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2巻
2-3
「ようこそいらっしゃいました」
出迎えてくれた桃蘭は、漆黒の髪に琥珀色の瞳をした、相変わらず白蓮のように美しい女性だった。
「桃蘭様、本日はお招きくださりありがとうございます」
「こちらこそ、来ていただけて光栄ですわ。前から翠雨様とじっくりお話がしたいと思っていたのです」
桃蘭が微笑む。慎ましやかなのに目を奪われる、人知れず咲く花のような笑みに、螢林をいびっていた楊梅のような邪気はない。
翠雨は、桃蘭を心から綺麗だと思った。
この房に来るまで、桃蘭がいよいよ皇后になるのではという、女官たちの噂の声を耳にした。
前々からもっとも皇后に近い存在だとは言われていたが、最近になって、皇后が使う房がようやく整えられたらしい。
とはいえ古狸宮での気ままな暮らしだけを望んでいる翠雨には、わりとどうでもいいことだった。
「失礼いたします」
女官たちが、翠雨と桃蘭が座る卓に、次から次へと茶菓子や果物を並べていく。そのあまりの豪勢さに、翠雨は目を瞠った。
桃色に染まった寿桃包に、くるみのたっぷり飾られた胡餅、杏を煮詰めた飴果、たっぷりの柘榴と葡萄。
「まあ、どれも本当に美味しそうですわ!」
「翠雨様に喜んでいただきたくて、いろいろ揃えたのです。気に入っていただけたようでうれしいですわ」
瞳を輝かせる翠雨に向けて、桃蘭が春風のようにふわりと微笑んだ。
(本当に美味しい……! できれば何個かこっそり懐にしまって、白澤と豆豆にも食べさせてあげたいわ)
「翠雨様。ひょっとすると、皇帝陛下に今度の新月の宴に呼ばれたのではなくて?」
翠雨が人の目を盗んで菓子を隠す方法を考えていると、桃蘭に問いかけられた。
「どうしてご存じなのですか?」
「皇帝陛下は、龍賀の儀にも翠雨様をお呼びしていましたでしょう? 小北地方の件で、翠雨様によほどのご恩を感じていらっしゃるようね」
小北地方で原因不明の疫病が流行り、人々を恐怖に陥れたことがあった。翠雨は前世の友人である仙人の漸を頼り、疫病を鎮めることに成功した。
「今後も、事あるごとに宴に呼ばれるのではないかしら?」
「そうでしょうか」
翠雨にしてみたら、宴に呼ばれるのは面倒でしかない。できれば呼ばないでほしいが、皇帝命令に背くわけにもいかなかった。
(古狸宮に住み続けさせてくれるのには、感謝してるけど)
流刑地のような場所として認知されている古狸宮を、翠雨が皇宮内のどの場所よりも好んでいることを、翔偉は知っている。つまり、まったく罰になっていないのだ。
それにもかかわらず住み続けさせてくれるのは、彼の計らいにほかならない。そういう優しいところも、あの男はときに持ち合わせていた。
(だから、ちょっと厄介なのよね)
前世、身勝手な理由で槐を殺した男と同じ顔をした彼を、できれば憎みたい。
だがどうしても憎み切れず、この頃はむしろ一緒にいると居心地のよさまで感じてしまい、翠雨は戸惑っていた。
(あんな男のことを考えている場合じゃない。本題に入らなきゃ)
「桃蘭様は、今度の新月の宴で、何を披露されるのですか?」
「歌よ」
「歌……!」
サラリと答えられ、翠雨は思わず声を上げた。
桃蘭が琵琶を披露するなら勝算は無いに等しいが、歌であれば別だ。
白澤は否定的だったが、翠雨は自らの歌唱力に自信がある。
「ええ。子供の頃、皇帝陛下に歌声を褒められたことがあるのです。少しでも、日々お忙しい皇帝陛下の癒しになればと思いまして」
桃蘭が心配そうに小首をかしげる。そんな些細な仕草すら美しく、翠雨は思わず見惚れた。
翠雨の目から見ても、彼女こそが皇后にふさわしいと思う。翔偉がそう望むのも、十分に理解できた。
それなのに、なぜか胸の奥がチクリとする。
(誰が皇后になろうが、どうでもいいことじゃない)
翠雨は心の動揺から目を背けるように、朱色の椀に盛られた橙色の飴果に手を伸ばした。
柔らかい果肉の感触とともに甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がり、心を和ませる。
翠雨は感嘆の息を吐いた。
「こんなに美味しい菓子は初めて食べました」
「ふふ。菓子作りを得意とする庖人を新しく雇ったのです。長年修行を詰んだ実績のある者のようですよ」
(翔偉は庖人にこだわりがあるのね)
翠雨は飴果を味わいながら、翔偉が瓜の砂糖漬けをいつになくほころんだ表情で食べていた様子を思い出す。
「皇帝陛下は、甘い物がお好きですものね」
そうつぶやくと、桃蘭が一瞬だけ真顔になった。
だが、すぐにいつもの笑みを浮かべる。
「そうなのですよ。よくご存じですね」
桃蘭の些細な変化が、翠雨の心に引っかかる。
(もしかして、翔偉は桃蘭様には甘い物が好きなことを秘密にしてるの?)
