89 / 94
April
過激派親衛隊からのお呼び出し②
しおりを挟む
「……陽希」
「は、陽希様!?」
俺たちの間に降り立ったのは、立派な一眼レフカメラを首に掛けたお祭り男こと陽希だった。
慣れた様子ですとんと静かに着地した陽希は、挨拶代わりにこの場にいる全員にひらひらと手を振る。
「双方落ち着け~。こら蒼葉。その握りしめた拳、開きなさいよ~」
「……」
言い当てられて、思わず両手を後ろに隠す。
陽希の登場があと数秒遅ければ、きっと俺はこの4人に飛びかかって殴り倒していた。
少しほっとした俺に気づいているのかいないのか。手を下ろした陽希はくるりとチワワどもの方を振り返った。
そんなに広くない通路なので、今はもう背中しか見えない。だけど振り返る直前に見えた顔は、いつもとは違ってどこか真剣な表情に見えた気がする。今この背中からも、不思議な威圧感を感じるくらい。恐らくいつも笑顔の人が怒ると怖いのと同じだろう。
明らかにいつもとは違う、ついでに王子モードでもない陽希の様子に取り巻きチワワたちがわたわたと焦る中、ボスチワワは真っ直ぐに向かい合っていた。なるほど、やっぱりボスをやってるだけあるな。肝が据わってる。正直俺は、今の陽希とはまともに向かい合えそうにない。
「御機嫌よう、陽希様。こんな場所にいかがされました?」
「御機嫌よう。皆さんは会計さんとこの親衛隊員の3年生らですね。その言葉、そっくりそのままお返しさせてもらいますわ。こんな場所で、一体何されてるんです?」
陽希の言葉に、ボスチワワが黒い笑みを浮かべる。
余裕綽々に口を開きかけたボスチワワの言葉を遮ったのは、質問を投げかけたはずの陽希だった。
「なんて、あんま性に合わんことはせんとくわ。回りくどいんは嫌いや。どっからどう見ても4対1なこの状況で何してるかなんか、見たらわかるしな。せやけど先輩方。今回のこと気に入らんのは分かるけど、文句ゆう相手が違いますわ」
「……あら。それはどういうことでしょう?」
ボスチワワの顔がぴくりと歪む。
突如ちらりと振り返った陽希が、俺を指で指し示す。
「どうゆうことって、こいつを澪と組ませるにあたって、名前書いてたんは澪の方。澪が蒼葉を指名したんや。そんで、俺がマッチングさせた。つまり、蒼葉からしたら寝耳に水な話やったんやで」
事実を述べる陽希に、「そうだそうだー」とヤジを入れたくなるのをすんでのところで耐える。こんなに真剣に、かつ穏便に事を鎮めようとしてくれているのにそんなことして火に油を注ぎたくないし、あまりにも空気が読めなさすぎる。
何より、いつもおしゃべりな陽希から「黙れ」とか言われたら、それはそれで癪だ。
いつものような無駄話は一切ない、淡々とした陽希の言葉。それを受けて、自信に満ち溢れていたボスチワワの声にも徐々に震えが混じっていく。
「……まさかそんなわけないです。澪様が、どうしてこれまでほとんど関わりのなかった人をわざわざ指名するんですか……? しかも庶民ですよ? 理解できない……。意味がわかりません……!」
「意味わからんゆわれても、ホンマのことやからね。まぁそうゆうことやから、蒼葉に文句ゆうんは間違ってる。詳しいこと聞きたいんやったら他人に当たってやんと本人に聞き。あと、今年度に入って蒼葉が生徒会と関わるようになったんも、蒼葉のせいとちゃう。ってかそれに関しては、誰かのせいってわけとちゃうやろ」
「でもっ――」
なおも食い下がろうとしたボスチワワだったが、陽希を見て押し黙った。
一瞬の沈黙が辺りを包み込む。
次に口を開いた陽希の声は、いつもよりも低く威圧感があった。
「もうここらへんでやめとき。今回は手ぇ出したわけとちゃうし、桜花ちゃんは白城院くんの相手で忙しいし、夕凪はもう学園に帰ってもうたから見逃したるけど、次はないで」
「……っ、行くよ……」
普段とは違う、落ち着いていて真剣味を帯びた陽希のその一言に、チワワたちは悔しそうに立ち去って行った。
