っ子属性きた。これを聞く限りは、やはり王道通り理事長は甥っ子溺愛してるのか。いいぞ、もっとやれ。
 扉の前で、そんな腐思考を繰り広げていると、突然ゆっくりと扉が開いた。


「何をそんなところで喋っているのですか? 中に入れば良いものを」


 現れたのは、生徒会副会長で学園の《姫様》である、姫川貴那。柔らかい微笑みを浮かべながら、扉を押し開け廊下に出てくる。
 その際に通り抜ける風に乗って、後ろで結われた長い黒髪がさらりと靡いた。


「おー! 貴那! ただいま!!」
「「ただいまー!」」
「おかえりなさい」


 細身の黒縁フレームの眼鏡の奥で、紫色の瞳が優しく細まる。
 へぇ。なんかイメージと違うな。
 もっとこう、冷酷……は言い過ぎかもしれないが、人に対して冷たいようなイメージだったんだけど。小説とかでも、生徒会副会長の属性って、さっき言ったみたいな“冷酷”だったり、“腹黒”だったりするのが王道なわけだし。
 でも今思い返してみると、生徒たちに対しても物腰は柔らかかったかもしれない。ナギからも、副会長の親衛隊員に対する態度が冷たいとかいう話を聞いたことは無い。
 ちなみに会長はかなりヤバいらしい。陽希や他の腐男子仲間の話を総合しても、疑いようのない王道俺様バ会長なのだ。

 軽く話した後、双子とマリモが副会長が開けている扉の隙間から部屋の中へ誘われる。
 賑やかな3人が生徒会室へ入っていくと、俺たちを待たずにその分厚い扉が音もなく閉まった。

 残された俺たちの間に訪れたのは、どこか重たい静寂だった。
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