宮中にいるときと古狸宮にいるときとでは、翔偉は雰囲気が違う。皇帝としての矜持が、彼をそうさせているのだろう。
(つまり、宮中ではかっこつけてるのね。古狸宮では泥だらけだったり、普通の男みたいに笑ったりするのに)
翠雨は心の中でクスリと笑う。
翔偉のことを思い浮かべていると、桃蘭と目が合った。
「暮らしはどうですか? 不便はしていませんか?」
「はい。ギリギリの生活ですが、どうにか過ごしています」
「そう、翠雨様はお強いのね。私にできることがあれば、いつでも言ってくださいね」
桃蘭が親しげに目を細める。
「ありがとうございます。桃蘭様」
驕らない桃蘭の優しさに翠雨は心打たれ、そしてまたかすかな胸の痛みを感じたのだった。
第三章 菘菜と剣珮
新月の宴は、散々な結果となった。
翠雨が自慢の歌声を披露したのに、なぜか歌い終わった後、その場には寒々しい空気が流れていたのである。
引きつった顔をしている官吏や妃を見て、鈍感な翠雨もさすがに自分のやらかしに気づく。翔偉だけが、上座で笑いをこらえるようにうつむき震えていたのもまた、彼女の気分を逆撫でした。
一方の桃蘭の歌声は、天女かと思うほどの美しさで、拍手喝采をさらっていた。
もちろんのこと、特大狗尾草は桃蘭のものに。翠雨は悔しさで地団太を踏みたい気持ちを必死にこらえながら、北宮をあとにし、古狸宮に戻ったのだった。
「ああ~、悔しい! だいたい桃蘭様が特大狗尾草をもらっても、使い道なんてないでしょうに。豆豆ごめんね」
「ニャゴ~」
翠雨は残念そうな豆豆の大きな体を抱きしめ、繰り返し撫でる。
「ニャンニャン」
大丈夫、とでも言うように、豆豆がかわいく鳴いた。
「歌声がここまで聞こえていたぞ。なぜ、あれで勝てると思ったのだ」
白澤が、心底不思議そうにぼやいている。
「ん? 白澤、何か言った?」
「……たいしたことではない。それより」
ゲフンと咳ばらいをする白澤。
「菘菜はどうなったのだ。そろそろ出来る頃ではないか?」
「菘菜……そうだわ! 様子を見なくちゃ」
翠雨はいそいそと台所に向かった。
菘菜とは、白菜と蕪を塩や酒で漬け込んで発酵させたものである。保存が利くので、少し前に、大量に収穫した野菜で試しに漬けてみた。
翠雨は台所の隅に安置した陶製の壺を取り出し、木蓋を開ける。しんなりとした蕪のひとつを味見し、顔を輝かせた。
「歯ごたえがあって美味しい!」
感動のあまり、新月の宴での失態など、あっという間に忘れてしまう。
「どれ、わしも食べてみよう。うむ、酒が進みそうな味だな」
どさくさに紛れて勝手に味見をしている白澤も満足そうだ。
(私が育てた白菜と蕪で、こんなにも美味しいものが出来るなんて)
翠雨は、古狸宮に来てからの、畑仕事に勤しんだ日々を思い起こす。
はじめは畑に関する知識も種もなく、ただひたすら土だけを耕した。そんな翠雨のもとに苗や種、さらには作物の育て方の指南書まで届けてくれたのは翔偉だった。
畑に来ては汗だくになって作物の世話をしていた彼の姿が頭に浮かぶ。
翔偉が翠雨のためにしたわけではないと分かっている。彼は畑仕事が好きで、あくまでも自分を癒したいから、古狸宮に来るだけだ。
それでも、彼がいなかったら作物を育てられなかったのは事実。
「お主、味見のしすぎではないか?」
「そう? だって美味しいんだもの」
(私の歌を大笑いしたのは許せないけど……。次に彼が古狸宮に来たら、菘菜をほんの少し味見させてあげようかしら。ほんのすこーーしだけ)
翠雨は菘菜をカリコリと噛み砕きながら、ぼんやりそんなことを思ったのだった。
ところが、待てども翔偉は現れなかった。
いつもならそろそろという頃になっても、まったく来る気配がない。
(せっかく菘菜を味見させてあげようと思ったのに。こういう時に限って来ないんだから)
翠雨は荒々しく畑を耕しながら考える。胸がひどくモヤモヤしていた。
だがあることに気づき、鍬を持っていた手を止める。
(よくよく考えたら、彼が来なくなってよかったんじゃない。私は彼とは関わることなく、古狸宮で平穏に暮らすことを望んでいたんだから)
そんなふうに前向きに考えようとしたものの、なかなかうまくいかない。
翔偉のいない畑は、いつもよりずいぶん広く感じた。
(別に翔偉に会いたいわけじゃないけど……。今まで来ていた人が音沙汰なくなると、不安になるのが人の心というものよ)