ってか、視線だけで黙らせた陽希の表情、どんなだったわけ? 怖すぎるんですけど。
通路から4人の姿が見えなくなると、陽希はぱっとこっちを振り返った。少し身構えたものの、視界に映った陽希はいつもの天真爛漫な笑顔を浮かべていた。
「いや~、間一髪やったな~!」
「……あぁ。さんきゅな」
「ホンマやで~。蒼葉、俺の登場があとちょっとでも遅かったら、手ぇ出しとったやろ?」
「いや、そんなことは……」
「ない、やなんて言われへんやろ」
「おっしゃる通りです」
諦めて白状した俺に、陽希は「お前なぁ~」と呆れた表情を浮かべる。
え、なんかこいつにそんな顔されるとか心外なんですが。
「蒼葉って、“庶民”ってゆわれんの地雷なんか? 前もそれで会長さんと揉めたやんな?」
「別に“庶民”が禁句なわけじゃなくて、それを馬鹿にされるのが許せねぇんだよ」
「なるほど。そらまぁそうなるわな。せやけど手ぇ出したらあかん。1発でもやってしもたら、いくら桜花ちゃんがおるとはいえ、下手したら学園におられんようなるで」
「それは困るな……」
陽希に窘められて、流石に自分の行動を反省する。
権力に屈するつもりは無いが、やっぱりこの学園は権力が支配している。後ろ盾が大きい方が強い。
そんな学校で俺がある程度好き勝手できているのは、桜花ちゃんのおかげなわけだけど。ダメだよな、あんまり迷惑をかけちゃ。
なんたって、俺と桜花ちゃんの関係って、俺の隣に住む幼馴染みのいとこで、直接的には小さい時に1回一緒に遊んだことがあるってだけ。
そんな、99%他人な俺をここまで守ってくれてるんだ。ほんと、ありがたい。
「ところで、蒼葉。会計さんは?」
「あー、トイレ行ってる」
「トイレぇ? そんなもんもうとっくに終わってるんちゃうん?」
「だな」
「お前なぁ……。はよ連絡でもとって合流しぃ。俺がしたろか?」
面倒臭いと思いつつ、陽希から連絡されるのもなんか嫌だったからTSPを取り出す。
「そういや、澪のことあんまりわかんねって言ってたのは、中等部からの外部生だからなのか?」
「お、聞いたんか! そうそう。まだ付き合いが3年弱しかないから、いまいち掴みきれんのよな~」
「まぁ、そりゃそうだよな」
「それにアイツ、自分のことあんま喋らんやん? 聞いてもホンマか嘘かわからん返事やったり、はぐらかされたりするし。せやから、なんとも言いづらいんよな~」
ふぅ。と大きくため息を吐く陽希。
やっぱりこいつ、すごいな。分からないと言いつつしている分析は、きっとその通りだ。
アイツはわざと、掴みどころのないキャラクターを作っている。誰にも核心を見せないように。
そう考えると、さっきの親衛隊員たちも可哀想だ。あぁまでするほど好きな相手なのに、本心は一切見せてくれないんだから。
どうメッセージを送るか軽く悩んだ後、『ちょっと離れてたけどすぐ戻る』みたいな内容を送った。陽希にも送ったことを伝えて、画面を閉じる。
真っ暗になった画面。それにつられるように、視界からも光が消える。
弾かれるように見上げた空にも、もう光はない。いつの間にか曇っていたみたいで月や星も何もなく、辺りは正に暗闇だった。
それを理解した途端、えも言われぬ恐怖が身体中を駆け巡る。呼吸が浅くなっていく。
やばい。
慌てて前を歩く陽希を追う。
幸い歩き出している陽希は、鼻歌交じりに取り留めもない話をしていて俺の様子には気づいていなかった。
だけど、さっきまでは普通に認識できていたはずの陽希の顔が、暗さで上手く見えない。いや、実際はそんなに暗くないかもしれないのに、認識ができなくなっているだけかもしれない。
普段は路地裏くらいの暗さなら問題ないのに。
きっと今日、あの人を意識したからだ。ここ最近、無駄に思い出すこともなかったのに。
耳元で揺れる青い雫をぐっと掴む。そのまま引きちぎりたい衝動を抑えて、瞼を閉じて立ち止まった。