翠雨はそうやって自分に言い聞かせ、どうにか消化不良な気持ちをやり過ごしたのだった。
そんなある日、古狸宮での女子会で、翠雨は螢林から思いがけない話を聞く。
「どうやら、皇帝陛下が軍を率いて出兵なさるようですよ」
寝耳に水な話に、翠雨は茶器を手にしたまま固まった。
「出兵? どこと戦をなさるの?」
「詳しい話は分かりませんが、かなり南の方に行かれるとか。敵の怪しい動き? みたいなのがあったようで、今宮中はかなりバタバタしているのです」
螢林がきょとんとした調子で言う。世間知らずでのんびりとした性格の彼女は、この手の話に疎いようだ。
「元夏群に送った調査隊が殺されたのをきっかけに、戦が勃発したと聞きました」
明明が補足を加える。
翠雨は、ふたりの話から事のあらましを推測した。
(元夏群というと、以前の夏乱国領だわ。元夏乱国民には、翔偉に恨みを持っている人がきっと大勢いる。残党が発起している兆しがあったから、翔偉は調査隊を送ったのかもしれない。出兵するということは、残党はかなりの規模だったようね)
夏乱国は、翔偉の父である前王が崩御した際、混乱に乗じて春栄国に攻め込んできた。だが急遽次の王となった翔偉は、驚異的な戦略と武力で夏乱国を制圧。
夏乱国の王をはじめ、王族は容赦なく処刑されたと聞く。若輩の君主とは思えない残虐ぶりに人々は震え上がり、〝血濡れの狂帝〟という翔偉のふたつ名は広く知られることとなった。
「戦なんて嫌ですわ。皇都に害はなくとも、不安になってしまいます」
「皇帝陛下のことですから、心配は無用ですよ。軍神とも呼ばれる皇帝陛下を挑発するなど、身のほど知らずがいるものですね」
怖がる螢林を、明明がなだめていた。
「翠雨様も、そう思いませんか?」
「ええ、そうですね。皇帝陛下に敵う者は、この大陸にはいないと思います」
翔偉には、太陽の女神である羲和の加護がついていると、仙人の漸が言っていた。翠雨を悩ませてきた呪いを打ち消すほどの陽の気らしい。
翠雨は、安華山にて彼の戦いっぷりを目にしたこともある。飛翔のごとく素早く圧倒されるほど強靭で、無敵だった。
「翠雨様がおっしゃるなら、きっとそうなのですね。安心しました」
(翔偉がここしばらく古狸宮に来なかったのは、出兵の準備があったからなのね。あの人ならきっと、国を勝利に導いて戻ってくるわ。あの強さは尋常じゃないもの)
そう思いつつも、心の奥底には、もしも彼が死んだら? という不安もたしかにあった。
翔偉は並外れた強さを持つが、何があるか分からないのが戦争である。
敵兵の狙いは、翔偉の首である。本来なら大将は安全な城に留まるところだが、あの男は先陣を切って戦地を駆ける阿呆なのだ。
螢林はすっかりもとの調子を取り戻し、明明と孟史穀の筋肉談義で盛り上がっている。翠雨は彼女たちの話には入らず、茶杯を卓に置き、円窓から外を眺めた。
畑では、みずみずしい青葉が風に揺れている。
『普通の水だな――だが、うまい』
畑の真ん中で竹筒の中身を飲み干し、少年じみた笑みを浮かべた翔偉の姿を思い出す。
胸の奥がぎゅっと握りしめられたようになり、翠雨は落ち着かない気持ちになった。
その夜翠雨は、白澤と豆豆が寝たのを見届けてから、こっそり古狸宮の奥にある隠し扉を開けた。
細長い木箱から取り出したのは、布にくるまれた鹿の角である。
翠雨の前世――半妖の槐の頭から生えていたそれは、二百年前、龍景が彼女に呪術をかけるために切り落とした。長らく龍宮の奥にある祭壇にしまわれていたが、翠雨が小北地方の疫病を鎮めた褒美として、翔偉から譲り受けた。
翠雨は懐から刀を取り出すと、一本の角の先を削り取った。桐で先端に穴を開ける。
(槐には治癒の力があったから、お守りになるかもしれない)
ありあわせの糸で組み紐を結い、穴を開けた角の欠片に通せば、剣の柄に取り付ける即席の剣珮が仕上がった。
翔偉に、まだ死なれては困るのだ。
翠雨にとって古狸宮が快適だと分かりながらも住まわせてくれたり、畑仕事を教えてくれたり手伝ってくれたり。嫌いな顔の男なのに、彼には借りが多すぎる。
(今の状態で死なれたら煮え切らない。絶対に生きて帰ってもらわないと)
翠雨は出来上がったばかりの不格好な剣珮を見つめながら、まるで言い訳のように、そんなことを思った。
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