ここは暗いものの真っ暗じゃない。
狭いけれど密室じゃない。
陽希もいる。ひとりじゃない。
そう繰り返し心で唱えていると、少し落ち着いてきた。
小さく息を吐いて瞼を開くと、顔が当たるんじゃないかってくらい目の前に、陽希のドアップがあった。
「うおあっ!?」
「ごめん」
可愛くない悲鳴を上げて後ろに飛び退いた俺に対し、陽希は眉を八の字にして困った大型犬みたいな顔で謝ってきた。
つか、何に対して謝ってるんだ? 俺が目を瞑ってる間に変なことでもしようとしてたのか? だとしたら怒るけど。
「……なんか変なこと考えとらん?」
「どうだかな?」
「……まぁええわ。それよりすまん」
「……何が? なんか謝られるようなことされたっけ?」
「いや、だってなんか思い悩んでるみたいやったから。ほんまは怖かったってことやろ? せやのに俺、空気読めんと……」
心配そうに紡がれる言葉に、思わず笑ってしまった。
色々勘違いされているものの、本気で心配してくれているのが伝わってきて、少し嬉しくなった。
「……なんで笑ってるん?」
「いや。陽希ってやっぱ馬鹿だなーと思って」
「はあ? 真摯に謝っとる俺に対して、馬鹿ってなんや!?」
「ははっ」
「せめてアホにしてくれるか!?」
「関西人のその感覚、マジでわかんねぇ」
陽希とのこの馬鹿馬鹿しいやり取りは、今の俺にはありがたかった。
謎に怒ってるものの、陽希もどことなく口角が上がってて、安心したような表情をしている。
確かに俺は、澪が言った通り、周りに恵まれている。こんなことで心配してくれる馬鹿なやつもいるんだから。
陽希と2人、どうでもいい話をしながら澪と別れたトイレ前まで戻ると、そこには2人の姿があった。
「は、陽希様!?」
俺たちの間に降り立ったのは、立派な一眼レフカメラを首に掛けたお祭り男こと陽希だった。
慣れた様子ですとんと静かに着地した陽希は、挨拶代わりにこの場にいる全員にひらひらと手を振る。
「双方落ち着け~。こら蒼葉。その握りしめた拳、開きなさいよ~」
「……」
言い当てられて、思わず両手を後ろに隠す。
陽希の登場があと数秒遅ければ、きっと俺はこの4人に飛びかかって殴り倒していた。
少しほっとした俺に気づいているのかいないのか。手を下ろした陽希はくるりとチワワどもの方を振り返った。
そんなに広くない通路なので、今はもう背中しか見えない。だけど振り返る直前に見えた顔は、いつもとは違ってどこか真剣な表情に見えた気がする。今この背中からも、不思議な威圧感を感じるくらい。恐らくいつも笑顔の人が怒ると怖いのと同じだろう。
明らかにいつもとは違う、ついでに王子モードでもない陽希の様子に取り巻きチワワたちがわたわたと焦る中、ボスチワワは真っ直ぐに向かい合っていた。なるほど、やっぱりボスをやってるだけあるな。肝が据わってる。正直俺は、今の陽希とはまともに向かい合えそうにない。
「御機嫌よう、陽希様。こんな場所にいかがされました?」
「御機嫌よう。皆さんは会計さんとこの親衛隊員の3年生らですね。その言葉、そっくりそのままお返しさせてもらいますわ。こんな場所で、一体何されてるんです?」
陽希の言葉に、ボスチワワが黒い笑みを浮かべる。
余裕綽々に口を開きかけたボスチワワの言葉を遮ったのは、質問を投げかけたはずの陽希だった。
「なんて、あんま性に合わんことはせんとくわ。回りくどいんは嫌いや。どっからどう見ても4対1なこの状況で何してるかなんか、見たらわかるしな。せやけど先輩方。今回のこと気に入らんのは分かるけど、文句ゆう相手が違いますわ」
「……あら。それはどういうことでしょう?」
ボスチワワの顔がぴくりと歪む。
突如ちらりと振り返った陽希が、俺を指で指し示す。
「どうゆうことって、こいつを澪と組ませるにあたって、名前書いてたんは澪の方。澪が蒼葉を指名したんや。そんで、俺がマッチングさせた。つまり、蒼葉からしたら寝耳に水な話やったんやで」
事実を述べる陽希に、「そうだそうだー」とヤジを入れたくなるのをすんでのところで耐える。こんなに真剣に、かつ穏便に事を鎮めようとしてくれているのにそんなことして火に油を注ぎたくないし、あまりにも空気が読めなさすぎる。
何より、いつもおしゃべりな陽希から「黙れ」とか言われたら、それはそれで癪だ。
いつものような無駄話は一切ない、淡々とした陽希の言葉。それを受けて、自信に満ち溢れていたボスチワワの声にも徐々に震えが混じっていく。
「……まさかそんなわけないです。澪様が、どうしてこれまでほとんど関わりのなかった人をわざわざ指名するんですか……? しかも庶民ですよ? 理解できない……。意味がわかりません……!」
「意味わからんゆわれても、ホンマのことやからね。まぁそうゆうことやから、蒼葉に文句ゆうんは間違ってる。詳しいこと聞きたいんやったら他人に当たってやんと本人に聞き。あと、今年度に入って蒼葉が生徒会と関わるようになったんも、蒼葉のせいとちゃう。ってかそれに関しては、誰かのせいってわけとちゃうやろ」
「でもっ――」
なおも食い下がろうとしたボスチワワだったが、陽希を見て押し黙った。
一瞬の沈黙が辺りを包み込む。
次に口を開いた陽希の声は、いつもよりも低く威圧感があった。
「もうここらへんでやめとき。今回は手ぇ出したわけとちゃうし、桜花ちゃんは白城院くんの相手で忙しいし、夕凪はもう学園に帰ってもうたから見逃したるけど、次はないで」
「……っ、行くよ……」
普段とは違う、落ち着いていて真剣味を帯びた陽希のその一言に、チワワたちは悔しそうに立ち去って行った。
ってか、視線だけで黙らせた陽希の表情、どんなだったわけ? 怖すぎるんですけど。
通路から4人の姿が見えなくなると、陽希はぱっとこっちを振り返った。少し身構えたものの、視界に映った陽希はいつもの天真爛漫な笑顔を浮かべていた。
「いや~、間一髪やったな~!」
「……あぁ。さんきゅな」
「ホンマやで~。蒼葉、俺の登場があとちょっとでも遅かったら、手ぇ出しとったやろ?」
「いや、そんなことは……」
「ない、やなんて言われへんやろ」
「おっしゃる通りです」
諦めて白状した俺に、陽希は「お前なぁ~」と呆れた表情を浮かべる。
え、なんかこいつにそんな顔されるとか心外なんですが。
「蒼葉って、“庶民”ってゆわれんの地雷なんか? 前もそれで会長さんと揉めたやんな?」
「別に“庶民”が禁句なわけじゃなくて、それを馬鹿にされるのが許せねぇんだよ」
「なるほど。そらまぁそうなるわな。せやけど手ぇ出したらあかん。1発でもやってしもたら、いくら桜花ちゃんがおるとはいえ、下手したら学園におられんようなるで」
「それは困るな……」
陽希に窘められて、流石に自分の行動を反省する。
権力に屈するつもりは無いが、やっぱりこの学園は権力が支配している。後ろ盾が大きい方が強い。
そんな学校で俺がある程度好き勝手できているのは、桜花ちゃんのおかげなわけだけど。ダメだよな、あんまり迷惑をかけちゃ。
なんたって、俺と桜花ちゃんの関係って、俺の隣に住む幼馴染みのいとこで、直接的には小さい時に1回一緒に遊んだことがあるってだけ。
そんな、99%他人な俺をここまで守ってくれてるんだ。ほんと、ありがたい。
「ところで、蒼葉。会計さんは?」
「あー、トイレ行ってる」
「トイレぇ? そんなもんもうとっくに終わってるんちゃうん?」
「だな」
「お前なぁ……。はよ連絡でもとって合流しぃ。俺がしたろか?」
面倒臭いと思いつつ、陽希から連絡されるのもなんか嫌だったからTSPを取り出す。
「そういや、澪のことあんまりわかんねって言ってたのは、中等部からの外部生だからなのか?」
「お、聞いたんか! そうそう。まだ付き合いが3年弱しかないから、いまいち掴みきれんのよな~」
「まぁ、そりゃそうだよな」
「それにアイツ、自分のことあんま喋らんやん? 聞いてもホンマか嘘かわからん返事やったり、はぐらかされたりするし。せやから、なんとも言いづらいんよな~」
ふぅ。と大きくため息を吐く陽希。
やっぱりこいつ、すごいな。分からないと言いつつしている分析は、きっとその通りだ。
アイツはわざと、掴みどころのないキャラクターを作っている。誰にも核心を見せないように。
そう考えると、さっきの親衛隊員たちも可哀想だ。あぁまでするほど好きな相手なのに、本心は一切見せてくれないんだから。
どうメッセージを送るか軽く悩んだ後、『ちょっと離れてたけどすぐ戻る』みたいな内容を送った。陽希にも送ったことを伝えて、画面を閉じる。
真っ暗になった画面。それにつられるように、視界からも光が消える。
弾かれるように見上げた空にも、もう光はない。いつの間にか曇っていたみたいで月や星も何もなく、辺りは正に暗闇だった。
それを理解した途端、えも言われぬ恐怖が身体中を駆け巡る。呼吸が浅くなっていく。
やばい。
慌てて前を歩く陽希を追う。
幸い歩き出している陽希は、鼻歌交じりに取り留めもない話をしていて俺の様子には気づいていなかった。
だけど、さっきまでは普通に認識できていたはずの陽希の顔が、暗さで上手く見えない。いや、実際はそんなに暗くないかもしれないのに、認識ができなくなっているだけかもしれない。
普段は路地裏くらいの暗さなら問題ないのに。
きっと今日、あの人を意識したからだ。ここ最近、無駄に思い出すこともなかったのに。
耳元で揺れる青い雫をぐっと掴む。そのまま引きちぎりたい衝動を抑えて、瞼を閉じて立ち止まった。
ここは暗いものの真っ暗じゃない。
狭いけれど密室じゃない。
陽希もいる。ひとりじゃない。
そう繰り返し心で唱えていると、少し落ち着いてきた。
小さく息を吐いて瞼を開くと、顔が当たるんじゃないかってくらい目の前に、陽希のドアップがあった。
「うおあっ!?」
「ごめん」
可愛くない悲鳴を上げて後ろに飛び退いた俺に対し、陽希は眉を八の字にして困った大型犬みたいな顔で謝ってきた。
つか、何に対して謝ってるんだ? 俺が目を瞑ってる間に変なことでもしようとしてたのか? だとしたら怒るけど。
「……なんか変なこと考えとらん?」
「どうだかな?」
「……まぁええわ。それよりすまん」
「……何が? なんか謝られるようなことされたっけ?」
「いや、だってなんか思い悩んでるみたいやったから。ほんまは怖かったってことやろ? せやのに俺、空気読めんと……」
心配そうに紡がれる言葉に、思わず笑ってしまった。
色々勘違いされているものの、本気で心配してくれているのが伝わってきて、少し嬉しくなった。
「……なんで笑ってるん?」
「いや。陽希ってやっぱ馬鹿だなーと思って」
「はあ? 真摯に謝っとる俺に対して、馬鹿ってなんや!?」
「ははっ」
「せめてアホにしてくれるか!?」
「関西人のその感覚、マジでわかんねぇ」
陽希とのこの馬鹿馬鹿しいやり取りは、今の俺にはありがたかった。
謎に怒ってるものの、陽希もどことなく口角が上がってて、安心したような表情をしている。
確かに俺は、澪が言った通り、周りに恵まれている。こんなことで心配してくれる馬鹿なやつもいるんだから。
陽希と2人、どうでもいい話をしながら澪と別れたトイレ前まで戻ると、そこには2人の姿があった。
41
あなたにおすすめの小説
どうしてそうなるんだよ!!!
藤沢茉莉
BL
俺様な会長、腹黒な副会長、無口な書記、双子の庶務……不本意ながら生徒会役員に選ばれてしまった見た目不良なお人好し主人公が、個性的なメンバーに囲まれながら頑張る話。
多忙のため少々お休み中。
誤字脱字ほか、気になる箇所があれば随時修正していきます。
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる